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第二章 外側の世界
第402話 転生者、調和と再会する
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「にゃっはー、お邪魔するにゃ」
俺たちが戻ってきた翌日のこと、エイミーが魔王城を訪ねてきた。
「どうしたんだ、エイミー。やけに楽しそうじゃないか」
「いやぁ、ようやく帝国の内部が落ち着いたのでね。本格的に魔王領との交渉が始められるにゃ」
「今までかかってたって、相当帝国の中は荒れてたんだな」
「まあにゃ。そんな中、陛下が武闘大会に参戦されて、一時はどうなるかと思ったにゃ」
エイミーはほっと安心のため息をついていた。
「で、何がきっかけで落ち着いたんだ」
「もちろん、食糧事情にゃ。ようやくまともな収穫ができるようになったから、みんな心に余裕ができたのにゃ」
「あー、それは確かに大事だな。でも、よかったぜ。まだ皇帝陛下は小さいから苦労させすぎるのはどうかと思ってたからよ」
ウネの協力も得て一部で量産はしていたものの、普通に生産していた食物がようやく最初の収穫期を迎えたらしい。
東方帝国内の食糧事情はかなり悪かった。というのも、先代皇帝がかなりそのあたりがずさんだったからだ。
その皇帝亡き後も、息子である現皇帝が全責任を負わされて苦労していた。
転機となったのは、俺たちが東方帝国に潜入したこと。
あの頃は帝国との国境付近にはバカ猫が仕掛けた防衛設備があって、近付くことすらできなかった。調和を名乗るくせにめちゃくちゃなことをしていたものだ。内政は確かによかったのだが、外交がおざなりだったんだよ。
国境封鎖が解けてからは、街道を建設したり、食糧支援をしたりといろいろ頑張ったものだ。その成果がようやく実ったというわけなんだと。
「いやぁ、私らだけじゃ無理でしたにゃ。魔王には本当に感謝するにゃ」
「困った時はお互い様だろ。あんまり気にするなって」
「ありがたいですにゃ。それにしても、魔王……」
「なんだよ」
エイミーはカスミが出したケーキを頬張りながら、俺の方をじっと見つめてくる。
「なんだか雰囲気が変わってないかにゃ。こうなんていうか……内なる力が強まっているというかなんというか」
エイミーは俺の力に異変と感じているようだった。
実は俺もヘルプワゾンとの最終決戦以来、妙な力を感じている。あいつとの最終決戦の時に何か特別な力が爆発したような気がするのだが、今の俺にはまったく変化は感じられなかった。
「ケオス様の力とも、レーヴェンの力とも違うものにゃ。まさか、リヒテルの力じゃないのかにゃ?」
「リヒテルの?」
「そうにゃ。ケオス様たちと同じこの世界の三使徒の一人にゃ」
「ああ、リヒテルなら外の世界で会ったが、俺にそんな力あるのか?」
「にゃにゃ?!」
エイミーはフォークを持ったまま勢いよく立ち上がっている。
「リヒテルに会ったのかにゃ?!」
瞳孔が縦長になっていて、本当に猫っぽい顔をしている。
「ああ、外の世界の東の大陸にある、サージェント遺跡ってところで、外の生き残りたちを見守るようにしていたよ」
「にゃ、にゃんと……。生き残りがいたのですかにゃ……、よかったにゃ」
へなへなと力が抜けるように座り込むエイミーである。
「調和の使徒とはいっても、俺たちと同じなんだな」
「それはそうにゃ。上位の使徒様の手足として生み出された私たちは、基本的に魔族や人間と変わらないにゃ。能力を超える範囲のことはできないにゃ」
そういえば、デザストレもそんな感じのところはあったな。
まっ、それは今はどうでもいいか。
「それで、エイミーは動くことはできるのか?」
「陛下とケンソウ、それと魔王が寄こしてくれたヨネスのおかげでどうにかなりそうにゃ。私が使いとして出てこれるくらいには、余裕ができているにゃ」
今度は紅茶を飲みながら、話をしている。なんだかんだ言いつつ、こいつはものすごく落ち着いている。
だが、いきなり髪の毛がふわりと逆立ち始めた。
「げっ、厄災のやつが来たにゃ」
どうやらデザストレの気配を感知したらしい。
同じ混沌の使徒ケオスから生み出された存在なのに、調和と厄災はすごく仲が悪いんだよな。同族嫌悪みたいなものなんかな。
「おらあ、調和! 何しに来やがったぁっ!」
「うるさいにゃ、厄災。私は皇帝陛下の使いとして交渉に来たのにゃ。厄災にとやかく言われる筋合いはないにゃ!」
「んだとぉっ?!」
テーブルを挟んで二人で睨み合いを始めやがった。
まったく、このまま放っておいたら話が進まないな。
俺はおかわりを持ってこようとしたカスミからトレイを受け取ると、二人の顔を往復で叩いた。
「いってぇっ!」
「あっにゃーっ!」
ちょっと力を入れて叩いてやったから、二人とも顔を押さえてうずくまってしまった。やりすぎたかもしれないが、このまま暴れて部屋を壊されるよりはましだぜ。
「はいはい、いがみ合うのは勝手だが、状況はよく見てやってくれ。デザストレはとにかく今はネラールを鍛えてやってくれ。俺はエイミーと交渉に入るからな」
「調和の好き勝手にさせてたまるかぁっ! おぶうっ!」
あまりにうるさいから、俺はもう一発トレイで顔を叩いてやる。
「いいから、さっさと行け。俺がまだ穏便に済ましてる間にな」
「ぐぬぬぬ……。調和が変なことをしたらすぐに呼べ。俺が仕置きをしてやるわ!」
「そんなことするわけないにゃ。少しは学習するにゃ、厄災!」
俺が呼んだキリエに引きずられるようにして、デザストレは部屋を出ていった。
しばらくの間、扉の向こうからはデザストレの叫び声が聞こえていたので、俺は頭が痛くてしょうがなかったぜ。
「悪いな。交渉に入るとしようか」
「はいにゃ」
俺はようやく東方帝国との交渉に入ることができたのだった。
さて、どんな内容を持ちかけてきたのやら。
俺たちが戻ってきた翌日のこと、エイミーが魔王城を訪ねてきた。
「どうしたんだ、エイミー。やけに楽しそうじゃないか」
「いやぁ、ようやく帝国の内部が落ち着いたのでね。本格的に魔王領との交渉が始められるにゃ」
「今までかかってたって、相当帝国の中は荒れてたんだな」
「まあにゃ。そんな中、陛下が武闘大会に参戦されて、一時はどうなるかと思ったにゃ」
エイミーはほっと安心のため息をついていた。
「で、何がきっかけで落ち着いたんだ」
「もちろん、食糧事情にゃ。ようやくまともな収穫ができるようになったから、みんな心に余裕ができたのにゃ」
「あー、それは確かに大事だな。でも、よかったぜ。まだ皇帝陛下は小さいから苦労させすぎるのはどうかと思ってたからよ」
ウネの協力も得て一部で量産はしていたものの、普通に生産していた食物がようやく最初の収穫期を迎えたらしい。
東方帝国内の食糧事情はかなり悪かった。というのも、先代皇帝がかなりそのあたりがずさんだったからだ。
その皇帝亡き後も、息子である現皇帝が全責任を負わされて苦労していた。
転機となったのは、俺たちが東方帝国に潜入したこと。
あの頃は帝国との国境付近にはバカ猫が仕掛けた防衛設備があって、近付くことすらできなかった。調和を名乗るくせにめちゃくちゃなことをしていたものだ。内政は確かによかったのだが、外交がおざなりだったんだよ。
国境封鎖が解けてからは、街道を建設したり、食糧支援をしたりといろいろ頑張ったものだ。その成果がようやく実ったというわけなんだと。
「いやぁ、私らだけじゃ無理でしたにゃ。魔王には本当に感謝するにゃ」
「困った時はお互い様だろ。あんまり気にするなって」
「ありがたいですにゃ。それにしても、魔王……」
「なんだよ」
エイミーはカスミが出したケーキを頬張りながら、俺の方をじっと見つめてくる。
「なんだか雰囲気が変わってないかにゃ。こうなんていうか……内なる力が強まっているというかなんというか」
エイミーは俺の力に異変と感じているようだった。
実は俺もヘルプワゾンとの最終決戦以来、妙な力を感じている。あいつとの最終決戦の時に何か特別な力が爆発したような気がするのだが、今の俺にはまったく変化は感じられなかった。
「ケオス様の力とも、レーヴェンの力とも違うものにゃ。まさか、リヒテルの力じゃないのかにゃ?」
「リヒテルの?」
「そうにゃ。ケオス様たちと同じこの世界の三使徒の一人にゃ」
「ああ、リヒテルなら外の世界で会ったが、俺にそんな力あるのか?」
「にゃにゃ?!」
エイミーはフォークを持ったまま勢いよく立ち上がっている。
「リヒテルに会ったのかにゃ?!」
瞳孔が縦長になっていて、本当に猫っぽい顔をしている。
「ああ、外の世界の東の大陸にある、サージェント遺跡ってところで、外の生き残りたちを見守るようにしていたよ」
「にゃ、にゃんと……。生き残りがいたのですかにゃ……、よかったにゃ」
へなへなと力が抜けるように座り込むエイミーである。
「調和の使徒とはいっても、俺たちと同じなんだな」
「それはそうにゃ。上位の使徒様の手足として生み出された私たちは、基本的に魔族や人間と変わらないにゃ。能力を超える範囲のことはできないにゃ」
そういえば、デザストレもそんな感じのところはあったな。
まっ、それは今はどうでもいいか。
「それで、エイミーは動くことはできるのか?」
「陛下とケンソウ、それと魔王が寄こしてくれたヨネスのおかげでどうにかなりそうにゃ。私が使いとして出てこれるくらいには、余裕ができているにゃ」
今度は紅茶を飲みながら、話をしている。なんだかんだ言いつつ、こいつはものすごく落ち着いている。
だが、いきなり髪の毛がふわりと逆立ち始めた。
「げっ、厄災のやつが来たにゃ」
どうやらデザストレの気配を感知したらしい。
同じ混沌の使徒ケオスから生み出された存在なのに、調和と厄災はすごく仲が悪いんだよな。同族嫌悪みたいなものなんかな。
「おらあ、調和! 何しに来やがったぁっ!」
「うるさいにゃ、厄災。私は皇帝陛下の使いとして交渉に来たのにゃ。厄災にとやかく言われる筋合いはないにゃ!」
「んだとぉっ?!」
テーブルを挟んで二人で睨み合いを始めやがった。
まったく、このまま放っておいたら話が進まないな。
俺はおかわりを持ってこようとしたカスミからトレイを受け取ると、二人の顔を往復で叩いた。
「いってぇっ!」
「あっにゃーっ!」
ちょっと力を入れて叩いてやったから、二人とも顔を押さえてうずくまってしまった。やりすぎたかもしれないが、このまま暴れて部屋を壊されるよりはましだぜ。
「はいはい、いがみ合うのは勝手だが、状況はよく見てやってくれ。デザストレはとにかく今はネラールを鍛えてやってくれ。俺はエイミーと交渉に入るからな」
「調和の好き勝手にさせてたまるかぁっ! おぶうっ!」
あまりにうるさいから、俺はもう一発トレイで顔を叩いてやる。
「いいから、さっさと行け。俺がまだ穏便に済ましてる間にな」
「ぐぬぬぬ……。調和が変なことをしたらすぐに呼べ。俺が仕置きをしてやるわ!」
「そんなことするわけないにゃ。少しは学習するにゃ、厄災!」
俺が呼んだキリエに引きずられるようにして、デザストレは部屋を出ていった。
しばらくの間、扉の向こうからはデザストレの叫び声が聞こえていたので、俺は頭が痛くてしょうがなかったぜ。
「悪いな。交渉に入るとしようか」
「はいにゃ」
俺はようやく東方帝国との交渉に入ることができたのだった。
さて、どんな内容を持ちかけてきたのやら。
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