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第二章 外側の世界
第346話 転生者不在の魔王城
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いよいよ武闘大会が開かれる日が目前まで迫ってきている。
ケオス大陸のあちこちから、腕自慢の兵士や魔族たちが魔王城に集まってきていた。
その数は個人戦、団体戦をまとめるとざっと二百人はいるだろうか。
「思ったより集まりましたが、半分くらいは魔族ですね」
「それはそうでございましょう。ここは魔王領でございます。魔族が一番集まりやすいのは当然のことでしょう」
「確かにそうですけれど、街道が整備されているのにこれでは、困ったものですね」
キリエとバフォメットが話をしているが、キリエは少々不満そうである。
「私も参加致しましょうか。魔王軍の参謀として、そして、魔王様の代理として、集まった者の力を確かめておきたいと思いますから」
「おやおや、実に珍しいことでございますな」
キリエの行動に、バフォメットは驚きを隠せないようだ。
「たまには私も戦いたいのですよ。普段から事務仕事がメインですから、このままではいろいろと鈍ってしまいます」
「分かりました。ぜひとも頑張って下さいませ」
バフォメットはキリエに頭を下げると、自分の仕事をするためにその場から去っていった。
「さて、私も参加の準備をしましょうかね」
キリエも一度自分の部屋へと戻っていく。
夜、キリエは聖王と皇帝をもてなすために食堂へと姿を見せる。
「申し訳ございません、お待たせ致しました」
「おお、キリエか。よいよい、客人である余たちと違って、そなたには仕事があるのだからな」
「そうですよ、キリエさん。多少の遅れは気になさらないで下さい」
「お気遣い、誠にありがとうございます」
キリエはスカートをつまんで軽く頭を下げている。
参謀の格好をしてくるかと思えば、キリエの姿はメイドのものだった。
「しかし、なにゆえメイドなのだ?」
「私は魔王軍の参謀ではございますが、正式な職務は魔王様付きのメイドでございます。ゆえに、今回は魔王様の提案の此度の催しにおいては、魔王様のメイドとして参加させて頂くことになりました」
「そうか。しかし、その格好は動きづらそうだな」
キリエの服装を見て、皇帝は心配しているような素振りを見せている。
ところが、当のキリエは表情をまったく崩そうとしていなかった。
「問題ございません。私にしてみれば参謀の衣装もメイドの衣装も、戦闘服に代わりはございませんので」
メイドの姿でもまるで軍人のように無表情で受け答えをしている。これがキリエという人物なのである。
「本当に武闘大会に参加なさるおつもりですか?」
「無論でございます。参謀である以上、魔王軍の実質的な責任者でございますからね。頭脳労働はどちらかといえばバフォメットの担当分野でございます。私は、妹のコモヤ同様、戦闘系が得意なのでございます」
「人は見かけによらぬということか」
皇帝の言葉にこくりと頷くキリエである。
「皇帝陛下もご参加ということでございますので、もし対戦することになるようでしたら、手加減なくお願い致します」
「ふむ……。正直女性を相手にするのは気が引けるが、戦いであるのなら仕方あるまい。その時は全力で相手をしよう」
「ありがとうございます」
話を終えると、キリエは手を叩いている。
叩いた音に反応するように、食堂に料理が運ばれてくる。
「食事をお持ち致しました」
「ありがとう、カスミ。今日はあなたも一緒に食事をなさい。姉妹で食事をすることもなかなかありませんからね」
「ええ、いいの? キリエ姉」
キリエの言葉にカスミはとても驚いている。
カスミの反応を見て、キリエはこくりと無言で頷いている。
やったと言わんばかりに浮かれながらカスミはキリエの隣に座っている。
「紹介致します、聖王陛下、皇帝陛下。この子は私の妹でカスミと申します。私の部下になりますが、城のメイドたちをまとめ上げるのは実質彼女となります。ちなみに、コモヤの姉でもあります」
「初めまして、カスミと申します」
キリエに紹介されると、一度席から立って挨拶をするカスミである。こういうところはちゃんとしているようだ。
カスミの挨拶を聞いて、聖王と皇帝も挨拶をする。
「そう固くなるな。武闘大会の間は世話になるぞ」
「は、はい。使用人の責任者としてしっかりと対応させて頂きますので、よろしくお願い致します」
ぺこりと頭を下げると、椅子に座らずに立ったままで待ち続ける。少々わがままなところもあるが、使用人としての仕草はしっかりと身に付いているのである。
聖王と皇帝が顔を見合わせると、カスミに座るように促す。そうするとようやくカスミは再び席に着いた。
「まったく、魔王のやつが羨ましいな。これだけの忠臣たちに囲まれておるのだからな」
「ふふっ、まったくですね。神殿も意外と顔色を窺う方が多くて、対応が大変なのですよ」
「ほう、それは意外だな」
「ええ、そうなのですよ」
驚く皇帝に対して、聖王はにこりと笑顔を浮かべていた。
和やかな雰囲気で食事が行われているが、もう数日もすれば武闘大会が始まる。
魔王城の中はかなりピリピリとした雰囲気に包まれている。
それぞれの思いを胸に、戦いを前にした晩餐を堪能するキリエたちだった。
ケオス大陸のあちこちから、腕自慢の兵士や魔族たちが魔王城に集まってきていた。
その数は個人戦、団体戦をまとめるとざっと二百人はいるだろうか。
「思ったより集まりましたが、半分くらいは魔族ですね」
「それはそうでございましょう。ここは魔王領でございます。魔族が一番集まりやすいのは当然のことでしょう」
「確かにそうですけれど、街道が整備されているのにこれでは、困ったものですね」
キリエとバフォメットが話をしているが、キリエは少々不満そうである。
「私も参加致しましょうか。魔王軍の参謀として、そして、魔王様の代理として、集まった者の力を確かめておきたいと思いますから」
「おやおや、実に珍しいことでございますな」
キリエの行動に、バフォメットは驚きを隠せないようだ。
「たまには私も戦いたいのですよ。普段から事務仕事がメインですから、このままではいろいろと鈍ってしまいます」
「分かりました。ぜひとも頑張って下さいませ」
バフォメットはキリエに頭を下げると、自分の仕事をするためにその場から去っていった。
「さて、私も参加の準備をしましょうかね」
キリエも一度自分の部屋へと戻っていく。
夜、キリエは聖王と皇帝をもてなすために食堂へと姿を見せる。
「申し訳ございません、お待たせ致しました」
「おお、キリエか。よいよい、客人である余たちと違って、そなたには仕事があるのだからな」
「そうですよ、キリエさん。多少の遅れは気になさらないで下さい」
「お気遣い、誠にありがとうございます」
キリエはスカートをつまんで軽く頭を下げている。
参謀の格好をしてくるかと思えば、キリエの姿はメイドのものだった。
「しかし、なにゆえメイドなのだ?」
「私は魔王軍の参謀ではございますが、正式な職務は魔王様付きのメイドでございます。ゆえに、今回は魔王様の提案の此度の催しにおいては、魔王様のメイドとして参加させて頂くことになりました」
「そうか。しかし、その格好は動きづらそうだな」
キリエの服装を見て、皇帝は心配しているような素振りを見せている。
ところが、当のキリエは表情をまったく崩そうとしていなかった。
「問題ございません。私にしてみれば参謀の衣装もメイドの衣装も、戦闘服に代わりはございませんので」
メイドの姿でもまるで軍人のように無表情で受け答えをしている。これがキリエという人物なのである。
「本当に武闘大会に参加なさるおつもりですか?」
「無論でございます。参謀である以上、魔王軍の実質的な責任者でございますからね。頭脳労働はどちらかといえばバフォメットの担当分野でございます。私は、妹のコモヤ同様、戦闘系が得意なのでございます」
「人は見かけによらぬということか」
皇帝の言葉にこくりと頷くキリエである。
「皇帝陛下もご参加ということでございますので、もし対戦することになるようでしたら、手加減なくお願い致します」
「ふむ……。正直女性を相手にするのは気が引けるが、戦いであるのなら仕方あるまい。その時は全力で相手をしよう」
「ありがとうございます」
話を終えると、キリエは手を叩いている。
叩いた音に反応するように、食堂に料理が運ばれてくる。
「食事をお持ち致しました」
「ありがとう、カスミ。今日はあなたも一緒に食事をなさい。姉妹で食事をすることもなかなかありませんからね」
「ええ、いいの? キリエ姉」
キリエの言葉にカスミはとても驚いている。
カスミの反応を見て、キリエはこくりと無言で頷いている。
やったと言わんばかりに浮かれながらカスミはキリエの隣に座っている。
「紹介致します、聖王陛下、皇帝陛下。この子は私の妹でカスミと申します。私の部下になりますが、城のメイドたちをまとめ上げるのは実質彼女となります。ちなみに、コモヤの姉でもあります」
「初めまして、カスミと申します」
キリエに紹介されると、一度席から立って挨拶をするカスミである。こういうところはちゃんとしているようだ。
カスミの挨拶を聞いて、聖王と皇帝も挨拶をする。
「そう固くなるな。武闘大会の間は世話になるぞ」
「は、はい。使用人の責任者としてしっかりと対応させて頂きますので、よろしくお願い致します」
ぺこりと頭を下げると、椅子に座らずに立ったままで待ち続ける。少々わがままなところもあるが、使用人としての仕草はしっかりと身に付いているのである。
聖王と皇帝が顔を見合わせると、カスミに座るように促す。そうするとようやくカスミは再び席に着いた。
「まったく、魔王のやつが羨ましいな。これだけの忠臣たちに囲まれておるのだからな」
「ふふっ、まったくですね。神殿も意外と顔色を窺う方が多くて、対応が大変なのですよ」
「ほう、それは意外だな」
「ええ、そうなのですよ」
驚く皇帝に対して、聖王はにこりと笑顔を浮かべていた。
和やかな雰囲気で食事が行われているが、もう数日もすれば武闘大会が始まる。
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それぞれの思いを胸に、戦いを前にした晩餐を堪能するキリエたちだった。
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