異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第420話 転生者、成し遂げる

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 さすがに世界の根本を支える場所のレーヴェンの樹が一本では足りないだろうと、全部で七本の樹を植えておいた。地上とは違う感じに成長したレーヴェンの樹がこれだけあれば、おそらくもう大丈夫だろう。

「デイジー、お疲れ様」

「はい、頑張りました……」

 さすがにほとんど休憩なしに七本は厳しかったようだ。デイジーは頭に手を当ててふらついていた。
 心配したセイ太がデイジーをおぶさると、落ち着いた表情を見せていたので、ひとまず安心のようだな。
 ところが、安心したのも束の間だった。

「な、なんだ? 地震か?」

「ものすごく揺れているわね。何が起きているのよ」

 唐突に大きな揺れが起き始めたのだ。
 普通ならば立っているのがやっとのような大きな揺れだというのに、俺たちは不思議と慌てなかった。

「どうやら、この世界が胎動を再開したようだ。本当に感謝するぞ」

 ケオスが俺たちにお礼を言っている。

「ふっ、この世界の状況を知っちまったんだ。これくらいどうってことないさ。なあ、みんな」

 俺が答えながら同意を求めると、みんな揃って首を縦に振っていた。
 最初から最後まで、俺たちの心はひとつにまとまっていたのだ。
 あまりにも見事な俺たちの団結に、ケオスも笑うばかりだった。
 しかし、さすがに段々と揺れが大きくなってくると、のんびりしているというわけにはいかなかった。

「イヴィルアイが倒されたことによって、奴の手によってできたこの大穴が閉じようとしている。このままでは、俺たちもこの中に閉じ込められてしまう」

「そういうことか。だが、この状況で地上まで間に合うのか?」

 ケオスの説明に納得はいくが、揺れが大きくなって岩肌がはがれて落下してきている。
 このままでは魔法で空を飛んだとしても、大きな岩が落下してきてしまえば脱出は叶わない。はてさてどうしたものだろうかな。

「ふっ、こういう時こそ俺に任せろというものだ」

 俺たちが困っていると、ケオスが胸を張って主張してくる。

「俺は神の使徒の一人だ。俺の力を使えば、俺たち全員を地上まで送るということなど、まったくもって造作もないというものだぞ?」

 大した自信だな。
 ならば見せてもらおうか、神の使徒の真の力というものを。
 ケオスの指示に従って、俺たちはひとまとまりになる。

「さあ、全員きちんとつながっておれよ。混沌の使徒ケオスの力、今こそ見せてやろうぞ!」

 ケオスがぱちんと指を鳴らすと、俺たちはぐにゃりと何かが歪むような感覚に襲われる。

「さあ、もういいぞ」

 思わず閉じてしまって目を開くと、そこは確かに、大穴の近くの地上だった。
 そこで、まずは全員がきちんとそろっているかを確認する。

「いるわよ、セイ」

「ここにおりますとも、魔王様」

「大丈夫ですよ、お姉様」

「問題ない」

「私もいますよ、セイ」

「みんないるのにゃ」

 俺が首を振ろうとした瞬間に、全員から声をかけられてしまった。俺の行動分かりやすすぎか。
 いやまあ、確認が簡単に終わったんだからよしとしよう。

「うむ、成功だな」

 ケオスが腰に手を当てながら、なんとも不穏な言葉を口にしている。
 顔や態度は得意げにしているだけに、余計に不安になってしまうぞ。

「おい、成功だなってなんだよ」

「長らくあの地下で奴の力を抑えるのに必死だったのだ。それ以外の使い方を忘れても不思議ではないだろうが。うるさいというものだ、獣人の小娘」

「あのなぁっ!」

 思いも寄らなかったことに、俺はケオスに思わず突っかかってしまう。
 そこへ、デイジーが急に割って入ってきたので、俺は思わず動きを止めてしまった。

「あの、地下のレーヴェンの樹は一体どうなるのでしょうか」

 そうだった。せっかく樹を成長させたというのに、穴が塞がってはどうなるか分かったものではない。
 デイジーの言葉で、俺も気になってしまった。

「心配要らんぞ。命の使徒レーヴェンの樹ぞ? 地中に埋まってしまったくらいでどうこうなるようなやわな木ではないわ。がっはっはっはっはっ!」

 ケオスが豪快に笑い出す。
 この姿を見て、ああ、確かに混沌の使徒だと思わされた。なんといってもデザストレとよく似ているからな。

「さあ、周りを見てみろ。お前たちが成し遂げた成果が、徐々に姿を見せているぞ」

 ケオスが話を逸らすかのように喋り出すが、俺たちはその言葉に従って周辺の様子を見てみる。
 なんということだろうか。あれだけ曇って晴れ間がのぞくことのなかった空から光が差し込み始めたのだ。
 荒れていた海も徐々に穏やかになり、草の一本も生えていなかった大地からは芽が吹き出している。いや、いくらなんでも早すぎないか?」

「これも地中で植えたレーヴェンの樹の効果だ。レーヴェンの樹の力によって、世界の命の循環が起こり始めたのだよ」

 俺たちは、信じられない光景に言葉を失った。いや、この光景はとても言葉で言い表せるものじゃないな。

「さあ、リヒテル、レーヴェン。お前たちも姿を見せろ!」

 ケオスが大声で叫ぶと、ケオスの隣に光の使徒リヒテルと、命の使徒レーヴェンが姿を見せる。
 俺が転生した世界における神の使徒が、今俺たちの前に勢ぞろいしたのだった。
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