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第一章 大陸編
第297話 転生者、ヨネスを帝国に連れて行く
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剣術の先生としてヨネスを連れた俺たちは、あっという間に帝国へと戻ってきた。
ヨネスは初めて乗った魔王領の馬の速さに興奮しているようだ。終始テンションが高まったのか、うるさくてたまらなかったぜ。
「ここが東方帝国か。噂にしか聞いてなかったのだが、ずいぶんと噂と違う場所だな」
帝都に到着したところで、見た感じの印象を遠慮なく漏らしてやがる。
「だから言っただろうが、内部は乱れていると。これでもだいぶマシになったんだぞ」
ヨネスの反応を見て、俺は一応指摘しておいた。
ピエラまで、これでマシになったのかという顔をしていた。
お前らな、本当にこれでだいぶマシになったんだよ。どんだけ俺が苦労してきた思ってるんだ。
以前を知らないからといって、この反応には納得がいかないというものだ。
俺の中ではいろいろと感情が面倒なことになってきたので、もう黙り込んで二人を宮殿へと案内した。
宮殿の中へはあっさりと通ることができた。二人のことも俺の友人だと説明すると顔パスだった。いいのか、そんな判断で。
まっ、無事に宮殿の入れたので、ひとまず皇帝に会うだけだ。
宮殿の中をきょろきょろと見回す二人を連れて、俺は真っすぐ皇帝の部屋へとやって来る。
「あっ、魔王。もう戻ってきたかにゃ?」
皇帝の部屋の中に入ると、そこにはエイミーだけがいた。
「あれ、エイミー。皇帝陛下は?」
「陛下ならケンソウと一緒にゃ。軍部の打ち合わせをしているにゃ」
「そうか。会議なら待たせてもらうか」
皇帝がいないのなら、今は用事が果たせない。乱入してもいいだろうが、軍部の会議であるのなら大事な会議の最中だ。邪魔するわけにもいかないだろう。
部屋で待たせてもらえるか、俺はエイミーに尋ねてみる。
「待つのは構わないにゃ。その前に、その後ろのおまけを紹介してほしいにゃ。特にそっちの女、私を見る目が怖いのにゃ」
「見る目?」
エイミーの指摘を、俺は不思議に思う。
ここでいる女は俺とエイミーと、ピエラだな。俺とエイミーは話をしているので、該当するのはピエラだ。
……ってまさか、ピエラのやつ、エイミーの正体に勘付いたのか?
くそっ、これだから重度のケモナーは!
くるりと振り返ると、ピエラは目をキラキラと輝かせてエイミーを見ていた。
「おい、ピエラ。変な目を向けるな。あいつはあれでも皇帝の秘書だぞ」
「えっ、実はお偉いさんなの?」
「そうだよ。言ってみればうちのとこのキリエくらいの立場なんだ。頼むから失礼をしないでくれ」
「むぅ、もふもふの気配がするのに……仕方ないわね」
やっぱりか、こいつ。
魔法の才能がすごいだけなら大魔法使いといってもいいのに、この重度のケモナーが本当に問題すぎるんだよ。
これでも一応獣人の集落でうまくやってるらしいが、にわかには信じられないよな。獣人たちの証言があるからこそ、やっと信じられるってもんだよ。
ピエラをおとなしくさせたところで、俺はエイミーに二人を紹介する。
「なるほどにゃ、この男が陛下の剣の指南をするというわけかにゃ」
「ああ、ケンソウも忙しいだろうし、他の連中は皇帝陛下に遠慮するだろう? だから、俺の学生時代のライバルを連れてきたんだ。今は南方王国と魔王領の国境の街で警備隊に所属している」
「ほうほう。なら、剣の腕前はそこそこ期待はできそうだにゃ。でも、指導できるかどうかとなると別問題にゃ」
エイミーはヨネスをじろじろと見ている。おそらく野性的な勘で評価を下すためだろう。
てか、ヨネス。なにをそんなに緊張してるんだ。そいつの正体はでかい猫で、人間じゃないぞ。
女性に対する免疫がないのか、こいつは。
ヨネスがカチコチに固まってつっ立っているから、俺は思わぬ表情でヨネスを見ている。なんで俺たちの時と違う態度なんだよ。
「よし、こうなったら実力を見てやるにゃ。ついてくるといいにゃ」
エイミーは方針を固めたようで、ちらりと俺の方を見てくる。
「よし、ヨネス。エイミーについて行くぞ」
「わ、分かった」
なんで動揺してるんだ。
思ってもみない反応に戸惑うばかりだが、とりあえず俺たちはエイミーについて訓練場へと向かった。
訓練場に到着すると、帝国の兵士たちが今日も一生懸命に汗を流している。
いい感じに鍛錬しているようで、内情が不安定な帝国の中では唯一安定している場所といっても過言ではなかった。
エイミーはその訓練をしている兵士の中から、適当に声を掛ける。
「そこの君、ちょっといいかにゃ?」
「なんでございましょうか、エイミー様」
声を掛けられた兵士が、手を止めてエイミーに振り返る。
「魔王が友人の剣士を連れてきたというのでね、ちょっと勝負をして欲しいにゃ」
「剣士殿と勝負でございますか」
兵士はちらりと俺たちの方を見る。
ヨネスと目が合った時、兵士は状況を理解したようにこくりと頷く。
「分かりました。そのお話、お受け致します」
「そうか、よかったにゃ。隣の君、木剣を持ってきて審判を頼むにゃ」
「承知致しました。少々お待ちを」
最初に声を掛けた兵士と打ち合っていた兵士が、木剣を取りに走り去っていく。
どうやら、ヨネスは兵士と打ち合うことになったようだった。
ヨネスは初めて乗った魔王領の馬の速さに興奮しているようだ。終始テンションが高まったのか、うるさくてたまらなかったぜ。
「ここが東方帝国か。噂にしか聞いてなかったのだが、ずいぶんと噂と違う場所だな」
帝都に到着したところで、見た感じの印象を遠慮なく漏らしてやがる。
「だから言っただろうが、内部は乱れていると。これでもだいぶマシになったんだぞ」
ヨネスの反応を見て、俺は一応指摘しておいた。
ピエラまで、これでマシになったのかという顔をしていた。
お前らな、本当にこれでだいぶマシになったんだよ。どんだけ俺が苦労してきた思ってるんだ。
以前を知らないからといって、この反応には納得がいかないというものだ。
俺の中ではいろいろと感情が面倒なことになってきたので、もう黙り込んで二人を宮殿へと案内した。
宮殿の中へはあっさりと通ることができた。二人のことも俺の友人だと説明すると顔パスだった。いいのか、そんな判断で。
まっ、無事に宮殿の入れたので、ひとまず皇帝に会うだけだ。
宮殿の中をきょろきょろと見回す二人を連れて、俺は真っすぐ皇帝の部屋へとやって来る。
「あっ、魔王。もう戻ってきたかにゃ?」
皇帝の部屋の中に入ると、そこにはエイミーだけがいた。
「あれ、エイミー。皇帝陛下は?」
「陛下ならケンソウと一緒にゃ。軍部の打ち合わせをしているにゃ」
「そうか。会議なら待たせてもらうか」
皇帝がいないのなら、今は用事が果たせない。乱入してもいいだろうが、軍部の会議であるのなら大事な会議の最中だ。邪魔するわけにもいかないだろう。
部屋で待たせてもらえるか、俺はエイミーに尋ねてみる。
「待つのは構わないにゃ。その前に、その後ろのおまけを紹介してほしいにゃ。特にそっちの女、私を見る目が怖いのにゃ」
「見る目?」
エイミーの指摘を、俺は不思議に思う。
ここでいる女は俺とエイミーと、ピエラだな。俺とエイミーは話をしているので、該当するのはピエラだ。
……ってまさか、ピエラのやつ、エイミーの正体に勘付いたのか?
くそっ、これだから重度のケモナーは!
くるりと振り返ると、ピエラは目をキラキラと輝かせてエイミーを見ていた。
「おい、ピエラ。変な目を向けるな。あいつはあれでも皇帝の秘書だぞ」
「えっ、実はお偉いさんなの?」
「そうだよ。言ってみればうちのとこのキリエくらいの立場なんだ。頼むから失礼をしないでくれ」
「むぅ、もふもふの気配がするのに……仕方ないわね」
やっぱりか、こいつ。
魔法の才能がすごいだけなら大魔法使いといってもいいのに、この重度のケモナーが本当に問題すぎるんだよ。
これでも一応獣人の集落でうまくやってるらしいが、にわかには信じられないよな。獣人たちの証言があるからこそ、やっと信じられるってもんだよ。
ピエラをおとなしくさせたところで、俺はエイミーに二人を紹介する。
「なるほどにゃ、この男が陛下の剣の指南をするというわけかにゃ」
「ああ、ケンソウも忙しいだろうし、他の連中は皇帝陛下に遠慮するだろう? だから、俺の学生時代のライバルを連れてきたんだ。今は南方王国と魔王領の国境の街で警備隊に所属している」
「ほうほう。なら、剣の腕前はそこそこ期待はできそうだにゃ。でも、指導できるかどうかとなると別問題にゃ」
エイミーはヨネスをじろじろと見ている。おそらく野性的な勘で評価を下すためだろう。
てか、ヨネス。なにをそんなに緊張してるんだ。そいつの正体はでかい猫で、人間じゃないぞ。
女性に対する免疫がないのか、こいつは。
ヨネスがカチコチに固まってつっ立っているから、俺は思わぬ表情でヨネスを見ている。なんで俺たちの時と違う態度なんだよ。
「よし、こうなったら実力を見てやるにゃ。ついてくるといいにゃ」
エイミーは方針を固めたようで、ちらりと俺の方を見てくる。
「よし、ヨネス。エイミーについて行くぞ」
「わ、分かった」
なんで動揺してるんだ。
思ってもみない反応に戸惑うばかりだが、とりあえず俺たちはエイミーについて訓練場へと向かった。
訓練場に到着すると、帝国の兵士たちが今日も一生懸命に汗を流している。
いい感じに鍛錬しているようで、内情が不安定な帝国の中では唯一安定している場所といっても過言ではなかった。
エイミーはその訓練をしている兵士の中から、適当に声を掛ける。
「そこの君、ちょっといいかにゃ?」
「なんでございましょうか、エイミー様」
声を掛けられた兵士が、手を止めてエイミーに振り返る。
「魔王が友人の剣士を連れてきたというのでね、ちょっと勝負をして欲しいにゃ」
「剣士殿と勝負でございますか」
兵士はちらりと俺たちの方を見る。
ヨネスと目が合った時、兵士は状況を理解したようにこくりと頷く。
「分かりました。そのお話、お受け致します」
「そうか、よかったにゃ。隣の君、木剣を持ってきて審判を頼むにゃ」
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最初に声を掛けた兵士と打ち合っていた兵士が、木剣を取りに走り去っていく。
どうやら、ヨネスは兵士と打ち合うことになったようだった。
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