210 / 431
第一章 大陸編
第210話 転生者、光の空間に招かれる
しおりを挟む
急に光に包まれて、真っ白な世界に招かれてしまった俺とデザストレ。
目の前には、女性か男性かよく分からない人物が立っていた。
「……誰だ」
正直言って誰だか見当もつかない。なので、俺はストレートに質問をぶつけた。
まあ、想像できるものとしては、あの木に関係した何者かということくらいだな。
俺の目もきつい状態になっているが、それよりも後ろからものすごく敵意むき出しな魔力が流れてくる。デザストレはおそらく知ってるんだろうな、こいつのことを。
「そちらの人間もどきは、あの者の子か。久しいな」
「けっ、ここで会ったがお前の運の尽き! 俺を追放した恨みは忘れちゃいねえんだよ!」
なんかよく分からないことを叫んでいるな、デザストレは。
ただ、このまま放っておくと話がこじれそうだ。
「やめておけ、デザストレ」
「ぐえっ!!」
俺が首根っこをつかむと、デザストレは苦しそうにその場に座り込んだ。
「急に首を絞めるんじゃねえよ!」
「襟をつかんだだけだ。お前の勢いが強すぎただけだぞ」
漫才みたいなやり取りをしていると、目の前の人物が反応に困っているようだった。
「……そういうのが人間たちの間では流行っているのか?」
「いやぁ、別に流行っちゃいないさ」
俺は両手を広げながら困惑した顔で首を横に振っていた。
「そうですか。それでは話に入りましょうか」
目の前の人物は咳払いをして気を取り直していた。
「誰かと聞かれたので、名前を名乗りましょう。ですが、それはまずあなた方が名乗ってからです」
「それもそうだな。聞くからにはまずは自分から、そういうもんだったな」
俺は納得して姿勢を正す。
「俺はセイ。廃嫡されたのでこれが正式な名前だ。今は魔王をしている」
「デザストレだ。お前に名乗るのもおこがましいがな」
デザストレは腕を組んでそっぽを向いている。よっぽど目の前のやつとの因縁があると見受けられる。
「セイ……。そうですか、いい名ですね。それでは、私も名乗ると致しましょう。私の名前はレーヴェン。すべての命を司る者です」
「命を司る……」
「はい。私はこの地より、この世界のすべての命の営みを見ているのです。すべての命は私より生まれ、そして、私へと還ってくる。そういうものなのですよ」
命を司る者。まさかそんなものがいるとはな……。
驚きの余り、声が出ないってもんだ。
「見守るというだけで、特にかかわりあうつもりはございません。この世界にいる者たちが、私を感知できないのもそのせいです」
「なるほど、それでデザストレも見えなかったというわけか」
「はい。特に私とは真逆である混沌を司るあの者の関係者と会うわけには参りませんからね」
「どこのゲーム設定だよ、まったく……」
「げえむ?」
俺がぽつっと呟いた言葉に、レーヴェンが首を傾げながら反応している。
「あ、いや。なんでもない」
「……なるほど。あなたは私たちの理の外から来たのですね。私が見える理由がはっきりしましたよ」
レーヴェンはにこりと微笑んでいる。俺がイレギュラーな存在であるなら、消しにかかってくるくらいは覚悟したんだがな。
「言いましたよね、私はかかわりあうつもりはないと。理の外から来たとはいえ、あなたもまた、この世界の一部。私はただ見守るだけです」
どうやらその立場は崩すつもりはないようだ。
直接その言葉を聞いた俺は、ひとまずほっとひと安心といったところだった。
「かかわりあうつもりはないってことは、俺がこの世界について質問しても答えてくれないってことでいいかな?」
「それは質問次第といったところでしょうか。かかわらないことと答えないということは、必ずしも同義ではありませんのでね」
「ふむ……」
こういう立ち位置なのかと理解した俺だったが、怒られるのを承知でレーヴェンに質問をぶつける。
「おそらく答えられないとは思うが、この周りを取り囲む山の外側について聞きたい。どういう世界が広がっている?」
「それは、お答えしましょう」
「いいのか?」
「はい。答えたところで、到達できるすべは持ち合わせていないでしょうからね」
「なるほど、そういうことか」
にこっと笑うレーヴェンに、俺も負けじと笑ってみせる。
「取り囲む山の向こう側には海が広がっています。東方帝国の終端部も山に囲まれています。この陸地にいる限り、外に出ることは叶いません」
「どうしてだ?」
「さあ? それは私よりも、彼の方がよくご存じでしょう」
このように答えながら、レーヴェンはデザストレに視線を向けていた。
その視線を追って俺もデザストレを見るが、デザストレは知らないといわんばかりに勢いよく顔を横に振っている。
だが、理由は分からないが、この大陸の外側の情報を得られたのはよかったぜ。
「情報提供、ありがたく頂戴する。それともう一つ、ここで拾ったポテイがドライアドの影響を受けないのは、レーヴェン、あなたのせいなのか?」
「はい、この辺りは私の影響を強く受けています。ですので、本来の営みを捻じ曲げることは不可能なのです」
「回答、感謝する」
俺は素直にレーヴェンに対して頭を下げる。レーヴェンはずっと俺に対して笑顔を向けていた。
「時折、ここに来てもいいかな?」
「ええ、気の向いた時にでもいらして下さい。ただし、今回のように姿を見せるとは限りませんけれどね」
「それでも構わない。なんでか分からないが、この辺りは気持ちが落ち着くんでな」
「うふふ。なぜでしょうね」
俺の言葉に、レーヴェンはなぜか楽しそうに笑っていた。
「さあ、もうお帰りなさい。このままでは命の潮流に飲まれかねませんからね」
レーヴェンが手を振りかざすと、視界のすべてが再び真っ白な光に包まれていく。
その光は不思議なくらい温かく懐かしい。俺の意識は光に飲まれて段々とまどろんでいった。
目の前には、女性か男性かよく分からない人物が立っていた。
「……誰だ」
正直言って誰だか見当もつかない。なので、俺はストレートに質問をぶつけた。
まあ、想像できるものとしては、あの木に関係した何者かということくらいだな。
俺の目もきつい状態になっているが、それよりも後ろからものすごく敵意むき出しな魔力が流れてくる。デザストレはおそらく知ってるんだろうな、こいつのことを。
「そちらの人間もどきは、あの者の子か。久しいな」
「けっ、ここで会ったがお前の運の尽き! 俺を追放した恨みは忘れちゃいねえんだよ!」
なんかよく分からないことを叫んでいるな、デザストレは。
ただ、このまま放っておくと話がこじれそうだ。
「やめておけ、デザストレ」
「ぐえっ!!」
俺が首根っこをつかむと、デザストレは苦しそうにその場に座り込んだ。
「急に首を絞めるんじゃねえよ!」
「襟をつかんだだけだ。お前の勢いが強すぎただけだぞ」
漫才みたいなやり取りをしていると、目の前の人物が反応に困っているようだった。
「……そういうのが人間たちの間では流行っているのか?」
「いやぁ、別に流行っちゃいないさ」
俺は両手を広げながら困惑した顔で首を横に振っていた。
「そうですか。それでは話に入りましょうか」
目の前の人物は咳払いをして気を取り直していた。
「誰かと聞かれたので、名前を名乗りましょう。ですが、それはまずあなた方が名乗ってからです」
「それもそうだな。聞くからにはまずは自分から、そういうもんだったな」
俺は納得して姿勢を正す。
「俺はセイ。廃嫡されたのでこれが正式な名前だ。今は魔王をしている」
「デザストレだ。お前に名乗るのもおこがましいがな」
デザストレは腕を組んでそっぽを向いている。よっぽど目の前のやつとの因縁があると見受けられる。
「セイ……。そうですか、いい名ですね。それでは、私も名乗ると致しましょう。私の名前はレーヴェン。すべての命を司る者です」
「命を司る……」
「はい。私はこの地より、この世界のすべての命の営みを見ているのです。すべての命は私より生まれ、そして、私へと還ってくる。そういうものなのですよ」
命を司る者。まさかそんなものがいるとはな……。
驚きの余り、声が出ないってもんだ。
「見守るというだけで、特にかかわりあうつもりはございません。この世界にいる者たちが、私を感知できないのもそのせいです」
「なるほど、それでデザストレも見えなかったというわけか」
「はい。特に私とは真逆である混沌を司るあの者の関係者と会うわけには参りませんからね」
「どこのゲーム設定だよ、まったく……」
「げえむ?」
俺がぽつっと呟いた言葉に、レーヴェンが首を傾げながら反応している。
「あ、いや。なんでもない」
「……なるほど。あなたは私たちの理の外から来たのですね。私が見える理由がはっきりしましたよ」
レーヴェンはにこりと微笑んでいる。俺がイレギュラーな存在であるなら、消しにかかってくるくらいは覚悟したんだがな。
「言いましたよね、私はかかわりあうつもりはないと。理の外から来たとはいえ、あなたもまた、この世界の一部。私はただ見守るだけです」
どうやらその立場は崩すつもりはないようだ。
直接その言葉を聞いた俺は、ひとまずほっとひと安心といったところだった。
「かかわりあうつもりはないってことは、俺がこの世界について質問しても答えてくれないってことでいいかな?」
「それは質問次第といったところでしょうか。かかわらないことと答えないということは、必ずしも同義ではありませんのでね」
「ふむ……」
こういう立ち位置なのかと理解した俺だったが、怒られるのを承知でレーヴェンに質問をぶつける。
「おそらく答えられないとは思うが、この周りを取り囲む山の外側について聞きたい。どういう世界が広がっている?」
「それは、お答えしましょう」
「いいのか?」
「はい。答えたところで、到達できるすべは持ち合わせていないでしょうからね」
「なるほど、そういうことか」
にこっと笑うレーヴェンに、俺も負けじと笑ってみせる。
「取り囲む山の向こう側には海が広がっています。東方帝国の終端部も山に囲まれています。この陸地にいる限り、外に出ることは叶いません」
「どうしてだ?」
「さあ? それは私よりも、彼の方がよくご存じでしょう」
このように答えながら、レーヴェンはデザストレに視線を向けていた。
その視線を追って俺もデザストレを見るが、デザストレは知らないといわんばかりに勢いよく顔を横に振っている。
だが、理由は分からないが、この大陸の外側の情報を得られたのはよかったぜ。
「情報提供、ありがたく頂戴する。それともう一つ、ここで拾ったポテイがドライアドの影響を受けないのは、レーヴェン、あなたのせいなのか?」
「はい、この辺りは私の影響を強く受けています。ですので、本来の営みを捻じ曲げることは不可能なのです」
「回答、感謝する」
俺は素直にレーヴェンに対して頭を下げる。レーヴェンはずっと俺に対して笑顔を向けていた。
「時折、ここに来てもいいかな?」
「ええ、気の向いた時にでもいらして下さい。ただし、今回のように姿を見せるとは限りませんけれどね」
「それでも構わない。なんでか分からないが、この辺りは気持ちが落ち着くんでな」
「うふふ。なぜでしょうね」
俺の言葉に、レーヴェンはなぜか楽しそうに笑っていた。
「さあ、もうお帰りなさい。このままでは命の潮流に飲まれかねませんからね」
レーヴェンが手を振りかざすと、視界のすべてが再び真っ白な光に包まれていく。
その光は不思議なくらい温かく懐かしい。俺の意識は光に飲まれて段々とまどろんでいった。
0
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる