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第一章 大陸編
第62話 転生者、魔法軍と稽古をつける
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それにしても、やっぱり全力で殴ってやったが思ったより弱い感じがした。獣人の体とはいえ、女な事が影響しているのかな。
まあ、デザストレにお仕置きができたからいいとしようか。
「やっぱり魔王様は強い」
「魔王様サイコー!」
兵士たちがやたらめったら俺の事を讃えてくる。
いやまあ、この反応は嬉しいんだが、あまりもてはやされると恥ずかしくなってくるな……。
俺はもろ手をあげて喜ぶ兵士たちの姿を見て、なんだかかえって頭が痛くなってきてしまった。
「お前たち、そのくらいにしろ。魔王様が困っておられるではないか」
その時、実に冷静な声が響き渡る。誰かと思えば、魔王軍の中の実力者であるヴォルフだった。
殺気の混ざるヴォルフの声に、俺をはやし立てる声がぴたりと止んだ。さすがは実力主義の魔王軍といったところだった。
「魔王様、大変申し訳ございませんでした。デザストレの傍若無人っぷりが目に余っておりましたので、つい全身で喜びを示してしまったようでございます」
やっぱりデザストレが原因のようだった。
いやまぁ、実に正直にはっきり言ってくれるものだな。うん、そういうのは嫌いじゃないぞ。
「よし、ちょうどすっきりしたところだ。今日は俺がお前たちの面倒をしっかりみてやるぞ」
俺がこう宣言すると、魔王軍の兵士たちは一気に沸き立った。
「魔王様直々に稽古をつけて下さるだと!?」
「なんて事だ。こんな幸せな事があっていいのだろうか」
「魔王様万歳!」
なんともまあ、想像以上の反応だな。そのくらいに、魔族たちというのは魔王至上主義なのだろうな。神じゃないんだからそこまで崇め奉らなくてもいいと思うだがな。
そう思って俺はキリエの方へと視線を送る。ところが、キリエも『さすが魔王様』といわんばかりの視線をこっちに送っている。ダメだこりゃ。
あまりに俺の事を神格化して見てくるので、なんともくすぐったい感覚である。
俺は大きく一度深呼吸をすると、魔王軍に向けて呼び掛ける。
「よし、俺に訓練をつけてもらいたい奴はどんどん来い。今の俺は機嫌がいいからな、徹底的に付き合ってやるぜ!」
俺が大声を上げると、辺りの空気がびりびりと振動する。
そして、一瞬静まり返ったかと思うと、魔王軍のやつらが我先にと俺へと向かってきた。
その光景を見た俺は、怖いというよりは楽しいという感覚に陥っていた。しっぽは上を向いて左右に大きく振れている。全身の毛も逆立ってくる。
こうして、ヴォルフも含めた魔王軍相手に、俺は乱闘を十分楽しんだったのだった。
ちなみにだが、デザストレはずっと壁画になったままだった。だというのに、その場に居た全員がその存在をすっかり忘れていた。そのくらいに俺たちは熱狂していたのである。
「はあ、動いた動いた。たまにこうやって体を動かすのも悪くはないな。畑仕事と違った充実感があるぜ」
魔王軍との稽古を終えて、俺は思いっきり背伸びをしていた。ご機嫌なのがよく分かるくらい、しっぽは立ったままである。
「お疲れ様です、魔王様」
キリエにも労われるくらいである。
ちなみにだが、俺一人と魔王軍数百名という戦いだったのに、俺に攻撃を入れられたのは数えるくらい。キリエが言うには『魔王様に暴力は振るえない』とのことらしい。遠慮なんか要らないのによ。
「さて、汗を流して夕食にでもするかな」
「畏まりました。食事の用意はカスミにさせますので、お風呂の準備へと向かいます」
「おう、頼んだぞ」
俺が申し付けると、キリエはすぐさま走り去っていった。
きれいさっぱりした俺が食堂に移動して食事を待っていると、バタバタと走ってくる音が聞こえた。
バーンと大きな音がして扉が開いたかと思うと、そこにはデザストレの姿があった。
「くそう、目が覚めたら誰もいないではないか!」
あーそういや訓練場で壁画になってたんだっけか。すっかり忘れていたぜ。
「よくもまあ、この我をコケにしてくれたな。いくら魔王とはいえど許せぬぞ!」
かなり怒っているようだが、まったくといっていいほど怖くない。一回こてんぱんにすると、こうも気が変わってくるものなんだな。
「悪い悪い。でもな、偉そうにしてるお前も悪いぞ。俺にあれだけやられたんだ、少しは反省してくれ」
「ぐぬぬぬぬ……。我は、認めぬぞ」
まったく、反省する様子はまったくないな。
「まあそうカッカするなって。これから食事だが、お前も食うか?」
「なに、飯なら食うぞ」
食事の話題を振ったら、一気に食いついてきた。やっぱりどんな奴でも飯には弱いんだな。
「申し訳ございませんが、デザストレ様の食事はございません」
ところが、キリエが非常な宣告を行う。ずっと壁画になっていたせいで、キリエの意識から消えてしまっていたようなのだ。
「なんだと! おのれ、女。我にも飯を寄こせ!」
「無理でございます」
「キリエ、無茶を言うが用意してやってくれ」
「魔王様がそう仰られるのでしたら仕方ございませんね。デザストレ様、魔王様に感謝するように」
俺の頼みを聞いて、キリエが食堂から出ていく。無事に食事が用意されたことで、デザストレはとても喜んでいたようだった。
こうして無事に食事まで終わり、騒がしい一日がようやく終わりを迎えたのだった。
まあ、デザストレにお仕置きができたからいいとしようか。
「やっぱり魔王様は強い」
「魔王様サイコー!」
兵士たちがやたらめったら俺の事を讃えてくる。
いやまあ、この反応は嬉しいんだが、あまりもてはやされると恥ずかしくなってくるな……。
俺はもろ手をあげて喜ぶ兵士たちの姿を見て、なんだかかえって頭が痛くなってきてしまった。
「お前たち、そのくらいにしろ。魔王様が困っておられるではないか」
その時、実に冷静な声が響き渡る。誰かと思えば、魔王軍の中の実力者であるヴォルフだった。
殺気の混ざるヴォルフの声に、俺をはやし立てる声がぴたりと止んだ。さすがは実力主義の魔王軍といったところだった。
「魔王様、大変申し訳ございませんでした。デザストレの傍若無人っぷりが目に余っておりましたので、つい全身で喜びを示してしまったようでございます」
やっぱりデザストレが原因のようだった。
いやまぁ、実に正直にはっきり言ってくれるものだな。うん、そういうのは嫌いじゃないぞ。
「よし、ちょうどすっきりしたところだ。今日は俺がお前たちの面倒をしっかりみてやるぞ」
俺がこう宣言すると、魔王軍の兵士たちは一気に沸き立った。
「魔王様直々に稽古をつけて下さるだと!?」
「なんて事だ。こんな幸せな事があっていいのだろうか」
「魔王様万歳!」
なんともまあ、想像以上の反応だな。そのくらいに、魔族たちというのは魔王至上主義なのだろうな。神じゃないんだからそこまで崇め奉らなくてもいいと思うだがな。
そう思って俺はキリエの方へと視線を送る。ところが、キリエも『さすが魔王様』といわんばかりの視線をこっちに送っている。ダメだこりゃ。
あまりに俺の事を神格化して見てくるので、なんともくすぐったい感覚である。
俺は大きく一度深呼吸をすると、魔王軍に向けて呼び掛ける。
「よし、俺に訓練をつけてもらいたい奴はどんどん来い。今の俺は機嫌がいいからな、徹底的に付き合ってやるぜ!」
俺が大声を上げると、辺りの空気がびりびりと振動する。
そして、一瞬静まり返ったかと思うと、魔王軍のやつらが我先にと俺へと向かってきた。
その光景を見た俺は、怖いというよりは楽しいという感覚に陥っていた。しっぽは上を向いて左右に大きく振れている。全身の毛も逆立ってくる。
こうして、ヴォルフも含めた魔王軍相手に、俺は乱闘を十分楽しんだったのだった。
ちなみにだが、デザストレはずっと壁画になったままだった。だというのに、その場に居た全員がその存在をすっかり忘れていた。そのくらいに俺たちは熱狂していたのである。
「はあ、動いた動いた。たまにこうやって体を動かすのも悪くはないな。畑仕事と違った充実感があるぜ」
魔王軍との稽古を終えて、俺は思いっきり背伸びをしていた。ご機嫌なのがよく分かるくらい、しっぽは立ったままである。
「お疲れ様です、魔王様」
キリエにも労われるくらいである。
ちなみにだが、俺一人と魔王軍数百名という戦いだったのに、俺に攻撃を入れられたのは数えるくらい。キリエが言うには『魔王様に暴力は振るえない』とのことらしい。遠慮なんか要らないのによ。
「さて、汗を流して夕食にでもするかな」
「畏まりました。食事の用意はカスミにさせますので、お風呂の準備へと向かいます」
「おう、頼んだぞ」
俺が申し付けると、キリエはすぐさま走り去っていった。
きれいさっぱりした俺が食堂に移動して食事を待っていると、バタバタと走ってくる音が聞こえた。
バーンと大きな音がして扉が開いたかと思うと、そこにはデザストレの姿があった。
「くそう、目が覚めたら誰もいないではないか!」
あーそういや訓練場で壁画になってたんだっけか。すっかり忘れていたぜ。
「よくもまあ、この我をコケにしてくれたな。いくら魔王とはいえど許せぬぞ!」
かなり怒っているようだが、まったくといっていいほど怖くない。一回こてんぱんにすると、こうも気が変わってくるものなんだな。
「悪い悪い。でもな、偉そうにしてるお前も悪いぞ。俺にあれだけやられたんだ、少しは反省してくれ」
「ぐぬぬぬぬ……。我は、認めぬぞ」
まったく、反省する様子はまったくないな。
「まあそうカッカするなって。これから食事だが、お前も食うか?」
「なに、飯なら食うぞ」
食事の話題を振ったら、一気に食いついてきた。やっぱりどんな奴でも飯には弱いんだな。
「申し訳ございませんが、デザストレ様の食事はございません」
ところが、キリエが非常な宣告を行う。ずっと壁画になっていたせいで、キリエの意識から消えてしまっていたようなのだ。
「なんだと! おのれ、女。我にも飯を寄こせ!」
「無理でございます」
「キリエ、無茶を言うが用意してやってくれ」
「魔王様がそう仰られるのでしたら仕方ございませんね。デザストレ様、魔王様に感謝するように」
俺の頼みを聞いて、キリエが食堂から出ていく。無事に食事が用意されたことで、デザストレはとても喜んでいたようだった。
こうして無事に食事まで終わり、騒がしい一日がようやく終わりを迎えたのだった。
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