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第一章 大陸編
第166話 転生者、聖王候補を連れてくる
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さすがに聖国側の緩衝地帯の街の建設は時間がかかっている。材料を作るのは魔族とはいえ、聖国側で作業をするのは人間ばかりだ。魔法を使える者がいたとしても、その効率は明らかに魔族に劣る。
すでに魔族側の街が完成するまでにかかった日数を超えているが、進捗としては半分に到達したかどうかといったところだろう。
それでも、普通の街の建設に比べれば十分に速いがな。
街の建設は中心部分から周辺部へと順番に行われていく。これは当然の手順で、外から建設していくと、中への資材の運び入れが難しくなっていくからだ。完成した家屋に資材をぶつけて倒壊なんてこともあり得るからな。
それに、街の中心部には重要な設備が集中する。街を治める者の屋敷、商業や兵士たちを管理する場所などだ。それゆえに、最優先で建設を進めていくというわけなのだ。
国境までの道もすっかりでき上がっているので、ここまでくればあとは一般住民たちの居住地くらいだろう。どんな街であろうと宿や食堂はあるし、そういった場所の従業員たちの家というのは必要だからな。
「いやはや、魔族たちが頑張って建築資材を作ってくれるおかげで、ほぼほぼ終わってしまいましたな」
フラウゼル伯爵はご機嫌なようだった。
その理由はなんとなく分かる。俺だって貴族の嫡男だったんだからな。
大規模な街を造るとなると、木材に石材が大量に必要となる。だが、その準備も運搬も重労働であるので、そんなにほいほいと街を造るなんて話には普通は乗れないからな。
そして、建設するとなればその近所で材料を調達することになる。今回指定した場所は周りに何もないような場所だから、フラウゼル伯爵もいろいろと覚悟したはずだ。
ところがどっこい、ふたを開けてみれば予想外なことが待ち受けていた。
俺たち魔族側が資材を全部用意してくれているんだからな。おかげで、運搬に割く時間と人員を大幅に減らすことができた。ついでに言えば、その分建設にかかる時間も減る。それは手放しで喜ぶというものだ。
とはいっても、魔族は聖国の地に踏み入れられないので、現場までの運搬と建設は聖国の人間でやるしかないんだがな。俺しか入れないんだよ。
なんだかんだ言っているうちに建設もほぼ終わりが近付いてきた。フラウゼル伯爵は建設現場の監督として来ていたらしく、終わる頃になってもそのまま滞在を続けていた。
「魔王殿、ちょっとよろしいでしょうかな」
「うん、何かな」
俺たちの方でやることがなくなってきたので街の管理をする魔族以外引き揚げさせようとしていた時、フラウゼル伯爵がデイジーを連れてやって来た。
「よければ、一度デイジーに魔王領の中を見せてやって欲しいのです。魔王殿なら十分信用できますし、娘のためにもなるかと思いますので」
「いいのか?」
俺はフラウゼル伯爵ではなくデイジーの方を見る。急に視線を向けられたことで、デイジーは表情を強張らせていた。見た感じ、緊張しているように思える。
デイジーはひと呼吸すると、しっかりと俺の方を見てくる。
「はい。聖王の候補の一人として、魔族たちの国をしっかり見ておきたいと思います」
その表情はキリッと引き締まっていた。とても十代前半とは思えないくらいに、並々ならぬ決意を持っているようだった。
「分かった。魔族たちにはちゃんと言い聞かせておくから、安心しておいてくれ。何かされるようなら、遠慮なく俺に伝えてくれよ」
「ありがとうございます、お姉ちゃん」
元気よく返事をしてくるデイジー。お姉ちゃんと呼ばれるのはくすぐったいけれど、なんとも将来が楽しみな子のようだ。
話もまとまったことで、俺はフラウゼル伯爵と魔族側の緩衝地帯の責任者を呼んで話をする。
「俺はこれから部下たちとデイジーを連れて魔王城へと戻る。ここのことは頼んだぞ」
「はっ、お任せ下さい。魔王様がなされてきたこと、無駄にせぬように尽力致します」
「娘のことをよろしくお願い致しますぞ、魔王殿」
二人の話を聞いて、俺は無言で頷いておく。
「さて、ここから魔王城まで歩くことになるが、つらいようだったら言ってくれ。俺の魔法でどうとでもできるからな」
「はい、もしもの時はお願いします」
「よし、それじゃ魔王城に向けて出発するぞ!」
デイジーに念のための確認をすると、俺たちは魔王城へと向けて歩き出す。
さすがに聖国出身のデイジーを連れて純魔族の集落には寄れない。そのために少々ばかりの迂回をすることになる。延びても一日くらいだろうが、それが人間であるデイジーにどれだけ影響が出るかは分からない。
念のためにドライアドにケアは頼んでおくが、どうなるやらな。
いろいろと気にはなったものの、この長い道程をデイジーは無事に踏破してみせていた。幼いながらも思った以上に根性があったようだった。
前世で言うところの約一か月ぶりに、俺たちは魔王城へと戻ってきた。
「ここが、魔王城……」
「そうだ。ようこそ、未来の聖王様」
城を見上げて立ち尽くすデイジーに、俺は精一杯丁寧な挨拶をするのだった。
すでに魔族側の街が完成するまでにかかった日数を超えているが、進捗としては半分に到達したかどうかといったところだろう。
それでも、普通の街の建設に比べれば十分に速いがな。
街の建設は中心部分から周辺部へと順番に行われていく。これは当然の手順で、外から建設していくと、中への資材の運び入れが難しくなっていくからだ。完成した家屋に資材をぶつけて倒壊なんてこともあり得るからな。
それに、街の中心部には重要な設備が集中する。街を治める者の屋敷、商業や兵士たちを管理する場所などだ。それゆえに、最優先で建設を進めていくというわけなのだ。
国境までの道もすっかりでき上がっているので、ここまでくればあとは一般住民たちの居住地くらいだろう。どんな街であろうと宿や食堂はあるし、そういった場所の従業員たちの家というのは必要だからな。
「いやはや、魔族たちが頑張って建築資材を作ってくれるおかげで、ほぼほぼ終わってしまいましたな」
フラウゼル伯爵はご機嫌なようだった。
その理由はなんとなく分かる。俺だって貴族の嫡男だったんだからな。
大規模な街を造るとなると、木材に石材が大量に必要となる。だが、その準備も運搬も重労働であるので、そんなにほいほいと街を造るなんて話には普通は乗れないからな。
そして、建設するとなればその近所で材料を調達することになる。今回指定した場所は周りに何もないような場所だから、フラウゼル伯爵もいろいろと覚悟したはずだ。
ところがどっこい、ふたを開けてみれば予想外なことが待ち受けていた。
俺たち魔族側が資材を全部用意してくれているんだからな。おかげで、運搬に割く時間と人員を大幅に減らすことができた。ついでに言えば、その分建設にかかる時間も減る。それは手放しで喜ぶというものだ。
とはいっても、魔族は聖国の地に踏み入れられないので、現場までの運搬と建設は聖国の人間でやるしかないんだがな。俺しか入れないんだよ。
なんだかんだ言っているうちに建設もほぼ終わりが近付いてきた。フラウゼル伯爵は建設現場の監督として来ていたらしく、終わる頃になってもそのまま滞在を続けていた。
「魔王殿、ちょっとよろしいでしょうかな」
「うん、何かな」
俺たちの方でやることがなくなってきたので街の管理をする魔族以外引き揚げさせようとしていた時、フラウゼル伯爵がデイジーを連れてやって来た。
「よければ、一度デイジーに魔王領の中を見せてやって欲しいのです。魔王殿なら十分信用できますし、娘のためにもなるかと思いますので」
「いいのか?」
俺はフラウゼル伯爵ではなくデイジーの方を見る。急に視線を向けられたことで、デイジーは表情を強張らせていた。見た感じ、緊張しているように思える。
デイジーはひと呼吸すると、しっかりと俺の方を見てくる。
「はい。聖王の候補の一人として、魔族たちの国をしっかり見ておきたいと思います」
その表情はキリッと引き締まっていた。とても十代前半とは思えないくらいに、並々ならぬ決意を持っているようだった。
「分かった。魔族たちにはちゃんと言い聞かせておくから、安心しておいてくれ。何かされるようなら、遠慮なく俺に伝えてくれよ」
「ありがとうございます、お姉ちゃん」
元気よく返事をしてくるデイジー。お姉ちゃんと呼ばれるのはくすぐったいけれど、なんとも将来が楽しみな子のようだ。
話もまとまったことで、俺はフラウゼル伯爵と魔族側の緩衝地帯の責任者を呼んで話をする。
「俺はこれから部下たちとデイジーを連れて魔王城へと戻る。ここのことは頼んだぞ」
「はっ、お任せ下さい。魔王様がなされてきたこと、無駄にせぬように尽力致します」
「娘のことをよろしくお願い致しますぞ、魔王殿」
二人の話を聞いて、俺は無言で頷いておく。
「さて、ここから魔王城まで歩くことになるが、つらいようだったら言ってくれ。俺の魔法でどうとでもできるからな」
「はい、もしもの時はお願いします」
「よし、それじゃ魔王城に向けて出発するぞ!」
デイジーに念のための確認をすると、俺たちは魔王城へと向けて歩き出す。
さすがに聖国出身のデイジーを連れて純魔族の集落には寄れない。そのために少々ばかりの迂回をすることになる。延びても一日くらいだろうが、それが人間であるデイジーにどれだけ影響が出るかは分からない。
念のためにドライアドにケアは頼んでおくが、どうなるやらな。
いろいろと気にはなったものの、この長い道程をデイジーは無事に踏破してみせていた。幼いながらも思った以上に根性があったようだった。
前世で言うところの約一か月ぶりに、俺たちは魔王城へと戻ってきた。
「ここが、魔王城……」
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