301 / 431
第一章 大陸編
第301話 転生者、話がまとまって少し安堵する
しおりを挟む
食堂へとたどり着いた俺たちだが、さすがにピエラが俺の髪をいじっていたこともあって、完全に皇帝たちを待たせる結果となっていた。
食堂に顔を出してその状況を確認した俺たちは、皇帝にひとまず謝っておいた。
「よいよい、気にするでないぞ」
皇帝は実に寛大な心で俺たちのことを許していた。さすが皇帝、懐が深いぜ。
「それにしても、今日はちょっと雰囲気が違うな」
皇帝は、俺の髪型が変わったことを察していたようだ。こういう細やかなところにも気が付くとはな。正直驚いたよ。
「うちのとこのピエラが、せっかくだからとヘアメイクをしてくれたんですよ。俺ておしゃれっ気がないんで、髪に関しては無頓着ですからね」
思ってることを正直に言いながら、俺はついはにかんでしまっていた。
「ふむ、気持ちは分かるぞ。だがな、余たちのように上に立つ者というのは、それなりに品格を求められる。それが行動であり、言葉であり、そして、身だしなみでもある。そなたも魔族の王というのであるなら、もう少し気を使ってもよいのではないかな?」
なんてことだろうか。
俺は十一歳の少年である皇帝に、トップとしての心構えの説教をされてしまっているのだ。
くっ、このようなことがあっていいのだろうか。
なんだか悔しさを感じてしまう。
「まったく、魔王は面白い奴だな。だからこそ、余も受け入れることを決めたのだがな。まぁ、座れ。食事をしながら話をしようではないか」
皇帝からの許しも出たので、俺とピエラも席に着く。
俺たちの着席を確認して、皇帝が二度手を叩く。それと同時に扉が開いて、給仕たちが料理を運び込んできた。
「魔王のおかげで、我が国の食料事情は改善してきている。此度の働き、いくら感謝しても足りぬというものぞ」
「いえ、俺としては当然のことをしたまでですよ。困っている人がいたら、助けずにはいられませんからね」
「セイってば、相変わらずお人好しなんだから」
皇帝の言葉に俺が答えていると、隣に座るピエラが茶化してきた。
うん、ピエラ。ここでその言葉を挟むのかよ。
ほら見ろ、そんなことを言うから、皇帝が笑ってしまっているじゃないか。
俺はピエラに抗議の視線を向けた。
「くくくっ、実に面白いものよな。そなたは知り合いが絡むといろんな姿を見せてくれる。実に見てて飽きぬというものだ」
皇帝の言葉を聞いて、俺はつい複雑な心境にならざるを得なかった。
「本当に、今の魔王は面白いのにゃ」
エイミーにまでこう言われる始末だった。うん、嬉しいような悲しいような。
しばらくは黙々と朝の食事が続けられた。
ある程度食べたところで、皇帝から思い出したかのように俺に話し掛けてきた。
「そうだ。魔王が連れてきたヨネスのことだが、正式に今日から余の剣の指南役として、この帝都に留まることになった」
どうやら、ヨネスは正式に帝国に剣の指南役として迎え入れられることになったようだ。
こういう話を聞くと、わざわざ呼んできただけのことはあるなと胸を撫で下ろしてしまう。
話を聞いたところで、俺はヨネスへと視線を向ける。
「うん? どうした、セイ」
「いや、無事に指南役になれたようでうれしく感じているだけだよ」
ヨネスの反応に俺がその様に返すと、ヨネスは照れくさそうに鼻の下を擦っている。よっぽど嬉しい上に誇らしいんだな。俺には今のヨネスの気持ちが痛いくらいに伝わってきた。
「ヨネス殿は皇帝陛下の剣の指南役ではあるけれど、空いている時間は他の訓練生に対して特訓をつけて下さると助かりますにゃ」
どうやら、最近慌ただしくなっているケンソウの代わりを務めあげるというのが、今のヨネスに与えられた仕事のようだった、
ヨネスはエイミーの告げた内容を、二つ返事で受け入れている。
これだけしっかりと話がまとまっているのなら、もう俺たちの出番はなさそうだな。
「というわけにゃ。ヨネス殿にはケンソウの代わりを務めてもらうというこにゃ」
「そういえば、そのケンソウはどこに行ったんだ? 食堂での食事はいつもの日課だったと思うだが……」
ここでようやく、食堂の中にケンソウの姿がないことに気が付いた。
「ケンソウは別の用事にあたっているのにゃ。食堂までは護衛ということで来てもらったのだけどにゃ」
「そうか。仕事があるのなら仕方ないな」
エイミーの説明に、俺は再び納得していた。
というわけで、ケンソウはいないものの、俺たちは話を弾ませながら楽しく朝食を済ませていた。
「それじゃ、魔王、ピエラ。そなたたち二人は自由行動をしてもらっていて構わない。だが、余はエイミーと一緒にヨネスにしろの中を案内してくるのでな」
「分かりました。それじゃヨネス、皇帝陛下のことをよろしく頼んだ」
皇帝から今日の予定を聞かされた俺は、その予定を了承する。
そして、すぐさまヨネスに対して、きちんと仕事をするように指示しておいた。
こうして、無事にヨネスを皇帝の剣の指南役にすることができた。
これで皇帝の剣が上達すれば、少しはこの帝国の安定度が高まってくれるだろう。
まあ、ヨネスの性格を考えると、そこまでの期待というのは過度というものかも知れないがな。
朝食を終えた俺とピエラは、再び帝国の農村の様子を見るべく帝都を後にしたのだった。
食堂に顔を出してその状況を確認した俺たちは、皇帝にひとまず謝っておいた。
「よいよい、気にするでないぞ」
皇帝は実に寛大な心で俺たちのことを許していた。さすが皇帝、懐が深いぜ。
「それにしても、今日はちょっと雰囲気が違うな」
皇帝は、俺の髪型が変わったことを察していたようだ。こういう細やかなところにも気が付くとはな。正直驚いたよ。
「うちのとこのピエラが、せっかくだからとヘアメイクをしてくれたんですよ。俺ておしゃれっ気がないんで、髪に関しては無頓着ですからね」
思ってることを正直に言いながら、俺はついはにかんでしまっていた。
「ふむ、気持ちは分かるぞ。だがな、余たちのように上に立つ者というのは、それなりに品格を求められる。それが行動であり、言葉であり、そして、身だしなみでもある。そなたも魔族の王というのであるなら、もう少し気を使ってもよいのではないかな?」
なんてことだろうか。
俺は十一歳の少年である皇帝に、トップとしての心構えの説教をされてしまっているのだ。
くっ、このようなことがあっていいのだろうか。
なんだか悔しさを感じてしまう。
「まったく、魔王は面白い奴だな。だからこそ、余も受け入れることを決めたのだがな。まぁ、座れ。食事をしながら話をしようではないか」
皇帝からの許しも出たので、俺とピエラも席に着く。
俺たちの着席を確認して、皇帝が二度手を叩く。それと同時に扉が開いて、給仕たちが料理を運び込んできた。
「魔王のおかげで、我が国の食料事情は改善してきている。此度の働き、いくら感謝しても足りぬというものぞ」
「いえ、俺としては当然のことをしたまでですよ。困っている人がいたら、助けずにはいられませんからね」
「セイってば、相変わらずお人好しなんだから」
皇帝の言葉に俺が答えていると、隣に座るピエラが茶化してきた。
うん、ピエラ。ここでその言葉を挟むのかよ。
ほら見ろ、そんなことを言うから、皇帝が笑ってしまっているじゃないか。
俺はピエラに抗議の視線を向けた。
「くくくっ、実に面白いものよな。そなたは知り合いが絡むといろんな姿を見せてくれる。実に見てて飽きぬというものだ」
皇帝の言葉を聞いて、俺はつい複雑な心境にならざるを得なかった。
「本当に、今の魔王は面白いのにゃ」
エイミーにまでこう言われる始末だった。うん、嬉しいような悲しいような。
しばらくは黙々と朝の食事が続けられた。
ある程度食べたところで、皇帝から思い出したかのように俺に話し掛けてきた。
「そうだ。魔王が連れてきたヨネスのことだが、正式に今日から余の剣の指南役として、この帝都に留まることになった」
どうやら、ヨネスは正式に帝国に剣の指南役として迎え入れられることになったようだ。
こういう話を聞くと、わざわざ呼んできただけのことはあるなと胸を撫で下ろしてしまう。
話を聞いたところで、俺はヨネスへと視線を向ける。
「うん? どうした、セイ」
「いや、無事に指南役になれたようでうれしく感じているだけだよ」
ヨネスの反応に俺がその様に返すと、ヨネスは照れくさそうに鼻の下を擦っている。よっぽど嬉しい上に誇らしいんだな。俺には今のヨネスの気持ちが痛いくらいに伝わってきた。
「ヨネス殿は皇帝陛下の剣の指南役ではあるけれど、空いている時間は他の訓練生に対して特訓をつけて下さると助かりますにゃ」
どうやら、最近慌ただしくなっているケンソウの代わりを務めあげるというのが、今のヨネスに与えられた仕事のようだった、
ヨネスはエイミーの告げた内容を、二つ返事で受け入れている。
これだけしっかりと話がまとまっているのなら、もう俺たちの出番はなさそうだな。
「というわけにゃ。ヨネス殿にはケンソウの代わりを務めてもらうというこにゃ」
「そういえば、そのケンソウはどこに行ったんだ? 食堂での食事はいつもの日課だったと思うだが……」
ここでようやく、食堂の中にケンソウの姿がないことに気が付いた。
「ケンソウは別の用事にあたっているのにゃ。食堂までは護衛ということで来てもらったのだけどにゃ」
「そうか。仕事があるのなら仕方ないな」
エイミーの説明に、俺は再び納得していた。
というわけで、ケンソウはいないものの、俺たちは話を弾ませながら楽しく朝食を済ませていた。
「それじゃ、魔王、ピエラ。そなたたち二人は自由行動をしてもらっていて構わない。だが、余はエイミーと一緒にヨネスにしろの中を案内してくるのでな」
「分かりました。それじゃヨネス、皇帝陛下のことをよろしく頼んだ」
皇帝から今日の予定を聞かされた俺は、その予定を了承する。
そして、すぐさまヨネスに対して、きちんと仕事をするように指示しておいた。
こうして、無事にヨネスを皇帝の剣の指南役にすることができた。
これで皇帝の剣が上達すれば、少しはこの帝国の安定度が高まってくれるだろう。
まあ、ヨネスの性格を考えると、そこまでの期待というのは過度というものかも知れないがな。
朝食を終えた俺とピエラは、再び帝国の農村の様子を見るべく帝都を後にしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる