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第一章 大陸編
第267話 転生者、西方王国に再来する
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純魔族の問題が片付きそうになっていたので、俺は魔王領の馬車で西方王国へと向かっている。
向かっている理由は、米とミルクの入手がメインだな。
いやはや、元日本人としては米はどうしても手放せなくていけないってもんだ。
頻繁に食べていると、あっという間に在庫がなくなってしまう。
俺自体は頻繁に出かけていてあまり食べてはないんだが、置いていったら料理長が張り切ってくれちゃってな。あっという間に使い切っちまったってわけだ。
「料理長、張り切るのはいいんだが。俺の分を残しておいてくれ」
「も、申し訳ございません、魔王様……」
つい先日はこういうやり取りをしてきたところだよ、うん。
「一見食べられなさそうなものでも、工夫次第でどうとでもなるんですね」
「まあな。俺の前世でも、なんでそんなものを食うんだってのは結構あったな。元々の食物は毒があるのに、なんやかんやすると無毒になるとか、食への探求ってもんは恐ろしい限りだよ」
「なんとも想像がつきませんね」
馬車に揺られながら、俺はキリエと一緒に西方王国の地を訪れた。
西方王国に到着すると、相変わらずマネケンが飛んでくる。
マネケンはこの西方王国の大臣を務める男だ。だが、なぜか俺に対して積極的に絡んでくる。奥さんいなかったか?
でもまぁ、マネケン自体にはそういうやましい気持ちはまったく存在しない。単純に俺の持っている知識に対して強い興味を持っているだけなんだよな。
国をよくするためなら使える知識はなんでも使いたいらしい。
「お久しぶりでございますな」
「本当に久しぶりだよ。周辺のすべての国を相手にしていると、どうしても来れないことが多くなってしまう。すまなかったな」
「いえいえ、争いもなく取引はできておりますので、よかったと思いますとも」
どうやら俺が北方聖国や東方帝国とやり取りをしている間も、西方王国との関係には特に問題はなかったようだ。
ほぼバフォメットに頼りきりではあったものの、ちゃんとやってくれているようでよかったぜ。
「アラクネ糸は魔物の糸ということで最初は抵抗がありましたが、光沢の良さ、手触りの良さ、そして耐久性といいことづくめで受け入れられていっております」
「そうか、反応がいいようで安心したよ」
「そうですね。今までは倒すことでしか手に入らなかった糸ですからね。こんなに大量に出回ることなど考えられませんでしたからね」
魔王領都の取引が始まってからというもの、西方王国内にはアラクネ糸が大量に出回っている。米やミルクといった農産品との代わりということで、優先的に回しているのだ。
北方聖国だとクルクーと羽毛布団を回して、砂糖と交換してたかな。
いろいろと取引が活性化しているので、大陸内の雰囲気はずいぶんと変わり始めている。
人間と魔族といったらいがみ合うものというイメージも。すっかり昔のものというイメージになりつつあった。
俺が魔王になってからというもの、ずいぶんと早いよな。一年経ってたっけか?
俺はあれこれと思い出していたが、忙しすぎたせいで正確な日数を思い出せずにいた。
だが、気にしてもキリがないなとすっぱりと考えるのをやめた。
「そういえばチーズがあったよな。覚えている限りのレシピも教えていくか」
「ほう、それは楽しみですね。魔王様は料理もたしなまれるのですか」
「まあな。過去にちょっと趣味がてらだがな」
「それでしたら、城の厨房に案内しますぞ。獣人は入れたがらないですが、魔王様は特別ですからな」
「ははっ、はははは」
俺はマネケンの案内で城の厨房へと案内される。
設備自体は魔王城と変わらない感じだが、さすがは人間と魔族の違いってものがある。雰囲気が明らかに違うんだよ。
「好きなようにお使いください。料理が好きな連中ですから、お手伝いなら喜んですると思いますよ」
「分かった。まあどうせ今日はここで一泊の予定だったしな」
俺と会話を終えたマネケンは、仕事があるからと残念そうに立ち去っていった。
忙しいのにわざわざ会いに来てくれたのかよ。相変わらずだな。
「それじゃ、ちょっと食材を見させてくれないかな」
「しょ、承知致しました」
うん、料理人たちの表情が硬い。俺が魔王だから相当にビビってるって感じだな。まっ、しょうがないな。
ひと通り食材を確認した俺は、作れそうな料理を一生懸命に思い出す。
さすがにこっちに来てから食材が手に入らなくて作るに作れなかったものが多いし、記憶もかなり大昔のものだ。再現できるかはちょっと心配だな。
チーズやバターは自分で作ったことはないしな。今度ウルルンの能力で製法を調べてみるかな。ウルルンの能力もまだまだ未知数だし、ちょうどいいかもしれない。
「よし、ミルクと米で簡単なのを作ってみるか」
いつも着ている魔王のドレス姿のまま、俺はミルクと米で料理を始める。
何を作っているのだろうかと、みんなが気にして俺の様子を見ているようだ。
今作っているのは、ミルクリゾット。
野菜と角切り肉を炒めたところに洗わない生のままの米を入れて、魔法で出した水とミルクを加えて煮立たせていく。
生米を使うとはいえ、最後は水分でしっかり柔らかくなるからな。
元気はあるけど食欲が落ちた時なんかに作ってたんだよな。意外と覚えてるもんだ。
こうやって料理ができるところを見せてやれば、料理人たちはますます俺に尊敬に近い眼差しを向けてくる。
結果、この日の夜の食事は覚えたてのミルクリゾットが振る舞われることになってしまった。まあいっか……。
向かっている理由は、米とミルクの入手がメインだな。
いやはや、元日本人としては米はどうしても手放せなくていけないってもんだ。
頻繁に食べていると、あっという間に在庫がなくなってしまう。
俺自体は頻繁に出かけていてあまり食べてはないんだが、置いていったら料理長が張り切ってくれちゃってな。あっという間に使い切っちまったってわけだ。
「料理長、張り切るのはいいんだが。俺の分を残しておいてくれ」
「も、申し訳ございません、魔王様……」
つい先日はこういうやり取りをしてきたところだよ、うん。
「一見食べられなさそうなものでも、工夫次第でどうとでもなるんですね」
「まあな。俺の前世でも、なんでそんなものを食うんだってのは結構あったな。元々の食物は毒があるのに、なんやかんやすると無毒になるとか、食への探求ってもんは恐ろしい限りだよ」
「なんとも想像がつきませんね」
馬車に揺られながら、俺はキリエと一緒に西方王国の地を訪れた。
西方王国に到着すると、相変わらずマネケンが飛んでくる。
マネケンはこの西方王国の大臣を務める男だ。だが、なぜか俺に対して積極的に絡んでくる。奥さんいなかったか?
でもまぁ、マネケン自体にはそういうやましい気持ちはまったく存在しない。単純に俺の持っている知識に対して強い興味を持っているだけなんだよな。
国をよくするためなら使える知識はなんでも使いたいらしい。
「お久しぶりでございますな」
「本当に久しぶりだよ。周辺のすべての国を相手にしていると、どうしても来れないことが多くなってしまう。すまなかったな」
「いえいえ、争いもなく取引はできておりますので、よかったと思いますとも」
どうやら俺が北方聖国や東方帝国とやり取りをしている間も、西方王国との関係には特に問題はなかったようだ。
ほぼバフォメットに頼りきりではあったものの、ちゃんとやってくれているようでよかったぜ。
「アラクネ糸は魔物の糸ということで最初は抵抗がありましたが、光沢の良さ、手触りの良さ、そして耐久性といいことづくめで受け入れられていっております」
「そうか、反応がいいようで安心したよ」
「そうですね。今までは倒すことでしか手に入らなかった糸ですからね。こんなに大量に出回ることなど考えられませんでしたからね」
魔王領都の取引が始まってからというもの、西方王国内にはアラクネ糸が大量に出回っている。米やミルクといった農産品との代わりということで、優先的に回しているのだ。
北方聖国だとクルクーと羽毛布団を回して、砂糖と交換してたかな。
いろいろと取引が活性化しているので、大陸内の雰囲気はずいぶんと変わり始めている。
人間と魔族といったらいがみ合うものというイメージも。すっかり昔のものというイメージになりつつあった。
俺が魔王になってからというもの、ずいぶんと早いよな。一年経ってたっけか?
俺はあれこれと思い出していたが、忙しすぎたせいで正確な日数を思い出せずにいた。
だが、気にしてもキリがないなとすっぱりと考えるのをやめた。
「そういえばチーズがあったよな。覚えている限りのレシピも教えていくか」
「ほう、それは楽しみですね。魔王様は料理もたしなまれるのですか」
「まあな。過去にちょっと趣味がてらだがな」
「それでしたら、城の厨房に案内しますぞ。獣人は入れたがらないですが、魔王様は特別ですからな」
「ははっ、はははは」
俺はマネケンの案内で城の厨房へと案内される。
設備自体は魔王城と変わらない感じだが、さすがは人間と魔族の違いってものがある。雰囲気が明らかに違うんだよ。
「好きなようにお使いください。料理が好きな連中ですから、お手伝いなら喜んですると思いますよ」
「分かった。まあどうせ今日はここで一泊の予定だったしな」
俺と会話を終えたマネケンは、仕事があるからと残念そうに立ち去っていった。
忙しいのにわざわざ会いに来てくれたのかよ。相変わらずだな。
「それじゃ、ちょっと食材を見させてくれないかな」
「しょ、承知致しました」
うん、料理人たちの表情が硬い。俺が魔王だから相当にビビってるって感じだな。まっ、しょうがないな。
ひと通り食材を確認した俺は、作れそうな料理を一生懸命に思い出す。
さすがにこっちに来てから食材が手に入らなくて作るに作れなかったものが多いし、記憶もかなり大昔のものだ。再現できるかはちょっと心配だな。
チーズやバターは自分で作ったことはないしな。今度ウルルンの能力で製法を調べてみるかな。ウルルンの能力もまだまだ未知数だし、ちょうどいいかもしれない。
「よし、ミルクと米で簡単なのを作ってみるか」
いつも着ている魔王のドレス姿のまま、俺はミルクと米で料理を始める。
何を作っているのだろうかと、みんなが気にして俺の様子を見ているようだ。
今作っているのは、ミルクリゾット。
野菜と角切り肉を炒めたところに洗わない生のままの米を入れて、魔法で出した水とミルクを加えて煮立たせていく。
生米を使うとはいえ、最後は水分でしっかり柔らかくなるからな。
元気はあるけど食欲が落ちた時なんかに作ってたんだよな。意外と覚えてるもんだ。
こうやって料理ができるところを見せてやれば、料理人たちはますます俺に尊敬に近い眼差しを向けてくる。
結果、この日の夜の食事は覚えたてのミルクリゾットが振る舞われることになってしまった。まあいっか……。
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