異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第一章 大陸編

第247話 転生者、見慣れない魔物を見つける

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 話を聞いた俺たちは、問題の場所へと向かう。
 オスリーたちも確かに純魔族ではある。だが、キリエたちに比べれば魔力が弱く、対処できることにも限界があるらしかった。
 つまり、彼らの集落を襲っている問題とは、彼らの魔力ではとても対処できないものだということだった。
 俺たちがたどり着いた場所には、妙な魔物の群れがうごめいている。なんとも見たことがない連中だった。

「デザストレ、あれは何か分かるか?」

 見たことがないから、話を振ってみる。だが、そのデザストレも首を捻っているようだ。

「お前も知らないのか。なるほど、未知の魔物に襲われて、手も足も出ずに食い扶持を荒らされたってわけか」

「もうこの土地はダメだな。復活させようと思ったら、ドライアドやアルラウネを連れてこないとどうにもならねえな」

 デザストレから見てもこの評価である。なら、本当にこの土地は普通の方法ではどうにもならないってわけだな。
 だが、不可解なのは周りからも支援が来てないということだな。
 じっと考え込んでいると、俺はとある視線に気が付く。
 くるりと振り向けば、デザストレが神妙な面持ちで俺を見ていたのだ。

「なんだよ。俺の顔に何かついているのか?」

「魔王、お前は魔族というものがどういうものか忘れたのか?」

「え?」

 デザストレから向けられた言葉に、俺は思わず驚いた顔をしてしまう。
 まったくもって何か変なことをいってしまっただろうか。

「魔族というのは基本的に利己主義だ。元人間のお前みたいに助け合いなど考えない連中だぞ。自分たちに関係がなければ、このように捨て置くこともよくある。残念だが、それが魔族というものだ」

「あ、ああ。そういえば、そうだったな……」

 デザストレに言われるまで、俺はすっかり忘れていたぜ。
 そういえば、俺が魔王になった頃の魔族は、今みたいなまとまりはまったくもってなかったな。
 俺が視察ついでに分からせていったから、今みたいな結束感が出てきたんだったか。うん、すっかり忘れていたぜ。

「下っ端の弱い連中がどうなろうが、魔族からすればどうでもいいんだよ。しょせん弱肉強食の世界ってわけだ」

「ああ、その単語こっちの世界にもあるのか」

「あん?」

 俺が呟いた言葉に、やけに不機嫌な顔をして突っかかってくる。まったく、どこにそんな怒ってんだよ。

「それよりもあいつの方が問題だな」

 デザストレが目を向ける方向。改めて見てみても、そこには俺の知らない魔物がいる。
 この魔物、厄災として知られる長い時を生きてきたデザストレも知らない存在なんだよな。
 まったく、こんなやつ相手に、どう対処すればいいというもんだ。
 俺がじっと悩んでいるとデザストレがすっと立ち上がる。

「思い悩むまでもない。先手必勝、行くぞ!」

 デザストレが立ち上がって、みるみるドラゴンの姿に変わっていく。

「厄災たる俺の力を見せてやるぜ!」

 デザストレは、謎の魔物に向けてブレスを吐く。
 炎かと思ったんだが、なんか色がおかしくないか?
 魔物の方はというと、突然現れた巨大なドラゴンに戸惑っているのか、その場を動けずにいる。
 あっという間にデザストレのブレスに巻き込まれ、その場にバタバタと倒れていっていた。

「驚いたな……」

「どうだ、俺様の麻痺ブレスの威力は」

「麻痺か……。これだけの数を一瞬動けなくするとは、こんな隠し玉を持っているとはな。使われずに済んでよかったぜ」

 麻痺が成功したことで、デザストレはものすごく喜んでいるようだった。
 俺にやられたからというもの、デザストレはこれといった見せ場を作れなかったからな。まともに活躍できたことが嬉しかったんだろうな。

「で、魔王よ」

「うん、どうした」

「こいつらはどうする。本気の麻痺ブレスをぶつけたからしばらくは動けないだろうが、放っておいてもまたこいつらはどこかを荒らすことになる。全部始末するか、眷属にしてどこかに押し込めてしまうかしねえといけないと思うぜ」

「ああ、そうだな……」

 そうだった。魔物どもは動けなくなっただけだ。
 デザストレがかけた麻痺も、時間が経てば解けてしまうだろう。全部始末するか、魔王の力で眷属化するかの、二つに一つといったところなのだ。

「まぁ、能力が分からないし、こいつらの生態も知りたい。ここはいっちょ眷属にして……、ってどうやるんだっけか」

「従魔の紋を額に書いてやればいい。こういう感じのやつだ」

 人型に戻ったデザストレが空中になにやら書いている。ふむふむ、そんな紋様なのか。
 ただ、目の前にはかなりの数の魔物がいる。これを全部従魔にするには時間がかかりそうだな。
 とはいえ、困っている魔族を助けるためだ。やってやろうじゃねえか。
 俺は目の前にたくさんいる、犬か猫かよく分からない翼の生えた魔物たちに、一匹一匹従魔の紋様を魔力で描いていく。

「我が盟約に応じ、我のしもべとなれ」

 デザストレから教えてもらった従魔契約の方法をさっそく実行する。
 このやって魔力を放出すると、魔物たちの額に描かれた紋様が一斉に輝き出したのだった。
 どうやら、従魔契約は成功したようだ。
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