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第一章 大陸編
第150話 転生者、神殿に侵入する
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さてさて、コモヤを助け出すとして、どうやって神殿に侵入するべきか。
神殿に入ろうにも、コモヤの使い魔を阻む聖気が張り巡らされている。俺とデザストレは間違いなく弱体化するだろう。
使い魔が反応をしているのでまだ生きてはいるだろが、それもいつまでもつか分かったものじゃない。俺は必死に考える。
すると、ピエラがポンと手を叩いてにこにこした様子で俺たちを見てくる。
「何をそんなに悩んでいますかしら。簡単ですわよ」
「何をするつもりだよ、ピエラ」
あまりにも不気味な笑顔だったので、俺はつい身構えてしまう。
「捕まったふりをして入ればいいのです。幸い私がいるのですから、説得力はありますよ」
ピエラからの提案というのは、俺とデザストレがピエラによって捕まったように装って侵入するという案だった。
これはピエラが人間だからこそ成り立つ作戦だ。当然ながら、この作戦にはデザストレが暴れるくらいに反対する。
「捕まったふりとはいえ屈辱。女、その作戦に我が乗ると思うなよ?」
プライドだけは相変わらず高いな、こいつは。
「だったら、お前はここに残っていろ。俺はこの作戦に乗る。ぱっと方法が思いつかないんだからな」
俺に居残りを言い渡されたデザストレは、非常に困った表情を浮かべている。どういうわけか、頭を捻り出した。まったく、どうしたというんだよ。
怪しい動きをしていたデザストレだが、最終的には俺を真っすぐ見て喋り始める。
「しょうがないな。プライドはあるが今回だけだ。二度としないからな」
言い切ったかと思えば、腕を組んでぷいっと横を向いてしまった。ここにもいたよ、ツンデレがよ……。
とりあえず少々ごたついたものの、ピエラの立てた作戦で神殿へと突入する方向で固まった。
俺は魔法を使って縄を出して、自分とデザストレを拘束する。そのロープの先をピエラが持てば、一応の形が完成する。
準備ができると、ピエラに引っ張られるような形で俺たちは神殿に近付いていく。
入口に近付くと、当然衛兵に止められてしまう。
「魔族を捕まえてきましたので、聖王様にお目通しをと思いましてやって参りました。中にお入りしてもよろしいでしょうか」
ピエラは令嬢スマイルで衛兵に話し掛けている。
急な話だったので、ピエラを待たせた上で衛兵の一人が中へと走っていく。
しばらくすると戻ってくると、ピエラを見てなにやら伝言を伝えてきた。
「魔族の捕縛ご苦労である。身柄はこちらで預かるので、帰ってよいぞ」
なんとまぁ、ピエラは追い返されそうになってしまった。
だが、それでは困ると、ピエラは必死に食い下がる。
「この者たちの束縛は、私がいないとすぐに解けてしまいます。中で暴れられてもよろしいのですか?!」
「むぅ……」
必死に訴えるピエラの様子に、衛兵たちは思わず顔を歪めている。
外部の人間を中に入れるのはよろしくないが、だからといって、魔族に暴れられても困るというものだ。
衛兵は相談した結果、ピエラを中に入れることをしぶしぶ了承していた。ただし、監視付きという条件での入場である。
ピエラには監視の衛兵が一人付き、俺たちは神殿の中へと入っていく。
聖気が一気にあふれたせいか、デザストレはとても苦しそうに見える。ところが、俺はどういうわけかほぼ影響を受けていない。理由は分からないが、魔王である事か、転生者である事か、どちらかが影響してるのだと思われる。
神殿を歩いていると、俺の鼻に何かのにおいが引っ掛かる。懐にしまい込んだ使い魔も反応している。ならばこれはコモヤのにおいだろう。
俺はピエラとデザストレに目配せをすると、腕の拘束をこっそりと解く。
辺りの人気が消えた時を見計らい、俺たちは計画を実行に移す。
「うわぁっ!」
俺の一撃で衛兵は気を失ってしまう。じかに触るのがなんだか嫌だったので、しっぽに眠りの魔法をまとわせて、直接体内に放り込んでやった。
さすがに聖気によってデザストレは弱体化しているが、俺が動けるのなら問題はない。
「ここだな。隠し扉がある」
「そうなの?!」
ピエラが驚く中、看破スキルを発動させて隠し扉を発見する。多分、獣人となったことで発露したんだろうな、このスキル。
扉を開いて、中へと降りていく。
中はすぐに嫌なにおいで充満していて、鼻が曲がりそうになってくる。おそらく、捕らえた魔族をここでひどい目に遭わせているのだろう。
長い階段と通路を通り抜けると、牢屋が広がっている。その中の一つを見ると、見たことのある姿が発見できた。
「コモヤ」
「ま、魔王様?!」
俺の呼び掛けにすぐに反応するコモヤ。多少の傷はあるが、まだまだ元気そうだ。
「助けに来た。すぐに出してやるからな」
「いけません、魔王様。この牢屋は……」
コモヤが何かを言いかけるが、ピエラはにこにことしながら杖を牢屋の錠前に当てる。
「アンロック」
魔法を使った瞬間、カチャリと音がして牢屋がすんなりと開いてしまった。
「え、ええ?」
「私は人間の魔法使いですからね。聖国の錠前なんて問題にしませんよ」
扉が開き、コモヤが外へと出る。俺の懐に忍んでいた小動物が顔を覗かせ、コモヤへと飛び移る。ここは魔族が閉じ込められているせいか、聖気が弱まっているから平気なようだった。
「そっか、無事に役目を果たしたのですね。うん、いい子いい子」
頬をこすりつけるコモヤ。使い魔ともども嬉しそうだ。
「喜ぶのはまだ早いぞ。どうにかしてここから脱出しなければな」
「はい、魔王様」
「動けるか?」
「問題ありません」
俺たちはコモヤを連れてきた道を戻っていく。出口がない以上、入口に向かうしかないのだ。
そろそろ廊下に出る。その時だった。
「この神聖な神殿での狼藉、見逃せませんね」
扉から出た瞬間、俺たちは聖国の兵士たちに取り囲まれてしまっていたのだった。
神殿に入ろうにも、コモヤの使い魔を阻む聖気が張り巡らされている。俺とデザストレは間違いなく弱体化するだろう。
使い魔が反応をしているのでまだ生きてはいるだろが、それもいつまでもつか分かったものじゃない。俺は必死に考える。
すると、ピエラがポンと手を叩いてにこにこした様子で俺たちを見てくる。
「何をそんなに悩んでいますかしら。簡単ですわよ」
「何をするつもりだよ、ピエラ」
あまりにも不気味な笑顔だったので、俺はつい身構えてしまう。
「捕まったふりをして入ればいいのです。幸い私がいるのですから、説得力はありますよ」
ピエラからの提案というのは、俺とデザストレがピエラによって捕まったように装って侵入するという案だった。
これはピエラが人間だからこそ成り立つ作戦だ。当然ながら、この作戦にはデザストレが暴れるくらいに反対する。
「捕まったふりとはいえ屈辱。女、その作戦に我が乗ると思うなよ?」
プライドだけは相変わらず高いな、こいつは。
「だったら、お前はここに残っていろ。俺はこの作戦に乗る。ぱっと方法が思いつかないんだからな」
俺に居残りを言い渡されたデザストレは、非常に困った表情を浮かべている。どういうわけか、頭を捻り出した。まったく、どうしたというんだよ。
怪しい動きをしていたデザストレだが、最終的には俺を真っすぐ見て喋り始める。
「しょうがないな。プライドはあるが今回だけだ。二度としないからな」
言い切ったかと思えば、腕を組んでぷいっと横を向いてしまった。ここにもいたよ、ツンデレがよ……。
とりあえず少々ごたついたものの、ピエラの立てた作戦で神殿へと突入する方向で固まった。
俺は魔法を使って縄を出して、自分とデザストレを拘束する。そのロープの先をピエラが持てば、一応の形が完成する。
準備ができると、ピエラに引っ張られるような形で俺たちは神殿に近付いていく。
入口に近付くと、当然衛兵に止められてしまう。
「魔族を捕まえてきましたので、聖王様にお目通しをと思いましてやって参りました。中にお入りしてもよろしいでしょうか」
ピエラは令嬢スマイルで衛兵に話し掛けている。
急な話だったので、ピエラを待たせた上で衛兵の一人が中へと走っていく。
しばらくすると戻ってくると、ピエラを見てなにやら伝言を伝えてきた。
「魔族の捕縛ご苦労である。身柄はこちらで預かるので、帰ってよいぞ」
なんとまぁ、ピエラは追い返されそうになってしまった。
だが、それでは困ると、ピエラは必死に食い下がる。
「この者たちの束縛は、私がいないとすぐに解けてしまいます。中で暴れられてもよろしいのですか?!」
「むぅ……」
必死に訴えるピエラの様子に、衛兵たちは思わず顔を歪めている。
外部の人間を中に入れるのはよろしくないが、だからといって、魔族に暴れられても困るというものだ。
衛兵は相談した結果、ピエラを中に入れることをしぶしぶ了承していた。ただし、監視付きという条件での入場である。
ピエラには監視の衛兵が一人付き、俺たちは神殿の中へと入っていく。
聖気が一気にあふれたせいか、デザストレはとても苦しそうに見える。ところが、俺はどういうわけかほぼ影響を受けていない。理由は分からないが、魔王である事か、転生者である事か、どちらかが影響してるのだと思われる。
神殿を歩いていると、俺の鼻に何かのにおいが引っ掛かる。懐にしまい込んだ使い魔も反応している。ならばこれはコモヤのにおいだろう。
俺はピエラとデザストレに目配せをすると、腕の拘束をこっそりと解く。
辺りの人気が消えた時を見計らい、俺たちは計画を実行に移す。
「うわぁっ!」
俺の一撃で衛兵は気を失ってしまう。じかに触るのがなんだか嫌だったので、しっぽに眠りの魔法をまとわせて、直接体内に放り込んでやった。
さすがに聖気によってデザストレは弱体化しているが、俺が動けるのなら問題はない。
「ここだな。隠し扉がある」
「そうなの?!」
ピエラが驚く中、看破スキルを発動させて隠し扉を発見する。多分、獣人となったことで発露したんだろうな、このスキル。
扉を開いて、中へと降りていく。
中はすぐに嫌なにおいで充満していて、鼻が曲がりそうになってくる。おそらく、捕らえた魔族をここでひどい目に遭わせているのだろう。
長い階段と通路を通り抜けると、牢屋が広がっている。その中の一つを見ると、見たことのある姿が発見できた。
「コモヤ」
「ま、魔王様?!」
俺の呼び掛けにすぐに反応するコモヤ。多少の傷はあるが、まだまだ元気そうだ。
「助けに来た。すぐに出してやるからな」
「いけません、魔王様。この牢屋は……」
コモヤが何かを言いかけるが、ピエラはにこにことしながら杖を牢屋の錠前に当てる。
「アンロック」
魔法を使った瞬間、カチャリと音がして牢屋がすんなりと開いてしまった。
「え、ええ?」
「私は人間の魔法使いですからね。聖国の錠前なんて問題にしませんよ」
扉が開き、コモヤが外へと出る。俺の懐に忍んでいた小動物が顔を覗かせ、コモヤへと飛び移る。ここは魔族が閉じ込められているせいか、聖気が弱まっているから平気なようだった。
「そっか、無事に役目を果たしたのですね。うん、いい子いい子」
頬をこすりつけるコモヤ。使い魔ともども嬉しそうだ。
「喜ぶのはまだ早いぞ。どうにかしてここから脱出しなければな」
「はい、魔王様」
「動けるか?」
「問題ありません」
俺たちはコモヤを連れてきた道を戻っていく。出口がない以上、入口に向かうしかないのだ。
そろそろ廊下に出る。その時だった。
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扉から出た瞬間、俺たちは聖国の兵士たちに取り囲まれてしまっていたのだった。
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