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第一章 大陸編
第252話 転生者、無事に送り届ける
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北方聖国の領土に入ったのはいいが、俺の行く先には湖が横たわっていた。
この湖のせいで、ミーアドッグは北方聖国を逃げ出した後、魔王領内へと侵入してしまったわけだ。
「結構でかいな。魔王領は隅々まで見て回ったと思ったんだが、この辺りは聖国との境界付近だから見落としてたのかもな……」
目の前の湖は結構大きかった。対岸がギリギリ見えるかどうかだから、あの湖たちに比べれば小さいかな。
湖に気を取られて気が付かなかったが、ミーアドッグたちは湖を前に怯んでいる。本当にこいつらは水が弱点のようだな。
「湖に沿って北上しようか。落ちないようにだけは気をつけてくれよ」
「ミウッ」
俺が優しく声を掛けると、小さく返事をしていた。
うん、水を前にびびってやがるよ……。あれだけ盛大に農作物を食い荒らす割には、ずいぶん可愛い弱点だよな。
ひとまずミーアドッグたちは行く手を湖に阻まれて、東側へと進んでいく。
この状況でも、俺を乗せた連中の動きは鈍らない。
獣人化した時に少し背は縮んだとはいえ、さすがに重くないかなとは思うんだがな。
でも、まったく文句を言うこともないし、嫌がる素振りもつらそうにする素振りもない。これは従魔化の影響なのだろうか。
さすがにずっと乗せっぱなしは可哀想なので、時折休憩を挟んで俺を乗せる面々を入れ替えつつ、湖のふちを進んでいく。
予想外だったのは、この湖、かなり東に細長く伸びている。そんなに移動しないだろうと見ていたのだが、もう丸一日も東に移動し続けている。
「うん、ストップストップ。もういい」
俺が声を掛けると、ミーアドッグたちは動きを止める。
俺を乗せている面々以外が、じっと俺の方へと顔を向けている。
やめてくれ、そのつぶらな瞳で見るのはやめてくれ。
何かを訴えるような瞳に、俺はつい罪悪感にかられてしまう。
俺は足元のミーアドッグに告げて、地面へと降りる。
「まぁちょっと待ってなって。向こうを見ると終端部がギリギリ見えるが、これ以上は時間の無駄だしな」
俺は手を前へと突き出す。
次の瞬間、湖をまたぐような土の橋が架かる。
転生チートってやつなんだろうな。あと、魔王によるバフもあるだろう。たいていの属性の魔法ならそれなりに扱えるようになってるんだよな。
「さて、これで湖の反対側に渡れるぞ」
俺が顔を向けると、ミーアドッグたちのとても喜んでいる姿があった。どんだけ水が嫌いなんだよ。
というわけで、湖をショートカットできる橋を架けたことで、ミーアドッグたちはさらにスピードを上げて走り始める。
でもな、橋は思ったよりも狭いんだ。落ちるからそんなに飛ばすんじゃないよ。
そんな心配をした俺だったが、ミーアドッグたちはまったく隊列が乱れない。なんていう集団だよ。
湖を渡ると、そこからはさらに速度が上がっていた。
おそらく故郷に戻れるとあって喜んでいるんだろうな。
まあ、これで俺もようやくこいつら絡みのことから解放されそうだぜ。
そうやってやって来た場所は、いつぞや見た場所だった。
「なんだここ、砂糖を作っている場所じゃねえか」
俺が見たのは、いつぞやの聖国巡りをした時に立ち寄った村の近くだった。
目と鼻の先に見えるじゃねえか。
「お前ら、こんな近くにいたんだな。なるほど、逃げ出すはずだぜ」
状況にものすごく納得がいく。
あの時は、北の縁を回って、東からこの村へとやって来た。先に北側を通った際に威圧され、東から至近距離に戻ってきたから、押し出されるようにして南下していったというわけか。すごく状況がしっくりしてるぜ。
だが、あの時寄った村の中では、ミーアドッグのことはまったく触れられてなかったな。となると、こいつらは人間たちに知られることなく生活してたってことなのかな。
ここにきてまた謎が持ち上がってきたぜ。
俺は首を傾げている中、ようやく故郷に戻ってきたミーアドッグたちは、俺を乗せている奴ら以外は一斉に駆け出していった。
「お前らもお疲れな。みんなと遊んで来い」
ゆっくりと降りて解放してやると、仲間とじゃれつくように戯れ始めていた。
まったく、動物たちが戯れる姿っていうのは癒されるもんだな。
その姿を見ると、知らなかったとはいえ威圧してしまったのは可哀想なことをしたなと思う。
まっ、従魔化したので、もうそういうことは起きないと思うけどな!
ミーアドッグたちが生まれ故郷に無事に戻れたことで、俺もひと安心だ。
あまりにもほっとしたものだから、俺も腰を下ろしてミーアドッグたちのはしゃぐ様子をしばらく見守っていた。
ところが、まだ問題がある。
うん、俺はここからどうやって戻ればいいんだよ。
故郷に送り届けたのはいいが、俺が元の場所に戻れなくては意味がない。なんといっても俺は魔王だ。下手に魔王領内の留守を長期化させるわけにはいかないんだよ。
やっぱり、先に帝国に向かってデザストレの同行を取り付けられなかったのは痛い。あいつがいれば、魔王城までひとっ飛びなのにな。
近くに村もあるということで、俺はひとまず考えることをやめた。
その日はそのまま、ミーアドッグたちと戯れてゆっくり休んだのだった。
この湖のせいで、ミーアドッグは北方聖国を逃げ出した後、魔王領内へと侵入してしまったわけだ。
「結構でかいな。魔王領は隅々まで見て回ったと思ったんだが、この辺りは聖国との境界付近だから見落としてたのかもな……」
目の前の湖は結構大きかった。対岸がギリギリ見えるかどうかだから、あの湖たちに比べれば小さいかな。
湖に気を取られて気が付かなかったが、ミーアドッグたちは湖を前に怯んでいる。本当にこいつらは水が弱点のようだな。
「湖に沿って北上しようか。落ちないようにだけは気をつけてくれよ」
「ミウッ」
俺が優しく声を掛けると、小さく返事をしていた。
うん、水を前にびびってやがるよ……。あれだけ盛大に農作物を食い荒らす割には、ずいぶん可愛い弱点だよな。
ひとまずミーアドッグたちは行く手を湖に阻まれて、東側へと進んでいく。
この状況でも、俺を乗せた連中の動きは鈍らない。
獣人化した時に少し背は縮んだとはいえ、さすがに重くないかなとは思うんだがな。
でも、まったく文句を言うこともないし、嫌がる素振りもつらそうにする素振りもない。これは従魔化の影響なのだろうか。
さすがにずっと乗せっぱなしは可哀想なので、時折休憩を挟んで俺を乗せる面々を入れ替えつつ、湖のふちを進んでいく。
予想外だったのは、この湖、かなり東に細長く伸びている。そんなに移動しないだろうと見ていたのだが、もう丸一日も東に移動し続けている。
「うん、ストップストップ。もういい」
俺が声を掛けると、ミーアドッグたちは動きを止める。
俺を乗せている面々以外が、じっと俺の方へと顔を向けている。
やめてくれ、そのつぶらな瞳で見るのはやめてくれ。
何かを訴えるような瞳に、俺はつい罪悪感にかられてしまう。
俺は足元のミーアドッグに告げて、地面へと降りる。
「まぁちょっと待ってなって。向こうを見ると終端部がギリギリ見えるが、これ以上は時間の無駄だしな」
俺は手を前へと突き出す。
次の瞬間、湖をまたぐような土の橋が架かる。
転生チートってやつなんだろうな。あと、魔王によるバフもあるだろう。たいていの属性の魔法ならそれなりに扱えるようになってるんだよな。
「さて、これで湖の反対側に渡れるぞ」
俺が顔を向けると、ミーアドッグたちのとても喜んでいる姿があった。どんだけ水が嫌いなんだよ。
というわけで、湖をショートカットできる橋を架けたことで、ミーアドッグたちはさらにスピードを上げて走り始める。
でもな、橋は思ったよりも狭いんだ。落ちるからそんなに飛ばすんじゃないよ。
そんな心配をした俺だったが、ミーアドッグたちはまったく隊列が乱れない。なんていう集団だよ。
湖を渡ると、そこからはさらに速度が上がっていた。
おそらく故郷に戻れるとあって喜んでいるんだろうな。
まあ、これで俺もようやくこいつら絡みのことから解放されそうだぜ。
そうやってやって来た場所は、いつぞや見た場所だった。
「なんだここ、砂糖を作っている場所じゃねえか」
俺が見たのは、いつぞやの聖国巡りをした時に立ち寄った村の近くだった。
目と鼻の先に見えるじゃねえか。
「お前ら、こんな近くにいたんだな。なるほど、逃げ出すはずだぜ」
状況にものすごく納得がいく。
あの時は、北の縁を回って、東からこの村へとやって来た。先に北側を通った際に威圧され、東から至近距離に戻ってきたから、押し出されるようにして南下していったというわけか。すごく状況がしっくりしてるぜ。
だが、あの時寄った村の中では、ミーアドッグのことはまったく触れられてなかったな。となると、こいつらは人間たちに知られることなく生活してたってことなのかな。
ここにきてまた謎が持ち上がってきたぜ。
俺は首を傾げている中、ようやく故郷に戻ってきたミーアドッグたちは、俺を乗せている奴ら以外は一斉に駆け出していった。
「お前らもお疲れな。みんなと遊んで来い」
ゆっくりと降りて解放してやると、仲間とじゃれつくように戯れ始めていた。
まったく、動物たちが戯れる姿っていうのは癒されるもんだな。
その姿を見ると、知らなかったとはいえ威圧してしまったのは可哀想なことをしたなと思う。
まっ、従魔化したので、もうそういうことは起きないと思うけどな!
ミーアドッグたちが生まれ故郷に無事に戻れたことで、俺もひと安心だ。
あまりにもほっとしたものだから、俺も腰を下ろしてミーアドッグたちのはしゃぐ様子をしばらく見守っていた。
ところが、まだ問題がある。
うん、俺はここからどうやって戻ればいいんだよ。
故郷に送り届けたのはいいが、俺が元の場所に戻れなくては意味がない。なんといっても俺は魔王だ。下手に魔王領内の留守を長期化させるわけにはいかないんだよ。
やっぱり、先に帝国に向かってデザストレの同行を取り付けられなかったのは痛い。あいつがいれば、魔王城までひとっ飛びなのにな。
近くに村もあるということで、俺はひとまず考えることをやめた。
その日はそのまま、ミーアドッグたちと戯れてゆっくり休んだのだった。
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