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第69話 緩急激しいベルオム
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コリーヌ帝国内でそんな事になっている頃、ステラたちはベルオムの小屋で今日も特訓に励んでいた。
「やぁ!」
「ふっ、甘いね」
リューンの攻撃を簡単にいなすベルオム。エルフであるものの剣を扱うことに長けているために、未熟なリューンの攻撃ではベルオムに剣が届く事はなかった。
その様子を見ながら、ステラは一人で双剣の稽古に励んでいる。
元々はエルミタージュ王国のお姫様とはいえ、500年の間にすっかりサバイバル能力を身に付けたステラの動きは、そこらの兵士たちにも劣らないくらいである。そこに魔法も時折織り交ぜながら戦う様は、さすが金級冒険者といった感じである。
そんな感じで爆音を轟かせるステラの訓練。リューンはどうしても気になってちらちらと視線を向けてしまう。
「よそ見とは感心しませんね、リューンくん」
「うわっ!」
一瞬の隙を突かれて、剣を弾き飛ばされるリューン。その衝撃で思わず尻餅をついてしまっていた。
「ステラの事が気になるんでしょうけれど、今はしっかり稽古に集中して下さい。怪我じゃ済まないかもしれませんから」
「うっ、気を付けます……」
ベルオムに手を差し出され、その手を取って立ち上がるリューンである。
リューンが無事に立ち上がると、ベルオムはすぐに距離を取って身構える。
「さあ、訓練を再開させるとしようじゃないか。今の君では自分の身すら守るのが厳しいのだからね」
「うっ……。よ、よろしくお願いします!」
弾き飛ばされた剣を拾ってきて、リューンも剣を構える。その姿ににこりと一瞬笑みを見せるベルオム。
だが、次の瞬間、鬼のように猛攻を加えてくる。リューンはどうにか凌いではいるが、捌くのが精一杯で攻撃に転じる事ができなかった。
それでも、最初の頃に比べると、リューンはかなりベルオムの剣に対応できるようにはなってきている。
それはベルオムの表情を見ればよく分かる。最初の頃はかなり余裕があって、明らかに手を抜いていたのだ。
今はその頃に比べて、表情こそあまり変わらないものの、剣の速度や攻撃の頻度が上がっているのだ。リューンの実力に合わせているのだから、これは明らかにリューンが成長をしているということなのだ。
この様子には、リューンと同じように横目でちらちらと見ているステラも感心しているようだった。
同時に、自分ではここまでできなかった事に悔しさも感じていた。
(私もまだまだ未熟ですね。潰してしまわないかと臆病に思ってしまったものです)
強さを冷静に見極める能力では、ステラはベルオムに圧倒的に敵わなかったのである。結果、特訓によるリューンの成長度合いに大きく水をあけられてしまったのだ。
(私もまだまだ子どもというわけですね)
ステラは自分を嘲り笑うほかなかった。
この日の特訓も日が暮れる頃まで続けられ、ステラはその気持ちを振り払うかのようにがむしゃらに取り組んだのだった。
「それでは、今日はこのくらいにしておきましょうか。リューンくん、明日にはもう少し厳しくしますからね」
「はい、よろしくお願いします」
ベルオムの言葉に、はっきりと返事をするリューンである。
その後はいつも通りに過ごして、ステラたちは就寝したのだった。
翌朝を迎え、昨日と同じように特訓に励むステラたち。
そこへ、ボワ王国の兵士が前触れもなくやって来た。
「おやおや、一体どうしたんですか。王城に向かう用事はないはずですがね」
特訓を一時中断して兵士に応対するベルオム。
やって来た兵士は呼吸を整えると、ベルオムへと話しかける。
「ほ、本日の用件は、王国とは無関係でございます。こ、こちらの手紙を預かってきております」
「うん、手紙?」
「では、確かに渡しましたので、私はこれにて失礼します」
手紙をベルオムに渡し、兵士はそそくさと小屋から立ち去っていく。
ひとまず、ベルオムに渡された手紙を確認することになり、特訓は一時中断される。
外側を見てみても差出人が特定できなかったので、ベルオムは封を開けて中身を確認する。
「師匠、誰からの手紙か分かっているのですか?」
「もちろんですよ。そうするように伝えておきましたからね。ふふっ、真面目な彼らしい」
笑みを浮かべているベルオムの姿に、ステラもリューンも首を捻っていた。
そんな二人をさておいて、ベルオムはふむふむと頷きながら手紙を読んでいる。
手紙を読み終えたベルオムは、パサリと手紙を閉じてステラたちを見る。
「どうやら、アンペラトリス・コリーヌ……、コリーヌ帝国の皇帝とコンタクトが取れたようですね」
ベルオムの言葉が理解できないステラたちは、困惑の表情を浮かべている。
ただ一人状況をはっきり把握しているベルオムだが、その状況を無視して話を進めていく。
「こうはしていられませんね。早速指定された場所に出向くとしましょうか」
「ちょっと、師匠?!」
わけもわからないうちにどんどんと話が進んでいく。理解ができないステラたちの混乱がますます極まっていく。
「さあ、参りましょうか」
気が付けば、ステラたちはベルオムに連れられて小屋を後にしていたのだった。
「やぁ!」
「ふっ、甘いね」
リューンの攻撃を簡単にいなすベルオム。エルフであるものの剣を扱うことに長けているために、未熟なリューンの攻撃ではベルオムに剣が届く事はなかった。
その様子を見ながら、ステラは一人で双剣の稽古に励んでいる。
元々はエルミタージュ王国のお姫様とはいえ、500年の間にすっかりサバイバル能力を身に付けたステラの動きは、そこらの兵士たちにも劣らないくらいである。そこに魔法も時折織り交ぜながら戦う様は、さすが金級冒険者といった感じである。
そんな感じで爆音を轟かせるステラの訓練。リューンはどうしても気になってちらちらと視線を向けてしまう。
「よそ見とは感心しませんね、リューンくん」
「うわっ!」
一瞬の隙を突かれて、剣を弾き飛ばされるリューン。その衝撃で思わず尻餅をついてしまっていた。
「ステラの事が気になるんでしょうけれど、今はしっかり稽古に集中して下さい。怪我じゃ済まないかもしれませんから」
「うっ、気を付けます……」
ベルオムに手を差し出され、その手を取って立ち上がるリューンである。
リューンが無事に立ち上がると、ベルオムはすぐに距離を取って身構える。
「さあ、訓練を再開させるとしようじゃないか。今の君では自分の身すら守るのが厳しいのだからね」
「うっ……。よ、よろしくお願いします!」
弾き飛ばされた剣を拾ってきて、リューンも剣を構える。その姿ににこりと一瞬笑みを見せるベルオム。
だが、次の瞬間、鬼のように猛攻を加えてくる。リューンはどうにか凌いではいるが、捌くのが精一杯で攻撃に転じる事ができなかった。
それでも、最初の頃に比べると、リューンはかなりベルオムの剣に対応できるようにはなってきている。
それはベルオムの表情を見ればよく分かる。最初の頃はかなり余裕があって、明らかに手を抜いていたのだ。
今はその頃に比べて、表情こそあまり変わらないものの、剣の速度や攻撃の頻度が上がっているのだ。リューンの実力に合わせているのだから、これは明らかにリューンが成長をしているということなのだ。
この様子には、リューンと同じように横目でちらちらと見ているステラも感心しているようだった。
同時に、自分ではここまでできなかった事に悔しさも感じていた。
(私もまだまだ未熟ですね。潰してしまわないかと臆病に思ってしまったものです)
強さを冷静に見極める能力では、ステラはベルオムに圧倒的に敵わなかったのである。結果、特訓によるリューンの成長度合いに大きく水をあけられてしまったのだ。
(私もまだまだ子どもというわけですね)
ステラは自分を嘲り笑うほかなかった。
この日の特訓も日が暮れる頃まで続けられ、ステラはその気持ちを振り払うかのようにがむしゃらに取り組んだのだった。
「それでは、今日はこのくらいにしておきましょうか。リューンくん、明日にはもう少し厳しくしますからね」
「はい、よろしくお願いします」
ベルオムの言葉に、はっきりと返事をするリューンである。
その後はいつも通りに過ごして、ステラたちは就寝したのだった。
翌朝を迎え、昨日と同じように特訓に励むステラたち。
そこへ、ボワ王国の兵士が前触れもなくやって来た。
「おやおや、一体どうしたんですか。王城に向かう用事はないはずですがね」
特訓を一時中断して兵士に応対するベルオム。
やって来た兵士は呼吸を整えると、ベルオムへと話しかける。
「ほ、本日の用件は、王国とは無関係でございます。こ、こちらの手紙を預かってきております」
「うん、手紙?」
「では、確かに渡しましたので、私はこれにて失礼します」
手紙をベルオムに渡し、兵士はそそくさと小屋から立ち去っていく。
ひとまず、ベルオムに渡された手紙を確認することになり、特訓は一時中断される。
外側を見てみても差出人が特定できなかったので、ベルオムは封を開けて中身を確認する。
「師匠、誰からの手紙か分かっているのですか?」
「もちろんですよ。そうするように伝えておきましたからね。ふふっ、真面目な彼らしい」
笑みを浮かべているベルオムの姿に、ステラもリューンも首を捻っていた。
そんな二人をさておいて、ベルオムはふむふむと頷きながら手紙を読んでいる。
手紙を読み終えたベルオムは、パサリと手紙を閉じてステラたちを見る。
「どうやら、アンペラトリス・コリーヌ……、コリーヌ帝国の皇帝とコンタクトが取れたようですね」
ベルオムの言葉が理解できないステラたちは、困惑の表情を浮かべている。
ただ一人状況をはっきり把握しているベルオムだが、その状況を無視して話を進めていく。
「こうはしていられませんね。早速指定された場所に出向くとしましょうか」
「ちょっと、師匠?!」
わけもわからないうちにどんどんと話が進んでいく。理解ができないステラたちの混乱がますます極まっていく。
「さあ、参りましょうか」
気が付けば、ステラたちはベルオムに連れられて小屋を後にしていたのだった。
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