異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第407話 転生者、リッチと戦う

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 不死の王リッチ。まあ、だいたい前世のファンタジーものでかじってきた知識の通りだな。
 だが、どんな奴にだって弱点というものはある。不死を語るやつにはたいてい核ってものが存在している。こいつもおそらくはそれを潰せば倒せるはずだ。
 それを見極めるためにも、俺は全力でリッチを潰しに行く。

「はあああっ!!」

 拳と足に神聖魔力をまとわせて、俺はリッチへと飛び掛かっていく。

「だりゃあっ!」

「おっと、そう簡単に食らいませんよ」

 俺の拳が空を切る。意外にも身軽な動きをしてくれるようだ。
 やっぱり、今まで叩き潰してきたのは分身か何かだったんだろうな。変態紳士やヘルプワゾンのことを思えば、これくらいできても不思議じゃない。
 だが、この動きは追えない程度のものじゃない。

「甘いんだよ!」

 俺は回転の勢いを利用して、後ろ回し蹴りを繰り出す。

「がはっ!」

 俺の追撃は見事にリッチを捉える。勢いの乗った攻撃に、リッチの体は地面に叩きつけられて勢いよく転がっていく。
 軽くしか飛ばなかったことを後悔しな。
 だが、不死身と言っていたのは確かのようだ。
 体があれば起き上がるのもきつくなるような攻撃を食らいながら、平然と立ち上がってきやがった。

「ふふふっ、さすがに効きましたね。ですが……」

 リッチは不気味に笑っている。

「まったく効きませんね! 今度は我の番です!」

 効いてるんだか効いてねえんだか、はっきりしろや!
 わけの分からない発言に、俺は思わず心の中でツッコミを入れてしまう。
 だが、そんなことを言ってる場合じゃねえ。やつからの反撃が宣言されたのだから、構えてねえとな。

「さあ、我の攻撃を躱せますかな?」

 次の瞬間、俺の影から鋭い爪が襲い掛かってきた。
 くそっ、影から襲い掛かってくるのか。これは並大抵の防御で躱せるものじゃねえ。

「にゃっはっはーっ、甘いにゃあ!」

 後ろからはエイミーの笑い声が聞こえてくる。

「あんたみたいな陰湿なやつが影から攻撃を仕掛けてくるなんて、私はお見通しだにゃ!」

 どうやらエイミーたちも攻撃を食らったらしい。だが、エイミーが全員を守ってくれたようで無事のようだった。

「魔王、こっちは私に任せるにゃ。そいつをとっととぶん殴ってやるにゃ!」

「助かる、エイミー。任せておけっ!」

 エイミーの声に応えて、俺は再びリッチへと攻撃を仕掛ける。
 だが、さっきの動きから多少予測できたことだが、俺の攻撃をちょこまかと躱し続けている。なんともイラッとくるような感じだ。

「むふふふ……。攻撃が手に取るように分かります。今のお前では、我に攻撃を当てることは不可能」

「やってみなけりゃ分からねえだろ。そのむかつく骨面に一発どころか蜂の巣のようにお見舞いしてやるぜ!」

 俺はさらに攻撃を激化させていく。
 だが、確かにやつは俺の攻撃をすべて躱していく。
 そこで俺は、わざと大振りな一発をかますことにした。

「でりゃあ!」

 足を振り上げて顔面を狙う。だが、これもやっぱり躱された。

「無駄だと言っているでしょう。お前の攻撃は当たらない……と?!」

 余裕たっぷりのリッチが動揺を見せる。
 その理由は簡単だ。予測のできなかった攻撃が命中したのだからな。
 何のための蹴り上げだと思ってるんだよ。
 そう、奴に命中したのは俺のしっぽだ。意識すればある程度は自由に操れるんでな。

「くそっ! 焼ける、当たった場所が焼けるぅっ!」

 奴は苦しんでいる。
 やつが俺の攻撃をどうして読んでいるのかというメカニズムは、おおよそ分かっていたからな。
 俺のまとう神聖魔力、それを頼りにあいつは俺の攻撃を躱してたんだ。だから、直前までしっぽには魔力を通さなかった。そして、当たる瞬間に全身の魔力を一気に通わせたんだ。

「おのれ、この我にここまでの傷を負わせますとは……。いいでしょう、皆殺しにしてやります」

 かなり頭に来たらしく、奴は本領発揮といったところのようだ。
 俺たちが警戒するが、次の瞬間動いたのはやつではなかった。

「えっ、体が勝手に?」

「デイジー?!」

 後方で騒ぐ声が聞こえてくる。驚いているのはピエラのようだな。

「魔王様のにらまれていた通り、やはりデイジー様の体を乗っ取っていましたか」

 キリエは冷静だった。
 その理由は直前のことだ。すべてはリッチがデイジーの影から飛び出してきたことにある。
 そこで俺は、キリエとセイ太にはデイジーに警戒するように伝えておいたんだ。そこに本体が残っている可能性を指摘してな。
 それは見事的中。

「セイ太、やってやれ!」

「はい、任せて下さい、セイ!」

 セイ太は魔力を固めて剣を作り出す。その剣でもってデイジーへと向かっていく。

「命の使徒レーヴェン様のお仕えする者の力、とくと味わいなさい!」

 セイ太がデイジーの影を目がけて剣を振り下ろそうとする。

 ガキンッ!

「きゃあっ!」

 だが、セイ太は弾き飛ばされてしまった。
 攻撃が読まれていたらしく、防護魔法が張られていたようだった。

「くそっ、ガードインパクトか。ヘルプワゾンの言っていた通り、本当に嫌な奴のようだな、お前は……」

「なんとでも言いなさい。あの方のためなのです。何をしようと勝てばいいのですからね」

「けっ、本当に気に食わねえな」

 デイジーの体がリッチに奪われたことにより、戦いは混迷を極めていく。
 俺たちはリッチを倒してデイジーを助けることができるのか。苦戦は免れそうにないようだった。
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