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第一章 大陸編
第279話 転生者、強制イベントに巻き込まれる
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俺がやって来た場所は、まったくといっていいほど光の届かない場所だった。
何も見えないためか、獣人としての感覚が鋭さを増している。
おかげで、視界がまともに機能しないながらも、周囲の気配はしっかりと感じ取れていた。
(俺の嗅覚には何も反応しないな。人らしい気配もない。まったく、一体どこなんだよ、ここは……)
辺りをきょろきょろと見回しているが、やっぱり真っ暗で何も見えやしない。
誰もいる気配はないし、やむを得ないな。明かり取りでも使うか。
俺は前世の懐中電灯を思い浮かべながら光の魔法を使う。
魔法によって照らされたことで、ようやく周囲の詳細な様子が判明する。
「なんだこりゃ……」
俺の目に飛び込んできたのは、まるで神殿のような建物だった。
ここは洞窟の中なのは間違いない。辺りは岩肌がはっきりと見える壁に囲まれている。
なんだってこんな地中に神殿が建ってるんだろうな。
いくら見回しても、気配を探ってみても、まったく人の気配がない。
しょうがないので、ヒントになりそうな神殿の中へと入っていく。
神殿に足を踏み入れた瞬間、俺は知っている気配を感じた。
この感じは、おそらくあそこで感じた気配だ。
「レーヴェン、ここにもいるのか」
俺が呼び掛けると、目の前に光が集まり始める。
まばゆい光が放たれたかと思うと、そこには南方王国で見たことのある人物、レーヴェンが姿を現した。
「久しいな、世界を渡りし者。この空間を見つけるとは思っていましたが、想定よりも早かったようですね」
レーヴェンの声が響き渡るが、姿からも声からも、男か女かまったく分からない。
相変わらず謎の多い人物だな。いや、人を超越した何者かだったな。神ではないらしいが、一体何者なんだろうな。
「私が何者か、それは以前にお伝えしました。命を司る者、すべては私から生まれ、私へと還っていくのです」
「おっと、そうだったな。いろいろあったせいで記憶が曖昧になってたぜ。すまなかった」
「謝罪には及びません。私という存在はそこにあってどこにもないもの。忘れ去られたとしても、何ら問題はないのです」
俺が謝罪すると、どこかにこやかに笑ったように見えた。
誰にも認知されないというのは、命を司る者としてのひとつの在り方なのかもしれないな。
だが、今の俺にはそれよりも大事なことがある。ここが一体どこで、どうしてここに吸い込まれてしまったのかという謎を解き明かさないとな。
改めて俺がレーヴェンを見ると、口元が笑っていた。
「そうですか。勝手にここへと導かれてきたのですね」
「なぜそれを」
「私は神ではありませんが人でもありません。そして、人の考えることはすべてお見通しなのです」
まったく、恐ろしいもんだな。俺の考えていることを全部見抜かれるっていうのは。
俺がいろいろと考え込んでいると、レーヴェンが静かに語りかけてきた。
「そこまで悩む必要はありませんよ。あなたがここに来た理由はおそらく、この子が呼んだんですね」
レーヴェンは自分の後ろにある神殿を見ながら話している。
つまりは何か?
そこに建っている神殿が、俺をここへ呼び寄せたってわけか?
「はっ! まさか湖に霧が立ち込めた理由って」
「そうですね。この子が人払いをするために発生させたようです。この神殿は、あそこの木と同じで私の子どものようなものですからね」
なんてことだろうか。俺の目の前にある神殿は、意思を持っているというのだという。
それにしてもなんとも信じられない話だな。
だが、こうも不思議な現象を何度も見せられると、信じざるを得ないというものだ。
「その神殿が俺に用って、一体何のためなんだ」
「それは、この中に入ると分かると思います。ですが、私は中に入ることはできません。あなた一人だけで、この中に進まなければなりません」
「ちょっと待て。それってよく創作物で見かける試練ってやつか?」
「創作物がどのようなものか存じ上げませんが、試練だと思っていただいて結構です」
まったくよく分からない展開になってきたな。
そもそもこの神殿は、なぜ俺をここに呼び寄せようとしたのか。そこから既に分からない。
試練を与えるためだとしても、どこで俺を知ったのかという疑問もある。
「あなたを知った理由ですか」
「おい、人の心の声を盗み聞くな」
レーヴァンがいきなり話し始めるものだから、ついツッコミを入れちまったじゃねえか。
「不思議な動物と、この湖を渡ったそうではないですか。それでこの子はあなたを感知したようです」
「ミーアドッグの一件でかよ……。なんでこう、面倒のドミノ倒しが起きるんだよ。わけが分からねえ……」
俺は頭を抱えてしまう。
「何も嘆くことはありませんよ。こうなることは既定事項だったのです。それが早いか遅いかの違いでしかないのです」
「タイミングの選べる強制イベントか……。そういうの要らねえから、今日のところは帰してくれ」
俺が嘆いていると、レーヴェンは首を横に振っていた。
「ダメですね。この試練を終えるまで、あなたはここから出ることは叶いません。諦めてこの子の試練を受けて下さい」
ああ、もう。試練ってはっきり言いやがったよ。
さらに面倒なことに、退路は完全にふさがれているらしい。こうなったら前に進むしかなさそうだ。
「分かった、やってやる。それでいいんだろ?」
「はい、その通りです」
強制イベントなのでもう帰ることは諦めた。
俺が了承すると、神殿の扉が静かに開かれる。
俺の前に現れたレーヴェンの使徒による試練。無事にクリアできるといいんだがな。
意を決して、その一歩を踏み出した。
何も見えないためか、獣人としての感覚が鋭さを増している。
おかげで、視界がまともに機能しないながらも、周囲の気配はしっかりと感じ取れていた。
(俺の嗅覚には何も反応しないな。人らしい気配もない。まったく、一体どこなんだよ、ここは……)
辺りをきょろきょろと見回しているが、やっぱり真っ暗で何も見えやしない。
誰もいる気配はないし、やむを得ないな。明かり取りでも使うか。
俺は前世の懐中電灯を思い浮かべながら光の魔法を使う。
魔法によって照らされたことで、ようやく周囲の詳細な様子が判明する。
「なんだこりゃ……」
俺の目に飛び込んできたのは、まるで神殿のような建物だった。
ここは洞窟の中なのは間違いない。辺りは岩肌がはっきりと見える壁に囲まれている。
なんだってこんな地中に神殿が建ってるんだろうな。
いくら見回しても、気配を探ってみても、まったく人の気配がない。
しょうがないので、ヒントになりそうな神殿の中へと入っていく。
神殿に足を踏み入れた瞬間、俺は知っている気配を感じた。
この感じは、おそらくあそこで感じた気配だ。
「レーヴェン、ここにもいるのか」
俺が呼び掛けると、目の前に光が集まり始める。
まばゆい光が放たれたかと思うと、そこには南方王国で見たことのある人物、レーヴェンが姿を現した。
「久しいな、世界を渡りし者。この空間を見つけるとは思っていましたが、想定よりも早かったようですね」
レーヴェンの声が響き渡るが、姿からも声からも、男か女かまったく分からない。
相変わらず謎の多い人物だな。いや、人を超越した何者かだったな。神ではないらしいが、一体何者なんだろうな。
「私が何者か、それは以前にお伝えしました。命を司る者、すべては私から生まれ、私へと還っていくのです」
「おっと、そうだったな。いろいろあったせいで記憶が曖昧になってたぜ。すまなかった」
「謝罪には及びません。私という存在はそこにあってどこにもないもの。忘れ去られたとしても、何ら問題はないのです」
俺が謝罪すると、どこかにこやかに笑ったように見えた。
誰にも認知されないというのは、命を司る者としてのひとつの在り方なのかもしれないな。
だが、今の俺にはそれよりも大事なことがある。ここが一体どこで、どうしてここに吸い込まれてしまったのかという謎を解き明かさないとな。
改めて俺がレーヴェンを見ると、口元が笑っていた。
「そうですか。勝手にここへと導かれてきたのですね」
「なぜそれを」
「私は神ではありませんが人でもありません。そして、人の考えることはすべてお見通しなのです」
まったく、恐ろしいもんだな。俺の考えていることを全部見抜かれるっていうのは。
俺がいろいろと考え込んでいると、レーヴェンが静かに語りかけてきた。
「そこまで悩む必要はありませんよ。あなたがここに来た理由はおそらく、この子が呼んだんですね」
レーヴェンは自分の後ろにある神殿を見ながら話している。
つまりは何か?
そこに建っている神殿が、俺をここへ呼び寄せたってわけか?
「はっ! まさか湖に霧が立ち込めた理由って」
「そうですね。この子が人払いをするために発生させたようです。この神殿は、あそこの木と同じで私の子どものようなものですからね」
なんてことだろうか。俺の目の前にある神殿は、意思を持っているというのだという。
それにしてもなんとも信じられない話だな。
だが、こうも不思議な現象を何度も見せられると、信じざるを得ないというものだ。
「その神殿が俺に用って、一体何のためなんだ」
「それは、この中に入ると分かると思います。ですが、私は中に入ることはできません。あなた一人だけで、この中に進まなければなりません」
「ちょっと待て。それってよく創作物で見かける試練ってやつか?」
「創作物がどのようなものか存じ上げませんが、試練だと思っていただいて結構です」
まったくよく分からない展開になってきたな。
そもそもこの神殿は、なぜ俺をここに呼び寄せようとしたのか。そこから既に分からない。
試練を与えるためだとしても、どこで俺を知ったのかという疑問もある。
「あなたを知った理由ですか」
「おい、人の心の声を盗み聞くな」
レーヴァンがいきなり話し始めるものだから、ついツッコミを入れちまったじゃねえか。
「不思議な動物と、この湖を渡ったそうではないですか。それでこの子はあなたを感知したようです」
「ミーアドッグの一件でかよ……。なんでこう、面倒のドミノ倒しが起きるんだよ。わけが分からねえ……」
俺は頭を抱えてしまう。
「何も嘆くことはありませんよ。こうなることは既定事項だったのです。それが早いか遅いかの違いでしかないのです」
「タイミングの選べる強制イベントか……。そういうの要らねえから、今日のところは帰してくれ」
俺が嘆いていると、レーヴェンは首を横に振っていた。
「ダメですね。この試練を終えるまで、あなたはここから出ることは叶いません。諦めてこの子の試練を受けて下さい」
ああ、もう。試練ってはっきり言いやがったよ。
さらに面倒なことに、退路は完全にふさがれているらしい。こうなったら前に進むしかなさそうだ。
「分かった、やってやる。それでいいんだろ?」
「はい、その通りです」
強制イベントなのでもう帰ることは諦めた。
俺が了承すると、神殿の扉が静かに開かれる。
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意を決して、その一歩を踏み出した。
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