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第一章 大陸編
第193話 転生者、次の村に向かう
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欲しいものをひとつゲットした俺たち一行は、聖国側から段々と南下していく。
それにしても、西側に目をやると、南方王国の時と同じように山が連なっている景色がずっと続いていた。
「ますます箱庭じみてきたな……」
「どうなさいましたか、魔王様」
俺の呟きに、調子の戻ったバフォメットが反応する。
「いや、なんでもない。次はどこなんだ?」
心配させるつもりはないので、適当にごまかして話題を切り替える。
その際に、バフォメットはちらりとマネケンへと視線を向けていた。どうやら、二人で事前に打ち合わせをしていたらしい。
「次は南西部の村ですね。南半分の穀倉地帯になります。今回は主だって魔王殿の希望に沿うように案内するおつもりですから」
「そうか。欲しいものがあったとしても、俺はみんなに負担をかけるつもりはないぞ。できる範囲でやってくれるのが一番だ」
「お気遣い、ありがとうございます」
その後もマネケンからいろいろと話を聞きつつ、俺たちを乗せた馬車は目的地の村へと向かって走り続けた。
さすがは魔王領の馬車というところ。最初の目的の時もそうだったが、今回もまったく悪路をものともせず、人間たちの馬車の半分以下の時間で次の目的地に着いてしまった。
二番目に訪れた村は、穀倉地帯とは言っていたものの、家畜を育てる畜産も行っているようだった。そのせいで村とはいえ、その敷地はかなり大きいようだった。
「この村は、西方王国で使う馬の生産もしております。通常魔族たちにそれを教えるというのは、自分たちの弱点をさらすことでもあるのですが、今の魔王殿たちにそれだけ信用があるということでございます」
「その評価は嬉しい限りだな。まあ案内を頼む」
「承知致しました」
馬車を邪魔にならないところに止めて、俺たちは村へと向かう。
マネケンが先頭にいるということもあってか、俺たち魔族の姿に驚く村人たちもすぐさま落ち着きを取り戻していた。
村人たちは取引の関係で大臣のことをよく知っているみたいで、そのいった背景から大臣の姿を見て安心するのである。
さて、それはさておき、俺たちはまずは村長に挨拶に向かう。
ああ、前の村でもちゃんと村長に最初に挨拶はしておいたぞ。当然じゃないか。
挨拶を終えると、村長も交えて村の案内が始まる。
家畜の類は馬に鶏に牛に羊とヤギと、大体前世の世界と変わらない感じだな。これは南方王国はほとんど変わらないが、鶏がいるのは驚いた。
鶏がいるのに卵の流通はないんだな。やっぱり、雑菌が問題だろうかな。ま、それはこっちのクルクーの卵があるから問題ないか。
でも、牛やヤギがいるということはミルクやチーズ、それにバターといったものが作れるということだ。これができれば、さらに料理の幅が広がるのは間違いない。
ダズーと比べればチーズ以外は日持ちがしないので、運搬は無理だろう。チーズってあるのかなと、いろいろ気になってくる。
「魔王様、一体どうなされたのですか」
俺が難しい顔をしているので、バフォメットが気になって声をかけてきたようだ。
「いや、牛やヤギのミルクってどうしているのかと思ってな」
「ああ、ミルクでございますか。基本的には近隣で飲む分くらいでございますね。傷むのが早いので、王都に運ばれてくるのはまれでございます」
「そうか……」
マネケンの答えに、ちょっと考え込んでしまう。
うん、もったいないな。
「魔王様、何かお考えでも?」
「ああ、俺はミルクの加工品について知っているものがあるんだ。ただ、作り方をど忘れしちまったんだがな」
バフォメットの問い掛けに、俺は腕を組んで唸りながら答えている。
必死に作り方を思い出そうとしているんだよ。これでも自炊していた頃は作ろうと思ってたくらいだからな。
確か、カビかなんかを作用させて固めるんだっけかな。う~ん、思い出せない。
「まあ、余っているなら俺に預けておくれ。ちょっと時間がかかるかもしれないが、新たな使い方を必ず見つけ出してみせるからさ」
「分かりました。毎度捨てるのがもったいないと思ってましたからね。水代わりに与えても余るっているのが現状ですから」
村長は俺に対して頭を下げてきた。
この光景には、周りの村人が驚いていた。いやまぁ、魔族に対しておとなしく頭を下げるというのは、やっぱり人間には受け入れにくいところがあるんだろうな。
いろいろと話をしながら、俺たちは馬小屋にやって来た。ここが西方王国の交通の要ともいえる馬を生み出している牧場というわけか。
馬たちは実にのびのびとした様子だ。
「馬たちだけじゃなくて、ここの家畜の餌は村で採れたものを使っております。見ていかれますか?」
「ああ、見させてもらおう」
淡い期待がある俺は、村長の質問に即答だった。
もちろん、その期待というのは米だ。ここまで散々馬の餌で米を見てきてるんだからな。
村長が村で採れたものと言った時点で期待しかなかった。
「やはりあったか……」
俺は餌の中に紛れ込んだ米粒を発見する。
米粒をすくい上げると、村長に質問をする。
「なあ、この粒の植物って、村にあるのか?」
「ちょっとよく見せて下さいな」
村長が俺の手の上にある粒をじっと見る。肉球の上だからよく見えるはずなんだがな。
しばらく見ていた村長からは、ついに期待してた答えが返ってきた。
「ええ、ございますよ」
俺はつい、心の中でガッツポーズを決めたのだった。
それにしても、西側に目をやると、南方王国の時と同じように山が連なっている景色がずっと続いていた。
「ますます箱庭じみてきたな……」
「どうなさいましたか、魔王様」
俺の呟きに、調子の戻ったバフォメットが反応する。
「いや、なんでもない。次はどこなんだ?」
心配させるつもりはないので、適当にごまかして話題を切り替える。
その際に、バフォメットはちらりとマネケンへと視線を向けていた。どうやら、二人で事前に打ち合わせをしていたらしい。
「次は南西部の村ですね。南半分の穀倉地帯になります。今回は主だって魔王殿の希望に沿うように案内するおつもりですから」
「そうか。欲しいものがあったとしても、俺はみんなに負担をかけるつもりはないぞ。できる範囲でやってくれるのが一番だ」
「お気遣い、ありがとうございます」
その後もマネケンからいろいろと話を聞きつつ、俺たちを乗せた馬車は目的地の村へと向かって走り続けた。
さすがは魔王領の馬車というところ。最初の目的の時もそうだったが、今回もまったく悪路をものともせず、人間たちの馬車の半分以下の時間で次の目的地に着いてしまった。
二番目に訪れた村は、穀倉地帯とは言っていたものの、家畜を育てる畜産も行っているようだった。そのせいで村とはいえ、その敷地はかなり大きいようだった。
「この村は、西方王国で使う馬の生産もしております。通常魔族たちにそれを教えるというのは、自分たちの弱点をさらすことでもあるのですが、今の魔王殿たちにそれだけ信用があるということでございます」
「その評価は嬉しい限りだな。まあ案内を頼む」
「承知致しました」
馬車を邪魔にならないところに止めて、俺たちは村へと向かう。
マネケンが先頭にいるということもあってか、俺たち魔族の姿に驚く村人たちもすぐさま落ち着きを取り戻していた。
村人たちは取引の関係で大臣のことをよく知っているみたいで、そのいった背景から大臣の姿を見て安心するのである。
さて、それはさておき、俺たちはまずは村長に挨拶に向かう。
ああ、前の村でもちゃんと村長に最初に挨拶はしておいたぞ。当然じゃないか。
挨拶を終えると、村長も交えて村の案内が始まる。
家畜の類は馬に鶏に牛に羊とヤギと、大体前世の世界と変わらない感じだな。これは南方王国はほとんど変わらないが、鶏がいるのは驚いた。
鶏がいるのに卵の流通はないんだな。やっぱり、雑菌が問題だろうかな。ま、それはこっちのクルクーの卵があるから問題ないか。
でも、牛やヤギがいるということはミルクやチーズ、それにバターといったものが作れるということだ。これができれば、さらに料理の幅が広がるのは間違いない。
ダズーと比べればチーズ以外は日持ちがしないので、運搬は無理だろう。チーズってあるのかなと、いろいろ気になってくる。
「魔王様、一体どうなされたのですか」
俺が難しい顔をしているので、バフォメットが気になって声をかけてきたようだ。
「いや、牛やヤギのミルクってどうしているのかと思ってな」
「ああ、ミルクでございますか。基本的には近隣で飲む分くらいでございますね。傷むのが早いので、王都に運ばれてくるのはまれでございます」
「そうか……」
マネケンの答えに、ちょっと考え込んでしまう。
うん、もったいないな。
「魔王様、何かお考えでも?」
「ああ、俺はミルクの加工品について知っているものがあるんだ。ただ、作り方をど忘れしちまったんだがな」
バフォメットの問い掛けに、俺は腕を組んで唸りながら答えている。
必死に作り方を思い出そうとしているんだよ。これでも自炊していた頃は作ろうと思ってたくらいだからな。
確か、カビかなんかを作用させて固めるんだっけかな。う~ん、思い出せない。
「まあ、余っているなら俺に預けておくれ。ちょっと時間がかかるかもしれないが、新たな使い方を必ず見つけ出してみせるからさ」
「分かりました。毎度捨てるのがもったいないと思ってましたからね。水代わりに与えても余るっているのが現状ですから」
村長は俺に対して頭を下げてきた。
この光景には、周りの村人が驚いていた。いやまぁ、魔族に対しておとなしく頭を下げるというのは、やっぱり人間には受け入れにくいところがあるんだろうな。
いろいろと話をしながら、俺たちは馬小屋にやって来た。ここが西方王国の交通の要ともいえる馬を生み出している牧場というわけか。
馬たちは実にのびのびとした様子だ。
「馬たちだけじゃなくて、ここの家畜の餌は村で採れたものを使っております。見ていかれますか?」
「ああ、見させてもらおう」
淡い期待がある俺は、村長の質問に即答だった。
もちろん、その期待というのは米だ。ここまで散々馬の餌で米を見てきてるんだからな。
村長が村で採れたものと言った時点で期待しかなかった。
「やはりあったか……」
俺は餌の中に紛れ込んだ米粒を発見する。
米粒をすくい上げると、村長に質問をする。
「なあ、この粒の植物って、村にあるのか?」
「ちょっとよく見せて下さいな」
村長が俺の手の上にある粒をじっと見る。肉球の上だからよく見えるはずなんだがな。
しばらく見ていた村長からは、ついに期待してた答えが返ってきた。
「ええ、ございますよ」
俺はつい、心の中でガッツポーズを決めたのだった。
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