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第一章 大陸編
第5話 転生者、魔王領へと入る
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ガタガタと安っぽい馬車に乗せられて、魔王領までやって来た。
本来なら一般兵たちだけでやって来られるような場所ではないのだが、俺たちが必死になって道を切り開いた結果、魔王領の入口付近まではやって来れるようになっていた。
入口付近までやって来ると、俺はそこで馬車から降ろされる。
渡されたのは女性用の簡易的な服と数日分の水と食料。統治を任せたといっても実質追放だし、持ち物を見ると死刑宣告にも等しくないか、これ。
「我々としてはちゃんとしたものをお渡ししたかったのですが、獣人というものは嫌われておりますゆえ、ご容赦下さい」
兵士は謝罪をしてくる。持たされた荷物は国王の命令で用意されたものだし、ここまでの兵士たちは普通に接してくれたので、俺としては兵士を咎める気はない。
ただ、正直言って国王には失望したけどな。
でもまぁ、獣人を魔族として見ている国民も多いって事情があるから、いくら俺だからといっても特別扱いできなかったんだろうな……。
「ありがとう。ここまで連れてきてもらえただけでも助かるよ」
ここへ来るまでの間にすっかり喋れるようになっていた俺は、流暢に兵士にお礼を言っておく。護身用として剣も貰えたしな。
「では、ご武運を」
兵士はそうとだけ言い残して、そそくさと退散していった。魔王領だからあまり長く居たくないんだろうな。
くるりと振り返った俺は、ひとまず魔王領の拠点とできそうな魔王城へと向かう事にした。
しかし、魔王領に入ってから城までは結構な距離がある。持っている食料だけで足りるのか、ちょっと心もとない感じだ。
ここまで来てしまった以上引き返せないし、俺はともかく魔王城を目指して歩く事にした。
しばらく歩いていて思ったが、獣人と化した俺の身体能力は人間の時に比べてかなり上がっているようだ。
ただ、体力的に劣るはずの女になったというのに、それでも平気で歩き続けられるというのが信じられなかった。
(なんてこった。これが獣人が魔族と言われる理由なんだろうかな)
いろいろ思いつつ歩いていると、俺の耳と鼻がぴくりと反応する。
思わず構えてしまう。さっきまで左右にふわふわと動いていたしっぽも、ぴたりと動きを止めている。
近くの茂みや木々の裏側には、誰かが居るような感じがする。待ち伏せだろうか。思わず俺は兵士に渡された剣に手を掛けてしまう。
ガサガサと動いたかと思うと、何かが飛び出してきた。
より深く腰を落とした俺だったが、直後の光景に思わず動きを止めてしまった。
「おお、魔王様がお戻りになられた」
「新たな魔王様がおいでになられたわ」
飛び出してきたのはどうやら魔族のようだったが、何やら様子がおかしいのだ。
おそらくはコボルトの類だと思うんだが、彼らが話す魔王様って一体誰なんだよ。
「え……と……? 魔王様ってどういうこと?」
思考が止まった俺は、つい素直に疑問をぶつけてしまう。
すると、目の前のコボルト(?)は不思議そうに首を傾げながらお互いの顔を見合わせていた。
「やだなぁ。魔王様ってあなた様の事ですよ。この魔力、間違いありません」
いや、訳が分からないんだが?
男のコボルトが何かを根拠に断定して話してくる。
すると、セットで登場した女のコボルトの方が近付いてくる。そして、じーっと俺に顔を近付けてくる。
「な、なんなんだよ……」
俺が思わず顔を遠ざけようとすると、女のコボルトは俺の頭に手を伸ばしてきた。
「うん、これよ。間違いないです。新たな魔王様が来られたわ。あなた、みんなにすぐ連絡よ」
「よしきた!」
男のコボルトが一目散に駆けていった。てか、あなたってこいつら夫婦なのか……。
それにしても、俺の額に何があるっていうんだ?
俺は額を触ってみるが、もじゃもじゃとした毛並みが手に触れるだけだった。
「魔王というのは、倒された時にその力を他者に引き継がせるのですよ」
「そうなのか?」
俺が確認すると、女コボルトはこくりと頷いた。
「あなた様が倒された魔王の力を受け継ぎし者なんです。ああ、これでまた魔族たちに活気が生まれるわ」
女コボルトは泣き崩れるような形で膝をついた。
しばらくして、男コボルトが仲間を引き連れて戻ってきた。
「おおん? この青い毛並みのコボルトっぽいのが新しい魔王様か?」
「強そうには見えないが、確かに魔王様の魔力を感じるな」
「継承されているなら、俺たちのやる事はひとつだな」
あとから出てきた魔族たちが、じろじろと俺の姿を見てくる。そして、ひと通り確認が終わると揃いも揃って頷きあっていた。
一体なんなんだとジト目を向ける俺。その次の瞬間だった。
「えっ?!」
俺はあっという間に、魔族たちに担ぎ上げられてしまっていた。
「一刻も早く魔王城に連れて行くのだ」
「うむ。そして、我々魔族たちのなすべき事を示してもらうのだ」
「えっ、ちょっと。何が起きてるんだよ!」
こうして、訳の分からないうちに俺は魔族たちに連れ去られてしまった。
そして、あっという間に目的地である魔王城へと到着してしまったのだった。
本来なら一般兵たちだけでやって来られるような場所ではないのだが、俺たちが必死になって道を切り開いた結果、魔王領の入口付近まではやって来れるようになっていた。
入口付近までやって来ると、俺はそこで馬車から降ろされる。
渡されたのは女性用の簡易的な服と数日分の水と食料。統治を任せたといっても実質追放だし、持ち物を見ると死刑宣告にも等しくないか、これ。
「我々としてはちゃんとしたものをお渡ししたかったのですが、獣人というものは嫌われておりますゆえ、ご容赦下さい」
兵士は謝罪をしてくる。持たされた荷物は国王の命令で用意されたものだし、ここまでの兵士たちは普通に接してくれたので、俺としては兵士を咎める気はない。
ただ、正直言って国王には失望したけどな。
でもまぁ、獣人を魔族として見ている国民も多いって事情があるから、いくら俺だからといっても特別扱いできなかったんだろうな……。
「ありがとう。ここまで連れてきてもらえただけでも助かるよ」
ここへ来るまでの間にすっかり喋れるようになっていた俺は、流暢に兵士にお礼を言っておく。護身用として剣も貰えたしな。
「では、ご武運を」
兵士はそうとだけ言い残して、そそくさと退散していった。魔王領だからあまり長く居たくないんだろうな。
くるりと振り返った俺は、ひとまず魔王領の拠点とできそうな魔王城へと向かう事にした。
しかし、魔王領に入ってから城までは結構な距離がある。持っている食料だけで足りるのか、ちょっと心もとない感じだ。
ここまで来てしまった以上引き返せないし、俺はともかく魔王城を目指して歩く事にした。
しばらく歩いていて思ったが、獣人と化した俺の身体能力は人間の時に比べてかなり上がっているようだ。
ただ、体力的に劣るはずの女になったというのに、それでも平気で歩き続けられるというのが信じられなかった。
(なんてこった。これが獣人が魔族と言われる理由なんだろうかな)
いろいろ思いつつ歩いていると、俺の耳と鼻がぴくりと反応する。
思わず構えてしまう。さっきまで左右にふわふわと動いていたしっぽも、ぴたりと動きを止めている。
近くの茂みや木々の裏側には、誰かが居るような感じがする。待ち伏せだろうか。思わず俺は兵士に渡された剣に手を掛けてしまう。
ガサガサと動いたかと思うと、何かが飛び出してきた。
より深く腰を落とした俺だったが、直後の光景に思わず動きを止めてしまった。
「おお、魔王様がお戻りになられた」
「新たな魔王様がおいでになられたわ」
飛び出してきたのはどうやら魔族のようだったが、何やら様子がおかしいのだ。
おそらくはコボルトの類だと思うんだが、彼らが話す魔王様って一体誰なんだよ。
「え……と……? 魔王様ってどういうこと?」
思考が止まった俺は、つい素直に疑問をぶつけてしまう。
すると、目の前のコボルト(?)は不思議そうに首を傾げながらお互いの顔を見合わせていた。
「やだなぁ。魔王様ってあなた様の事ですよ。この魔力、間違いありません」
いや、訳が分からないんだが?
男のコボルトが何かを根拠に断定して話してくる。
すると、セットで登場した女のコボルトの方が近付いてくる。そして、じーっと俺に顔を近付けてくる。
「な、なんなんだよ……」
俺が思わず顔を遠ざけようとすると、女のコボルトは俺の頭に手を伸ばしてきた。
「うん、これよ。間違いないです。新たな魔王様が来られたわ。あなた、みんなにすぐ連絡よ」
「よしきた!」
男のコボルトが一目散に駆けていった。てか、あなたってこいつら夫婦なのか……。
それにしても、俺の額に何があるっていうんだ?
俺は額を触ってみるが、もじゃもじゃとした毛並みが手に触れるだけだった。
「魔王というのは、倒された時にその力を他者に引き継がせるのですよ」
「そうなのか?」
俺が確認すると、女コボルトはこくりと頷いた。
「あなた様が倒された魔王の力を受け継ぎし者なんです。ああ、これでまた魔族たちに活気が生まれるわ」
女コボルトは泣き崩れるような形で膝をついた。
しばらくして、男コボルトが仲間を引き連れて戻ってきた。
「おおん? この青い毛並みのコボルトっぽいのが新しい魔王様か?」
「強そうには見えないが、確かに魔王様の魔力を感じるな」
「継承されているなら、俺たちのやる事はひとつだな」
あとから出てきた魔族たちが、じろじろと俺の姿を見てくる。そして、ひと通り確認が終わると揃いも揃って頷きあっていた。
一体なんなんだとジト目を向ける俺。その次の瞬間だった。
「えっ?!」
俺はあっという間に、魔族たちに担ぎ上げられてしまっていた。
「一刻も早く魔王城に連れて行くのだ」
「うむ。そして、我々魔族たちのなすべき事を示してもらうのだ」
「えっ、ちょっと。何が起きてるんだよ!」
こうして、訳の分からないうちに俺は魔族たちに連れ去られてしまった。
そして、あっという間に目的地である魔王城へと到着してしまったのだった。
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