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第一章 大陸編
第176話 転生者、嫉妬する
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翌日、魔王領の馬車で魔王城を発つ。
魔族たちの使う馬はそこらの馬とはわけが違う。体が大きく力強いので、人間たちの国に暮らす馬とは圧倒的に力が違うのだ。
「うわぁ、速い」
馬車に乗るデイジーははしゃいでいた。
歩いている時とは比較的にならない速さで、馬車の外の景色が飛ぶように過ぎ去っていく。
8日程度かけて歩いてきた道のりを、魔王領の馬車はたったの3日で駆け抜けてしまった。
目の前にはあっという間に緩衝地帯の街並みが見えてきた。
「もう、着いちゃったのですか?」
「ああ、そうだよ。あれが国境、緩衝地帯の街だ」
馬車は緩衝地帯の街の入口で止まる。
俺が姿を見せると、門番が揃って敬礼をしてきた。
「魔王様、異常ございません!」
「うむ、ご苦労。中に入って大丈夫か」
「はい、問題ございません。どうぞ、お入り下さい」
門番が横にどいて道を開ける。
馬車がゆっくりと中へと進んでいき、目指すは魔王領側の領主の館だ。
領主の館は、国境の監視を行う意味合いがあるので、国境付近に建てられている。これは聖国側も同じである。
領主の館に足を踏み入れると、一人の魔族が出迎えのためか玄関に立っていた。
「ようこそ魔王様。長旅お疲れでしょうから、すぐさま中にご案内致します」
「ああ、頼む」
俺がお願いすると、目の前の魔族は俺たちを館の中へと案内する。
「そういえば、正式な領主をまだ任命していなかったな。あれこれ考えすぎていて、つい忘れてしまっていたな」
「左様でございますね。一応、現在はわたくしが担当しております。ああ、申し遅れました、魔王様。わたくし、土木班を束ねる純魔族のスコールと申します。以後、お見知りおきを」
「おや、純魔族が土木班をまとめていたのか。てっきり純魔族は俺に反発していると思ったんだがな」
「いえいえ、滅相もございません。私はヒョウム様よりも、お嬢様であられるキリエ様を支持しておりますゆえ、魔王様への反発は特にございません。それに、友人であるバフォメットも魔王様の支持に回っておられるのですから、わたくしに反発する理由などございませんよ」
スコールは、実に低姿勢で俺に話し掛けてきている。
ちらりとデイジーを見てみるが、デイジーは真っすぐスコールを見ている。表情は険しいので、デイジーからすればスコールは信用できないといったところだろう。
基本的に聖国の人間と魔族との相性はよろしくない。それがここで出てしまったという感じだった。
俺がちらりとスコールに目を向けるが、肝心のスコールの笑顔は崩れていなかった。
「聖国の方が我々を信用できないというのは織り込み済みでございます。ですので、わたくしとしては誠心誠意でもって対応をさせて頂きたく思っております」
口調も態度も実に丁寧だ。バフォメットとは友人関係であるようだが、これは本人に確認してみるのが一番だろうかな。
俺たちは領主邸の会議室へとやって来た。
魔王である俺が正面の席に座り、右隣にスコール、左隣にピエラ、デイジーが座る。
しばらくすると紅茶とお菓子が運ばれてくる。
「魔王様、ピエラ様、ようこそお越し下さいました。それと、聖国の少女もようこそおいで下さいました。こちらは私たち土木班が育てた植物で作ったものとなります。ドライアドの得意技ですからね」
目の前の女性はドライアドらしい。今まで見てきたドライアドの誰よりも人間に近しい姿をしていた。
「ああ、この子はわたくしの妻ですよ。わたくしの魔力の影響で、通常のドライアドとは違った姿になっているのです」
「初めまして、魔王様。スコール卿の妻でリールと申します。以後、お見知りおきを」
「ああ、よろしく頼むよ」
丁寧な挨拶に、俺も挨拶を返す。
「へえ、他種族との結婚というのもあるんだな」
「意外とございますよ。バフォメットもああ見えて純魔族と獣人の混血でございますし」
「ああ、やっぱりそうなんだな」
バフォメットの外見を思い出して、なんとなく納得がいった。
「わたくしの妻は、わたくしと結婚したことで魔力が強まりましてね。ドライアドとしてもかなり強力な能力の持ち主ですよ」
「いやですわ、あなた。褒めても何も出ませんよ」
なんだろうか……。
俺たちは今、目の前で夫婦のいちゃつきを見せられているようだ。
なんだかむしゃくしゃしてきたぞ、おい。
イラッときてしまった俺は、両手をテーブルについて立ち上がる。
「よし、この緩衝地帯の魔王領側の領主はお前だ、スコール」
「はっ、なんですと?!」
「ちょっと、セイ。いくらなんでも急過ぎないかしら」
「どうしちゃったんですか、お姉ちゃん」
俺の急な発言に、スコール、ピエラ、デイジーの三人がほぼ同時に反応を示していた。
「いや、もうなんていうか、ここの主みたいな振る舞いしてるじゃないか。まだまだ俺は魔族たちのことが把握できてないし、バフォメットの知り合いというならそれだけでも十分信用に値する」
テーブルに両手をついたまま、俺はじっとスコールの顔を見る。少々ばかり鋭かったのか、スコールは気圧されているようだった。
しばらく黙っていたスコールだったが、根負けしたらしくて肩を落としていた。
「承知致しました。わたくしでよければ、この緩衝地帯の統治を任されようと思います。妻もいますし、必ずや魔王様のご期待にそってみせましょう」
スコールは深々と頭を下げていた。
ほぼなりゆきではあったものの、これで緩衝地帯の統治も問題はないだろう。何かあればバフォメットを頼れとは言っておいたしな。
話がまとまった俺たちは、デイジーを聖国側に返すために、久しぶりに聖国の地へと足を踏み入れたのだった。
魔族たちの使う馬はそこらの馬とはわけが違う。体が大きく力強いので、人間たちの国に暮らす馬とは圧倒的に力が違うのだ。
「うわぁ、速い」
馬車に乗るデイジーははしゃいでいた。
歩いている時とは比較的にならない速さで、馬車の外の景色が飛ぶように過ぎ去っていく。
8日程度かけて歩いてきた道のりを、魔王領の馬車はたったの3日で駆け抜けてしまった。
目の前にはあっという間に緩衝地帯の街並みが見えてきた。
「もう、着いちゃったのですか?」
「ああ、そうだよ。あれが国境、緩衝地帯の街だ」
馬車は緩衝地帯の街の入口で止まる。
俺が姿を見せると、門番が揃って敬礼をしてきた。
「魔王様、異常ございません!」
「うむ、ご苦労。中に入って大丈夫か」
「はい、問題ございません。どうぞ、お入り下さい」
門番が横にどいて道を開ける。
馬車がゆっくりと中へと進んでいき、目指すは魔王領側の領主の館だ。
領主の館は、国境の監視を行う意味合いがあるので、国境付近に建てられている。これは聖国側も同じである。
領主の館に足を踏み入れると、一人の魔族が出迎えのためか玄関に立っていた。
「ようこそ魔王様。長旅お疲れでしょうから、すぐさま中にご案内致します」
「ああ、頼む」
俺がお願いすると、目の前の魔族は俺たちを館の中へと案内する。
「そういえば、正式な領主をまだ任命していなかったな。あれこれ考えすぎていて、つい忘れてしまっていたな」
「左様でございますね。一応、現在はわたくしが担当しております。ああ、申し遅れました、魔王様。わたくし、土木班を束ねる純魔族のスコールと申します。以後、お見知りおきを」
「おや、純魔族が土木班をまとめていたのか。てっきり純魔族は俺に反発していると思ったんだがな」
「いえいえ、滅相もございません。私はヒョウム様よりも、お嬢様であられるキリエ様を支持しておりますゆえ、魔王様への反発は特にございません。それに、友人であるバフォメットも魔王様の支持に回っておられるのですから、わたくしに反発する理由などございませんよ」
スコールは、実に低姿勢で俺に話し掛けてきている。
ちらりとデイジーを見てみるが、デイジーは真っすぐスコールを見ている。表情は険しいので、デイジーからすればスコールは信用できないといったところだろう。
基本的に聖国の人間と魔族との相性はよろしくない。それがここで出てしまったという感じだった。
俺がちらりとスコールに目を向けるが、肝心のスコールの笑顔は崩れていなかった。
「聖国の方が我々を信用できないというのは織り込み済みでございます。ですので、わたくしとしては誠心誠意でもって対応をさせて頂きたく思っております」
口調も態度も実に丁寧だ。バフォメットとは友人関係であるようだが、これは本人に確認してみるのが一番だろうかな。
俺たちは領主邸の会議室へとやって来た。
魔王である俺が正面の席に座り、右隣にスコール、左隣にピエラ、デイジーが座る。
しばらくすると紅茶とお菓子が運ばれてくる。
「魔王様、ピエラ様、ようこそお越し下さいました。それと、聖国の少女もようこそおいで下さいました。こちらは私たち土木班が育てた植物で作ったものとなります。ドライアドの得意技ですからね」
目の前の女性はドライアドらしい。今まで見てきたドライアドの誰よりも人間に近しい姿をしていた。
「ああ、この子はわたくしの妻ですよ。わたくしの魔力の影響で、通常のドライアドとは違った姿になっているのです」
「初めまして、魔王様。スコール卿の妻でリールと申します。以後、お見知りおきを」
「ああ、よろしく頼むよ」
丁寧な挨拶に、俺も挨拶を返す。
「へえ、他種族との結婚というのもあるんだな」
「意外とございますよ。バフォメットもああ見えて純魔族と獣人の混血でございますし」
「ああ、やっぱりそうなんだな」
バフォメットの外見を思い出して、なんとなく納得がいった。
「わたくしの妻は、わたくしと結婚したことで魔力が強まりましてね。ドライアドとしてもかなり強力な能力の持ち主ですよ」
「いやですわ、あなた。褒めても何も出ませんよ」
なんだろうか……。
俺たちは今、目の前で夫婦のいちゃつきを見せられているようだ。
なんだかむしゃくしゃしてきたぞ、おい。
イラッときてしまった俺は、両手をテーブルについて立ち上がる。
「よし、この緩衝地帯の魔王領側の領主はお前だ、スコール」
「はっ、なんですと?!」
「ちょっと、セイ。いくらなんでも急過ぎないかしら」
「どうしちゃったんですか、お姉ちゃん」
俺の急な発言に、スコール、ピエラ、デイジーの三人がほぼ同時に反応を示していた。
「いや、もうなんていうか、ここの主みたいな振る舞いしてるじゃないか。まだまだ俺は魔族たちのことが把握できてないし、バフォメットの知り合いというならそれだけでも十分信用に値する」
テーブルに両手をついたまま、俺はじっとスコールの顔を見る。少々ばかり鋭かったのか、スコールは気圧されているようだった。
しばらく黙っていたスコールだったが、根負けしたらしくて肩を落としていた。
「承知致しました。わたくしでよければ、この緩衝地帯の統治を任されようと思います。妻もいますし、必ずや魔王様のご期待にそってみせましょう」
スコールは深々と頭を下げていた。
ほぼなりゆきではあったものの、これで緩衝地帯の統治も問題はないだろう。何かあればバフォメットを頼れとは言っておいたしな。
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