異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第350話 転生者、一発お見舞いする

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 魔王城での武闘大会が始まった頃、外の世界では……。

 俺たちはついに西に進んだ場所にある東の大陸に上陸する。
 ケオス大陸を出発してから八日目のことだった。
 地図は間違いなく、ケオス大陸の真東にある陸地を示している。

「本当に地図の反対側に出てきちゃった……」

「だろ?」

 ピエラが驚いているようだ。
 そりゃ、今まであのケオス大陸中しか知らなかったんだからな。南の大陸は地図の下側に描かれていたからすんなり理解していたが、東西がつながっているということはまったく理解が追いついていないようだ。
 一度、最初に到着した島でも見せてるんだがな……。

「それじゃ、私は早速レーヴェンの樹を育てますね」

「ああ、始めてくれ」

 デイジーは上陸するなり、挨拶代わりとばかりにレーヴェンの樹を成長させる。
 一瞬で種が大木に変わり、デイジーの魔力の量が増大していることを目の当たりにする。
 最初は四回だったのが、三回、今では二回なんだから、本当に成長著しいな。これがいわゆる成長期ってやつなのかもな。

「ふぅ~……。さすがに休ませてもらいますね」

「ああ、ゆっくり休んでくれ。それにしても、眠らなくなったあたり、本当に魔力量が倍増はしてそうだな」

「ええ、私もそんな気がします」

 デイジーははにかみながら俺の言葉に反応している。まったく、いつ見ても可愛い奴だな。

「みーたーぞーっ!」

 俺たちがくつろごうとした時、聞いたことがある耳障りな声が聞こえてきた。
 いわずもがな、あの変態紳士の声だ。

「誰が変態紳士だ!」

 おやっ? こいつ心の声を読んでいるのか?

「セイ、全部声に出てるわよ」

「えっ?」

 ピエラの指摘で判明した。
 心の声かと思ったら、全部口から出ていたらしい。
 まあいっか。変態紳士の悪口をいったところで何の問題もないしな。

「ぐぬぬぬ、いい加減にしろ。誰が変態紳士だ!」

「そういわれるのが嫌だったら、なんか名前を考えろよ。俺たちからしたらただの変態ストーカーでしかないんだからな」

「なんだ、そのストーカーとかいうやつは」

 おや、この世界じゃストーカーの意味が通じないのか。さすが異世界だな。

「まぁいいや。お前みたいなやつのことを指すから、意味の説明は要らないな」

「はぁ? ちゃんとした意味を教えろ!」

 うるさい奴だな。
 だったら教えてやるよ。聞いて後悔しろ。

「付きまとい、しつこい追跡をするやつって意味だよ」

「誰がストーカーか!」

 おっ、覚えたばかりの言葉を早速使ってやがる。
 ふ~ん、この変態紳士、頭はそんなに悪いわけじゃないのか。
 俺はつい感動してしまう。
 だが、俺たちにとってはしつこい付きまといをする、ただのストーカーでしかねえんだよ。

「まったく、お前がどんなに否定しようと、やってることはただのストーカーなんだよ。言われたくなきゃ、とっとと俺たちの目の前から消えろ!」

 俺は両手をがっしりと合わせると、変態紳士を挑発する。

「はっ、もっと簡単な方法があるぞ?」

「ほう? なんだ、言ってみろよ」

 にやけながら言うものだから、俺は笑いながら対応してやる。

「お前たちが死ねばいいんだよ。そうしたら追いかける必要がなくなるからな」

「そうか。なら、そうはいかないな。俺たちからしたら、お前が消えてくれればいいんだがな」

「ほざけっ! お前たちに俺を倒すことができぬ。自分たちの非力さを悔やみながら、死ねぃ!」

 変態紳士が襲い掛かってきた。
 翼を持っているせいか、空中をスムーズに移動してくる。
 お前のいう通り、確かに倒すことはできないかもしれない。
 だが、心を折るくらいならできるんだよ。

「ウィンドカッター・スパイラル!」

「はっ、小賢しい!」

 俺は突っ込んでくる変態紳士に風の刃を水平な竜巻のようにして放つ。
 だが、さすが変態紳士。ものともせず全部を受けて突っ込んでくる。

「美しいお前は、俺の隣に飾ってやってもいいが、他のやつは全員確実に殺す。あの方のために、俺は負けられぬのだっ!」

 何者かの部下であるらしい変態紳士は、その身に風の刃を受けながら俺の目の前まで飛んで来やがった。
 さすがにこれは予想外だよなぁ。

 ……なんてな。

 ゼロ距離で食らえ。
 腰を深く落として待ち構えていたことに気が付いてなかっただろう?

「セイクリッドフィスト・インパクト!」

 事前にピエラにかけてもらった身体強化でパワーアップした俺の拳を食らって見な!

「おぶぅっ!」

 馬鹿正直に俺めがけて真っすぐ飛んでくるのが悪い。
 眉間に俺の拳を食らった変態紳士は吹き飛んでいく。
 神聖属性を多分に含んだ拳だ。お前みたいな邪なやつにはよく効くだろうぜ。
 もちろん、デイジーたちのいる方向を避けて、遠ざけるようにして吹き飛ばしてやった。
 何度も地面でバウンドしながら、変態紳士は数十メートルも派手に吹き飛んでいった。

「くそがっ! この俺に血を流させるとはぁっ!」

 おっ、ダメージが入ったか。
 でも、ぴんぴんしてやがる。どんだけ耐久力高いんだよ、こいつ。

「だが、いい拳だった。ひとまず満足したから今日は帰らせてもらう。俺の機嫌がよかったことに感謝するんだな、ははははっ!」

 変態紳士はそう言って飛び去って行ってしまった。
 結局あいつは何なんだよ……。
 俺はどっと疲れた気がしたぜ。
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