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第一章 大陸編
第101話 転生者、復路でもしっかりチェックする
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帰り道も宿場町の様子を見るために泊まりながら魔王城へと戻っていく。
王国に最も近いアルラウネの管理する宿場町は、今もいそいそと薬草を植え替える作業が続けられていた。どれだけあちこちに植えているのやら……。
赤霊草はアルラウネの食事らしいからな、さすがに全撤去は可哀想だ。だから移植を勧めたんだが、おとなしく従ってくれているみたいだ。
「よう、確かペタルだっけか」
町長のハナの屋敷に向かう途中で、見た事のあるアルラウネを見かけて声を掛ける。すると、ぴたりと動きを止めて俺の方へと振り返ってきた。
「これは魔王様。左様でございます、ペタルです。もうお戻りですか?」
両手を前でそろえ、深く頭を下げてくるペタル。なんとも礼儀正しいアルラウネである。
ハナも少し吹っ飛んだ思考があっただけに警戒していたが、部下はどうやら一般的な思考を持っているようだった。
「ああ、境界の街まで行って、今は魔王城への戻りだ。せっかく宿場町があるんだから、使わないわけにはいかないだろう?」
「それは、そうでございますね」
俺が淡々と答えると、ペタルも淡々と対応していた。ハナとは違って真面目な仕事人といった感じを受ける。
「ペタルはどうしてハナについてきたんだ?」
どうしても気になった俺は、ついペタルに問い掛けてしまう。ペタルは答えるかどうか悩んでいたようだが、どういうわけかため息をついてからゆっくりと話し始めた。
「……ただの幼馴染みでございます。魔王様も見て理解されたと思いますが、ハナ様はずいぶんと自由な方でございます」
「まあ、受け答えを聞いている限りは真面目そうなんだが、自由なところはちょくちょく見られたな」
街の案内の時など、先日のことを思い出して俺は顔をしかめている。
俺の話を聞いているペタルも、その表情が思わず曇ってしまっていた。
「ええ。ですから、私がお目付け役として名乗りを上げたのでございます。そうでもしないと、好き勝手にしてしまうと思いましたから」
頬に手を当てながら、大きなため息を吐くペタル。この態度を見る限り、ハナの性質はウネとかなり近いんだろうな。その苦労、よく分かるぜ。
次の瞬間、俺は思わずペタルの頭を撫でていた。
「わわっ、魔王……様?」
俺の毛深い手がくすぐったかったのか、ちょっと笑いそうになっているペタルである。
「あっ、悪い」
笑いそうになって手を払われてしまい、俺は慌てて手を引っ込めた。
だが、くすぐったいという反応をしながらも、俺が手を引っ込めるとどこか残念そうな表情を見せるペタル。いや、どっちなんだよ。
「こほん。とりあえず、俺が魔王城へ戻ってゴーサインを出せば、宿場町は本格的に機能することになる。もう数日はあるだろうから、しっかり街の機能を整えておいてくれ」
「承知致しました、魔王様」
俺の命令に、深々と頭を下げるペタルだった。
これでハナにも直々にしっかり釘を刺しておけば、ここは大丈夫だろうな。そう思った俺は、ぐっすりと休むことができた。
翌日は、ザルドンの治める二つ目の宿場町へと移動する。
ここでも町長の屋敷による前に、ちょっと街の様子を見ておく。
「うっわ、釣り堀が完成してやがる……」
往路で俺が釣りをしていた区画は、ものの見事に釣り専用の区画へと変貌していた。
俺がやって来た時にも十数人が糸を垂らして釣りを楽しんでいた。マジかよ……。
「おやおや、魔王様じゃないか。もう戻ってきたのか」
異様な光景を眺めていると、これまた見た事のあるマーマンが近付いてきた。言葉遣いが独特なモリーだ。
「まあな。街道を端まで視察して、今は戻りってところだ。それよりも、この状況は一体……」
モリーと話をしつつ、俺は釣り堀の方へと視線を向ける。すると、モリーは笑いながら話している。
「いやぁ、魔王様がやっていたことを話したら、みんな興味持っちまってよう。それで実際にやらしてみたらこの通りってわでさ」
「ああ、そういうことなんだな……」
確かに興味を示していたのは分かってたんだが、ちょっとしたブームになるほどとは思ってもみなかったな。思わぬ事態に、俺は肩から崩れるくらいに驚いてしまった。
「詳しい話をザルドンとさせてもらってもいいか?」
「ええ、もちろんでさぁ。ザルドン様も心待ちにしてらっしゃると思いますぜ」
モリーからこう返ってきたので、俺は町長の屋敷へと向かっていった。
話をした感じでは、ザルドンも釣りに興じているらしく、この街では釣りが完全にブームとなっていた。あれだけ本格的な釣り堀ができてるんだし、そりゃそうか。
話の締めくくりには、三つ目の街同様の事を話しておくと、ザルドンからは心強い返事があった。
釣りブームの事は気になるが、ザルドンならちゃんとやり遂げるだろう。
どっちの宿場町もちょっと不安要素があるものの、街としてはちゃんとやっていけそうだ。
これで残りは一つ目の宿場町だけだ。
ティコはしっかりしてるし、特に問題はないだろう。
俺は気楽な気持ちで、魔王城へと向けて二つ目の宿場町を発ったのだった。
王国に最も近いアルラウネの管理する宿場町は、今もいそいそと薬草を植え替える作業が続けられていた。どれだけあちこちに植えているのやら……。
赤霊草はアルラウネの食事らしいからな、さすがに全撤去は可哀想だ。だから移植を勧めたんだが、おとなしく従ってくれているみたいだ。
「よう、確かペタルだっけか」
町長のハナの屋敷に向かう途中で、見た事のあるアルラウネを見かけて声を掛ける。すると、ぴたりと動きを止めて俺の方へと振り返ってきた。
「これは魔王様。左様でございます、ペタルです。もうお戻りですか?」
両手を前でそろえ、深く頭を下げてくるペタル。なんとも礼儀正しいアルラウネである。
ハナも少し吹っ飛んだ思考があっただけに警戒していたが、部下はどうやら一般的な思考を持っているようだった。
「ああ、境界の街まで行って、今は魔王城への戻りだ。せっかく宿場町があるんだから、使わないわけにはいかないだろう?」
「それは、そうでございますね」
俺が淡々と答えると、ペタルも淡々と対応していた。ハナとは違って真面目な仕事人といった感じを受ける。
「ペタルはどうしてハナについてきたんだ?」
どうしても気になった俺は、ついペタルに問い掛けてしまう。ペタルは答えるかどうか悩んでいたようだが、どういうわけかため息をついてからゆっくりと話し始めた。
「……ただの幼馴染みでございます。魔王様も見て理解されたと思いますが、ハナ様はずいぶんと自由な方でございます」
「まあ、受け答えを聞いている限りは真面目そうなんだが、自由なところはちょくちょく見られたな」
街の案内の時など、先日のことを思い出して俺は顔をしかめている。
俺の話を聞いているペタルも、その表情が思わず曇ってしまっていた。
「ええ。ですから、私がお目付け役として名乗りを上げたのでございます。そうでもしないと、好き勝手にしてしまうと思いましたから」
頬に手を当てながら、大きなため息を吐くペタル。この態度を見る限り、ハナの性質はウネとかなり近いんだろうな。その苦労、よく分かるぜ。
次の瞬間、俺は思わずペタルの頭を撫でていた。
「わわっ、魔王……様?」
俺の毛深い手がくすぐったかったのか、ちょっと笑いそうになっているペタルである。
「あっ、悪い」
笑いそうになって手を払われてしまい、俺は慌てて手を引っ込めた。
だが、くすぐったいという反応をしながらも、俺が手を引っ込めるとどこか残念そうな表情を見せるペタル。いや、どっちなんだよ。
「こほん。とりあえず、俺が魔王城へ戻ってゴーサインを出せば、宿場町は本格的に機能することになる。もう数日はあるだろうから、しっかり街の機能を整えておいてくれ」
「承知致しました、魔王様」
俺の命令に、深々と頭を下げるペタルだった。
これでハナにも直々にしっかり釘を刺しておけば、ここは大丈夫だろうな。そう思った俺は、ぐっすりと休むことができた。
翌日は、ザルドンの治める二つ目の宿場町へと移動する。
ここでも町長の屋敷による前に、ちょっと街の様子を見ておく。
「うっわ、釣り堀が完成してやがる……」
往路で俺が釣りをしていた区画は、ものの見事に釣り専用の区画へと変貌していた。
俺がやって来た時にも十数人が糸を垂らして釣りを楽しんでいた。マジかよ……。
「おやおや、魔王様じゃないか。もう戻ってきたのか」
異様な光景を眺めていると、これまた見た事のあるマーマンが近付いてきた。言葉遣いが独特なモリーだ。
「まあな。街道を端まで視察して、今は戻りってところだ。それよりも、この状況は一体……」
モリーと話をしつつ、俺は釣り堀の方へと視線を向ける。すると、モリーは笑いながら話している。
「いやぁ、魔王様がやっていたことを話したら、みんな興味持っちまってよう。それで実際にやらしてみたらこの通りってわでさ」
「ああ、そういうことなんだな……」
確かに興味を示していたのは分かってたんだが、ちょっとしたブームになるほどとは思ってもみなかったな。思わぬ事態に、俺は肩から崩れるくらいに驚いてしまった。
「詳しい話をザルドンとさせてもらってもいいか?」
「ええ、もちろんでさぁ。ザルドン様も心待ちにしてらっしゃると思いますぜ」
モリーからこう返ってきたので、俺は町長の屋敷へと向かっていった。
話をした感じでは、ザルドンも釣りに興じているらしく、この街では釣りが完全にブームとなっていた。あれだけ本格的な釣り堀ができてるんだし、そりゃそうか。
話の締めくくりには、三つ目の街同様の事を話しておくと、ザルドンからは心強い返事があった。
釣りブームの事は気になるが、ザルドンならちゃんとやり遂げるだろう。
どっちの宿場町もちょっと不安要素があるものの、街としてはちゃんとやっていけそうだ。
これで残りは一つ目の宿場町だけだ。
ティコはしっかりしてるし、特に問題はないだろう。
俺は気楽な気持ちで、魔王城へと向けて二つ目の宿場町を発ったのだった。
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