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第一章 大陸編
第231話 転生者、農村を復活させる
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俺たちは魔法を使えるが、出てきた村人たちは驚きながら俺たちの作業を見ていた。
なるほど、一般人たちは魔力がないということだろうかな。
それならそれで、そういう人向けの方法を教えるしかないな。前世で軽く見聞きした程度の方法だがな。
「ウネ、木の枝とか用意できるか?」
「それは無理。でも、少し待っててー」
ウネはそういうと、あっという間に何もない場所に大きな木を一本生やしていた。
シャレにならないくらい一瞬だな。
くるりと振り返れば、村人たちは腰を抜かして地面に座り込んでいる。
「こんな一瞬で木が生えればそうもなるよな。ちょっと待っててくれよ」
皇帝とエイミーも見守る中、俺は魔法で木を加工していく。キリエたちには畑を見てもらっているので、俺がやるしかないんだよ。
俺はみんなが見ている前で、ウネの生やした木がどんどんと姿を変えていく。
鍬や鎌などの農作業道具に、あっという間に姿を変えていく様子は、村人たちはおろか皇帝やエイミーさえも驚かせている。
「素晴らしい魔法だな。このようなこともできるのか」
「頭の中にイメージさえあれば、なんとでもできる感じかな。とはいえ、こんなに簡単にいくと俺の方も驚くばかりだぜ」
そう俺が話す間も、目の前には農作業の道具が次々とでき上がっていく。魔力を注ぎ込んでいるから、木とはいえ金属並の切れ味を保てるはずだ。
「それはそうと、これは何ですか、魔王様」
作業をしていたキリエが、俺の作った道具のひとつを指差しながら聞いてくる。
キリエが指し示したのは、たくさんの長い突起物のついた道具だ。
歴史の教科書で見たやつもいるだろう千歯こきと呼ばれる脱穀道具だ。
「ああ、それか。ウネが実らせてくれたやつがあるから、ちょっと実際に見せてやるよ」
そういって、作った鎌を持って畑に向かっていく。
ザクッと一掴みを刈り取ると、それを持って千歯こきへと向かう。
「今からこれの使い方を実演するぜ。こう使うんだ」
俺が声をかけると、村人たちはこくりと頷いている。
俺は刈り取った稲を並んだ突起に引っかける。
一気に引っ張ると、先っぽについたもみが隙間で引っ掛かってぽろぽろと落下する。
「おおっ!」
「これはすごい」
村人たちからは驚きと感動の声が聞こえてくる。
この反応から思うに、今まではこういった農産物ってどうやってたんだろうな。一つ一つ手作業なんだろうかな。
それにしても、これだけ力強く使っても、全部が木でできているというのに折れることはなかった。魔力込めすぎたせいか、十分すぎる強度を持っているようだ。
「お試しなんで二台しかないが、これだけでも作業効率はだいぶ変わるだろう。置いていくから使ってくれ」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
俺が村人たちに声をかけると、感動のあまりにその場で俺を崇め始めた。やめてくれ、恥ずかしすぎる。
俺がたじろぐ姿を見て、キリエたちもだが皇帝たちの方も笑顔を見せている。やめろ、笑うんじゃない。
結局、この行動は皇帝が止めるまで続けられたのだった。
「さて、これでここは農村として再開できそうだな」
「本当にありがとうございます。なんとお礼をいえばよいのやら……」
村人たちの中で一番の年長者である男性が、涙ながらに話している。
「皇帝陛下がいらっしゃるので、あまり言いたくはないのですが……」
「よい、申せ」
何か言いにくそうな顔をしている老人に対し、皇帝はあっさり許可を出す。
「ありがとうございます。先にお詫びをもう仕上げておきます」
「父上のことであろう? みなにずいぶんと苦労を掛けたとケンソウたちから聞いておる」
「左様でございますか。でしたら、話させて頂きます」
老人は覚悟を決めて話し始める。
それによれば、帝都から西側を中心にこれだけ荒れているのは、現在の皇帝の父親、つまり暗殺された先代皇帝のせいだという。
自分一人でも魔王領に攻め込もうとしていた先代皇帝は、帝国の帝都より西側での地域での農業を全般的に禁止したのだそうだ。
つまり荒れ放題になった土地をかいくぐるようにして、魔王領に単独で攻め込むつもりだったらしい。
それで困ったのが、農民たちだった。耕さねば自分たちの食い扶持すら危ういのだから。
とはいえ、皇帝の命令は絶対である以上、耕すことができない。仕方なく農村を捨てて近くの森に隠れるようにして住むようになったのだという。
それが、俺たちの視界にある広大な森だったというわけだ。
ちなみに彼らが様子を見に来たのは、でかい猫に戻ったエイミーや空を飛んでやって来たデザストレを目撃したかららしい。そんなバカでかいのが、もともと自分たちが暮らしていた場所から姿を見せたのだ、そりゃ見に来るというわけだ。
ここにすべての謎が解けたのである。
どうりであちこちに朽ち果てた柱のようなものが見えたわけだ。元々は村だったんだからな。
そんなこんなですべてがすっきりした俺たちは、農村の立て直しに向けて動き出した。
このまま整備を進めていけば、他の国と同じように魔王領との間で街道の建設もできるだろう。
帝国は皇帝は一部の人間と和解できた程度だし、皇帝を暗殺しようとする動きがある。街道の建設よりも、国内情勢の安定の方が先だな、これは。
ひとまずは魔王である俺との和解と、農村の一部復活が果たせたので、皇帝の実績としては大きいものだろう。
東方帝国。まだまだ油断できない状況だな。
なるほど、一般人たちは魔力がないということだろうかな。
それならそれで、そういう人向けの方法を教えるしかないな。前世で軽く見聞きした程度の方法だがな。
「ウネ、木の枝とか用意できるか?」
「それは無理。でも、少し待っててー」
ウネはそういうと、あっという間に何もない場所に大きな木を一本生やしていた。
シャレにならないくらい一瞬だな。
くるりと振り返れば、村人たちは腰を抜かして地面に座り込んでいる。
「こんな一瞬で木が生えればそうもなるよな。ちょっと待っててくれよ」
皇帝とエイミーも見守る中、俺は魔法で木を加工していく。キリエたちには畑を見てもらっているので、俺がやるしかないんだよ。
俺はみんなが見ている前で、ウネの生やした木がどんどんと姿を変えていく。
鍬や鎌などの農作業道具に、あっという間に姿を変えていく様子は、村人たちはおろか皇帝やエイミーさえも驚かせている。
「素晴らしい魔法だな。このようなこともできるのか」
「頭の中にイメージさえあれば、なんとでもできる感じかな。とはいえ、こんなに簡単にいくと俺の方も驚くばかりだぜ」
そう俺が話す間も、目の前には農作業の道具が次々とでき上がっていく。魔力を注ぎ込んでいるから、木とはいえ金属並の切れ味を保てるはずだ。
「それはそうと、これは何ですか、魔王様」
作業をしていたキリエが、俺の作った道具のひとつを指差しながら聞いてくる。
キリエが指し示したのは、たくさんの長い突起物のついた道具だ。
歴史の教科書で見たやつもいるだろう千歯こきと呼ばれる脱穀道具だ。
「ああ、それか。ウネが実らせてくれたやつがあるから、ちょっと実際に見せてやるよ」
そういって、作った鎌を持って畑に向かっていく。
ザクッと一掴みを刈り取ると、それを持って千歯こきへと向かう。
「今からこれの使い方を実演するぜ。こう使うんだ」
俺が声をかけると、村人たちはこくりと頷いている。
俺は刈り取った稲を並んだ突起に引っかける。
一気に引っ張ると、先っぽについたもみが隙間で引っ掛かってぽろぽろと落下する。
「おおっ!」
「これはすごい」
村人たちからは驚きと感動の声が聞こえてくる。
この反応から思うに、今まではこういった農産物ってどうやってたんだろうな。一つ一つ手作業なんだろうかな。
それにしても、これだけ力強く使っても、全部が木でできているというのに折れることはなかった。魔力込めすぎたせいか、十分すぎる強度を持っているようだ。
「お試しなんで二台しかないが、これだけでも作業効率はだいぶ変わるだろう。置いていくから使ってくれ」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
俺が村人たちに声をかけると、感動のあまりにその場で俺を崇め始めた。やめてくれ、恥ずかしすぎる。
俺がたじろぐ姿を見て、キリエたちもだが皇帝たちの方も笑顔を見せている。やめろ、笑うんじゃない。
結局、この行動は皇帝が止めるまで続けられたのだった。
「さて、これでここは農村として再開できそうだな」
「本当にありがとうございます。なんとお礼をいえばよいのやら……」
村人たちの中で一番の年長者である男性が、涙ながらに話している。
「皇帝陛下がいらっしゃるので、あまり言いたくはないのですが……」
「よい、申せ」
何か言いにくそうな顔をしている老人に対し、皇帝はあっさり許可を出す。
「ありがとうございます。先にお詫びをもう仕上げておきます」
「父上のことであろう? みなにずいぶんと苦労を掛けたとケンソウたちから聞いておる」
「左様でございますか。でしたら、話させて頂きます」
老人は覚悟を決めて話し始める。
それによれば、帝都から西側を中心にこれだけ荒れているのは、現在の皇帝の父親、つまり暗殺された先代皇帝のせいだという。
自分一人でも魔王領に攻め込もうとしていた先代皇帝は、帝国の帝都より西側での地域での農業を全般的に禁止したのだそうだ。
つまり荒れ放題になった土地をかいくぐるようにして、魔王領に単独で攻め込むつもりだったらしい。
それで困ったのが、農民たちだった。耕さねば自分たちの食い扶持すら危ういのだから。
とはいえ、皇帝の命令は絶対である以上、耕すことができない。仕方なく農村を捨てて近くの森に隠れるようにして住むようになったのだという。
それが、俺たちの視界にある広大な森だったというわけだ。
ちなみに彼らが様子を見に来たのは、でかい猫に戻ったエイミーや空を飛んでやって来たデザストレを目撃したかららしい。そんなバカでかいのが、もともと自分たちが暮らしていた場所から姿を見せたのだ、そりゃ見に来るというわけだ。
ここにすべての謎が解けたのである。
どうりであちこちに朽ち果てた柱のようなものが見えたわけだ。元々は村だったんだからな。
そんなこんなですべてがすっきりした俺たちは、農村の立て直しに向けて動き出した。
このまま整備を進めていけば、他の国と同じように魔王領との間で街道の建設もできるだろう。
帝国は皇帝は一部の人間と和解できた程度だし、皇帝を暗殺しようとする動きがある。街道の建設よりも、国内情勢の安定の方が先だな、これは。
ひとまずは魔王である俺との和解と、農村の一部復活が果たせたので、皇帝の実績としては大きいものだろう。
東方帝国。まだまだ油断できない状況だな。
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