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第二章 外側の世界
第332話 転生者、半年ぶりに魔王城に戻る
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湖底洞窟に飛ばされた俺たちは、神殿を経由してそれぞれの国に戻っていく。
とはいっても、ピエラとセイ太は俺にくっついてきていた。デイジーだけだったよ、別の場所に出たのは。
「……魔王城だな」
「魔王城ですね」
「魔王城だわね」
俺たちが立っていたのは魔王城の外だった。
確認をしてみると、俺たちは半年少しの不在ということになっていた。つまり、レーヴェンの樹に戻ってきてからほとんど時間が経過していないということだ。
外の世界でレーヴェンの樹を定着させてきたことが大きかったのだろう。ほとんど毒素は抜けきっていたようだった。
「おお、お帰りなさいませ、魔王様。このバフォメット、魔王様の帰還を首を長くしてお待ちしておりました」
「すまなかったな、バフォメット。俺の留守中に問題は起きなかったか?」
バフォメットの堅苦しい挨拶を聞いて、すぐさま質問を返しておく。
「はい、キリエがいますので、大抵の問題はすぐに解決できてしまいます。わたくしめなど、城の中の残務処理程度で済みましたよ」
「そうか。それはご苦労だった」
ひとまず、バフォメットを労っておく。
「キリエはどこだ?」
「魔王様のお部屋かと存じます。魔王様が不在の間、キリエが率先して代理を務めるようになっておりますゆえ」
「ありがとう。仕事の続きを頼むぞ」
「はい、承知致しました」
バフォメットは引きさがっていく。どことなく怪しかったが、あいつはああいうやつだ。まあ、何かやらかしているなら懲らしめるだけだしな。
それよりも今はキリエからも事情を聞かないといけない。判断はそれからだな。
俺はバフォメットが伝えてきた言葉を信じて、俺の部屋へと向かう。
扉を叩いて中に呼び掛ければ、懐かしい声が聞こえてきた。
「魔王様、お戻りになられたのですか?!」
中から走ってくる音が聞こえてくる。
勢いよく扉が開いたかと思えば、なぜかメイド服姿のキリエがそこにいた。
「ただいま。ちょっと戻って来たよ」
「何がちょっとでございますか。魔王様がいらっしゃらない間、どれだけ大変だったと思うのです」
「いや、分かるわけないだろう。それに、ある程度情勢は安定させてから行動を起こしたんだ。問題なんて起きるわけ……」
俺は言いかけるが、キリエの表情を見るとそれ以上ははばかられた。
「……詳しい話を聞かせてくれ」
「承知致しました。カスミ、すぐに飲み物を!」
「お任せ、キリエ姉!」
どこからともなくカスミが現れて、颯爽と走り去っていった。その際、俺に対してウィンクしていった気がするのだが、気のせいだろうか。
それはそれとして、俺たち三人は、キリエと向かい合って座る。
キリエもこの時ばかりはさすがに作業の手を止めていた。
「それでは、魔王様が出掛けられていた半年ほどの間の動きを簡潔にお話しますね」
「ああ、頼むぜ」
早速キリエからの報告が始まる。
まあ当然ながら半年分の報告は長い。シャレにならないくらい長い。
というか、周辺国もそうだが、魔王領内も動き過ぎじゃないのかな。
「えらく活発に動いてたんだな。どいつもこいつも」
「そうですね。周辺諸国でいえば、東方帝国が一番活発でした。わざわざ皇帝陛下がいらっしゃりましたからね。子どもなのは驚きましたが」
「そっか、皇帝が来たってことは、やっと情勢が安定したってことか。大変だったろうな」
「ええ、そのようなことを仰られておりましたね。ですが、魔王様が手を差し伸べたからこそ実現できたと、それはとても感謝をしておりました」
どうやら東方帝国は安定してきているらしい。ならば、この戻ってきている間にもう一度訪れておくのも悪くはないだろうな。
「それより、魔王様」
「なんだ、キリエ」
「デイジー殿はご一緒では?」
キリエが気にしたのは、デイジーがいないことだった。
俺について来ていたことをどうして知っているのかと尋ねたら、門番にクルクーを預けていったかららしい。
どうやら、緩衝地帯で飼っているクルクーに乗ってここまでやって来たのだとか。無茶をするなぁ。
「デイジーなら、レーヴェンの力で緩衝地帯か聖都に戻っているはずだよ。どっちにしたって、今頃はこっぴどく怒られてるんだろうな、心配された後にな」
「でしょうね。聖王にしてもフラウゼル伯爵にしても、かなり大事にしてらっしゃいますからね、デイジー殿のことは」
キリエはそう言いながら、くすくすと微笑ましそうに笑っていた。
「それで、魔王様の今後のご予定は?」
かと思えば、真面目な表情に戻って俺に質問をぶつけてくる。この変わり身はすごいもんだぜ。
「当分はこっちだな。外の世界は、大陸ひとつ分をレーヴェンの樹で満たしたが、いかんせん広すぎる。全部を浄化するにも時間がかかりすぎると思って、こうやって戻って来たってわけだ」
「それを聞いて安心しました。魔王様の仕事をバフォメットと割り振ったのですが、なぜか私の担当する方ばかり面倒が起きましてね。……バフォメットも獣人の血が混ざっていますから、勘で面倒を避けたんでしょうね」
「なるほどなぁ……。それでバフォメットのやつは俺を出迎える余裕があったってわけか。ご苦労だったな、キリエ」
「もったいないお言葉でございます」
そんなこんなで魔王城に戻ってきた俺は、みんなを労うために厨房に出向いて手料理を振る舞うことにした。
今回はひとつの大陸を埋め尽くしたところで戻ったが、またいずれ出て行くことになるだろう。
なんといっても世界は広い。俺たちの戦いはまだ終わりそうにないな。
とはいっても、ピエラとセイ太は俺にくっついてきていた。デイジーだけだったよ、別の場所に出たのは。
「……魔王城だな」
「魔王城ですね」
「魔王城だわね」
俺たちが立っていたのは魔王城の外だった。
確認をしてみると、俺たちは半年少しの不在ということになっていた。つまり、レーヴェンの樹に戻ってきてからほとんど時間が経過していないということだ。
外の世界でレーヴェンの樹を定着させてきたことが大きかったのだろう。ほとんど毒素は抜けきっていたようだった。
「おお、お帰りなさいませ、魔王様。このバフォメット、魔王様の帰還を首を長くしてお待ちしておりました」
「すまなかったな、バフォメット。俺の留守中に問題は起きなかったか?」
バフォメットの堅苦しい挨拶を聞いて、すぐさま質問を返しておく。
「はい、キリエがいますので、大抵の問題はすぐに解決できてしまいます。わたくしめなど、城の中の残務処理程度で済みましたよ」
「そうか。それはご苦労だった」
ひとまず、バフォメットを労っておく。
「キリエはどこだ?」
「魔王様のお部屋かと存じます。魔王様が不在の間、キリエが率先して代理を務めるようになっておりますゆえ」
「ありがとう。仕事の続きを頼むぞ」
「はい、承知致しました」
バフォメットは引きさがっていく。どことなく怪しかったが、あいつはああいうやつだ。まあ、何かやらかしているなら懲らしめるだけだしな。
それよりも今はキリエからも事情を聞かないといけない。判断はそれからだな。
俺はバフォメットが伝えてきた言葉を信じて、俺の部屋へと向かう。
扉を叩いて中に呼び掛ければ、懐かしい声が聞こえてきた。
「魔王様、お戻りになられたのですか?!」
中から走ってくる音が聞こえてくる。
勢いよく扉が開いたかと思えば、なぜかメイド服姿のキリエがそこにいた。
「ただいま。ちょっと戻って来たよ」
「何がちょっとでございますか。魔王様がいらっしゃらない間、どれだけ大変だったと思うのです」
「いや、分かるわけないだろう。それに、ある程度情勢は安定させてから行動を起こしたんだ。問題なんて起きるわけ……」
俺は言いかけるが、キリエの表情を見るとそれ以上ははばかられた。
「……詳しい話を聞かせてくれ」
「承知致しました。カスミ、すぐに飲み物を!」
「お任せ、キリエ姉!」
どこからともなくカスミが現れて、颯爽と走り去っていった。その際、俺に対してウィンクしていった気がするのだが、気のせいだろうか。
それはそれとして、俺たち三人は、キリエと向かい合って座る。
キリエもこの時ばかりはさすがに作業の手を止めていた。
「それでは、魔王様が出掛けられていた半年ほどの間の動きを簡潔にお話しますね」
「ああ、頼むぜ」
早速キリエからの報告が始まる。
まあ当然ながら半年分の報告は長い。シャレにならないくらい長い。
というか、周辺国もそうだが、魔王領内も動き過ぎじゃないのかな。
「えらく活発に動いてたんだな。どいつもこいつも」
「そうですね。周辺諸国でいえば、東方帝国が一番活発でした。わざわざ皇帝陛下がいらっしゃりましたからね。子どもなのは驚きましたが」
「そっか、皇帝が来たってことは、やっと情勢が安定したってことか。大変だったろうな」
「ええ、そのようなことを仰られておりましたね。ですが、魔王様が手を差し伸べたからこそ実現できたと、それはとても感謝をしておりました」
どうやら東方帝国は安定してきているらしい。ならば、この戻ってきている間にもう一度訪れておくのも悪くはないだろうな。
「それより、魔王様」
「なんだ、キリエ」
「デイジー殿はご一緒では?」
キリエが気にしたのは、デイジーがいないことだった。
俺について来ていたことをどうして知っているのかと尋ねたら、門番にクルクーを預けていったかららしい。
どうやら、緩衝地帯で飼っているクルクーに乗ってここまでやって来たのだとか。無茶をするなぁ。
「デイジーなら、レーヴェンの力で緩衝地帯か聖都に戻っているはずだよ。どっちにしたって、今頃はこっぴどく怒られてるんだろうな、心配された後にな」
「でしょうね。聖王にしてもフラウゼル伯爵にしても、かなり大事にしてらっしゃいますからね、デイジー殿のことは」
キリエはそう言いながら、くすくすと微笑ましそうに笑っていた。
「それで、魔王様の今後のご予定は?」
かと思えば、真面目な表情に戻って俺に質問をぶつけてくる。この変わり身はすごいもんだぜ。
「当分はこっちだな。外の世界は、大陸ひとつ分をレーヴェンの樹で満たしたが、いかんせん広すぎる。全部を浄化するにも時間がかかりすぎると思って、こうやって戻って来たってわけだ」
「それを聞いて安心しました。魔王様の仕事をバフォメットと割り振ったのですが、なぜか私の担当する方ばかり面倒が起きましてね。……バフォメットも獣人の血が混ざっていますから、勘で面倒を避けたんでしょうね」
「なるほどなぁ……。それでバフォメットのやつは俺を出迎える余裕があったってわけか。ご苦労だったな、キリエ」
「もったいないお言葉でございます」
そんなこんなで魔王城に戻ってきた俺は、みんなを労うために厨房に出向いて手料理を振る舞うことにした。
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