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第一章 大陸編
第79話 転生者、様子を見に行く
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街道の整備が一段落したこともあって、俺は薬師たちの様子を見に行く。二週間は経ったはずだし、いい加減に今の環境にも慣れてくれているだろう。
というわけで、俺はキリエとピエラを伴って薬師たちの詰所を覗きに行く。
構成としては男性が圧倒的に少ないし、魔族の女性陣はメズレスたちからあれこれ嫌がらせを受けていた。うまくいってるのか心配になってきたってわけだ。
そうやってやって来たウネのいる庭園。相変わらずいろんな種類の植物が育っている。
「あー、魔王様なのー」
ちょっと気の抜けたような声で話し掛けてくるウネ。
街道の工事に参加していたみんなはそうでもなかったので、おそらくはこういう喋り方はウネの特徴なのだろうな。
「おう、ウネ。どうだ、やって来た薬師たちの様子は」
「ええ、特に問題なくやってるのよー。ただ、ちょっと質問が多いかなー。草もよく知らずに薬師なんてよくできるのよー」
俺が問い掛けると、ウネはそんなふうに眉間にしわを寄せながらぼやいていた。
どうやら、薬草の知識が足りなくて文句があるようだった。
「仕方ありませんよ。薬師が扱うのはなにも植物だけとは限りませんからね。魔物たちの一部分も使うことだってありますからね」
「あらー、そうなのー」
キリエから指摘されて、ぽけっとした表情になるウネである。本当にこいつはかなりのマイペースだな。
こういう態度を見ていると、よく魔王城にやって来る事を了承してくれたものだと考えてしまう。
「元々、この魔王城のお庭の世話はわちがしてたのよー。だから、呼び掛けに応じたのよー」
「おい、俺の考えを読むな」
「魔王様は顔に出るのよー」
「ウネ、それを言ったらしっぽに出るですよ」
俺が咎めると、ウネはにんまりとした表情でからかってくる。そして、キリエ。それはフォローになってねえ、とどめだよ。
頭の痛くなる俺に対して、ピエラは横でおかしそうにお腹を抱えながら笑っている。笑い過ぎだよ。
「まあいい。とりあえず薬師たちの様子を見るか」
ウネと会話をしていても進展はしないと見た俺は、詰所の方へと向かっていく。
さすがに急に扉を開けると驚かせるだけなので、ちゃんとノックをして事前の合図をする。
「はーい、今出ます」
中から女性の声と足音が聞こえてくる。
扉が開くと、俺の姿を見た女性が思いきり後ろに飛び退いていた。どうやら対応に出てきたのは人間の薬師のようだった。
「ひっ、じゅ、獣人……って、魔王様でしたか。これは失礼致しました」
一瞬怯えていたものの、俺だと分かると何事もなかったかのように落ち着き払っていた。早い変わり身だな。
まあ、世話になっている場所の主相手なので、ちゃんと対応しないといけないものな。俺はそういうことをしようとは思わないが、人によっては機嫌を損ねたら即刻追い出すとか手打ちにするとかあるらしいもんな。
「まぁ、俺相手だったら多少の無礼を働いても大丈夫だ。もちろん程度はあるがな」
俺は気にしてないといわんばかりに、手をパタパタと振りながら気さくに話す。だが、薬師の女性は少し怯えているようだった。
「そう構えないでくれ。君たちの思う通りに研究してくれれば構わないんだからな。ただ、時々でいいから、俺かキリエ、それかピエラに成果のほどを報告してほしい」
「承知致しました。その程度でよろしいのでしょうか」
俺がはにかみながら言うと、女性は受け入れながらも問い掛けてくる。人間からしたら魔王城は敵地のど真ん中だもんな。疑問に思ってもしょうがないか。
俺はつい頭を強くかいてしまう。
「ああ。その代わり、研究に没頭し過ぎない事だな。食事と休憩、それと睡眠はちゃんととってくれ。健康的な状態じゃないと、どんな失敗をやらかすか分からないんだからな」
「しょ、承知致しました。他のみんなにも伝えておきます」
怯えながら返事をする薬師の女性である。さすがに同じ王国の民だったんだから、その反応はショックしかないんだよなぁ……。
「魔王様、どうなさったのですか、そのような暗い顔をして」
「ああ、キリエか。いやなに、文化の違いみたいなものに驚いていただけだ。気にしないでくれ」
「左様でございますか」
質問に対する俺の答えに、不思議そうな顔で首を傾げるキリエである。
「それはそうと魔王様、あちらでピエラ様がお呼びでございますので、薬師の対応はこのキリエにお任せ下さい」
「うん、そうか。それじゃ頼むよ」
「畏まりました」
薬師たちをキリエに任せた俺は、何の用だろうかとピエラの方へと近付いていく。
すると、ピエラは驚いた様子で俺の方へと顔を向けて来ていた。
「どうしたんだよ、ピエラ」
「ちょっと、これを見てよ……」
ピエラが困惑した表情で指差す草へと視線を移す。だが、俺にはただの草にしか見えない。
「これがどうしたっていうんだ?」
ピエラが震える理由が分からなくて、俺は率直にピエラに尋ねる。
「嘘でしょ……。これが何か分からないなんて」
「これはー、アルラウネの主食だよー。わちの知り合いにあげるのよー」
怯えるピエラとマイペースなウネ。まったく状況が理解できずに、俺はただただ困惑するだけだった。
というわけで、俺はキリエとピエラを伴って薬師たちの詰所を覗きに行く。
構成としては男性が圧倒的に少ないし、魔族の女性陣はメズレスたちからあれこれ嫌がらせを受けていた。うまくいってるのか心配になってきたってわけだ。
そうやってやって来たウネのいる庭園。相変わらずいろんな種類の植物が育っている。
「あー、魔王様なのー」
ちょっと気の抜けたような声で話し掛けてくるウネ。
街道の工事に参加していたみんなはそうでもなかったので、おそらくはこういう喋り方はウネの特徴なのだろうな。
「おう、ウネ。どうだ、やって来た薬師たちの様子は」
「ええ、特に問題なくやってるのよー。ただ、ちょっと質問が多いかなー。草もよく知らずに薬師なんてよくできるのよー」
俺が問い掛けると、ウネはそんなふうに眉間にしわを寄せながらぼやいていた。
どうやら、薬草の知識が足りなくて文句があるようだった。
「仕方ありませんよ。薬師が扱うのはなにも植物だけとは限りませんからね。魔物たちの一部分も使うことだってありますからね」
「あらー、そうなのー」
キリエから指摘されて、ぽけっとした表情になるウネである。本当にこいつはかなりのマイペースだな。
こういう態度を見ていると、よく魔王城にやって来る事を了承してくれたものだと考えてしまう。
「元々、この魔王城のお庭の世話はわちがしてたのよー。だから、呼び掛けに応じたのよー」
「おい、俺の考えを読むな」
「魔王様は顔に出るのよー」
「ウネ、それを言ったらしっぽに出るですよ」
俺が咎めると、ウネはにんまりとした表情でからかってくる。そして、キリエ。それはフォローになってねえ、とどめだよ。
頭の痛くなる俺に対して、ピエラは横でおかしそうにお腹を抱えながら笑っている。笑い過ぎだよ。
「まあいい。とりあえず薬師たちの様子を見るか」
ウネと会話をしていても進展はしないと見た俺は、詰所の方へと向かっていく。
さすがに急に扉を開けると驚かせるだけなので、ちゃんとノックをして事前の合図をする。
「はーい、今出ます」
中から女性の声と足音が聞こえてくる。
扉が開くと、俺の姿を見た女性が思いきり後ろに飛び退いていた。どうやら対応に出てきたのは人間の薬師のようだった。
「ひっ、じゅ、獣人……って、魔王様でしたか。これは失礼致しました」
一瞬怯えていたものの、俺だと分かると何事もなかったかのように落ち着き払っていた。早い変わり身だな。
まあ、世話になっている場所の主相手なので、ちゃんと対応しないといけないものな。俺はそういうことをしようとは思わないが、人によっては機嫌を損ねたら即刻追い出すとか手打ちにするとかあるらしいもんな。
「まぁ、俺相手だったら多少の無礼を働いても大丈夫だ。もちろん程度はあるがな」
俺は気にしてないといわんばかりに、手をパタパタと振りながら気さくに話す。だが、薬師の女性は少し怯えているようだった。
「そう構えないでくれ。君たちの思う通りに研究してくれれば構わないんだからな。ただ、時々でいいから、俺かキリエ、それかピエラに成果のほどを報告してほしい」
「承知致しました。その程度でよろしいのでしょうか」
俺がはにかみながら言うと、女性は受け入れながらも問い掛けてくる。人間からしたら魔王城は敵地のど真ん中だもんな。疑問に思ってもしょうがないか。
俺はつい頭を強くかいてしまう。
「ああ。その代わり、研究に没頭し過ぎない事だな。食事と休憩、それと睡眠はちゃんととってくれ。健康的な状態じゃないと、どんな失敗をやらかすか分からないんだからな」
「しょ、承知致しました。他のみんなにも伝えておきます」
怯えながら返事をする薬師の女性である。さすがに同じ王国の民だったんだから、その反応はショックしかないんだよなぁ……。
「魔王様、どうなさったのですか、そのような暗い顔をして」
「ああ、キリエか。いやなに、文化の違いみたいなものに驚いていただけだ。気にしないでくれ」
「左様でございますか」
質問に対する俺の答えに、不思議そうな顔で首を傾げるキリエである。
「それはそうと魔王様、あちらでピエラ様がお呼びでございますので、薬師の対応はこのキリエにお任せ下さい」
「うん、そうか。それじゃ頼むよ」
「畏まりました」
薬師たちをキリエに任せた俺は、何の用だろうかとピエラの方へと近付いていく。
すると、ピエラは驚いた様子で俺の方へと顔を向けて来ていた。
「どうしたんだよ、ピエラ」
「ちょっと、これを見てよ……」
ピエラが困惑した表情で指差す草へと視線を移す。だが、俺にはただの草にしか見えない。
「これがどうしたっていうんだ?」
ピエラが震える理由が分からなくて、俺は率直にピエラに尋ねる。
「嘘でしょ……。これが何か分からないなんて」
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