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第一章 大陸編
第216話 転生者、水中洞窟を抜ける
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湿地帯の東の果てに見つけた水中の穴。そこを通って俺とキリエはどんどんと奥へと進んでいく。
「魔法を見てみても、この辺りはただの岩場の中です。まさかこんな横穴があるだなんて、思いもよりませんでした」
キリエはただただ驚くばかりだった。
一方の俺は興奮していた。どこかで期待はしていたが、やっぱりあったんだよ、隠し通路が。
暗い水中の隠し通路を進んでいく。途中で空気が薄くなってくるが、ウネに頼んで用意してもらった空気草を取り出して空気を補充する。
こっちの世界じゃ、多分酸素っていっても通じないから空気でいいんだよ。空気草って言葉があるんだし、空気なら通じるはずだろう。
「魔王様、これは一体どこまで続いているのでしょうか」
「さあな、どこまでいけるか進んでみるしかない。この方向なら東方帝国の中に出られるかもしれない」
「そうでございますね」
前に進んでいく俺たち。
だが、俺はひとつの問題点に気が付いてしまった。
(いけねっ。この空気球を維持するのに、俺の魔力続くのかな)
そう、自分の魔力の限界の事を忘れていたのだ。呼吸のことはずっと気にかけていたので、思わぬ大ポカである。
しかし、そこは保険としてキリエを連れてきていた。万一の時はキリエを頼ることにしよう。
「なんとも長いですね。光がまったく見えてきません」
「そうだな……」
困ったものだ。
行けども行けども水中の洞窟が続いている。これだけ同じ景色が続くと、精神がやられてくるってもんだよ。
キリエに地図を確認すると、確かにどんどんと東に進んでいるらしい。国境も越えたらしいので、今は東方帝国の真下にいるというわけだ。
「ここは地上のように攻撃が飛んでこないな」
「デザストレとカスミから伺っております。近付いただけで攻撃されたようですね」
「ああ、デザストレが気が付いてくれなかったら危なかったんだ。なんでも特殊な魔法だったらしいからな」
「なるほど。でも、そのような攻撃はここには来ない。感知範囲の外なのか、そもそも地形に阻まれて届かないのか、それは分かりませんけれど」
「だな。とはいえ、水中は水中で別の問題がある。早く外に出られないものかな」
さすがに数日間にも及んで同じ光景を眺めていれば、いい加減に飽きてくるしおかしくなってくる。
それにしても、さすが隠された場所なせいか、ここまでまったく魔物と遭遇していない。これはこれで助かるというものだった。
「ん?」
さらに一日ほど経過した時だったか、ようやく光らしきものが見えてきた。
「明るい光が見えるな」
「左様でございますね。ただ、現在地は東方帝国の中でございます。万一に備えて警戒しておくべきかと」
「もちろんだ」
キリエの言葉に、俺は元気よく答える。
敵地のど真ん中に出るわけだからな、警戒しない方がおかしいというものだ。
ようやく長く続いた水中の洞窟から抜け出す。上方には天井はなく、ゆらゆらと揺れる水菜もが見えている。
「意外と浅めの場所のようだな。ひとまず先に感知魔法を使うぞ」
「承知致しました」
水中ではあるものの、俺の魔法は普通に伝わっていく。
それにしても、なかなかに変な感じだな。さっき通ってきた場所に、魔法がまったく反応を示さないんだからな。
つまり、この水中の洞窟は、この世にあってこの世にないものということになるだろうか。まぁよく分からんな。
「ふぅ、この辺りには人間はいないな。反応からすると魔物が少しいるくらいだ」
俺の感知結果を聞いて、キリエは警戒を解く。気が早いけれど、危険がないのであれば必要以上に緊張する必要はないからな。
安全と分かったことで、俺は自分たちを包みこむ風の魔法を水面に向けて上昇させていく。
サバンという音がして、何日かぶりの地上に姿を見せる。いいな、この解放感はよ!
近くの岸の上に降り立ち、俺はようやく魔法を解除した。
「ふぅ、これだけの日数、よく俺の魔力がもったもんだな」
「魔王様がお持ちになっている魔力というのは、私たち普通の魔族とはけた違いですからね。おそらくあと数日あの状態でも大丈夫でしたよ」
「マジか……。でも、行き止まりでなくてよかったぜ」
「そうでございますね」
地上に出た俺たちは、一度その場で休憩を入れることにする。なにせさっきまでずっと水中に致し、その間一切の休憩を取っていなかったからだ。さすがにデザストレのうろこにしまい込んでいた食料と水分は口にしていたがな。
腰を落ち着けると、改めて周りの景色を見てみる。
見れば見るほど魔王領の景色よりひどい。これでも帝国の中なのかと疑いたくなるような荒れた景色だ。
「周りに人間の気配はない。どうやら、かなり人里からも外れた場所のようだな」
「そうですね。地図は間違いなく東方帝国の中です。まったく何の情報もありませんからね」
キリエがこういうのも無理はない。他国との間でもあまり交流は聞かないし、魔王領とは犬猿の仲なのだ。そんな国の情報が存在するわけないのである。
初めて足を踏み入れた東方帝国の中。気を緩められないとはいっても、さすがにここまで無理をしてきたのがたたっている。
魔法で結界を張り巡らせると、俺たちはひとまずぐっすり休むことにしたのだった。
「魔法を見てみても、この辺りはただの岩場の中です。まさかこんな横穴があるだなんて、思いもよりませんでした」
キリエはただただ驚くばかりだった。
一方の俺は興奮していた。どこかで期待はしていたが、やっぱりあったんだよ、隠し通路が。
暗い水中の隠し通路を進んでいく。途中で空気が薄くなってくるが、ウネに頼んで用意してもらった空気草を取り出して空気を補充する。
こっちの世界じゃ、多分酸素っていっても通じないから空気でいいんだよ。空気草って言葉があるんだし、空気なら通じるはずだろう。
「魔王様、これは一体どこまで続いているのでしょうか」
「さあな、どこまでいけるか進んでみるしかない。この方向なら東方帝国の中に出られるかもしれない」
「そうでございますね」
前に進んでいく俺たち。
だが、俺はひとつの問題点に気が付いてしまった。
(いけねっ。この空気球を維持するのに、俺の魔力続くのかな)
そう、自分の魔力の限界の事を忘れていたのだ。呼吸のことはずっと気にかけていたので、思わぬ大ポカである。
しかし、そこは保険としてキリエを連れてきていた。万一の時はキリエを頼ることにしよう。
「なんとも長いですね。光がまったく見えてきません」
「そうだな……」
困ったものだ。
行けども行けども水中の洞窟が続いている。これだけ同じ景色が続くと、精神がやられてくるってもんだよ。
キリエに地図を確認すると、確かにどんどんと東に進んでいるらしい。国境も越えたらしいので、今は東方帝国の真下にいるというわけだ。
「ここは地上のように攻撃が飛んでこないな」
「デザストレとカスミから伺っております。近付いただけで攻撃されたようですね」
「ああ、デザストレが気が付いてくれなかったら危なかったんだ。なんでも特殊な魔法だったらしいからな」
「なるほど。でも、そのような攻撃はここには来ない。感知範囲の外なのか、そもそも地形に阻まれて届かないのか、それは分かりませんけれど」
「だな。とはいえ、水中は水中で別の問題がある。早く外に出られないものかな」
さすがに数日間にも及んで同じ光景を眺めていれば、いい加減に飽きてくるしおかしくなってくる。
それにしても、さすが隠された場所なせいか、ここまでまったく魔物と遭遇していない。これはこれで助かるというものだった。
「ん?」
さらに一日ほど経過した時だったか、ようやく光らしきものが見えてきた。
「明るい光が見えるな」
「左様でございますね。ただ、現在地は東方帝国の中でございます。万一に備えて警戒しておくべきかと」
「もちろんだ」
キリエの言葉に、俺は元気よく答える。
敵地のど真ん中に出るわけだからな、警戒しない方がおかしいというものだ。
ようやく長く続いた水中の洞窟から抜け出す。上方には天井はなく、ゆらゆらと揺れる水菜もが見えている。
「意外と浅めの場所のようだな。ひとまず先に感知魔法を使うぞ」
「承知致しました」
水中ではあるものの、俺の魔法は普通に伝わっていく。
それにしても、なかなかに変な感じだな。さっき通ってきた場所に、魔法がまったく反応を示さないんだからな。
つまり、この水中の洞窟は、この世にあってこの世にないものということになるだろうか。まぁよく分からんな。
「ふぅ、この辺りには人間はいないな。反応からすると魔物が少しいるくらいだ」
俺の感知結果を聞いて、キリエは警戒を解く。気が早いけれど、危険がないのであれば必要以上に緊張する必要はないからな。
安全と分かったことで、俺は自分たちを包みこむ風の魔法を水面に向けて上昇させていく。
サバンという音がして、何日かぶりの地上に姿を見せる。いいな、この解放感はよ!
近くの岸の上に降り立ち、俺はようやく魔法を解除した。
「ふぅ、これだけの日数、よく俺の魔力がもったもんだな」
「魔王様がお持ちになっている魔力というのは、私たち普通の魔族とはけた違いですからね。おそらくあと数日あの状態でも大丈夫でしたよ」
「マジか……。でも、行き止まりでなくてよかったぜ」
「そうでございますね」
地上に出た俺たちは、一度その場で休憩を入れることにする。なにせさっきまでずっと水中に致し、その間一切の休憩を取っていなかったからだ。さすがにデザストレのうろこにしまい込んでいた食料と水分は口にしていたがな。
腰を落ち着けると、改めて周りの景色を見てみる。
見れば見るほど魔王領の景色よりひどい。これでも帝国の中なのかと疑いたくなるような荒れた景色だ。
「周りに人間の気配はない。どうやら、かなり人里からも外れた場所のようだな」
「そうですね。地図は間違いなく東方帝国の中です。まったく何の情報もありませんからね」
キリエがこういうのも無理はない。他国との間でもあまり交流は聞かないし、魔王領とは犬猿の仲なのだ。そんな国の情報が存在するわけないのである。
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