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第一章 大陸編
第70話 転生者、悪寒を感じる
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ひとまずやることはあるといえばあるのだが、部下が安心して過ごせる環境を作るというのもトップとしての責任だ。
思い立った俺は、問題の薬師たちのいる部屋へと向かう。
まさか魔王城の中にそういう場所があるとは、キリエに聞かされるまでは知らなかった。以前カスミに案内してもらった時にも出てこなかったからな。
キリエの話を聞いて思ったのは、カスミもそのメズレスという男を避けたのだろうということだ。キリエですらあれだけ嫌悪しているなら、カスミの性格上絶対近寄らないだろうからな。
いろいろと思うところはあるものの、考え事をしているうちにキリエから教えてもらった薬師たちの部屋に到着する。
部屋の前に立つと、確かに他の場所とはまったく違った空気を漂わせている事がよく分かる。
(うっ、なんていうか病院に行った時みたいな独特のにおいがするな……)
思わず前世の事を思い出してしまう。
そのくらいに薬のにおいが強烈なのである。
キリエからの情報に加え、その薬のにおいで俺が思わず一度躊躇してしまう。
(病院って苦手だったんだよな……)
そう思いながら、落ち着かせるために一度深呼吸をする。
(よしっ)
意を決して、俺は薬師の部屋へと乗り込んだ。
「失礼するぞ」
一応声を掛けてから部屋の中へと入っていく。
だが、中に入るとものすごい薬のにおいだ。
(うっは……、ポーションとかってこんなにおいしてたっけか……)
獣人になったせいで鼻が利きすぎるというのも考え物だ。思わず鼻を押さえてしまう。
とりあえず、防御系の魔法を使ってにおいをシャットアウトすると、かなりマシになったのかようやく鼻から手を離す事ができた。
「ひっひっひっ、どちら様ですかな」
奥から実に気持ち悪さしか感じない男が出てくる。キリエから聞いていた特徴と一致するので、こいつがメズレスというわけだろう。
まったく、メズレスと思われる男から漂ってくる雰囲気は、体中の毛が逆立つぐらい不快なものだった。
「私はセイと申します。こちらでは薬の研究を行われているとの事で、見学に参りました」
俺は普段の乱暴な言葉を封印して、ピエラたちの口調を参考にして女性らしく振る舞う。
おとなしさを強調して挨拶をしたのだが、俺の鳥肌は立ちっぱなしだ。なにせメズレスのやつの視線が、俺を舐め回すかのように向けられているからだ。まったく、冗談抜きで気持ち悪いぜ。
「ひっひっひっ、そうですか。では、ご案内致しましょう」
くるりと振り返って俺を中へと招き入れるメズレス。
気のせいならいいだろうが、今あいつののどが鳴ったような気がした。……まさかな。
俺はメズレスの後ろについて薬師の部屋の案内を受ける。
ところが、そこで見たのは予想外な光景だった。
なんと、男しか居なかった。しかも、なんだこの視線は……。
よく見てみると、全員の視線が俺に集中していたのだ。なんか嫌な予感がするぜ……。
ところが、俺が平然と立っていると、男たちの様子がおかしくなっていく。
「どういうことだ?」
「バカな、なぜ効かないのだ」
「キリエとかいうメイドが効かないことは知っているが、一体なぜだ?」
悪いな、ひそひそ話らしいが全部聞こえてるぞ。
どうやらこいつら、何かを企んでいるらしい。俺はあまりにもお粗末な話にため息が出る。反吐なんて通り越しちまったぜ。
俺はこっそりとバレないように鑑定を仕掛けてみる。実は俺も使えるんだよ、鑑定は。
(ちっ、やっぱりそういうことか)
どうやらこの薬師の部屋に漂うにおいは薬のにおいで間違いなかった。
ただ、その薬が厄介なものだった。
どうやらこの薬、女性にだけ効果を発揮するもののようなのだ。それでこの部屋には女性が居ないというわけだ。
この薬によって、この変態どもの餌食になったというわけだ。……まったく許せないというものだな。
「どうやら、お前たちはこの魔王の配下として相応しくないようだな」
「ま、魔王?!」
状況がはっきりした事で、俺は普段の口調に戻る。一瞬だったな、演技は。まあ、俺が女言葉を使うのは、俺自身が耐えきれないので短くて助かったぜ。
目の前のメズレスたちは驚きを隠せていないようだ。
そういえば、こいつらは一回も見た事ないもんな。俺が知らなければこいつらも知らないか。
「よく覚えておけ、俺が現在の魔王である。その俺に対して狼藉を働こうとしたようだな。よって、まとめて追放処分だ」
「けっ、獣人ごときがぁっ!」
逆切れをしてメズレスたちが襲い掛かってくる。だが、その攻撃は俺に届く事はなかった。
「無礼者どもが。死してその罪を詫びろ」
キリエが飛び込んできて、魔法でメズレスたちを捕らえたのだ。
「あとの処分は任せるよ、キリエ」
「はっ、お任せ下さい、魔王様」
ブチ切れているキリエの気の済むように任せて、俺は部屋を出ていく。あの状態じゃ俺が止めてもキリエは最低でも八つ裂きにしてるだろうからな。
空席になる薬師の後任を探した方がよっぽどマシだと思ったので、俺はキリエに任せたというわけだ。
直後、魔王城全体に断末魔が響き渡ったのだった。
うん、キリエは怒らせちゃダメだ。俺はそう心に刻み込んだ。
思い立った俺は、問題の薬師たちのいる部屋へと向かう。
まさか魔王城の中にそういう場所があるとは、キリエに聞かされるまでは知らなかった。以前カスミに案内してもらった時にも出てこなかったからな。
キリエの話を聞いて思ったのは、カスミもそのメズレスという男を避けたのだろうということだ。キリエですらあれだけ嫌悪しているなら、カスミの性格上絶対近寄らないだろうからな。
いろいろと思うところはあるものの、考え事をしているうちにキリエから教えてもらった薬師たちの部屋に到着する。
部屋の前に立つと、確かに他の場所とはまったく違った空気を漂わせている事がよく分かる。
(うっ、なんていうか病院に行った時みたいな独特のにおいがするな……)
思わず前世の事を思い出してしまう。
そのくらいに薬のにおいが強烈なのである。
キリエからの情報に加え、その薬のにおいで俺が思わず一度躊躇してしまう。
(病院って苦手だったんだよな……)
そう思いながら、落ち着かせるために一度深呼吸をする。
(よしっ)
意を決して、俺は薬師の部屋へと乗り込んだ。
「失礼するぞ」
一応声を掛けてから部屋の中へと入っていく。
だが、中に入るとものすごい薬のにおいだ。
(うっは……、ポーションとかってこんなにおいしてたっけか……)
獣人になったせいで鼻が利きすぎるというのも考え物だ。思わず鼻を押さえてしまう。
とりあえず、防御系の魔法を使ってにおいをシャットアウトすると、かなりマシになったのかようやく鼻から手を離す事ができた。
「ひっひっひっ、どちら様ですかな」
奥から実に気持ち悪さしか感じない男が出てくる。キリエから聞いていた特徴と一致するので、こいつがメズレスというわけだろう。
まったく、メズレスと思われる男から漂ってくる雰囲気は、体中の毛が逆立つぐらい不快なものだった。
「私はセイと申します。こちらでは薬の研究を行われているとの事で、見学に参りました」
俺は普段の乱暴な言葉を封印して、ピエラたちの口調を参考にして女性らしく振る舞う。
おとなしさを強調して挨拶をしたのだが、俺の鳥肌は立ちっぱなしだ。なにせメズレスのやつの視線が、俺を舐め回すかのように向けられているからだ。まったく、冗談抜きで気持ち悪いぜ。
「ひっひっひっ、そうですか。では、ご案内致しましょう」
くるりと振り返って俺を中へと招き入れるメズレス。
気のせいならいいだろうが、今あいつののどが鳴ったような気がした。……まさかな。
俺はメズレスの後ろについて薬師の部屋の案内を受ける。
ところが、そこで見たのは予想外な光景だった。
なんと、男しか居なかった。しかも、なんだこの視線は……。
よく見てみると、全員の視線が俺に集中していたのだ。なんか嫌な予感がするぜ……。
ところが、俺が平然と立っていると、男たちの様子がおかしくなっていく。
「どういうことだ?」
「バカな、なぜ効かないのだ」
「キリエとかいうメイドが効かないことは知っているが、一体なぜだ?」
悪いな、ひそひそ話らしいが全部聞こえてるぞ。
どうやらこいつら、何かを企んでいるらしい。俺はあまりにもお粗末な話にため息が出る。反吐なんて通り越しちまったぜ。
俺はこっそりとバレないように鑑定を仕掛けてみる。実は俺も使えるんだよ、鑑定は。
(ちっ、やっぱりそういうことか)
どうやらこの薬師の部屋に漂うにおいは薬のにおいで間違いなかった。
ただ、その薬が厄介なものだった。
どうやらこの薬、女性にだけ効果を発揮するもののようなのだ。それでこの部屋には女性が居ないというわけだ。
この薬によって、この変態どもの餌食になったというわけだ。……まったく許せないというものだな。
「どうやら、お前たちはこの魔王の配下として相応しくないようだな」
「ま、魔王?!」
状況がはっきりした事で、俺は普段の口調に戻る。一瞬だったな、演技は。まあ、俺が女言葉を使うのは、俺自身が耐えきれないので短くて助かったぜ。
目の前のメズレスたちは驚きを隠せていないようだ。
そういえば、こいつらは一回も見た事ないもんな。俺が知らなければこいつらも知らないか。
「よく覚えておけ、俺が現在の魔王である。その俺に対して狼藉を働こうとしたようだな。よって、まとめて追放処分だ」
「けっ、獣人ごときがぁっ!」
逆切れをしてメズレスたちが襲い掛かってくる。だが、その攻撃は俺に届く事はなかった。
「無礼者どもが。死してその罪を詫びろ」
キリエが飛び込んできて、魔法でメズレスたちを捕らえたのだ。
「あとの処分は任せるよ、キリエ」
「はっ、お任せ下さい、魔王様」
ブチ切れているキリエの気の済むように任せて、俺は部屋を出ていく。あの状態じゃ俺が止めてもキリエは最低でも八つ裂きにしてるだろうからな。
空席になる薬師の後任を探した方がよっぽどマシだと思ったので、俺はキリエに任せたというわけだ。
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うん、キリエは怒らせちゃダメだ。俺はそう心に刻み込んだ。
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