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第二章 外側の世界
第345話 転生者、いなくても勝負を挑まれる
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セイたちが外に向かって出かけた頃、デザストレたちは魔王城の中の訓練場に大きな石畳の闘技場を作り上げていた。
セイが前世で見たという格闘漫画を参考にしたという正方形の石畳である。
「なんだってこんなものを作るんだ」
「魔王様のご命令です。あなたはつべこべ言わずに仕上げをしていればいいのですよ」
デザストレとキリエが言い争っている。
「その肝心の魔王はどこ行ったんだよ。俺にやらせておいてあいつはのうのうとさぼりか」
「魔王様は大事な用事があるために、この場の全権を私に任せていきました。今は私が魔王様の代わりです。さっさと仕上げて下さい」
「くそう、納得いかねえ……」
文句を言いながらも、デザストレはキリエにいわれるがままに闘技場の表面を磨き上げて平らにしていく。
セイ、キリエ、ピエラの三人がかりだったとはいえ、デザストレは敗北を喫している。なので、キリエの言うことには逆らえないでいるのだ。
「ずいぶんとでき上がってきていますね」
「聖王陛下。いらしてたのですか」
声がしたので振り返って見ると、そこには聖王の姿があった。
「ええ、デイジーを連れてくることが条件でしたからね。まったく、またあんなことをしに行かれているとは、よっぽど気になっているようですね」
「現実を知ってしまいましたからね。何とかしなきゃと思われるのが魔王様というものでございます」
「確かに、そうですね」
聖王はキリエと話をしながらくすくすと笑っている。
「おい、何を喋ってるんだ。俺一人に全部やらせるつもりか?」
「ええ、その通りですよ。魔王様からのご命令ですからね」
「くっそう……。今度会ったらぶん殴ってやる」
キリエから言い返されたデザストレは、結局文句だけで作業を進めていた。なんだかんだいっても、キリエにも手を出さないデザストレなのである。
「それはそうとして、聖王陛下」
「なんでしょうか、キリエさん」
「結界を張られるという司祭たちはいらしているのですか?」
「はい、きちんと到着しておりますよ。デイジーの魔法には劣りますが、結界を張ることにかけては一流な方々です。お任せ下さい」
キリエの質問に、自信たっぷりに答える聖王である。自国の司祭たちをそれだけ信じているのである。
「おお、ずいぶんとでき上がってきておるな」
キリエと聖王が話しているところに、新たな来客がやって来た。
東方帝国の皇帝と、その剣の師匠を務めるヨネスである。
「これは東方帝国の皇帝陛下。ずいぶんとお早いお着きですね」
「うむ。魔王がなにやら面白いことを言い出したと聞いてな。いてもたってもいられなくなったというわけだよ。余も参加するぞ」
「陛下、少しは自重というものをですね」
「なに、余がどれほど剣の腕を上げたのかということを見せつけてやりたいのだ。それで、魔王はどこにいるのだ?」
皇帝はうきうきした表情で周りを見渡している。
皇帝とは対照的に、キリエの表情の表情はいまいち優れない。
「ああ、それはですね……」
どうにも歯切れの悪いキリエである。
「どうしたのだ、申してみよ」
こんなあやふやな態度を取られれば、皇帝が気にならないわけがない。
すぐさまキリエに問いかけてしまう。
「いえ、魔王様は今は不在なのですよ」
さすがに皇帝にはごまかしても意味はないと思ったのか、キリエははっきりと白状してしまった。
「なんだと、それは真か?!」
皇帝が大声で叫べば、キリエは無言で頷いていた。
「どこに行ったというのだ」
「……外の世界でございます。武闘大会を目くらましにして、外の世界にレーヴェンと呼ばれる存在から渡された種を植えて回っているのです」
「外の世界だと?! そういえば以前に申しておったな」
「はい。私たちのいる陸地、ケオス大陸と申すそうですが、その外側には更なる世界が広がっているのです。今は猛毒に包まれているために、私たちが出て行っても一瞬で死んでしまうそうでございます」
「なるほど、その世界を変えるために、魔王は出かけていったというわけか。お人好しの魔王らしいことだ」
キリエが正直に話すと、皇帝はものすごく納得がいっているようだった。
「くそっ、あいつはいっつもそういうことをするな……」
ヨネスはなんだか悔しそうである。
それもそうだろう。学生時代にライバル視をしていたのだが、何をやってもセイには敵わなかったという過去があるからだ。
今でこそ少々落ち着いているものの、やはり悔しいものは悔しいようだ。
「戻ってきたら、皇帝陛下にこてんぱんにしてもらおうか」
「うむ。余も力をだいぶ制御できるようになった。勇者の力を使わずとも、魔王に勝ってみせようではないか」
皇帝とヨネスは揃ってにやりと笑っていた。
「魔王様に挑まれるのは勝手ではございますが、それよりも武闘大会です。参加なさる方はいらっしゃっているのですか?」
「来ておらぬ。余とヨネスの二人だけだ。エイミーとケンソウには国を任せてきておるし、まだまだ情勢の安定には尽力せねばならぬからな」
「その状況で出てこられる皇帝陛下とは……?」
聖王が首を傾げれば、皇帝はなんとも偉そうに笑っていた。
こうして各国から人が集まりつつある魔王城。
数日のうちには、大規模なお祭りが始まることだろう。
ケオス大陸で最強なのは誰なのか。その栄光をつかむのは一体誰なのだろうか。
セイが前世で見たという格闘漫画を参考にしたという正方形の石畳である。
「なんだってこんなものを作るんだ」
「魔王様のご命令です。あなたはつべこべ言わずに仕上げをしていればいいのですよ」
デザストレとキリエが言い争っている。
「その肝心の魔王はどこ行ったんだよ。俺にやらせておいてあいつはのうのうとさぼりか」
「魔王様は大事な用事があるために、この場の全権を私に任せていきました。今は私が魔王様の代わりです。さっさと仕上げて下さい」
「くそう、納得いかねえ……」
文句を言いながらも、デザストレはキリエにいわれるがままに闘技場の表面を磨き上げて平らにしていく。
セイ、キリエ、ピエラの三人がかりだったとはいえ、デザストレは敗北を喫している。なので、キリエの言うことには逆らえないでいるのだ。
「ずいぶんとでき上がってきていますね」
「聖王陛下。いらしてたのですか」
声がしたので振り返って見ると、そこには聖王の姿があった。
「ええ、デイジーを連れてくることが条件でしたからね。まったく、またあんなことをしに行かれているとは、よっぽど気になっているようですね」
「現実を知ってしまいましたからね。何とかしなきゃと思われるのが魔王様というものでございます」
「確かに、そうですね」
聖王はキリエと話をしながらくすくすと笑っている。
「おい、何を喋ってるんだ。俺一人に全部やらせるつもりか?」
「ええ、その通りですよ。魔王様からのご命令ですからね」
「くっそう……。今度会ったらぶん殴ってやる」
キリエから言い返されたデザストレは、結局文句だけで作業を進めていた。なんだかんだいっても、キリエにも手を出さないデザストレなのである。
「それはそうとして、聖王陛下」
「なんでしょうか、キリエさん」
「結界を張られるという司祭たちはいらしているのですか?」
「はい、きちんと到着しておりますよ。デイジーの魔法には劣りますが、結界を張ることにかけては一流な方々です。お任せ下さい」
キリエの質問に、自信たっぷりに答える聖王である。自国の司祭たちをそれだけ信じているのである。
「おお、ずいぶんとでき上がってきておるな」
キリエと聖王が話しているところに、新たな来客がやって来た。
東方帝国の皇帝と、その剣の師匠を務めるヨネスである。
「これは東方帝国の皇帝陛下。ずいぶんとお早いお着きですね」
「うむ。魔王がなにやら面白いことを言い出したと聞いてな。いてもたってもいられなくなったというわけだよ。余も参加するぞ」
「陛下、少しは自重というものをですね」
「なに、余がどれほど剣の腕を上げたのかということを見せつけてやりたいのだ。それで、魔王はどこにいるのだ?」
皇帝はうきうきした表情で周りを見渡している。
皇帝とは対照的に、キリエの表情の表情はいまいち優れない。
「ああ、それはですね……」
どうにも歯切れの悪いキリエである。
「どうしたのだ、申してみよ」
こんなあやふやな態度を取られれば、皇帝が気にならないわけがない。
すぐさまキリエに問いかけてしまう。
「いえ、魔王様は今は不在なのですよ」
さすがに皇帝にはごまかしても意味はないと思ったのか、キリエははっきりと白状してしまった。
「なんだと、それは真か?!」
皇帝が大声で叫べば、キリエは無言で頷いていた。
「どこに行ったというのだ」
「……外の世界でございます。武闘大会を目くらましにして、外の世界にレーヴェンと呼ばれる存在から渡された種を植えて回っているのです」
「外の世界だと?! そういえば以前に申しておったな」
「はい。私たちのいる陸地、ケオス大陸と申すそうですが、その外側には更なる世界が広がっているのです。今は猛毒に包まれているために、私たちが出て行っても一瞬で死んでしまうそうでございます」
「なるほど、その世界を変えるために、魔王は出かけていったというわけか。お人好しの魔王らしいことだ」
キリエが正直に話すと、皇帝はものすごく納得がいっているようだった。
「くそっ、あいつはいっつもそういうことをするな……」
ヨネスはなんだか悔しそうである。
それもそうだろう。学生時代にライバル視をしていたのだが、何をやってもセイには敵わなかったという過去があるからだ。
今でこそ少々落ち着いているものの、やはり悔しいものは悔しいようだ。
「戻ってきたら、皇帝陛下にこてんぱんにしてもらおうか」
「うむ。余も力をだいぶ制御できるようになった。勇者の力を使わずとも、魔王に勝ってみせようではないか」
皇帝とヨネスは揃ってにやりと笑っていた。
「魔王様に挑まれるのは勝手ではございますが、それよりも武闘大会です。参加なさる方はいらっしゃっているのですか?」
「来ておらぬ。余とヨネスの二人だけだ。エイミーとケンソウには国を任せてきておるし、まだまだ情勢の安定には尽力せねばならぬからな」
「その状況で出てこられる皇帝陛下とは……?」
聖王が首を傾げれば、皇帝はなんとも偉そうに笑っていた。
こうして各国から人が集まりつつある魔王城。
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