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第一章 大陸編
第8話 転生者、統治を考える
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「はあ~……、疲れたぜ」
「お疲れさまでございます、魔王様」
広間での魔族たちの挨拶を終えた俺は、魔王のが住むとされる部屋へとやって来ていた。
くつろいではいるが、部屋の内装を見ているとどう考えても落ち着けない。
「……なあ、前の魔王って、かなり悪趣味じゃないか?」
「はい?」
俺が指差しながら困惑した表情で言うと、キリエはきょとんと首を傾げていた。
なんともおどろおどろしい内装で包まれていたのだ。前世を含めた人間時代の感覚のせいで、どう見ても何かを召喚でもするんじゃないかと思えるくらい悪趣味なのである。
最初に連れてこられた部屋や風呂場とかが普通のシンプルな内装だっただけに、この部屋の異様さが際立っている。
「俺が住むからには、この部屋の飾りつけは変えさせてもらうけど、別に問題ないよな?」
「はい。すべては魔王様の思うままに」
俺が確認を取ると、キリエはにこりと笑ってそう答えていた。
さすがにこの答えには、俺は違和感を感じた。
「キリエ」
「はい、なんでございましょうか」
初めて名前を呼ばれたせいか、キリエの表情がぱっと明るくなっていた。
「俺は魔王にはなったが、お前たちを捨て駒のごとく扱うつもりはないからな。一応ここの領主という話になってるんだよ、人間たちの間だと」
「そうなのでございますね」
キリエは特に驚いた様子はなかった。なんか、俺の言う事だったらなんでも受け入れそうで怖いな。
なので、俺はため息をつきながらも、キリエに釘を刺しておく事にする。
「お前たち魔族からすると理解できないだろうけどな、俺がここの主となったからには俺のやり方に従ってもらうからな。いいかな」
「もちろんでございます。私たちは魔王様に従うのみでございますから」
あっ、ダメだこりゃ。
これは俺のところで意識改革を行うしかないな。骨は折れそうだが……。
せっかく人間たちの面倒な生活から逃れられたわけだし、ゆっくり過ごしたいもんな。
無事に顔見世を終えてくつろぐ俺は、あれこれと考え込んでいる。
そんな最中、俺に魔王領を統治するように言っていた時の国王の顔を、ふと思い出してしまった。
(そういえば、魔王の治めていた土地だからか、ずいぶんと嫌そうな顔をしていたな)
人間と敵対していた魔族の王が治めていた土地がために、おそらくは誰も行きたがらなかったのだろう。
逆に言えば、ここに居れば俺は人間たちからの干渉はほぼ受けないという事だ。ならば、思うように治めさせてもらうとしようじゃないか。
「よし、キリエ。俺は決めたぞ」
「何をでございますでしょうか、魔王様」
柔らかな笑顔で俺の言葉に反応するキリエ。その顔を見ながら、俺は今決めた事を発表する。
「俺は本来争いごとは好きじゃない。魔王を討ったのも、魔族による被害が広がっていた事と、俺が元々いた国の王様がうるさかったからだ」
「そうなのでございますね」
「ああ。もう呪詛のごとく魔王を討てって言ってくるからな。討伐対象は魔王だけだったし、余計な殺生は避けたかったんだ。それで、無関係な魔族は殺さなかったんだよ」
「なるほどです。私たちが無事なのは、魔王様の慈悲だったのでございますね」
意外と淡々と受け答えをしてくる。キリエは思った以上に感情が乏しいタイプなのだろう。
「まあそういう事だな。なので、俺がのんびり暮らせるように、なるべく穏便にしてほしい。人間を見ても攻撃を仕掛けてこなければ、そのまま見逃してやって欲しい」
「畏まりました。では、襲ってきた場合はどうなさいますか?」
キリエの質問に、俺はつい考え込んでしまう。
確かにそうだ。魔族は討つべきものと考えて攻撃的な人間だって居る。そうなると、さすがに無抵抗というわけにはいかないだろう。
「なら、悪い事をする人間は懲らしめて持ち物を没収。そのまま人間たちのところに送り返してやってくれ。何度もこてんぱんにされればそのうち諦めるだろう」
「承知致しました。没収した持ち物は魔王様に献上でよろしいでしょうか」
「それで構わない。俺は戦争をするつもりはないから、気絶させるか一時的に眠らせるかしてから送り返してくれよ」
「はい。では、早速そのように通達を出しておきます」
どこまで気持ちを汲み取ってくれたかは分からないが、ひとまずキリエに任せておく。これで余計な面倒事が減ってくれればいいんだがな。
しばらくするとキリエが戻ってきた。
「ただいま戻りました。戦えるのなら問題ないと、みなさん喜んでおりました。さすがでございます」
「あ、あはは。喜んでくれているなら、それはよかった」
なんとなくだけど安心できないな。
でも、俺の事を魔王として立ててくれるなら、きっと大丈夫だよな、うん。
俺はそう思いながら、次の事を考えた。
「キリエ、魔王領の事について教えてくれないか。俺は元々人間だから、魔王領の事について疎いんだ」
「畏まりました。では、あの方を呼んで参ります」
俺が頼み事をすると、キリエはすたすたと部屋を出て行ってしまった。
しばらくすると、誰かを連れて戻ってきた。隣に立つ男の魔族が、キリエの言うあの方らしい。
頭には後ろに反り返った立派な2本の角があり、顎には立派なひげを携えている。
一体何者なんだろうな、このイケオジな悪魔はよ。
俺たちの間に何とも言えない緊張した空気が漂っていた。
「お疲れさまでございます、魔王様」
広間での魔族たちの挨拶を終えた俺は、魔王のが住むとされる部屋へとやって来ていた。
くつろいではいるが、部屋の内装を見ているとどう考えても落ち着けない。
「……なあ、前の魔王って、かなり悪趣味じゃないか?」
「はい?」
俺が指差しながら困惑した表情で言うと、キリエはきょとんと首を傾げていた。
なんともおどろおどろしい内装で包まれていたのだ。前世を含めた人間時代の感覚のせいで、どう見ても何かを召喚でもするんじゃないかと思えるくらい悪趣味なのである。
最初に連れてこられた部屋や風呂場とかが普通のシンプルな内装だっただけに、この部屋の異様さが際立っている。
「俺が住むからには、この部屋の飾りつけは変えさせてもらうけど、別に問題ないよな?」
「はい。すべては魔王様の思うままに」
俺が確認を取ると、キリエはにこりと笑ってそう答えていた。
さすがにこの答えには、俺は違和感を感じた。
「キリエ」
「はい、なんでございましょうか」
初めて名前を呼ばれたせいか、キリエの表情がぱっと明るくなっていた。
「俺は魔王にはなったが、お前たちを捨て駒のごとく扱うつもりはないからな。一応ここの領主という話になってるんだよ、人間たちの間だと」
「そうなのでございますね」
キリエは特に驚いた様子はなかった。なんか、俺の言う事だったらなんでも受け入れそうで怖いな。
なので、俺はため息をつきながらも、キリエに釘を刺しておく事にする。
「お前たち魔族からすると理解できないだろうけどな、俺がここの主となったからには俺のやり方に従ってもらうからな。いいかな」
「もちろんでございます。私たちは魔王様に従うのみでございますから」
あっ、ダメだこりゃ。
これは俺のところで意識改革を行うしかないな。骨は折れそうだが……。
せっかく人間たちの面倒な生活から逃れられたわけだし、ゆっくり過ごしたいもんな。
無事に顔見世を終えてくつろぐ俺は、あれこれと考え込んでいる。
そんな最中、俺に魔王領を統治するように言っていた時の国王の顔を、ふと思い出してしまった。
(そういえば、魔王の治めていた土地だからか、ずいぶんと嫌そうな顔をしていたな)
人間と敵対していた魔族の王が治めていた土地がために、おそらくは誰も行きたがらなかったのだろう。
逆に言えば、ここに居れば俺は人間たちからの干渉はほぼ受けないという事だ。ならば、思うように治めさせてもらうとしようじゃないか。
「よし、キリエ。俺は決めたぞ」
「何をでございますでしょうか、魔王様」
柔らかな笑顔で俺の言葉に反応するキリエ。その顔を見ながら、俺は今決めた事を発表する。
「俺は本来争いごとは好きじゃない。魔王を討ったのも、魔族による被害が広がっていた事と、俺が元々いた国の王様がうるさかったからだ」
「そうなのでございますね」
「ああ。もう呪詛のごとく魔王を討てって言ってくるからな。討伐対象は魔王だけだったし、余計な殺生は避けたかったんだ。それで、無関係な魔族は殺さなかったんだよ」
「なるほどです。私たちが無事なのは、魔王様の慈悲だったのでございますね」
意外と淡々と受け答えをしてくる。キリエは思った以上に感情が乏しいタイプなのだろう。
「まあそういう事だな。なので、俺がのんびり暮らせるように、なるべく穏便にしてほしい。人間を見ても攻撃を仕掛けてこなければ、そのまま見逃してやって欲しい」
「畏まりました。では、襲ってきた場合はどうなさいますか?」
キリエの質問に、俺はつい考え込んでしまう。
確かにそうだ。魔族は討つべきものと考えて攻撃的な人間だって居る。そうなると、さすがに無抵抗というわけにはいかないだろう。
「なら、悪い事をする人間は懲らしめて持ち物を没収。そのまま人間たちのところに送り返してやってくれ。何度もこてんぱんにされればそのうち諦めるだろう」
「承知致しました。没収した持ち物は魔王様に献上でよろしいでしょうか」
「それで構わない。俺は戦争をするつもりはないから、気絶させるか一時的に眠らせるかしてから送り返してくれよ」
「はい。では、早速そのように通達を出しておきます」
どこまで気持ちを汲み取ってくれたかは分からないが、ひとまずキリエに任せておく。これで余計な面倒事が減ってくれればいいんだがな。
しばらくするとキリエが戻ってきた。
「ただいま戻りました。戦えるのなら問題ないと、みなさん喜んでおりました。さすがでございます」
「あ、あはは。喜んでくれているなら、それはよかった」
なんとなくだけど安心できないな。
でも、俺の事を魔王として立ててくれるなら、きっと大丈夫だよな、うん。
俺はそう思いながら、次の事を考えた。
「キリエ、魔王領の事について教えてくれないか。俺は元々人間だから、魔王領の事について疎いんだ」
「畏まりました。では、あの方を呼んで参ります」
俺が頼み事をすると、キリエはすたすたと部屋を出て行ってしまった。
しばらくすると、誰かを連れて戻ってきた。隣に立つ男の魔族が、キリエの言うあの方らしい。
頭には後ろに反り返った立派な2本の角があり、顎には立派なひげを携えている。
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俺たちの間に何とも言えない緊張した空気が漂っていた。
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