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第二章 外側の世界
第334話 転生者、皇帝と久しぶりに会う
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聖王が終わったと思ったら、今度は皇帝が魔王城を尋ねてきた。
「やっと帰って来たと聞いたにゃ。厄災のやつ、嘘言ってたら叩きのめすところだったにゃ」
やって来るなりエイミーが物騒なことを言っている。
俺たちがいなかった半年間の間も、デザストレとの関係は相変わらずのようだ。
「まったく、エイミー。余より先に挨拶をするでないぞ」
「これは失礼致しましたにゃ」
遅れて皇帝が登場する。
半年見なかった間に、またずいぶんと立派に成長したものだな。
さすがは十一歳。そろそろ成長期ってわけか。
それだけじゃなくて、目つきにもますます鋭さと威厳が備わってきている。剣術を習って自分に自信が備わってきた証拠だな。実にいいことだ。
「まったく、魔王よ。半年も音信不通とは、ずいぶんとやってくれたものだな」
皇帝が俺の方をじっと見つめている。
半年連絡をしなかったというより、できなかったというのが正解なんだが、向こうからすればどっちにしても変わらないよな、うん。
「悪いな。どうしても連絡の取れる場所にいなかったんでな」
「私は知っているにゃ。この大陸の外側にいたにゃ」
「大陸の外だと? 詳しく聞かせろ」
エイミーが正直に話してしまったから、それ見たことか。皇帝ががっつり興味を示しちまったじゃねえか。
まだ聖王も居座っているから、これは面倒なことになりそうだな。
「セイ、諦めた方がいいわ。まだ聖王様がいらっしゃるし、いい機会ですから会わせてしまいましょう」
「そうだな、セイ太。隣国ながらに交流がほとんどないからな。この大陸の中ってのは」
ややこしくなる前に、聖王と皇帝を会わせることにしたのだった。
客室を訪れて、ノックをする。
「はい、どちら様でしょうか」
「俺だ。ちょっと話をいいかな?」
中から聖王の返事があったので、俺は用件を伝える。
「話って、昨日終わったじゃないですか」
「いや、今日も来客があってな。ついでに話をするにはちょうどいいんだよ」
「……どちら様でしょうか」
聖王が食いついた。
「余だ。北方の王よ」
「余といわれましてもねぇ……。ですが、その名乗りを使うのは皇帝だけですね。そうですか、東方の皇帝が来られたのですね。いいでしょう、お入り下さい」
どうにか許しが出たので、中へと入る。
「お初にお目にかかる。余が東方帝国の皇帝である」
「子ども……?」
後ろで書き取りをしているデイジーが顔を上げて反応している。
「左様。今年で十一となる。一昨年崩御した父に代わり、東方帝国の皇帝の座を引き継いだ。若輩者ゆえに至らぬ点は多いやもしれぬ。お話はよろしいかな?」
「ええ、構いませんよ。それにしても、代替わりをしていたのですね」
「うむ。父上の晩年の治政は至らぬ点が多く、帝国を混乱の渦に陥れた。今年、魔王の手を借りることで、ようやく安定の兆しが出てきたのだ」
「なるほど、そちらにも魔王が関わったのですか」
聖王がちらりと俺の方を見てくる。これには思わずドキッとしてしまうというものだ。
「さて、魔王。先日までどこに行っていたのか、すべて白状してもらおうではないか。まったく、いろいろと引っ掻き回しておきながら放置とは、無責任にもほどがあるというものぞ」
「あ、ああ。それは悪かったと思うよ。でも、陛下方の力を信じていたからこそ、俺は自分のやりたいことをしに行ったまでですよ」
「それが、大陸の外へ行くことですか。うちのデイジーまで巻き込んで何を考えているのですか」
皇帝の話に答えているのに、聖王から呆れたといわんばかりの言葉を浴びせられる。やめろ、国のトップがそれぞれ攻撃を仕掛けてくるなよ。
「まあまあ、お二人とも落ち着くにゃ。魔王たちがしたことは、この世界のあるべき姿を取り戻すための行動にゃ。そのくらいにしておいてあげてほしいにゃ」
ナイス、エイミー。
「どういうことですか、あるべき姿とは」
「簡単にいうと、この大陸は世界のごくごく一部ということにゃ。詳しく話をすると長くなるけれど、それでいいかにゃ?」
「エイミーはすべてを知っているのか?」
「もちろんにゃ。エイミーの生みの親はこの件のバリバリの関係者にゃ」
この世界でもそういう言い回しはあるのかよ。このあと、誰も止めないものだからエイミーによるケオス大陸の成り立ちが語られ始めた。
レーヴェンですらも渋っていたというのに、こいつはお構いなしに話すんだな。
「……というわけにゃ。この世界の生きるものすべてを守るために、神はこのケオス大陸にすべてを閉じ込めたにゃ。このケオスを取り囲む山の外には、猛毒が満ちあふれているにゃ」
「そのような成り立ちがあったのですか……。ですが、それならばなぜ、魔王たちは平気だったのでしょう」
「それは、魔王とこのセイ太はこの世界の理から外れているからにゃ。同行者は命の加護を受けたから平気だったにゃ」
「全部話しちまいやがった……」
「ケオスに怒られますよ、エイミー……」
「表に出てこないケオス様が悪いにゃ」
エイミーは開き直っていた。
とまぁ、事情が事情なので、俺たちは許さることは許されたのだが、デイジーに課せられた聖典の書き取りは結局取り消しにはならなかった。
デイジーは不満に頬を膨らませていたが、黙って出てきたのが悪いんだ。甘んじて受けようぜ。
「やっと帰って来たと聞いたにゃ。厄災のやつ、嘘言ってたら叩きのめすところだったにゃ」
やって来るなりエイミーが物騒なことを言っている。
俺たちがいなかった半年間の間も、デザストレとの関係は相変わらずのようだ。
「まったく、エイミー。余より先に挨拶をするでないぞ」
「これは失礼致しましたにゃ」
遅れて皇帝が登場する。
半年見なかった間に、またずいぶんと立派に成長したものだな。
さすがは十一歳。そろそろ成長期ってわけか。
それだけじゃなくて、目つきにもますます鋭さと威厳が備わってきている。剣術を習って自分に自信が備わってきた証拠だな。実にいいことだ。
「まったく、魔王よ。半年も音信不通とは、ずいぶんとやってくれたものだな」
皇帝が俺の方をじっと見つめている。
半年連絡をしなかったというより、できなかったというのが正解なんだが、向こうからすればどっちにしても変わらないよな、うん。
「悪いな。どうしても連絡の取れる場所にいなかったんでな」
「私は知っているにゃ。この大陸の外側にいたにゃ」
「大陸の外だと? 詳しく聞かせろ」
エイミーが正直に話してしまったから、それ見たことか。皇帝ががっつり興味を示しちまったじゃねえか。
まだ聖王も居座っているから、これは面倒なことになりそうだな。
「セイ、諦めた方がいいわ。まだ聖王様がいらっしゃるし、いい機会ですから会わせてしまいましょう」
「そうだな、セイ太。隣国ながらに交流がほとんどないからな。この大陸の中ってのは」
ややこしくなる前に、聖王と皇帝を会わせることにしたのだった。
客室を訪れて、ノックをする。
「はい、どちら様でしょうか」
「俺だ。ちょっと話をいいかな?」
中から聖王の返事があったので、俺は用件を伝える。
「話って、昨日終わったじゃないですか」
「いや、今日も来客があってな。ついでに話をするにはちょうどいいんだよ」
「……どちら様でしょうか」
聖王が食いついた。
「余だ。北方の王よ」
「余といわれましてもねぇ……。ですが、その名乗りを使うのは皇帝だけですね。そうですか、東方の皇帝が来られたのですね。いいでしょう、お入り下さい」
どうにか許しが出たので、中へと入る。
「お初にお目にかかる。余が東方帝国の皇帝である」
「子ども……?」
後ろで書き取りをしているデイジーが顔を上げて反応している。
「左様。今年で十一となる。一昨年崩御した父に代わり、東方帝国の皇帝の座を引き継いだ。若輩者ゆえに至らぬ点は多いやもしれぬ。お話はよろしいかな?」
「ええ、構いませんよ。それにしても、代替わりをしていたのですね」
「うむ。父上の晩年の治政は至らぬ点が多く、帝国を混乱の渦に陥れた。今年、魔王の手を借りることで、ようやく安定の兆しが出てきたのだ」
「なるほど、そちらにも魔王が関わったのですか」
聖王がちらりと俺の方を見てくる。これには思わずドキッとしてしまうというものだ。
「さて、魔王。先日までどこに行っていたのか、すべて白状してもらおうではないか。まったく、いろいろと引っ掻き回しておきながら放置とは、無責任にもほどがあるというものぞ」
「あ、ああ。それは悪かったと思うよ。でも、陛下方の力を信じていたからこそ、俺は自分のやりたいことをしに行ったまでですよ」
「それが、大陸の外へ行くことですか。うちのデイジーまで巻き込んで何を考えているのですか」
皇帝の話に答えているのに、聖王から呆れたといわんばかりの言葉を浴びせられる。やめろ、国のトップがそれぞれ攻撃を仕掛けてくるなよ。
「まあまあ、お二人とも落ち着くにゃ。魔王たちがしたことは、この世界のあるべき姿を取り戻すための行動にゃ。そのくらいにしておいてあげてほしいにゃ」
ナイス、エイミー。
「どういうことですか、あるべき姿とは」
「簡単にいうと、この大陸は世界のごくごく一部ということにゃ。詳しく話をすると長くなるけれど、それでいいかにゃ?」
「エイミーはすべてを知っているのか?」
「もちろんにゃ。エイミーの生みの親はこの件のバリバリの関係者にゃ」
この世界でもそういう言い回しはあるのかよ。このあと、誰も止めないものだからエイミーによるケオス大陸の成り立ちが語られ始めた。
レーヴェンですらも渋っていたというのに、こいつはお構いなしに話すんだな。
「……というわけにゃ。この世界の生きるものすべてを守るために、神はこのケオス大陸にすべてを閉じ込めたにゃ。このケオスを取り囲む山の外には、猛毒が満ちあふれているにゃ」
「そのような成り立ちがあったのですか……。ですが、それならばなぜ、魔王たちは平気だったのでしょう」
「それは、魔王とこのセイ太はこの世界の理から外れているからにゃ。同行者は命の加護を受けたから平気だったにゃ」
「全部話しちまいやがった……」
「ケオスに怒られますよ、エイミー……」
「表に出てこないケオス様が悪いにゃ」
エイミーは開き直っていた。
とまぁ、事情が事情なので、俺たちは許さることは許されたのだが、デイジーに課せられた聖典の書き取りは結局取り消しにはならなかった。
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