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第二章 外側の世界
第403話 転生者、調和を仲間に加える
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「というわけにゃ。交渉するといっても今の帝国にはあまり珍しいものはないにゃ。お砂糖は特産だけど、それは北方聖国にもあるしにゃあ……」
「まっ、人材交流ってやつで精一杯ってわけか」
「そういうことにゃ。現状ではこちらから出すことはできないけれど、将来的には見返りを返していくことになるにゃ。全部先代皇帝の負債だけに、返すのは時間がかかりそうにゃ」
とまあ、ほぼ一歩的な要求ってわけだった。
だが、俺たちにだって利点がないというわけではない。
今まで発生していた戦争が終結してしまった今、兵士たちの士気の維持が至上命題だ。不満が溜まれば俺たちにその刃は向くことになる。
「肉体労働なら兵士たちの不満の解消にもなるだろうしな。まあ、引き受けてやるよ」
「本当かにゃ? ありがたいにゃあ」
俺が快く了承をすると、エイミーはほっと胸を撫で下ろしているようだった。
「その代わり、エイミーに頼みがある」
「わ、私にですかにゃ?」
「ああ、外の世界はだいぶレーヴェンの樹で埋め尽くしてきたんだが、侵略者の最後の使徒がちと面倒でな」
「ふむふむ、詳しく聞かせてほしいのにゃ」
興味がかなりあるようで、エイミーががっつりと食いついてきた。
なので、俺はキリエとピエラを交えてエイミーと話をする。ネラールは特訓中なんで呼べなかったぜ。
「ふむふむ、にゃるほどにゃあ。呪いを操る使徒かぁ……」
エイミーは腕を組んで唸り始めた。
「呪いってのは、私の司る調和とは真逆の力になるのにゃ。厄災の方がどちらかといえば近い力にゃ」
「そういえば、俺たちの誰も感じ取れなかった呪いを、デザストレのやつはすぐに見破っていたな」
「同類だからこそ気がつけたというやつにゃ。極めた呪いというのは祝福に近くなってしまって、対極にある私や聖国の人間には気付けないのにゃ」
「……ずいぶんと面倒なものなんだな」
「まったくにゃ」
エイミーは歯ぎしりをしながら、露骨なまでに嫌な顔をしている。呪いの話をしているのに、デザストレの顔でも浮かんだのだろう。
「で、エイミーにも同行をお願いしたいところなんだよな。できるか?」
「ん~……、厳しいのにゃ。私は皇帝陛下の秘書だからにゃあ……」
エイミーは腕を組んで唸りながら考え込んでいる。
ただの使徒だったらよかったろうが、エイミーはこれでも重要なポストについているからな。悩むのも無理はないって話だ。
「うん、やっぱり答えはすぐに出せないにゃ。皇帝陛下に確認してからになるにゃあ……」
エイミーの結論はすぐに出なかった。
「というか、魔王のところには生命の使徒レーヴェンが生み出した使徒がいるのにゃ。混沌の使徒の生み出した使徒である私まで必要になるのかにゃ?」
エイミーの言い分に、俺はすぐには言い返せなかった。
だが、なんだか分からないが、俺はエイミーも引き入れなければならない気がして仕方なかった。
「まあ、魔王の頼み事だったら聞いてやらないこともないにゃ。私や厄災の生みの親である混沌は、そもそもは外の世界も管理していたのだからにゃ」
エイミーはそう言うと立ち上がる。
「こちらの言い分を一方的に突きつけるのもよろしくないにゃ。戻ってすぐに陛下に確認することにするのにゃ」
エイミーはそうとだけ言い残すと、俺の部屋から出ていった。
「黙って聞いていたけれど、あれはエイミーは来るつもりだわね」
「ええ、私にもそう感じられました」
「……そうなのか?」
話の最中、説明以外に一切口を出してこなかったキリエとピエラが、エイミーについてそんなことを言っていた。
だが、俺にはどうもそんな風には感じ取れなかったんだがな。これも男女の感覚の差ってやつなのか?
俺が両腕を組んで首を捻っていると、キリエとピエラがこそこそと話している。
「ね、セイってばこういうことには鈍いでしょ?」
「まったくですね。元男性だったということがよく分かる状況ですね」
「お前らなぁ……」
俺は二人の態度に、もう一度大きなため息をついたのだった。
その数日後、帝国からエイミーが再びやって来る。
時期を同じくして戻ってきていたセイ太とどういうわけかいがみ合っている。
「陛下から許可が下りたので、次は私も同行するにゃ」
「調和とかいいましたよね。セイに誘惑なんてしてませんでしょうね」
「うるさいにゃ、転生。私は陛下をお支えする立場、浮気なんて絶対にないのにゃ」
まるで犬と猫のペット戦争みたいじゃねえかよ。
こういう時は俺が出ていくべきなんだろうな。
「はいはい、お前たちいい加減にしろよな。また外にレーヴェンの樹を植えに行くんだからよ」
「お姉様、次はどこになさるおつもりですか?」
セイ太と一緒に戻ってきていたデイジーが尋ねてくる。
「次は南東の大陸だな。やっぱりできる限りの空白は埋めておきたいからな。外堀を完全に埋めてから、本丸となる中央の大陸へと乗り込むぞ」
「分かりました。外の世界の空気を浄化しきるためにも、私、頑張りますね」
デイジーは今回もぎゅっと拳を握りしめていた。
こうして、俺たちはさらにエイミーを加えた総勢七名のパーティーとなって外の世界へと向かう。
外の世界をレーヴェンの樹で埋め尽くすまでもう少しだ。あいつらを追い詰めて、俺たちの世界を取り戻してみせるぜ。
「まっ、人材交流ってやつで精一杯ってわけか」
「そういうことにゃ。現状ではこちらから出すことはできないけれど、将来的には見返りを返していくことになるにゃ。全部先代皇帝の負債だけに、返すのは時間がかかりそうにゃ」
とまあ、ほぼ一歩的な要求ってわけだった。
だが、俺たちにだって利点がないというわけではない。
今まで発生していた戦争が終結してしまった今、兵士たちの士気の維持が至上命題だ。不満が溜まれば俺たちにその刃は向くことになる。
「肉体労働なら兵士たちの不満の解消にもなるだろうしな。まあ、引き受けてやるよ」
「本当かにゃ? ありがたいにゃあ」
俺が快く了承をすると、エイミーはほっと胸を撫で下ろしているようだった。
「その代わり、エイミーに頼みがある」
「わ、私にですかにゃ?」
「ああ、外の世界はだいぶレーヴェンの樹で埋め尽くしてきたんだが、侵略者の最後の使徒がちと面倒でな」
「ふむふむ、詳しく聞かせてほしいのにゃ」
興味がかなりあるようで、エイミーががっつりと食いついてきた。
なので、俺はキリエとピエラを交えてエイミーと話をする。ネラールは特訓中なんで呼べなかったぜ。
「ふむふむ、にゃるほどにゃあ。呪いを操る使徒かぁ……」
エイミーは腕を組んで唸り始めた。
「呪いってのは、私の司る調和とは真逆の力になるのにゃ。厄災の方がどちらかといえば近い力にゃ」
「そういえば、俺たちの誰も感じ取れなかった呪いを、デザストレのやつはすぐに見破っていたな」
「同類だからこそ気がつけたというやつにゃ。極めた呪いというのは祝福に近くなってしまって、対極にある私や聖国の人間には気付けないのにゃ」
「……ずいぶんと面倒なものなんだな」
「まったくにゃ」
エイミーは歯ぎしりをしながら、露骨なまでに嫌な顔をしている。呪いの話をしているのに、デザストレの顔でも浮かんだのだろう。
「で、エイミーにも同行をお願いしたいところなんだよな。できるか?」
「ん~……、厳しいのにゃ。私は皇帝陛下の秘書だからにゃあ……」
エイミーは腕を組んで唸りながら考え込んでいる。
ただの使徒だったらよかったろうが、エイミーはこれでも重要なポストについているからな。悩むのも無理はないって話だ。
「うん、やっぱり答えはすぐに出せないにゃ。皇帝陛下に確認してからになるにゃあ……」
エイミーの結論はすぐに出なかった。
「というか、魔王のところには生命の使徒レーヴェンが生み出した使徒がいるのにゃ。混沌の使徒の生み出した使徒である私まで必要になるのかにゃ?」
エイミーの言い分に、俺はすぐには言い返せなかった。
だが、なんだか分からないが、俺はエイミーも引き入れなければならない気がして仕方なかった。
「まあ、魔王の頼み事だったら聞いてやらないこともないにゃ。私や厄災の生みの親である混沌は、そもそもは外の世界も管理していたのだからにゃ」
エイミーはそう言うと立ち上がる。
「こちらの言い分を一方的に突きつけるのもよろしくないにゃ。戻ってすぐに陛下に確認することにするのにゃ」
エイミーはそうとだけ言い残すと、俺の部屋から出ていった。
「黙って聞いていたけれど、あれはエイミーは来るつもりだわね」
「ええ、私にもそう感じられました」
「……そうなのか?」
話の最中、説明以外に一切口を出してこなかったキリエとピエラが、エイミーについてそんなことを言っていた。
だが、俺にはどうもそんな風には感じ取れなかったんだがな。これも男女の感覚の差ってやつなのか?
俺が両腕を組んで首を捻っていると、キリエとピエラがこそこそと話している。
「ね、セイってばこういうことには鈍いでしょ?」
「まったくですね。元男性だったということがよく分かる状況ですね」
「お前らなぁ……」
俺は二人の態度に、もう一度大きなため息をついたのだった。
その数日後、帝国からエイミーが再びやって来る。
時期を同じくして戻ってきていたセイ太とどういうわけかいがみ合っている。
「陛下から許可が下りたので、次は私も同行するにゃ」
「調和とかいいましたよね。セイに誘惑なんてしてませんでしょうね」
「うるさいにゃ、転生。私は陛下をお支えする立場、浮気なんて絶対にないのにゃ」
まるで犬と猫のペット戦争みたいじゃねえかよ。
こういう時は俺が出ていくべきなんだろうな。
「はいはい、お前たちいい加減にしろよな。また外にレーヴェンの樹を植えに行くんだからよ」
「お姉様、次はどこになさるおつもりですか?」
セイ太と一緒に戻ってきていたデイジーが尋ねてくる。
「次は南東の大陸だな。やっぱりできる限りの空白は埋めておきたいからな。外堀を完全に埋めてから、本丸となる中央の大陸へと乗り込むぞ」
「分かりました。外の世界の空気を浄化しきるためにも、私、頑張りますね」
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