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第一章 大陸編
第130話 転生者、思いつく
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国境の街の出来ばえに、マネケンはとても満足した様子だった。
すぐさま移住者を募ろうと言い出すものだから、街に駐在していた兵士たちは困り果てた様子を見せていた。
兵士たちの反応が普通なんだろうなと思いながら、俺は呆れたようにマネケンを見ている。
「大臣」
「何かな、魔王殿」
「ここは任せてもいいか?」
「もちろんですとも。ここはまだ我々王国の国土ですからな。はっはっはっはっ」
高らかに笑って任されるマネケンである。
「そうか。ならここから俺たちは全員退去するから、好きに使ってくれ」
「心得ましたぞ。双方にとっていい結果になるように、私も尽力させて頂きますとも」
自信たっぷりな様子のマネケンに、俺は少し安心したような気がした。
胸を張るマネケンに街のことを任せ、俺たちは一路魔王城へと戻っていった。
魔王城に戻ると、クローゼがいきなり襲い……じゃなかった抱きついてきた。
「お帰りなさい、魔王様。待ちくたびれましたわよ」
「お、おう。どうしたっていうんだよ、クローゼ」
あまりにも唐突なことに、思わずしっぽをピンと立ててしまう。
「もちろん、魔王様のデザインされた服についてですわよ。頑張らせて頂きましたわ」
どうやらクローゼは、俺が出ている間ずっと服を作り続けていたらしい。結構な数のデザイン画を置いていったはずなのだが、その全部を作り終えたというのだ。
どういうことなのか確認するために、俺はクローゼに連れられてその部屋を訪れる。
部屋の中を見て納得した。
いやまぁ、並べられた服の数々を見て圧巻というべきだろうか。よく見ると肌着の類まで全部作られている。いや、さすがにやりすぎだろう。
「ささっ、魔王様。早速試して下さいな」
「へ?」
クローゼから飛び出た言葉に、俺は思わず耳を疑った。
だが、次の瞬間、俺は体を押さえつけられてしまう。
何事かと思って見てみると、そこにはカスミとニーナの妹コンビの姿があった。
「ささ、魔王様。クローゼ様がせっかく作って下さったんです。お着替えしましょうね」
「そうですよ。お姉ちゃんってば、魔王様に着せようと一生懸命頑張ってくれたんですからね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんで俺が、着なくちゃいけないんだよ!」
二人にがっちりつかまれて身動きが取れない俺だが、必死に抵抗を試みる。俺のことの時の感情は耳にしっかりと表れていて、すっかり垂れ下がってしまっていた。
「ダメですよ、魔王様。クローゼの気持ちを無駄にしないで下さいませ」
「お、おい。キリエまでそっち側なのかよ」
「はい。魔王様が考案なさったデザインなのですから、魔王様にまずは着て頂きませんとね」
「そういう理屈かよ。おい、放せ。頼むからやめてくれ!」
ところが、俺がどんなに叫ぼうとも、カスミもニーナも一向に放そうとしないし、キリエはクローゼと一緒にどれから着せようかと真剣に悩んでいた。
結果、俺が描いたデザイン画数十枚分の衣装を着せ替えられる羽目になってしまった。
終わった後の俺は、放心した状態で椅子に座っていた。
「さすがは魔王様。どの衣装もよくお似合いでしたわ」
「実際に着て頂くと、イメージが分かりやすいですね。弟や妹にプレゼントしてあげましょうかね」
「それはいいわね、キリエ姉。アラレとかシズクとか喜びそうだわ」
知らない名前が出てくる。どうやらキリエの兄弟は人数が多いらしい。
それにしてもアラレやシズクって、キリエの家ってそういう系統の名前で統一されているのだろうか。父親だってヒョウムだったし。
とはいっても、ここは俺が前世でいた世界とは違うんだし、考えるだけ無駄だな。うん、やめやめ。
「気に入ってくれたなら嬉しい限りだよ。服装っていってもいろんなバリエーションがあるからな」
「ええ、楽しみにしております」
「ただ、俺を着せ替え人形にするのはやめてくれ。俺だってやることはたくさんあるんだ、こんな事でいちいち疲れてられないぜ……」
俺は耳もしっぽも力なくだらりとさせて落ち込む。さっきの着せ替え人形状態は、本気で俺の心かなり抉ってくれたからな。元男として、女物の服装を大量に着させられるのはダメージがでかいんだ。
じゃあなんで女物の服をたくさんデザインしたかと言ったら、周りに女が多いからだよ。キリエたちもそうだし、ピエラもそうだし、ウネだっているしな。それに薬師もほとんど女性だ。男といったら兵士たちがいるが……。
その時、俺に衝撃が走る。
「魔王様、どうなさったのですか?」
「そうだよ、制服。制服があるじゃないか」
「制服、でございますか?」
唐突な俺の発言に、顔をしかめるキリエ。
「そうそう、キリエたちが着ている侍女服のような制服。兵士と薬師たちにも作ってやれないかな」
「それはいいかもしれませんね。魔王様の配下ということを、しっかりと周りに示せますからね」
キリエは考え込むような仕草をしながら、俺の意見に賛同してくれていた。
そんなわけで、せっかく服を作る事業を始めたのだからと、魔王城の一部の面々に共通の意匠の服、制服を作ることになったのだった。
すぐさま移住者を募ろうと言い出すものだから、街に駐在していた兵士たちは困り果てた様子を見せていた。
兵士たちの反応が普通なんだろうなと思いながら、俺は呆れたようにマネケンを見ている。
「大臣」
「何かな、魔王殿」
「ここは任せてもいいか?」
「もちろんですとも。ここはまだ我々王国の国土ですからな。はっはっはっはっ」
高らかに笑って任されるマネケンである。
「そうか。ならここから俺たちは全員退去するから、好きに使ってくれ」
「心得ましたぞ。双方にとっていい結果になるように、私も尽力させて頂きますとも」
自信たっぷりな様子のマネケンに、俺は少し安心したような気がした。
胸を張るマネケンに街のことを任せ、俺たちは一路魔王城へと戻っていった。
魔王城に戻ると、クローゼがいきなり襲い……じゃなかった抱きついてきた。
「お帰りなさい、魔王様。待ちくたびれましたわよ」
「お、おう。どうしたっていうんだよ、クローゼ」
あまりにも唐突なことに、思わずしっぽをピンと立ててしまう。
「もちろん、魔王様のデザインされた服についてですわよ。頑張らせて頂きましたわ」
どうやらクローゼは、俺が出ている間ずっと服を作り続けていたらしい。結構な数のデザイン画を置いていったはずなのだが、その全部を作り終えたというのだ。
どういうことなのか確認するために、俺はクローゼに連れられてその部屋を訪れる。
部屋の中を見て納得した。
いやまぁ、並べられた服の数々を見て圧巻というべきだろうか。よく見ると肌着の類まで全部作られている。いや、さすがにやりすぎだろう。
「ささっ、魔王様。早速試して下さいな」
「へ?」
クローゼから飛び出た言葉に、俺は思わず耳を疑った。
だが、次の瞬間、俺は体を押さえつけられてしまう。
何事かと思って見てみると、そこにはカスミとニーナの妹コンビの姿があった。
「ささ、魔王様。クローゼ様がせっかく作って下さったんです。お着替えしましょうね」
「そうですよ。お姉ちゃんってば、魔王様に着せようと一生懸命頑張ってくれたんですからね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんで俺が、着なくちゃいけないんだよ!」
二人にがっちりつかまれて身動きが取れない俺だが、必死に抵抗を試みる。俺のことの時の感情は耳にしっかりと表れていて、すっかり垂れ下がってしまっていた。
「ダメですよ、魔王様。クローゼの気持ちを無駄にしないで下さいませ」
「お、おい。キリエまでそっち側なのかよ」
「はい。魔王様が考案なさったデザインなのですから、魔王様にまずは着て頂きませんとね」
「そういう理屈かよ。おい、放せ。頼むからやめてくれ!」
ところが、俺がどんなに叫ぼうとも、カスミもニーナも一向に放そうとしないし、キリエはクローゼと一緒にどれから着せようかと真剣に悩んでいた。
結果、俺が描いたデザイン画数十枚分の衣装を着せ替えられる羽目になってしまった。
終わった後の俺は、放心した状態で椅子に座っていた。
「さすがは魔王様。どの衣装もよくお似合いでしたわ」
「実際に着て頂くと、イメージが分かりやすいですね。弟や妹にプレゼントしてあげましょうかね」
「それはいいわね、キリエ姉。アラレとかシズクとか喜びそうだわ」
知らない名前が出てくる。どうやらキリエの兄弟は人数が多いらしい。
それにしてもアラレやシズクって、キリエの家ってそういう系統の名前で統一されているのだろうか。父親だってヒョウムだったし。
とはいっても、ここは俺が前世でいた世界とは違うんだし、考えるだけ無駄だな。うん、やめやめ。
「気に入ってくれたなら嬉しい限りだよ。服装っていってもいろんなバリエーションがあるからな」
「ええ、楽しみにしております」
「ただ、俺を着せ替え人形にするのはやめてくれ。俺だってやることはたくさんあるんだ、こんな事でいちいち疲れてられないぜ……」
俺は耳もしっぽも力なくだらりとさせて落ち込む。さっきの着せ替え人形状態は、本気で俺の心かなり抉ってくれたからな。元男として、女物の服装を大量に着させられるのはダメージがでかいんだ。
じゃあなんで女物の服をたくさんデザインしたかと言ったら、周りに女が多いからだよ。キリエたちもそうだし、ピエラもそうだし、ウネだっているしな。それに薬師もほとんど女性だ。男といったら兵士たちがいるが……。
その時、俺に衝撃が走る。
「魔王様、どうなさったのですか?」
「そうだよ、制服。制服があるじゃないか」
「制服、でございますか?」
唐突な俺の発言に、顔をしかめるキリエ。
「そうそう、キリエたちが着ている侍女服のような制服。兵士と薬師たちにも作ってやれないかな」
「それはいいかもしれませんね。魔王様の配下ということを、しっかりと周りに示せますからね」
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