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第一章 大陸編
第4話 転生者、追放となる
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(うん、マジか……)
すぐに処刑なんて事はなかったので、牢でだらだらと過ごすうち、夜にはすっかり俺は落ち着いてしまっていた。
その時に自分の体を確認してみたんだが、俺の体はなんとも信じられない事になっていたようだ。
(な、な、なんて事なんだ……)
なんと俺の体は全身毛だらけになってしまっていた。耳は頭の横じゃなくて上にあるし、よく見ればしっぽもある。
さらに胸に触れた時はびっくりした。元々の俺にはなかったものがそこにはあったんだからな。
(お、女になってしまってるじゃないか……)
俺は両手をついて盛大に落ち込んだ。
あるべきものが無くなっていて、なかったはずのものがたくさんついてるんだからな……。
だけど、落ち込んでばかりもいられない。なんとしてもこの牢から出ないとな。
何にも悪い事はしてないんだから、脱獄はしたくない。
まだ声はうまく出ないから、俺が持っている力を証明できれば出してもらえるだろうかな。
そう考えた俺は、この体でも自分の今まで磨いてきた技術が使えるか試してみた。
牢屋は思ったよりも広かったので、十分体は動かせる。
少し試してみたんだが、むしろ男だった時に比べて身体能力が上がっていた。これが獣人とかいうやつなんだろうか。
魔法だって十分使えたし、これならマールンとピエラに見せれば十分証明にはなりそうだ。
自分の力の確認を終えた俺は、なんとか声を出そうとして頑張った。しかし、どんなに頑張ったところで声が出てくる事はなかった。
はあ、一体どんだけ寝てたんだよ、俺は……。
結局、その夜は眠る事ができなくて、朝まで声を出すために魔法でどうにかしようと頑張った。
朝になると、兵士が食事を持ってくる。だが、まぁなんとも質素な食事だ。質素というにもおこがましい粗雑な食事だった。
「まったく、汚らわしい獣人が城の中に居るというだけで気分が滅入るぜ」
酷い事を言いやがるが、この世界だと当たり前の話なのだ。
種族は人間とそれ以外とに分けられ、人間以外は魔族というとんでもないばっさりとした区分になっていたのだ。
前世の記憶がある俺からすれば、獣人は嫌いじゃない。だが、自分自身がそれになるのは別な話だった。もふもふしたいのであって、もふもふされたいんじゃないんだ。
っと、心の中で漫才してる場合じゃなかったな。
俺はひと晩の練習の成果を試す事にする。
「お、れ、は、せ、い。こ、こ、か、ら、だ、し、て」
俺がゆっくりとだが言葉を話せば、兵士はぎょっとした目で見てきた。そんなに驚くのかよ。
でもまぁそうかもなぁ。口と言葉が微妙に合ってないんだよ。
風魔法を使って声帯を震わせて声を出しているからな。
とはいえ、俺も自分の声を聞いて驚いたぜ。結構声が高かったんだ。これも女になった影響なのだろうか。それとも魔法のせいだろうか。
「セイ? 嘘を吐くな。セイ殿は侯爵家の嫡男だ。お前みたいな獣人の女なわけがない」
俺に対して槍を突きつけてくる兵士。
どうにも通じないので、俺はセイ・コングラートとして知っていることを兵士に話す。
すると、たちまち兵士は青ざめていき、何かを叫びながら地下牢から逃げ出していった。
しばらくすると、俺は地下牢から出されて国王の前に引きずり出されていた。
周りを見ればマールンとピエラもしっかり呼ばれていた。それに、親父も居るじゃないか。
とはいえ、さすがに魔王に立ち向かっただけあってか、俺は妙に落ち着いていた。
そして今、俺は王国の抱える魔法使いによって調べ上げられている。俺が本当に『セイ・コングラート』なのかを確認しているのだ。
調べ終わった魔法使いは、驚愕の表情を浮かべてよろめいている。
「どうだったのだ?」
「は、はい……。この獣人は間違いなく『セイ・コングラート』でございます。なんという事なのでしょうか……」
魔法使いの発表に、場はどよめきに包まれていた。
これには国王や親父は大きく項垂れていた。その姿を見るに、どう考えても獣人というのは嫌われているというのが一目瞭然だった。
「嘘よ……、セイ……」
口に手を当てながら、後退ってよろめくピエラ。幼馴染みが急に獣人少女になれば、それはショックだよな。
「さすがに、獣人をこの国に置いておくわけにはいかんな……」
国王は頭を抱えていた。
「セイよ。すまないがお前は世間的には死んだことにさせてもらう。その代わり、魔王討伐の功績として、魔王の住んでいた地域の統治を任せよう」
悩み抜いた結果、国王が出した結論はこうなった。
獣人で魔族扱いだから、魔王の居た場所を任せるというわけか。まあ、死刑にされるよりはマシかな……。
「わ、か、り、ま、し、た。う、け、い、れ、ま、す」
まったく、風魔法で無理やり声を出しているせいで、喋りにくい。おかげで敬語とかまったく使えねえじゃねえか。
しかし、これをもってセイ・コングラートは魔王との戦いで戦死した事にされ、獣人となった俺はかつての魔王が治めた土地へと追放する事が決定した。
そして、マールンとピエラが見守る中、俺は最低限の所持品を持って王都を後にしたのだった。
すぐに処刑なんて事はなかったので、牢でだらだらと過ごすうち、夜にはすっかり俺は落ち着いてしまっていた。
その時に自分の体を確認してみたんだが、俺の体はなんとも信じられない事になっていたようだ。
(な、な、なんて事なんだ……)
なんと俺の体は全身毛だらけになってしまっていた。耳は頭の横じゃなくて上にあるし、よく見ればしっぽもある。
さらに胸に触れた時はびっくりした。元々の俺にはなかったものがそこにはあったんだからな。
(お、女になってしまってるじゃないか……)
俺は両手をついて盛大に落ち込んだ。
あるべきものが無くなっていて、なかったはずのものがたくさんついてるんだからな……。
だけど、落ち込んでばかりもいられない。なんとしてもこの牢から出ないとな。
何にも悪い事はしてないんだから、脱獄はしたくない。
まだ声はうまく出ないから、俺が持っている力を証明できれば出してもらえるだろうかな。
そう考えた俺は、この体でも自分の今まで磨いてきた技術が使えるか試してみた。
牢屋は思ったよりも広かったので、十分体は動かせる。
少し試してみたんだが、むしろ男だった時に比べて身体能力が上がっていた。これが獣人とかいうやつなんだろうか。
魔法だって十分使えたし、これならマールンとピエラに見せれば十分証明にはなりそうだ。
自分の力の確認を終えた俺は、なんとか声を出そうとして頑張った。しかし、どんなに頑張ったところで声が出てくる事はなかった。
はあ、一体どんだけ寝てたんだよ、俺は……。
結局、その夜は眠る事ができなくて、朝まで声を出すために魔法でどうにかしようと頑張った。
朝になると、兵士が食事を持ってくる。だが、まぁなんとも質素な食事だ。質素というにもおこがましい粗雑な食事だった。
「まったく、汚らわしい獣人が城の中に居るというだけで気分が滅入るぜ」
酷い事を言いやがるが、この世界だと当たり前の話なのだ。
種族は人間とそれ以外とに分けられ、人間以外は魔族というとんでもないばっさりとした区分になっていたのだ。
前世の記憶がある俺からすれば、獣人は嫌いじゃない。だが、自分自身がそれになるのは別な話だった。もふもふしたいのであって、もふもふされたいんじゃないんだ。
っと、心の中で漫才してる場合じゃなかったな。
俺はひと晩の練習の成果を試す事にする。
「お、れ、は、せ、い。こ、こ、か、ら、だ、し、て」
俺がゆっくりとだが言葉を話せば、兵士はぎょっとした目で見てきた。そんなに驚くのかよ。
でもまぁそうかもなぁ。口と言葉が微妙に合ってないんだよ。
風魔法を使って声帯を震わせて声を出しているからな。
とはいえ、俺も自分の声を聞いて驚いたぜ。結構声が高かったんだ。これも女になった影響なのだろうか。それとも魔法のせいだろうか。
「セイ? 嘘を吐くな。セイ殿は侯爵家の嫡男だ。お前みたいな獣人の女なわけがない」
俺に対して槍を突きつけてくる兵士。
どうにも通じないので、俺はセイ・コングラートとして知っていることを兵士に話す。
すると、たちまち兵士は青ざめていき、何かを叫びながら地下牢から逃げ出していった。
しばらくすると、俺は地下牢から出されて国王の前に引きずり出されていた。
周りを見ればマールンとピエラもしっかり呼ばれていた。それに、親父も居るじゃないか。
とはいえ、さすがに魔王に立ち向かっただけあってか、俺は妙に落ち着いていた。
そして今、俺は王国の抱える魔法使いによって調べ上げられている。俺が本当に『セイ・コングラート』なのかを確認しているのだ。
調べ終わった魔法使いは、驚愕の表情を浮かべてよろめいている。
「どうだったのだ?」
「は、はい……。この獣人は間違いなく『セイ・コングラート』でございます。なんという事なのでしょうか……」
魔法使いの発表に、場はどよめきに包まれていた。
これには国王や親父は大きく項垂れていた。その姿を見るに、どう考えても獣人というのは嫌われているというのが一目瞭然だった。
「嘘よ……、セイ……」
口に手を当てながら、後退ってよろめくピエラ。幼馴染みが急に獣人少女になれば、それはショックだよな。
「さすがに、獣人をこの国に置いておくわけにはいかんな……」
国王は頭を抱えていた。
「セイよ。すまないがお前は世間的には死んだことにさせてもらう。その代わり、魔王討伐の功績として、魔王の住んでいた地域の統治を任せよう」
悩み抜いた結果、国王が出した結論はこうなった。
獣人で魔族扱いだから、魔王の居た場所を任せるというわけか。まあ、死刑にされるよりはマシかな……。
「わ、か、り、ま、し、た。う、け、い、れ、ま、す」
まったく、風魔法で無理やり声を出しているせいで、喋りにくい。おかげで敬語とかまったく使えねえじゃねえか。
しかし、これをもってセイ・コングラートは魔王との戦いで戦死した事にされ、獣人となった俺はかつての魔王が治めた土地へと追放する事が決定した。
そして、マールンとピエラが見守る中、俺は最低限の所持品を持って王都を後にしたのだった。
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