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第一章 大陸編
第276話 転生者、湖底に突き刺さる
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さて、湖底の調査に来たというのに、湖が段々と白く変色していく。湖面近くで霧が発生しているのだ。
これでは近づくことが厳しそうだ。調査の目的には影響ないんだが、どうしたものかな。
「どうするのよ、セイ」
ピエラが俺に意見を求めている。
悩んだ結果、俺が出した結論はというと……。
「俺の調査は水中だから、湖面に霧が出てても影響ないんだよな。よし」
俺はデザストレの背中の上で立ち上がる。
「二人は先に戻っていてくれ。俺は飛び込んで水中の調査をしてくるよ」
「ちょっとセイ、本気なの?!」
ピエラが怒鳴ってくる。無茶をするなといいたいらしい。
俺としちゃここまで来て何もしないというのも、正直癪なんだよなあ。
「まあ大丈夫だって。防壁の魔法と空気草があればまるっと二日は潜ってられるはずだ。デザストレのうろこの中にいろいろ食いもんも入ってるしな」
「俺様が言うのもなんだが、あまり無茶をするでないぞ、魔王」
「おっ、お前が心配してくれるのか、デザストレ」
デザストレが面白い発言をするものだから、俺がついつい嬉しそうに反応してやる。
「バカを言うな。お前がいなくなったら、これまでの屈辱を誰に晴らせばいいというのだ。それでは俺様が困るというのだ」
まったく、ドラゴンってやつはどうしてこうもツンデレが多いんだろうな。素直に寂しいっていえばいいのによ。
俺だけじゃなくてピエラにも見透かされているらしく、俺たちは揃って顔をにやけさせている。
「お前らな、俺様をからかうなというのだ」
照れくさいらしく、デザストレが翼をバタバタとさせている。
「まぁ心配すんなよ。俺は絶対戻ってくる。とりあえず二日後、ここで落ち合おう」
「……分かった。絶対に無茶をするんじゃないぞ」
「へいへい。まったく、お前って思った以上に可愛い奴だな」
「なっ、何を言いやがる。俺様は魔族が恐れる厄災だぞ。可愛いとかいうんじゃない!」
俺に対して腹を立てているデザストレだが、顔は真っ赤になってるんだよな。全部お見通しなんだよ。
「ピエラ。俺が不在の間はよろしく頼むぞ」
「了解。どうせ止めたって無駄でしょうから、ゆっくり帰りを待たせてもらうわよ」
二人の了承を得たことで、俺はデザストレの背中で立ち上がる。
下を見てみるが、思った以上の高度がある。なんだろうかな、どこかの鉄橋から湖面の高さよりもはるかに高いんだよな、これ。
だが、飛び込むといった以上は実行するか。俺には魔法もあるんだし、どうにかなるだろう。
「ふん、今さら怖気付いたか?」
「まさかな。それじゃ行ってくるとするぜ」
「気を付けてね、セイ」
俺はピエラの言葉に手を振ると、思い切って湖面へ向けて飛び降りた。
段々と湖面が近付いてくる。湖面のあたりは白い霧が発生していて、どことなく寒気を感じる。
「プロテクション」
ゲームなんかでよく聞く防御系の魔法の単語を口に出すと、俺の周りには魔力の壁が発生する。それに加えて、少し強めの空気の層を内部に張り巡らせる。
こうしないとぶつかった時の衝撃がまともに体に来てしまうからな。エアバッグは大事だぞ。
「だああ、男は根性おおおおおっ!!」
俺は今の自分が女だということも忘れて、わけの分からないことを叫びながら湖に飛び込んだ。
防壁魔法で囲っていたせいか、ものすごい水しぶきが上がる。
だというのに、湖面を覆う霧はまったくぶれない。しかし、とんでもない高さから飛び込んだこともあって、霧がぶれない以外のことはまったく分からなかった。
俺はそのまま湖底へと向けて沈んでいってしまった。
「あたたたた……。やっぱりあの高さから飛び込むと、衝撃が酷すぎるな。湖底に突き刺さっちまったじゃねえか」
俺は明かり取りの魔法を使って、自分の状況を確認する。
俺を取り囲む防壁魔法は、約半分が固定に突き刺さってしまっていた。
下はもう仕方がないやと諦めて、俺は湖面の方を見上げる。
思った以上に湖の透明度が高いのか、湖面とその上の霧までがはっきりと見えている。……マジで?
「湖面の揺らぎが見えるけど、相当の深さだな。ビルの四階くらいだろうかな。十数メートルってとこか」
湖底に半分植わってるし、俺の感覚は獣人化しているとはいえどそこまで鋭くなかった。数値はまったくもって適当だった。
とりあえず、湖の中を調べるためにも湖底から脱出しないといけない。今の状態だとまったく身動きが取れないんだよ。
転生者特典のせいか、俺はほぼすべての属性が使える。
唯一使えなかった闇属性も、魔王になったことで習得できた。いってしまえば、今の俺は全属性の魔法が使えるってわけだ。他を探しても多分いないだろうな。
水を含んだ湖底の泥から脱出するには、水魔法と土魔法を器用に使うしかない。
複数の属性を同時にというのは結構難しいんだよな。俺だってそこまで器用な方じゃないしな。
そんな言い訳を今やっている場合じゃない。
俺はどうにか防壁魔法の外側に魔力を伝わらせて、湖底からの脱出を図ったのだった。
これでは近づくことが厳しそうだ。調査の目的には影響ないんだが、どうしたものかな。
「どうするのよ、セイ」
ピエラが俺に意見を求めている。
悩んだ結果、俺が出した結論はというと……。
「俺の調査は水中だから、湖面に霧が出てても影響ないんだよな。よし」
俺はデザストレの背中の上で立ち上がる。
「二人は先に戻っていてくれ。俺は飛び込んで水中の調査をしてくるよ」
「ちょっとセイ、本気なの?!」
ピエラが怒鳴ってくる。無茶をするなといいたいらしい。
俺としちゃここまで来て何もしないというのも、正直癪なんだよなあ。
「まあ大丈夫だって。防壁の魔法と空気草があればまるっと二日は潜ってられるはずだ。デザストレのうろこの中にいろいろ食いもんも入ってるしな」
「俺様が言うのもなんだが、あまり無茶をするでないぞ、魔王」
「おっ、お前が心配してくれるのか、デザストレ」
デザストレが面白い発言をするものだから、俺がついつい嬉しそうに反応してやる。
「バカを言うな。お前がいなくなったら、これまでの屈辱を誰に晴らせばいいというのだ。それでは俺様が困るというのだ」
まったく、ドラゴンってやつはどうしてこうもツンデレが多いんだろうな。素直に寂しいっていえばいいのによ。
俺だけじゃなくてピエラにも見透かされているらしく、俺たちは揃って顔をにやけさせている。
「お前らな、俺様をからかうなというのだ」
照れくさいらしく、デザストレが翼をバタバタとさせている。
「まぁ心配すんなよ。俺は絶対戻ってくる。とりあえず二日後、ここで落ち合おう」
「……分かった。絶対に無茶をするんじゃないぞ」
「へいへい。まったく、お前って思った以上に可愛い奴だな」
「なっ、何を言いやがる。俺様は魔族が恐れる厄災だぞ。可愛いとかいうんじゃない!」
俺に対して腹を立てているデザストレだが、顔は真っ赤になってるんだよな。全部お見通しなんだよ。
「ピエラ。俺が不在の間はよろしく頼むぞ」
「了解。どうせ止めたって無駄でしょうから、ゆっくり帰りを待たせてもらうわよ」
二人の了承を得たことで、俺はデザストレの背中で立ち上がる。
下を見てみるが、思った以上の高度がある。なんだろうかな、どこかの鉄橋から湖面の高さよりもはるかに高いんだよな、これ。
だが、飛び込むといった以上は実行するか。俺には魔法もあるんだし、どうにかなるだろう。
「ふん、今さら怖気付いたか?」
「まさかな。それじゃ行ってくるとするぜ」
「気を付けてね、セイ」
俺はピエラの言葉に手を振ると、思い切って湖面へ向けて飛び降りた。
段々と湖面が近付いてくる。湖面のあたりは白い霧が発生していて、どことなく寒気を感じる。
「プロテクション」
ゲームなんかでよく聞く防御系の魔法の単語を口に出すと、俺の周りには魔力の壁が発生する。それに加えて、少し強めの空気の層を内部に張り巡らせる。
こうしないとぶつかった時の衝撃がまともに体に来てしまうからな。エアバッグは大事だぞ。
「だああ、男は根性おおおおおっ!!」
俺は今の自分が女だということも忘れて、わけの分からないことを叫びながら湖に飛び込んだ。
防壁魔法で囲っていたせいか、ものすごい水しぶきが上がる。
だというのに、湖面を覆う霧はまったくぶれない。しかし、とんでもない高さから飛び込んだこともあって、霧がぶれない以外のことはまったく分からなかった。
俺はそのまま湖底へと向けて沈んでいってしまった。
「あたたたた……。やっぱりあの高さから飛び込むと、衝撃が酷すぎるな。湖底に突き刺さっちまったじゃねえか」
俺は明かり取りの魔法を使って、自分の状況を確認する。
俺を取り囲む防壁魔法は、約半分が固定に突き刺さってしまっていた。
下はもう仕方がないやと諦めて、俺は湖面の方を見上げる。
思った以上に湖の透明度が高いのか、湖面とその上の霧までがはっきりと見えている。……マジで?
「湖面の揺らぎが見えるけど、相当の深さだな。ビルの四階くらいだろうかな。十数メートルってとこか」
湖底に半分植わってるし、俺の感覚は獣人化しているとはいえどそこまで鋭くなかった。数値はまったくもって適当だった。
とりあえず、湖の中を調べるためにも湖底から脱出しないといけない。今の状態だとまったく身動きが取れないんだよ。
転生者特典のせいか、俺はほぼすべての属性が使える。
唯一使えなかった闇属性も、魔王になったことで習得できた。いってしまえば、今の俺は全属性の魔法が使えるってわけだ。他を探しても多分いないだろうな。
水を含んだ湖底の泥から脱出するには、水魔法と土魔法を器用に使うしかない。
複数の属性を同時にというのは結構難しいんだよな。俺だってそこまで器用な方じゃないしな。
そんな言い訳を今やっている場合じゃない。
俺はどうにか防壁魔法の外側に魔力を伝わらせて、湖底からの脱出を図ったのだった。
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