128 / 431
第一章 大陸編
第128話 転生者、国境の街を見せる
しおりを挟む
俺が馬を駆って単身西方王国の王都に乗り込む。警戒はされるかと思ったが、意外とすんなりと王都に入れたし、王城内も実にスムーズだった。聞けば大臣がかなり説得に走っていたらしい。
国王への謁見もかなり順番をすっ飛ばしてすぐに会う事ができた。手短に話を終えると、結構な数の兵士を連れて国境まで戻ることになってしまった。相当警戒しているな、これは。
俺とデザストレの二人だけで、簡単にあしらわれたからな。まぁ当然かな。
というわけで、全部で百人クラスの兵士たちを率いて国境へと戻った。
俺たちが国境に戻った頃には、もうすっかり街ができ上がっていた。往復で十日間もあれば、魔族たちにとっては余裕のある時間だったのだ。
「いやまぁ、ここまですっかり街ができちまっているとは驚いたな……」
「どうですか、魔王様。南方王国との国境の街を真似てみたんですが」
建設に関わった魔族の一人が得意げに俺に話し掛けてきた。
なんか見た事のある感じだと思ったら、そういうことだったのか。
魔族たちとの街とは一風違った街ができ上がったのは、ここが人間たちとの生活圏の境界に位置しているからだろう。だから、人間たちの街である南方王国の国境の街を参考に、そこに似せた街を造ったということなのだろう。
この魔族たちの頭の柔軟性に、俺はただただ唸るだけだった。
これに関しては、俺についてきた人間たちも同じ感想を持ったらしい。
「とりあえず、街の中を確認してみてくれ。人間の街を模して造ったということは、俺たちがお前たちに敵意がないという証拠になる」
俺の言葉を受けて、百人少々いる西方王国の兵士たちは街の中を見て回った。
結果、確かに人間たちの街の造りに似ているということが認められたのだった。
「確認終わりました。どこも異常はありません」
「そうか、ご苦労」
報告を受けた隊長格がこくりと頷いている。
そして、俺の方へと向き直る。
「敵意がないことは確認できました。今回の申し出、しかと受け入れさせて頂きます」
「そっか、それなら安心というものだな」
どことなく偉そうではあるものの、ひとまず認めさせられたのは前進と見ていいのだろう。
造られた国境の街から東側を見る。きれいに整えられた平坦な道が、地平線までずっと続いている。
「ひとまず、こんな状態の道が魔王城まで続いている。あんたたち兵士たちは荒れた道も慣れているだろうが、不慣れな商人たちでも快適に旅ができるようにしてあるからな」
「これは驚きだな。こんなまっ平らな道が造れるなんて、どんな技術があればできるのだ」
俺から説明を受けた隊長格は、街道の路面を確かめながら驚きの声を上げている。
俺だってよく分からない。だが、俺の部下である魔族たちは、それを平然とやってのけているのだ。これは誰の疑う余地もない事実なのである。すんなり信じろ。
「信じる信じないは勝手だが、現実として目の前に平らな街道が整備されている。これだけは受け入れてくれ」
「う、ううむ……」
真剣な表情で迫ると、さすがに隊長格も黙り込むしかなかった。実際手に触れていたし、足で何度も踏んで確かめていたんだからな。
ひとまず、西方王国と魔王領との間の取引はこの街道を使うことになる。宿場町の間は魔族たちが護衛に就くという方向性で進めるつもりだ。
人間たちの戦力を信じないわけじゃないが、俺とデザストレだけで蹴散らされるようでは、強さが不十分だからな。下手な魔物が出てきたら、あっという間に商人ごとあの世行きだ。さすがにそれは展開としてよろしくないので、魔族の護衛をつけるのだよ。
その代わり、この国境の街の運営は西方王国に任せることになった。一応魔王領の外側なんでな、この街の位置はな。西方王国の国土にあるから、彼らに任せるというわけだ。
しかし、ずいぶんと渋々といった反応を見せつけられたな。魔族との間のわだかまりがよく分かる態度だ。
なので、俺はこの街を魔族たち側で整備したこと、本気になれば俺一人で西方王国を壊滅させられることという、飴と鞭の同時打ちで西方王国の兵士たちを無理やり納得させた。以前に実力を見せつけておいたのが役に立ったな。
まったく、兵士ども相手は疲れる。こんな事なら大臣を連れてくればよかったぜ。ずいぶんと俺たちに興味を示していたからな。
だが、その大臣は国の仕事で忙しそうにしてたから、今回ばかりは仕方なかったな。
ひとまずでき上がった国境の街はもうしばらく俺の部下に任せることにして、俺は再び西方王国の王都へと向かう。本題である交渉を行うためだ。
兵士たちはそのまま国境の街に滞在してもらう。しばらくは魔族と一緒にいることになるから、うまくいけば和解してくれるだろう。
いろいろと多くの目論見を抱えて、俺は王都を目指して馬を走らせる。
西方王国との交渉も、いよいよ大詰めだ。
なんとしても和平を勝ち取るために、俺は改めて気を引き締めながら西方王国の王都へと足を踏み入れたのだった。
国王への謁見もかなり順番をすっ飛ばしてすぐに会う事ができた。手短に話を終えると、結構な数の兵士を連れて国境まで戻ることになってしまった。相当警戒しているな、これは。
俺とデザストレの二人だけで、簡単にあしらわれたからな。まぁ当然かな。
というわけで、全部で百人クラスの兵士たちを率いて国境へと戻った。
俺たちが国境に戻った頃には、もうすっかり街ができ上がっていた。往復で十日間もあれば、魔族たちにとっては余裕のある時間だったのだ。
「いやまぁ、ここまですっかり街ができちまっているとは驚いたな……」
「どうですか、魔王様。南方王国との国境の街を真似てみたんですが」
建設に関わった魔族の一人が得意げに俺に話し掛けてきた。
なんか見た事のある感じだと思ったら、そういうことだったのか。
魔族たちとの街とは一風違った街ができ上がったのは、ここが人間たちとの生活圏の境界に位置しているからだろう。だから、人間たちの街である南方王国の国境の街を参考に、そこに似せた街を造ったということなのだろう。
この魔族たちの頭の柔軟性に、俺はただただ唸るだけだった。
これに関しては、俺についてきた人間たちも同じ感想を持ったらしい。
「とりあえず、街の中を確認してみてくれ。人間の街を模して造ったということは、俺たちがお前たちに敵意がないという証拠になる」
俺の言葉を受けて、百人少々いる西方王国の兵士たちは街の中を見て回った。
結果、確かに人間たちの街の造りに似ているということが認められたのだった。
「確認終わりました。どこも異常はありません」
「そうか、ご苦労」
報告を受けた隊長格がこくりと頷いている。
そして、俺の方へと向き直る。
「敵意がないことは確認できました。今回の申し出、しかと受け入れさせて頂きます」
「そっか、それなら安心というものだな」
どことなく偉そうではあるものの、ひとまず認めさせられたのは前進と見ていいのだろう。
造られた国境の街から東側を見る。きれいに整えられた平坦な道が、地平線までずっと続いている。
「ひとまず、こんな状態の道が魔王城まで続いている。あんたたち兵士たちは荒れた道も慣れているだろうが、不慣れな商人たちでも快適に旅ができるようにしてあるからな」
「これは驚きだな。こんなまっ平らな道が造れるなんて、どんな技術があればできるのだ」
俺から説明を受けた隊長格は、街道の路面を確かめながら驚きの声を上げている。
俺だってよく分からない。だが、俺の部下である魔族たちは、それを平然とやってのけているのだ。これは誰の疑う余地もない事実なのである。すんなり信じろ。
「信じる信じないは勝手だが、現実として目の前に平らな街道が整備されている。これだけは受け入れてくれ」
「う、ううむ……」
真剣な表情で迫ると、さすがに隊長格も黙り込むしかなかった。実際手に触れていたし、足で何度も踏んで確かめていたんだからな。
ひとまず、西方王国と魔王領との間の取引はこの街道を使うことになる。宿場町の間は魔族たちが護衛に就くという方向性で進めるつもりだ。
人間たちの戦力を信じないわけじゃないが、俺とデザストレだけで蹴散らされるようでは、強さが不十分だからな。下手な魔物が出てきたら、あっという間に商人ごとあの世行きだ。さすがにそれは展開としてよろしくないので、魔族の護衛をつけるのだよ。
その代わり、この国境の街の運営は西方王国に任せることになった。一応魔王領の外側なんでな、この街の位置はな。西方王国の国土にあるから、彼らに任せるというわけだ。
しかし、ずいぶんと渋々といった反応を見せつけられたな。魔族との間のわだかまりがよく分かる態度だ。
なので、俺はこの街を魔族たち側で整備したこと、本気になれば俺一人で西方王国を壊滅させられることという、飴と鞭の同時打ちで西方王国の兵士たちを無理やり納得させた。以前に実力を見せつけておいたのが役に立ったな。
まったく、兵士ども相手は疲れる。こんな事なら大臣を連れてくればよかったぜ。ずいぶんと俺たちに興味を示していたからな。
だが、その大臣は国の仕事で忙しそうにしてたから、今回ばかりは仕方なかったな。
ひとまずでき上がった国境の街はもうしばらく俺の部下に任せることにして、俺は再び西方王国の王都へと向かう。本題である交渉を行うためだ。
兵士たちはそのまま国境の街に滞在してもらう。しばらくは魔族と一緒にいることになるから、うまくいけば和解してくれるだろう。
いろいろと多くの目論見を抱えて、俺は王都を目指して馬を走らせる。
西方王国との交渉も、いよいよ大詰めだ。
なんとしても和平を勝ち取るために、俺は改めて気を引き締めながら西方王国の王都へと足を踏み入れたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる