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第二章 外側の世界
第333話 転生者、長々と説教される
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外の世界から戻ってきてから十日後のことだった。
ようやくやることが落ち着いたと思ったら、魔王城に聖王が訪ねてきた。
「魔王はいますかね」
門の前で俺のことを呼んでいる。
その隣ではデイジーがおどおどとした様子で立っている。
明らかにおかしいデイジーの様子を見て、俺はすぐに察した。
――叱られる。
勝手にいなくなった上に、危険なことをしたことを根掘り葉掘り聞き出されたのだろう。だからこそ、デイジーの様子がおかしいのだ。
普段優しい人って、怒るとマジで怖いからな……。
「出てくしかないな」
「当然ですよ、セイ。私も事情は説明しますから、一緒に怒られましょう」
セイ太もすっかり諦めていた。
このまま隠れていても、あの様子じゃ中まで入ってきそうだ。
覚悟を決めて出迎えるしかなかった。
出迎えてみたら、あっさりと中へ招き入れることができた。
てっきり門のところで怒られるかと思ったんだが、聖王は心が広いんだろうな。
……そう思っていた時があったよ。
俺の部屋で紅茶とケーキを出して話をし始めたら、烈火のごとく叱られた。
デイジーは聖王候補の筆頭だ。そういった人物が大事な時に半年もいなくなれば、そりゃまぁそうなるよな。
怒る理由にはすごく納得がいくので、俺たちはとにかく延々と聖王の説教を受けていた。思った以上に長かった。
「言うことを言ってすっきりしましたので、このくらいにしておきましょう」
「あ、ああ。気が済んだのならよかったよ」
聖王は大きく息を吐いて、満足した表情を浮かべている。
いやあ、あれだけ怒涛の説教をすれば、そりゃすっきりするだろうよ。
「デイジーから話は聞きました。大陸の外に大量の木を植えてきたそうですね」
「ああ。命を司るレーヴェンというやつから託された種を植えてきたんだ。デイジーがいてくれたおかげで、半年で別の大陸全土を木で覆うことができた。正直俺たちだけだったら、半年経っても近くの島で数本植えただけで終わってただろうな」
「……なるほど、デイジーの作り話というわけではなさそうですね」
聖王は考え込む仕草をしている。話だけ聞けば、デイジーの言葉には信ぴょう性がないからしょうがないな。
「デイジーは緩衝地帯にいるドライアドのリーフから、成長促進魔法を教えてもらったらしい。ほら、見せてやればいいよ」
俺はそう言いながら、デイジーにポテイを渡す。
魔法で土と大きなプランターを作ると、そこにポテイを実らせてみせるように頼んだ。
「分かりました」
デイジーはプランターの土の中に、受け取ったポテイを埋める。
そこに向かって両手の平を向け、集中して魔力を送り込んでいる。
次の瞬間、あっという間にポテイは成長しきってしまった。
ちゃんと良識ある成長なので、部屋の中がツルまみれにあるようなことはなかった。
デイジーが魔法を止めると、俺が引っこ抜いて地面の中を確認する。
きちんと種芋はしぼみ、たくさんの新しいポテイが実っていた。
「……すごいですね。こんな魔法を使いこなせるとは、思ってもみませんでした」
「ああ。だから、レーヴェンの樹を大陸をカバーできるだけ植えられたのは、デイジーの力によるものなんだ。このまま木が力を発揮してくれれば、大気中を汚染する毒素はどんどんと薄まって、俺たちは安心して外に出られるようになるだろうな」
「ふむふむ、なるほどですね……」
聖王は納得してくれているようだ。
ところが、笑顔になっていたかと思うと、再び険しい表情を浮かべていた。
「それはそれ、これはこれです。勝手に出て行って危険なことをしたことには変わりありません。三十日間の謹慎と、聖典の書き取りを行って下さいね」
「ううぅ……、承知しました」
聖王は譲れないところは譲ってくれなかった。
聖国のルールがあるのなら、それには従うしかないみたいだ。
「次は必ず私に相談してからにして下さい。勝手なことをしてはいけませんよ。みんなに心配をかけすぎです」
「はい……」
デイジーは完全にしゅんとして落ち込んでしまった。
「それにしても、そのポテイはなかなか神聖力に満ちているようですね」
「これか?」
俺は手に持ったままになっているポテイをじっと見る。
「やはり分かりますか? そうですよね。生命力に満ちあふれているんですよ。レーヴェン様のお力が、増幅されているのを感じます」
さっきまで黙っていたセイ太が、しっぽを振り回しながら目を輝かせている。
「はい、このポテイを食べれば、たちまち元気になるでしょうね」
「私もそう思います。本当に素晴らしいです」
セイ太、しっぽを止めろ。当たって痛いんだが。
「デイジーが聖王候補の筆頭という理由がますます補強されましたね。……それはそうと、そちらの方はどなたですか?」
「ええ……。今さらなのかよ……」
話が落ち着いたところで、ようやく聖王がセイ太のことを尋ねてきた。
話せばすごく長くなる話だが、聖王の説教に比べれば短くて済む。
どうにかこうにかセイ太の説明を終えると、ようやく俺たちは聖王から解放されたのだった。
ようやくやることが落ち着いたと思ったら、魔王城に聖王が訪ねてきた。
「魔王はいますかね」
門の前で俺のことを呼んでいる。
その隣ではデイジーがおどおどとした様子で立っている。
明らかにおかしいデイジーの様子を見て、俺はすぐに察した。
――叱られる。
勝手にいなくなった上に、危険なことをしたことを根掘り葉掘り聞き出されたのだろう。だからこそ、デイジーの様子がおかしいのだ。
普段優しい人って、怒るとマジで怖いからな……。
「出てくしかないな」
「当然ですよ、セイ。私も事情は説明しますから、一緒に怒られましょう」
セイ太もすっかり諦めていた。
このまま隠れていても、あの様子じゃ中まで入ってきそうだ。
覚悟を決めて出迎えるしかなかった。
出迎えてみたら、あっさりと中へ招き入れることができた。
てっきり門のところで怒られるかと思ったんだが、聖王は心が広いんだろうな。
……そう思っていた時があったよ。
俺の部屋で紅茶とケーキを出して話をし始めたら、烈火のごとく叱られた。
デイジーは聖王候補の筆頭だ。そういった人物が大事な時に半年もいなくなれば、そりゃまぁそうなるよな。
怒る理由にはすごく納得がいくので、俺たちはとにかく延々と聖王の説教を受けていた。思った以上に長かった。
「言うことを言ってすっきりしましたので、このくらいにしておきましょう」
「あ、ああ。気が済んだのならよかったよ」
聖王は大きく息を吐いて、満足した表情を浮かべている。
いやあ、あれだけ怒涛の説教をすれば、そりゃすっきりするだろうよ。
「デイジーから話は聞きました。大陸の外に大量の木を植えてきたそうですね」
「ああ。命を司るレーヴェンというやつから託された種を植えてきたんだ。デイジーがいてくれたおかげで、半年で別の大陸全土を木で覆うことができた。正直俺たちだけだったら、半年経っても近くの島で数本植えただけで終わってただろうな」
「……なるほど、デイジーの作り話というわけではなさそうですね」
聖王は考え込む仕草をしている。話だけ聞けば、デイジーの言葉には信ぴょう性がないからしょうがないな。
「デイジーは緩衝地帯にいるドライアドのリーフから、成長促進魔法を教えてもらったらしい。ほら、見せてやればいいよ」
俺はそう言いながら、デイジーにポテイを渡す。
魔法で土と大きなプランターを作ると、そこにポテイを実らせてみせるように頼んだ。
「分かりました」
デイジーはプランターの土の中に、受け取ったポテイを埋める。
そこに向かって両手の平を向け、集中して魔力を送り込んでいる。
次の瞬間、あっという間にポテイは成長しきってしまった。
ちゃんと良識ある成長なので、部屋の中がツルまみれにあるようなことはなかった。
デイジーが魔法を止めると、俺が引っこ抜いて地面の中を確認する。
きちんと種芋はしぼみ、たくさんの新しいポテイが実っていた。
「……すごいですね。こんな魔法を使いこなせるとは、思ってもみませんでした」
「ああ。だから、レーヴェンの樹を大陸をカバーできるだけ植えられたのは、デイジーの力によるものなんだ。このまま木が力を発揮してくれれば、大気中を汚染する毒素はどんどんと薄まって、俺たちは安心して外に出られるようになるだろうな」
「ふむふむ、なるほどですね……」
聖王は納得してくれているようだ。
ところが、笑顔になっていたかと思うと、再び険しい表情を浮かべていた。
「それはそれ、これはこれです。勝手に出て行って危険なことをしたことには変わりありません。三十日間の謹慎と、聖典の書き取りを行って下さいね」
「ううぅ……、承知しました」
聖王は譲れないところは譲ってくれなかった。
聖国のルールがあるのなら、それには従うしかないみたいだ。
「次は必ず私に相談してからにして下さい。勝手なことをしてはいけませんよ。みんなに心配をかけすぎです」
「はい……」
デイジーは完全にしゅんとして落ち込んでしまった。
「それにしても、そのポテイはなかなか神聖力に満ちているようですね」
「これか?」
俺は手に持ったままになっているポテイをじっと見る。
「やはり分かりますか? そうですよね。生命力に満ちあふれているんですよ。レーヴェン様のお力が、増幅されているのを感じます」
さっきまで黙っていたセイ太が、しっぽを振り回しながら目を輝かせている。
「はい、このポテイを食べれば、たちまち元気になるでしょうね」
「私もそう思います。本当に素晴らしいです」
セイ太、しっぽを止めろ。当たって痛いんだが。
「デイジーが聖王候補の筆頭という理由がますます補強されましたね。……それはそうと、そちらの方はどなたですか?」
「ええ……。今さらなのかよ……」
話が落ち着いたところで、ようやく聖王がセイ太のことを尋ねてきた。
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