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第一章 大陸編
第129話 転生者、無駄骨を折りかける
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国境までやって来た兵士のうちの一人だけを一緒の馬に乗せて、俺は西方王国の王都まで戻ってきた。
普通、敵対者を背後に乗せれば危険なものだが、そんな余裕はないようにしっかりと対策はしておいたので問題はなかったぜ。
さて、なんで一人だけ兵士を連れて戻って来たかというと、国境の街と街道の整備の証言をさせるためだ。俺一人だけでは説得力はそこまで強くない。そこで、同じ王国民である兵士を連れてきたってわけだ。
「えっと、俺はお前に発言の強制はしない。どう思ったか、それを正直に話をすればいいからな」
馬から降ろす際に、俺は兵士に念を押しておく。自分の立場で隙に証言すればいい。ただし、嘘は許さないぞと。
兵士はぶんぶんと勢いよく首を縦に振っている。脅すつもりはなかったが、魔王領の馬の速さを見た後じゃまぁしょうがないか。
王城に入り、俺は再び国王と謁見する。さすがに魔王相手ともなればすぐに対応してくれるので助かる。
「もう戻って来たか……」
「まあね。魔王領の馬は足が速いからな」
俺と国王の間には、険悪な雰囲気が漂っている。俺としてはなんとも思ってないが、さすがに国王からしたら警戒するよな。あれだけの実力差を見せつけられたわけだし、何か企んでるんじゃないかってね。
とはいえ、相手が構えていようとも、俺としては交渉を始めるしか選択肢はなかった。
「改めて西方王国の国王に報告させてもらう。魔王領との国境まで、魔王城からの街道を整備させてもらった。あと、その国境部分に街も整備させてもらった。詳細はそこの兵士から聞いてもらいたい」
「ふむ。その方、相違ないか?」
「は、はい。間違い、ございません」
びびっているのか、ものすごく歯切れが悪い。おかげで無理やり言わされている感が強く出てるぞ。
しかし、国王と魔王という二人の権力者に挟まれれば、そりゃ一介の兵士にはおそれ多い状況だわな。ある程度理解を示している俺は、とりあえず黙って反応を見ている。
「それでだが、国境の街は西方王国で運営してもらいたいんだ。領地的にはそちらに存在しているんでな」
「なんと?」
ものすごく驚いた表情を見せる国王。
勝手に魔族が自分の領地で街を造ったわけだから、そういう反応になるのは当然だろう。とはいえ、人間たちが生活することを前提に造らせてもらったから、何も問題ないはずだ。
「勝手な真似をしたのは謝罪するが、今回の交渉における譲歩だと思ってもらいたい。俺が目指すのはあくまでも平和的な交流なんだからな」
「う、うむぅ……」
俺が主張すると、どういうわけか国王は唸って黙り込んでしまった。なんだっていうんだろうかな。
「何が不満かは分からないが、これでも不満だというのならちょっと欲張り過ぎだと思うぞ。ぶっちゃけて言うと、俺たちから提供するものは、俺たち自身を不利にするものばかりなんだからな」
俺はしっかりと釘は刺しておく。
基本的に交渉はギブアンドテイクだ。一方的に与えるだけでは交渉にならない。
まったく結論を出そうとしない国王に、さすがの俺も耐えかねる。
「まったく、大臣たちには悪いが、この交渉は決裂だな。俺だって暇じゃないからな」
俺は立ち上がって帰ろうとすると、国王は絞り出すようにして俺を呼び止めてきた。
「待ってくれ。私は国王としてその話に結論は出せない」
「……そうか。国民感情に配慮ってわけか」
俺が呟くように言うと、国王はこくりと頷いた。
「大臣は魔王領に対して興味津々だ。ならば、こういうことは彼に任せようと思う。国がいい方に転ぶのであれば、私は黙認しよう」
「まぁ、しょうがないか。なら、ある程度成果が出るまでは一切口を出さないでくれ。もちろん、王国内部の反発も含めてだ」
「……約束しよう」
国王はそう弱々しく答えている。
ひとまず国王は静観という立場を取ったので、挨拶もほどほどに俺は大臣であるマネケンの元へと出向く。その際に、国王はちゃんと案内役の兵士をつけてくれた。
だがな、今の俺は獣人なんだ。この鼻さえあればにおいで大臣を追跡できるんだよな。
まっ、せっかく気を利かせてくれたので、黙っておくがな。
兵士の案内で、俺は無事にマネケンと会うことができた。
「おお、魔王殿。今日はいかような用件ですかな」
ものすごく上機嫌のマネケンである。
「ああ、国境まで街道を整備して、そこに街も造ったから、改めて交渉に来たってわけなんだ」
「なんと街を!」
マネケンが驚いている。
「まぁいろいろあって国王が全部大臣に投げちまったせいでな。これから大臣といろいろと話をしなきゃいけないんだ」
「はっはっはっ、それでしたら喜んでお相手致しましょう。なに、魔王殿との取引は、必ずこちらの国益になる。私の勘がそう告げているのですからな、はっはっはっはっ」
国王の対応に不機嫌になると思ったら、かえって喜んでいた。変わった人間もいるものだと、元人間ながらに思ってしまう。
結局、最終的にはマネケンが国境の街を直に見たいと言い出したので、連れていくことになってしまった。
前回ついてこなかったのは案件を抱えていたかららしく、今回はそれが片付いてのでついて来れるそうだ。
というわけで、マネケンを連れて再び国境の街に戻ることになったのだった。
一体何往復すればいいんだよ……。
普通、敵対者を背後に乗せれば危険なものだが、そんな余裕はないようにしっかりと対策はしておいたので問題はなかったぜ。
さて、なんで一人だけ兵士を連れて戻って来たかというと、国境の街と街道の整備の証言をさせるためだ。俺一人だけでは説得力はそこまで強くない。そこで、同じ王国民である兵士を連れてきたってわけだ。
「えっと、俺はお前に発言の強制はしない。どう思ったか、それを正直に話をすればいいからな」
馬から降ろす際に、俺は兵士に念を押しておく。自分の立場で隙に証言すればいい。ただし、嘘は許さないぞと。
兵士はぶんぶんと勢いよく首を縦に振っている。脅すつもりはなかったが、魔王領の馬の速さを見た後じゃまぁしょうがないか。
王城に入り、俺は再び国王と謁見する。さすがに魔王相手ともなればすぐに対応してくれるので助かる。
「もう戻って来たか……」
「まあね。魔王領の馬は足が速いからな」
俺と国王の間には、険悪な雰囲気が漂っている。俺としてはなんとも思ってないが、さすがに国王からしたら警戒するよな。あれだけの実力差を見せつけられたわけだし、何か企んでるんじゃないかってね。
とはいえ、相手が構えていようとも、俺としては交渉を始めるしか選択肢はなかった。
「改めて西方王国の国王に報告させてもらう。魔王領との国境まで、魔王城からの街道を整備させてもらった。あと、その国境部分に街も整備させてもらった。詳細はそこの兵士から聞いてもらいたい」
「ふむ。その方、相違ないか?」
「は、はい。間違い、ございません」
びびっているのか、ものすごく歯切れが悪い。おかげで無理やり言わされている感が強く出てるぞ。
しかし、国王と魔王という二人の権力者に挟まれれば、そりゃ一介の兵士にはおそれ多い状況だわな。ある程度理解を示している俺は、とりあえず黙って反応を見ている。
「それでだが、国境の街は西方王国で運営してもらいたいんだ。領地的にはそちらに存在しているんでな」
「なんと?」
ものすごく驚いた表情を見せる国王。
勝手に魔族が自分の領地で街を造ったわけだから、そういう反応になるのは当然だろう。とはいえ、人間たちが生活することを前提に造らせてもらったから、何も問題ないはずだ。
「勝手な真似をしたのは謝罪するが、今回の交渉における譲歩だと思ってもらいたい。俺が目指すのはあくまでも平和的な交流なんだからな」
「う、うむぅ……」
俺が主張すると、どういうわけか国王は唸って黙り込んでしまった。なんだっていうんだろうかな。
「何が不満かは分からないが、これでも不満だというのならちょっと欲張り過ぎだと思うぞ。ぶっちゃけて言うと、俺たちから提供するものは、俺たち自身を不利にするものばかりなんだからな」
俺はしっかりと釘は刺しておく。
基本的に交渉はギブアンドテイクだ。一方的に与えるだけでは交渉にならない。
まったく結論を出そうとしない国王に、さすがの俺も耐えかねる。
「まったく、大臣たちには悪いが、この交渉は決裂だな。俺だって暇じゃないからな」
俺は立ち上がって帰ろうとすると、国王は絞り出すようにして俺を呼び止めてきた。
「待ってくれ。私は国王としてその話に結論は出せない」
「……そうか。国民感情に配慮ってわけか」
俺が呟くように言うと、国王はこくりと頷いた。
「大臣は魔王領に対して興味津々だ。ならば、こういうことは彼に任せようと思う。国がいい方に転ぶのであれば、私は黙認しよう」
「まぁ、しょうがないか。なら、ある程度成果が出るまでは一切口を出さないでくれ。もちろん、王国内部の反発も含めてだ」
「……約束しよう」
国王はそう弱々しく答えている。
ひとまず国王は静観という立場を取ったので、挨拶もほどほどに俺は大臣であるマネケンの元へと出向く。その際に、国王はちゃんと案内役の兵士をつけてくれた。
だがな、今の俺は獣人なんだ。この鼻さえあればにおいで大臣を追跡できるんだよな。
まっ、せっかく気を利かせてくれたので、黙っておくがな。
兵士の案内で、俺は無事にマネケンと会うことができた。
「おお、魔王殿。今日はいかような用件ですかな」
ものすごく上機嫌のマネケンである。
「ああ、国境まで街道を整備して、そこに街も造ったから、改めて交渉に来たってわけなんだ」
「なんと街を!」
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「まぁいろいろあって国王が全部大臣に投げちまったせいでな。これから大臣といろいろと話をしなきゃいけないんだ」
「はっはっはっ、それでしたら喜んでお相手致しましょう。なに、魔王殿との取引は、必ずこちらの国益になる。私の勘がそう告げているのですからな、はっはっはっはっ」
国王の対応に不機嫌になると思ったら、かえって喜んでいた。変わった人間もいるものだと、元人間ながらに思ってしまう。
結局、最終的にはマネケンが国境の街を直に見たいと言い出したので、連れていくことになってしまった。
前回ついてこなかったのは案件を抱えていたかららしく、今回はそれが片付いてのでついて来れるそうだ。
というわけで、マネケンを連れて再び国境の街に戻ることになったのだった。
一体何往復すればいいんだよ……。
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