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第二章 外側の世界
第379話 転生者、毒を退ける
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両腕を曲げ、胸を張って不気味に笑うヘルプワゾン。その様子は明らかにさっきまでとは違っている。
さっきまで翼はあるのにつかわず地面に立っていたが、ふわりと空中へと浮き上がっていく。
奴の周囲には緑と紫の実に毒々しい空間が形成され、ケオス大陸の一部がじわじわと侵食され始めた。
レーヴェンがあれだけの時間をかけてじわじわと回復させていた地面が、ほんの一瞬で奴の毒に飲み込まれていく。
そんなことが許されていいと思っているのかよ。
だが、ヘルプワゾンの様子はさっきまでとはまるで違う。さっきの俺たちの連携攻撃がよっぽど効いたらしく、本気をようやく出してきたってわけだ。
つまりは、さっきまでは全然本気じゃなかったってわけだ。それでいてあのパワーとスピードだ。まともに目で追うこともできなくなる可能性は十分に高い。
「ふん、さっきまでの威勢はどこに行った。来ぬというのなら……」
ヘルプワゾンがぐっと踏み込んでいる。
「こちらから行くぞ!」
ヘルプワゾンの姿が消える。
速い。
「ネラール、右に跳べ!」
「分かった!」
俺が指示をすると、ネラールが右に横っ飛びをする。
次の瞬間、地面が激しく砕けてえぐれる。いわずもがな、ヘルプワゾンの拳が地面に叩きつけられていた。
「くそっ、まったく姿が見えなかったぞ」
「仕方ないぜ、あんたは長いこと隠居してたんだ。感覚が戻るにはまだ時間がかかるさ。セイ太と一緒に俺をサポートしてくれ」
「くっ、こればかりはその通りだな。そうさせてもらおう」
ネラールは自分の力不足をはっきりと自覚して、セイ太と合流している。
その姿を確認した俺は、ヘルプワゾンに挑発を仕掛ける。
「おう、筋肉毒だるま」
「わけの分からぬ単語で呼ぶな! 死にたいのか?」
額に血管を浮かべながら、ヘルプワゾンは大きな声で怒鳴りつけてくる。
「はっ、その程度の脅し、怖くも何ともねえよ。それよりも、俺とタイマン勝負といこうぜ?」
「ふん、ほざけっ。すでに分かっているだろう、お前が我に敵わぬことなどな」
俺の挑発に対して、余裕の笑みを浮かべている。さっきまで怒って怒鳴っていたというのに忙しい奴だな。
ここまで散々優位に戦いを進めてきているからこその、絶対的な自信の表れなんだろうな。はっ、反吐が出るぜ。
俺は自信たっぷりな表情を浮かべて、余裕しゃくしゃくなヘルプワゾンを煽る。
さすがに再びイラッときたのか、眉間にものすごいしわを寄せて俺を睨んでくる。
よしよし、そのまま怒りに飲まれてしまえ。
「そこまで死にたいのなら、すぐにあの世に送ってやろう。なに、寂しがることはないぞ」
ヘルプワゾンは腰をしっかりと落として構えると、俺をしっかりと睨みつけている。
「お前を殺した後、そいつらもまとめて送り届けてやるからな!」
ヘルプワゾンは地面を思い切り蹴って、滑るようにして俺へと飛び込んでくる。
俺はあらかじめレーヴェンの樹の種に魔力を流し、神聖魔力を増幅させて迎撃の準備を済ませている。
(頼むから耐えきってくれよ?)
俺は祈るような気持ちで拳に力を込める。
「死にさらせ! ぶるああああぁぁぁぁっ!!!」
ヘルプワゾンは一撃で砕かんとばかりに、思い切り拳を振りかぶる。
俺もしっかりと腰を落として迎え撃つ態勢を整える。
「ふんぬうっ!」
ヘルプワゾンの拳が振り出されると、俺はそれに合わせるようにして拳を一気に突き出す。
「でりゃあああっ!!」
俺とヘルプワゾンの拳が、正面からぶつかり合う。
どのくらい酷いかというと、ぶつかり合った瞬間に周辺に一気に衝撃波が走るほどだった。
ネラールはセイ太が、デイジーはピエラが守ってくれている。万一はあるかもしれないが、俺は信じ切って拳を思い切り振り抜いた。
「ぐぬぬぬぬぬ……」
「うおおおおおっ!!」
俺とヘルプワゾンの拳は、まったく拮抗して動かない。
「やりおるな、この我の拳を受け止めるとはな」
「はっ、それはどうもな。俺にだって負けられない理由はある。お前たみたいな壊してばかりの奴らとは……」
俺が力をさらに籠めると、全身の毛が逆立っていく。それこそ、しっぽだってピンと立ってしまうくらいだ。
全身の毛が完全に逆立った時、俺に今までに感じたことのないくらい強力な力が発動する。
「なに、これは!」
「違うんだよっ!!」
俺は自分の変化に気付かぬまま、拳を思い切り振り抜いた。
「ぬぅ、ぬおおおおっ!!」
その瞬間、ヘルプワゾンの右腕は毒の液体となり、そのまま蒸発して消滅してしまった。
「ぐっ……。バカな、この我が力負けしただと?!」
右腕の根元を押さえながら、ヘルプワゾンが肩で息をしている。
「くそっ、お前も我らと同じ異界の者か!」
「さあ、どうだかな。それよりどうするんだ。続けるのか?」
右腕が消滅したヘルプワゾンを見ながら、俺は選択肢を突きつける。
俺の余裕の態度を見て、ヘルプワゾンはギリッと歯を食いしばっている。
「ふん、たまたま我の腕を吹き飛ばしたくらいでいい気になるなよ?」
強がっているようだが、さすがに片腕がなくなった動揺は隠せないようだ。
「今日のところはこれで勘弁しておいてやる。だが、次は必ず決着をつけてくれようぞ。さらばだ!」
ヘルプワゾンはそう言い残すと、俺たちの目の前から姿を消した。
それと同時に、奴が展開していった毒の領域はすべて消え去り、元の平穏なケオス大陸の風景が戻ってきたのだった。
さっきまで翼はあるのにつかわず地面に立っていたが、ふわりと空中へと浮き上がっていく。
奴の周囲には緑と紫の実に毒々しい空間が形成され、ケオス大陸の一部がじわじわと侵食され始めた。
レーヴェンがあれだけの時間をかけてじわじわと回復させていた地面が、ほんの一瞬で奴の毒に飲み込まれていく。
そんなことが許されていいと思っているのかよ。
だが、ヘルプワゾンの様子はさっきまでとはまるで違う。さっきの俺たちの連携攻撃がよっぽど効いたらしく、本気をようやく出してきたってわけだ。
つまりは、さっきまでは全然本気じゃなかったってわけだ。それでいてあのパワーとスピードだ。まともに目で追うこともできなくなる可能性は十分に高い。
「ふん、さっきまでの威勢はどこに行った。来ぬというのなら……」
ヘルプワゾンがぐっと踏み込んでいる。
「こちらから行くぞ!」
ヘルプワゾンの姿が消える。
速い。
「ネラール、右に跳べ!」
「分かった!」
俺が指示をすると、ネラールが右に横っ飛びをする。
次の瞬間、地面が激しく砕けてえぐれる。いわずもがな、ヘルプワゾンの拳が地面に叩きつけられていた。
「くそっ、まったく姿が見えなかったぞ」
「仕方ないぜ、あんたは長いこと隠居してたんだ。感覚が戻るにはまだ時間がかかるさ。セイ太と一緒に俺をサポートしてくれ」
「くっ、こればかりはその通りだな。そうさせてもらおう」
ネラールは自分の力不足をはっきりと自覚して、セイ太と合流している。
その姿を確認した俺は、ヘルプワゾンに挑発を仕掛ける。
「おう、筋肉毒だるま」
「わけの分からぬ単語で呼ぶな! 死にたいのか?」
額に血管を浮かべながら、ヘルプワゾンは大きな声で怒鳴りつけてくる。
「はっ、その程度の脅し、怖くも何ともねえよ。それよりも、俺とタイマン勝負といこうぜ?」
「ふん、ほざけっ。すでに分かっているだろう、お前が我に敵わぬことなどな」
俺の挑発に対して、余裕の笑みを浮かべている。さっきまで怒って怒鳴っていたというのに忙しい奴だな。
ここまで散々優位に戦いを進めてきているからこその、絶対的な自信の表れなんだろうな。はっ、反吐が出るぜ。
俺は自信たっぷりな表情を浮かべて、余裕しゃくしゃくなヘルプワゾンを煽る。
さすがに再びイラッときたのか、眉間にものすごいしわを寄せて俺を睨んでくる。
よしよし、そのまま怒りに飲まれてしまえ。
「そこまで死にたいのなら、すぐにあの世に送ってやろう。なに、寂しがることはないぞ」
ヘルプワゾンは腰をしっかりと落として構えると、俺をしっかりと睨みつけている。
「お前を殺した後、そいつらもまとめて送り届けてやるからな!」
ヘルプワゾンは地面を思い切り蹴って、滑るようにして俺へと飛び込んでくる。
俺はあらかじめレーヴェンの樹の種に魔力を流し、神聖魔力を増幅させて迎撃の準備を済ませている。
(頼むから耐えきってくれよ?)
俺は祈るような気持ちで拳に力を込める。
「死にさらせ! ぶるああああぁぁぁぁっ!!!」
ヘルプワゾンは一撃で砕かんとばかりに、思い切り拳を振りかぶる。
俺もしっかりと腰を落として迎え撃つ態勢を整える。
「ふんぬうっ!」
ヘルプワゾンの拳が振り出されると、俺はそれに合わせるようにして拳を一気に突き出す。
「でりゃあああっ!!」
俺とヘルプワゾンの拳が、正面からぶつかり合う。
どのくらい酷いかというと、ぶつかり合った瞬間に周辺に一気に衝撃波が走るほどだった。
ネラールはセイ太が、デイジーはピエラが守ってくれている。万一はあるかもしれないが、俺は信じ切って拳を思い切り振り抜いた。
「ぐぬぬぬぬぬ……」
「うおおおおおっ!!」
俺とヘルプワゾンの拳は、まったく拮抗して動かない。
「やりおるな、この我の拳を受け止めるとはな」
「はっ、それはどうもな。俺にだって負けられない理由はある。お前たみたいな壊してばかりの奴らとは……」
俺が力をさらに籠めると、全身の毛が逆立っていく。それこそ、しっぽだってピンと立ってしまうくらいだ。
全身の毛が完全に逆立った時、俺に今までに感じたことのないくらい強力な力が発動する。
「なに、これは!」
「違うんだよっ!!」
俺は自分の変化に気付かぬまま、拳を思い切り振り抜いた。
「ぬぅ、ぬおおおおっ!!」
その瞬間、ヘルプワゾンの右腕は毒の液体となり、そのまま蒸発して消滅してしまった。
「ぐっ……。バカな、この我が力負けしただと?!」
右腕の根元を押さえながら、ヘルプワゾンが肩で息をしている。
「くそっ、お前も我らと同じ異界の者か!」
「さあ、どうだかな。それよりどうするんだ。続けるのか?」
右腕が消滅したヘルプワゾンを見ながら、俺は選択肢を突きつける。
俺の余裕の態度を見て、ヘルプワゾンはギリッと歯を食いしばっている。
「ふん、たまたま我の腕を吹き飛ばしたくらいでいい気になるなよ?」
強がっているようだが、さすがに片腕がなくなった動揺は隠せないようだ。
「今日のところはこれで勘弁しておいてやる。だが、次は必ず決着をつけてくれようぞ。さらばだ!」
ヘルプワゾンはそう言い残すと、俺たちの目の前から姿を消した。
それと同時に、奴が展開していった毒の領域はすべて消え去り、元の平穏なケオス大陸の風景が戻ってきたのだった。
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