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第一章 大陸編
第151話 転生者、神殿で暴れる
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隠された地下牢から戻って来た俺たちを待っていたのは、聖国の兵士たちだった。どうやら俺たちの魔力をかぎつけてやって来たようである。
「おいおい、ほぼ待ち伏せじゃねーか。早えな、おい」
「感心してる場合? さっさと脱出するわよ」
俺が表情を歪ませていると、ピエラからマジレスされた。まったく、さすがは俺と一緒に魔王を討っただけのことはあるぜ。
「いたぞ、捕らえろ!」
「はっ!」
俺たちに対して衛兵が襲い掛かってくる。
コモヤを助けに来ただけなので、できれば戦いたくはないのだが、すでに囲まれてしまっている状況ではそうもいかない。
デザストレとコモヤはここでは力を発揮できないようだし、俺とピエラでどうにか切り抜けるしかなかった。
「魔族風情が、この聖国を無事に脱出できると思うなよ!」
「お前たち魔族の力を弱体化させる結界が張ってあるのだ。おとなしくこの場で切り捨てられろ!」
聖国の兵士たちが押し寄せてくる中、さすがに覚悟を決めるしかなかった。
「ああ、もう。やるしかないよな」
「そのようね。いきましょう」
聖国を敵に回す覚悟を決めて、俺たちは徹底的に抵抗する。
デザストレとコモヤが動きづらそうにする中、どういうわけか俺は普通に動けている。獣人の動体視力もあってか、兵士たちの攻撃がスローモーションに見えるくらいに影響がない。
俺は兵士たちの攻撃をいなすと、武器を叩き落として無力化する。殺すなどもってのほかだ。
聖国に侵入した時点で敵対化は確実だろうが、禍根は大きくしたくないからな。
獣人化した時点で、俺の攻撃手段は剣から体術へと変化している。前世では習ったこともない武道の技が、こうも簡単に出てくるとは驚きだな。
「ぐふっ」
「かはっ!」
実に滑らかな動作で聖国の兵士たちを吹き飛ばしていく。普段はあまり意識していないしっぽも、今は体の一部としてきっちり機能している。
「くそ、なんだこの獣人は。なぜ動けるんだ」
明らかに動きがスムーズゆえに、聖国の兵士たちが驚いている。
「その獣人の女は後回しだ。後ろの男女を狙え」
「はっ!」
俺やピエラに勝てないと見るや否や、結界の影響で動きが鈍っているデザストレとコモヤに狙いを切り替える。
二人を捕らえて、人質にするつもりなのだろう。
はっ、そうはいくものかってものだ。
「デザストレ、お前はこの程度なのか? 厄災としての力を見せてやれ!」
聖国の結界に苦しんでいるデザストレは、俺の言葉にカチンと来たようだ。
「いいだろう。この煩わしい結界とやらは深いそのものだったからな。この程度で俺の厄災を止められると思うな!」
デザストレから闇の魔力が一気に噴き出す。
「きゃあっ!」
隣に立っていたコモヤは、つい悲鳴を上げてしまう。だが、しっかりとデザストレにしがみついているので、どうにか魔力に吹き飛ばされずにすんだ。
「魔王にそうとまで言われちゃあ、俺様の力を見せぬわけにはいかないな。人間ども覚悟しろ。殺しはしないが、地獄を見せてやるぜ」
「ま、魔王?! どこにいるんだ」
兵士たちはデザストレの宣言よりも魔王という単語の方に驚いていた。
「おい、お前ら! 少しは俺に恐怖しろ」
あまりの反応に、デザストレはうっ憤が溜まっていっている。
「ぶっぱしてやれ、殺さなければ、どんだけ痛めつけてもいい。どうせ傷は治せるからな」
「はっ、分かったぜ」
俺が許可を出すと、今までに見た事ないくらいに生き生きとした表情を見せている。
俺の配下に置かれて、相当に溜まってたんだろうな。
「俺様の厄災の力の前には、どのような聖なる力も無力だ。さぁ、恐怖を見せてやろう」
デザストレから湧き上がる暗黒の魔力に、狙いを切り替えた兵士たちがたじろいでいる。
俺たちの抵抗にあい、いよいよ事態がこう着状態に陥ってしまう。
「あなたたち、そこで何をしているのですか!」
そこに、女性の声が響き渡る。
聖国の兵士たちが一斉に顔を向けると、続けて跪いていく。一体どうしたというのか。
「聖王様にご報告いたします」
おい、今まで交戦していた俺たちを目の前に、その無防備はいいのか?
何なら今すぐにでも逃げてやるぞ。
だが、次の言葉を聞いて俺は思わず動きを止めてしまう。
「報告は後で聞きます。そちらは南方王国のセイ・コングラートとピエラ・ハミングウェイですね。噂は聞いておりますとも」
「なっ、俺たちを知っているのか?」
俺の問い掛けに、聖王と呼ばれた女性が黙って頷いている。
「しかし、こいつらは侵入者ですぞ、聖王様」
「この者たちの処遇については、私に預からせて下さい」
兵士が苦言を入れると、聖王はぴしゃりと言い切っている。
聖王に言われてしまえば、一介の兵士ではもう何も言い返せない。兵士は黙り込んでしまった。
「さあ、四人とも私の部屋まで来て下さい。お話はそこですべて伺います」
聖王の申し出に、俺たちは顔を見合わせる。
この状況を抜け出せるのならと、俺たちは聖王からの提案を受け入れた。
話がまとまると、集まってきた兵士たちは数名を残して持ち場に戻っていく。残った数名の兵士とともに、俺たちは聖王の案内で神殿の中を歩き始めたのだった。
「おいおい、ほぼ待ち伏せじゃねーか。早えな、おい」
「感心してる場合? さっさと脱出するわよ」
俺が表情を歪ませていると、ピエラからマジレスされた。まったく、さすがは俺と一緒に魔王を討っただけのことはあるぜ。
「いたぞ、捕らえろ!」
「はっ!」
俺たちに対して衛兵が襲い掛かってくる。
コモヤを助けに来ただけなので、できれば戦いたくはないのだが、すでに囲まれてしまっている状況ではそうもいかない。
デザストレとコモヤはここでは力を発揮できないようだし、俺とピエラでどうにか切り抜けるしかなかった。
「魔族風情が、この聖国を無事に脱出できると思うなよ!」
「お前たち魔族の力を弱体化させる結界が張ってあるのだ。おとなしくこの場で切り捨てられろ!」
聖国の兵士たちが押し寄せてくる中、さすがに覚悟を決めるしかなかった。
「ああ、もう。やるしかないよな」
「そのようね。いきましょう」
聖国を敵に回す覚悟を決めて、俺たちは徹底的に抵抗する。
デザストレとコモヤが動きづらそうにする中、どういうわけか俺は普通に動けている。獣人の動体視力もあってか、兵士たちの攻撃がスローモーションに見えるくらいに影響がない。
俺は兵士たちの攻撃をいなすと、武器を叩き落として無力化する。殺すなどもってのほかだ。
聖国に侵入した時点で敵対化は確実だろうが、禍根は大きくしたくないからな。
獣人化した時点で、俺の攻撃手段は剣から体術へと変化している。前世では習ったこともない武道の技が、こうも簡単に出てくるとは驚きだな。
「ぐふっ」
「かはっ!」
実に滑らかな動作で聖国の兵士たちを吹き飛ばしていく。普段はあまり意識していないしっぽも、今は体の一部としてきっちり機能している。
「くそ、なんだこの獣人は。なぜ動けるんだ」
明らかに動きがスムーズゆえに、聖国の兵士たちが驚いている。
「その獣人の女は後回しだ。後ろの男女を狙え」
「はっ!」
俺やピエラに勝てないと見るや否や、結界の影響で動きが鈍っているデザストレとコモヤに狙いを切り替える。
二人を捕らえて、人質にするつもりなのだろう。
はっ、そうはいくものかってものだ。
「デザストレ、お前はこの程度なのか? 厄災としての力を見せてやれ!」
聖国の結界に苦しんでいるデザストレは、俺の言葉にカチンと来たようだ。
「いいだろう。この煩わしい結界とやらは深いそのものだったからな。この程度で俺の厄災を止められると思うな!」
デザストレから闇の魔力が一気に噴き出す。
「きゃあっ!」
隣に立っていたコモヤは、つい悲鳴を上げてしまう。だが、しっかりとデザストレにしがみついているので、どうにか魔力に吹き飛ばされずにすんだ。
「魔王にそうとまで言われちゃあ、俺様の力を見せぬわけにはいかないな。人間ども覚悟しろ。殺しはしないが、地獄を見せてやるぜ」
「ま、魔王?! どこにいるんだ」
兵士たちはデザストレの宣言よりも魔王という単語の方に驚いていた。
「おい、お前ら! 少しは俺に恐怖しろ」
あまりの反応に、デザストレはうっ憤が溜まっていっている。
「ぶっぱしてやれ、殺さなければ、どんだけ痛めつけてもいい。どうせ傷は治せるからな」
「はっ、分かったぜ」
俺が許可を出すと、今までに見た事ないくらいに生き生きとした表情を見せている。
俺の配下に置かれて、相当に溜まってたんだろうな。
「俺様の厄災の力の前には、どのような聖なる力も無力だ。さぁ、恐怖を見せてやろう」
デザストレから湧き上がる暗黒の魔力に、狙いを切り替えた兵士たちがたじろいでいる。
俺たちの抵抗にあい、いよいよ事態がこう着状態に陥ってしまう。
「あなたたち、そこで何をしているのですか!」
そこに、女性の声が響き渡る。
聖国の兵士たちが一斉に顔を向けると、続けて跪いていく。一体どうしたというのか。
「聖王様にご報告いたします」
おい、今まで交戦していた俺たちを目の前に、その無防備はいいのか?
何なら今すぐにでも逃げてやるぞ。
だが、次の言葉を聞いて俺は思わず動きを止めてしまう。
「報告は後で聞きます。そちらは南方王国のセイ・コングラートとピエラ・ハミングウェイですね。噂は聞いておりますとも」
「なっ、俺たちを知っているのか?」
俺の問い掛けに、聖王と呼ばれた女性が黙って頷いている。
「しかし、こいつらは侵入者ですぞ、聖王様」
「この者たちの処遇については、私に預からせて下さい」
兵士が苦言を入れると、聖王はぴしゃりと言い切っている。
聖王に言われてしまえば、一介の兵士ではもう何も言い返せない。兵士は黙り込んでしまった。
「さあ、四人とも私の部屋まで来て下さい。お話はそこですべて伺います」
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この状況を抜け出せるのならと、俺たちは聖王からの提案を受け入れた。
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