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第一章 大陸編
第240話 転生者、間を取り持つ
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俺のピンチに現れたのは、東方帝国のエイミーだった。
ここは帝国との国境からそれなりに離れた場所だ。だというのに、どうしてエイミーがいるのだろうか。まったくもって状況が理解できない。
「私は調和を司る存在よ。それを乱そうとする者がいたら、反応するに決まっているわ。それが魔族であるならなおさらね」
なるほどな?
だったら、皇帝の命を狙う不届き者もすぐ分かるだろうが。どこか抜けてるのは、デザストレと一緒だな……。
俺はエイミーにジト目を向ける。
「にゃ、にゃによ。エイミーは優秀だにゃ。ポンコツなんかじゃないにゃ」
言い繕っているようだが、どこまでいってもエイミーのポンコツ疑惑は払拭しきれねえよ。
とまあ、いろいろ言いたいことはあるところだが、ヒョウムが気絶したおかげで、面倒な魔法が発動しなくて済みそうだぜ。
「まったく、こいつは何なのにゃ。物騒な魔法のにおいがするのにゃ」
肉球の下敷きになって気を失っているヒョウムを見ながら、エイミーは文句を言っている。
状況が分からないというところだろうかな。
しょうがないので、俺はエイミーに事情を説明する。そしたら、エイミーは目をまん丸にして驚いていた。
「ばっかじゃないのにゃ?! 道連れにするとか、さすがは魔族にゃ。信じられないにゃ」
エイミーにぼろっかすに言われている。これでも純魔族の長なんだよな、こいつ。
だが、今はこんな風に話をしている場合じゃない。気絶したヒョウムが目を覚ませば、魔法を発動させる危険性がある。
この魔法をどうにかする方が先決なんだよな。
「なあ、エイミー」
「なんなのにゃ?」
「こいつが使おうとしている魔法、解除することは可能か?」
さすがの俺も魔法の無効化方法が分からない。魔族よりも上位の存在であろうこいつなら、もしかしたらと思って声を掛けている。
「もちろんにゃ。このエイミー様をなめてはいけないのにゃ」
なんとまあ。エイミーからは自信満々の返事だ。
「ただ、魔法を使うにはこのままじゃ厳しいのにゃ。人間の姿の方が魔力を練りやすいのにゃ」
ヒョウムの上でエイミーは姿を変えていく。変身したその姿は、確かに補佐のエイミーその人である。
「ちょっと待ってるのにゃ。こんな魔法、私の力でちょちょいのちょいにゃ」
いや、そんな単語をこっちの世界で聞くとは思わなかったな。時折、本当に異世界なのかと思えるような言い回しが聞こえてくる。
本当にそういっているのか、俺が持っているだろうスキルでの変換でおかしなことになっているのか。まったく分からねえな、これ。
ヒョウムに対して魔法を使うエイミーだったが、その表情は段々と険しいものになっていっていた。
「どうしたんだよ。お前の魔法でちょちょいのちょいなんだろ。まさかできないっていうわけじゃないだろうな」
「できないじゃないのにゃ。いや、結果としてはできていないと一緒なのにゃ」
「どういうことだよ、それ」
状況がよく分からんな。俺はエイミーに説明を求めている。
「解除はできているのにゃ。でも、すぐに再構築されてしまうのにゃ」
「なんだよ、それ」
「おそらくは、同じ魔法が別の場所でも展開されていて、同時に解かないことには解除できないのにゃ」
「はあ?!」
エイミーの説明を聞いて、俺は表情が歪んでしまう。
説明のままに状況を理解すると、こういうことだろう。
エイミーはヒョウムが使っている魔法が解ける状態にある。だが、同じ魔法が別の場所でも展開されていて、解いてもそちらの影響ですぐに魔法が再現されるということだろう。
「ということは、純魔族の集落の魔法も同時に解除しなければならないってことかよ」
「そういうことにゃ。さすがの私も分身はできないのにゃ」
「参ったな……。純魔族の集落までは距離がある。伝えるにしてもすぐってわけにはいかねえな……」
予想外の展開に、俺の焦りは募っていくばかりだった。
「……ひとつだけ、伝える方法はあるにゃ」
「なんだ、それは」
エイミーが突然呟いたことに俺は驚いたが、その表情を見た瞬間に俺は悟った。
「……デザストレ、厄災絡みか」
俺の言葉に、エイミーはこくりと頷いている。
「同じ混沌の存在から生まれた厄災と調和にゃ。普段は真逆なので、心が通じるとかありえないにゃ」
「まあ、それはそうだな」
エイミーの言葉に異様に納得がいってしまう。
だが、今はそんなことをいっている場合じゃない。
ここまで追い詰められたヒョウムはこのままでも構わないんだが、魔法を発動すると同時に純魔族の集落が吹き飛ぶのが許せない。
「エイミー、ちょっと手を出せ」
「な、なんなのにゃ?!」
俺は歯を食いしばると、エイミーに声を掛ける。
「デザストレは俺の部下だ。もしかしたら俺を通じて連絡が取り合えるかもしれない。そうすれば、同時に破壊できるかもしれない」
「な、なるほどにゃ。分かったのにゃ、それに賭けてみるにゃ!」
意外とすんなり理解したエイミーは、俺の手を取ってくれた。
「うう……」
その瞬間だった。気絶していたヒョウムが目を覚まそうとしている。
「もうちょっと寝てるのにゃ!」
「うぼぁっ!」
気が付いたエイミーが跳び上がって思いきり踏みつけていた。あまりにもダメージが大きかったのか、ヒョウムは再び気を失った。
「これでもうしばらく大丈夫にゃ。さっさと始めるにゃ」
「あ、ああ」
にこにこと満面の笑みを浮かべるエイミーの姿に、さすがの俺もドン引きする。
エイミーの手を握り、俺を中継地点としてデザストレと連絡を取る。
はっきりいって賭けではあるが、わずかな望みをこの方法に託したのだった。
ここは帝国との国境からそれなりに離れた場所だ。だというのに、どうしてエイミーがいるのだろうか。まったくもって状況が理解できない。
「私は調和を司る存在よ。それを乱そうとする者がいたら、反応するに決まっているわ。それが魔族であるならなおさらね」
なるほどな?
だったら、皇帝の命を狙う不届き者もすぐ分かるだろうが。どこか抜けてるのは、デザストレと一緒だな……。
俺はエイミーにジト目を向ける。
「にゃ、にゃによ。エイミーは優秀だにゃ。ポンコツなんかじゃないにゃ」
言い繕っているようだが、どこまでいってもエイミーのポンコツ疑惑は払拭しきれねえよ。
とまあ、いろいろ言いたいことはあるところだが、ヒョウムが気絶したおかげで、面倒な魔法が発動しなくて済みそうだぜ。
「まったく、こいつは何なのにゃ。物騒な魔法のにおいがするのにゃ」
肉球の下敷きになって気を失っているヒョウムを見ながら、エイミーは文句を言っている。
状況が分からないというところだろうかな。
しょうがないので、俺はエイミーに事情を説明する。そしたら、エイミーは目をまん丸にして驚いていた。
「ばっかじゃないのにゃ?! 道連れにするとか、さすがは魔族にゃ。信じられないにゃ」
エイミーにぼろっかすに言われている。これでも純魔族の長なんだよな、こいつ。
だが、今はこんな風に話をしている場合じゃない。気絶したヒョウムが目を覚ませば、魔法を発動させる危険性がある。
この魔法をどうにかする方が先決なんだよな。
「なあ、エイミー」
「なんなのにゃ?」
「こいつが使おうとしている魔法、解除することは可能か?」
さすがの俺も魔法の無効化方法が分からない。魔族よりも上位の存在であろうこいつなら、もしかしたらと思って声を掛けている。
「もちろんにゃ。このエイミー様をなめてはいけないのにゃ」
なんとまあ。エイミーからは自信満々の返事だ。
「ただ、魔法を使うにはこのままじゃ厳しいのにゃ。人間の姿の方が魔力を練りやすいのにゃ」
ヒョウムの上でエイミーは姿を変えていく。変身したその姿は、確かに補佐のエイミーその人である。
「ちょっと待ってるのにゃ。こんな魔法、私の力でちょちょいのちょいにゃ」
いや、そんな単語をこっちの世界で聞くとは思わなかったな。時折、本当に異世界なのかと思えるような言い回しが聞こえてくる。
本当にそういっているのか、俺が持っているだろうスキルでの変換でおかしなことになっているのか。まったく分からねえな、これ。
ヒョウムに対して魔法を使うエイミーだったが、その表情は段々と険しいものになっていっていた。
「どうしたんだよ。お前の魔法でちょちょいのちょいなんだろ。まさかできないっていうわけじゃないだろうな」
「できないじゃないのにゃ。いや、結果としてはできていないと一緒なのにゃ」
「どういうことだよ、それ」
状況がよく分からんな。俺はエイミーに説明を求めている。
「解除はできているのにゃ。でも、すぐに再構築されてしまうのにゃ」
「なんだよ、それ」
「おそらくは、同じ魔法が別の場所でも展開されていて、同時に解かないことには解除できないのにゃ」
「はあ?!」
エイミーの説明を聞いて、俺は表情が歪んでしまう。
説明のままに状況を理解すると、こういうことだろう。
エイミーはヒョウムが使っている魔法が解ける状態にある。だが、同じ魔法が別の場所でも展開されていて、解いてもそちらの影響ですぐに魔法が再現されるということだろう。
「ということは、純魔族の集落の魔法も同時に解除しなければならないってことかよ」
「そういうことにゃ。さすがの私も分身はできないのにゃ」
「参ったな……。純魔族の集落までは距離がある。伝えるにしてもすぐってわけにはいかねえな……」
予想外の展開に、俺の焦りは募っていくばかりだった。
「……ひとつだけ、伝える方法はあるにゃ」
「なんだ、それは」
エイミーが突然呟いたことに俺は驚いたが、その表情を見た瞬間に俺は悟った。
「……デザストレ、厄災絡みか」
俺の言葉に、エイミーはこくりと頷いている。
「同じ混沌の存在から生まれた厄災と調和にゃ。普段は真逆なので、心が通じるとかありえないにゃ」
「まあ、それはそうだな」
エイミーの言葉に異様に納得がいってしまう。
だが、今はそんなことをいっている場合じゃない。
ここまで追い詰められたヒョウムはこのままでも構わないんだが、魔法を発動すると同時に純魔族の集落が吹き飛ぶのが許せない。
「エイミー、ちょっと手を出せ」
「な、なんなのにゃ?!」
俺は歯を食いしばると、エイミーに声を掛ける。
「デザストレは俺の部下だ。もしかしたら俺を通じて連絡が取り合えるかもしれない。そうすれば、同時に破壊できるかもしれない」
「な、なるほどにゃ。分かったのにゃ、それに賭けてみるにゃ!」
意外とすんなり理解したエイミーは、俺の手を取ってくれた。
「うう……」
その瞬間だった。気絶していたヒョウムが目を覚まそうとしている。
「もうちょっと寝てるのにゃ!」
「うぼぁっ!」
気が付いたエイミーが跳び上がって思いきり踏みつけていた。あまりにもダメージが大きかったのか、ヒョウムは再び気を失った。
「これでもうしばらく大丈夫にゃ。さっさと始めるにゃ」
「あ、ああ」
にこにこと満面の笑みを浮かべるエイミーの姿に、さすがの俺もドン引きする。
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はっきりいって賭けではあるが、わずかな望みをこの方法に託したのだった。
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