350 / 431
第二章 外側の世界
第350話 転生者、一発お見舞いする
しおりを挟む
魔王城での武闘大会が始まった頃、外の世界では……。
俺たちはついに西に進んだ場所にある東の大陸に上陸する。
ケオス大陸を出発してから八日目のことだった。
地図は間違いなく、ケオス大陸の真東にある陸地を示している。
「本当に地図の反対側に出てきちゃった……」
「だろ?」
ピエラが驚いているようだ。
そりゃ、今まであのケオス大陸中しか知らなかったんだからな。南の大陸は地図の下側に描かれていたからすんなり理解していたが、東西がつながっているということはまったく理解が追いついていないようだ。
一度、最初に到着した島でも見せてるんだがな……。
「それじゃ、私は早速レーヴェンの樹を育てますね」
「ああ、始めてくれ」
デイジーは上陸するなり、挨拶代わりとばかりにレーヴェンの樹を成長させる。
一瞬で種が大木に変わり、デイジーの魔力の量が増大していることを目の当たりにする。
最初は四回だったのが、三回、今では二回なんだから、本当に成長著しいな。これがいわゆる成長期ってやつなのかもな。
「ふぅ~……。さすがに休ませてもらいますね」
「ああ、ゆっくり休んでくれ。それにしても、眠らなくなったあたり、本当に魔力量が倍増はしてそうだな」
「ええ、私もそんな気がします」
デイジーははにかみながら俺の言葉に反応している。まったく、いつ見ても可愛い奴だな。
「みーたーぞーっ!」
俺たちがくつろごうとした時、聞いたことがある耳障りな声が聞こえてきた。
いわずもがな、あの変態紳士の声だ。
「誰が変態紳士だ!」
おやっ? こいつ心の声を読んでいるのか?
「セイ、全部声に出てるわよ」
「えっ?」
ピエラの指摘で判明した。
心の声かと思ったら、全部口から出ていたらしい。
まあいっか。変態紳士の悪口をいったところで何の問題もないしな。
「ぐぬぬぬ、いい加減にしろ。誰が変態紳士だ!」
「そういわれるのが嫌だったら、なんか名前を考えろよ。俺たちからしたらただの変態ストーカーでしかないんだからな」
「なんだ、そのストーカーとかいうやつは」
おや、この世界じゃストーカーの意味が通じないのか。さすが異世界だな。
「まぁいいや。お前みたいなやつのことを指すから、意味の説明は要らないな」
「はぁ? ちゃんとした意味を教えろ!」
うるさい奴だな。
だったら教えてやるよ。聞いて後悔しろ。
「付きまとい、しつこい追跡をするやつって意味だよ」
「誰がストーカーか!」
おっ、覚えたばかりの言葉を早速使ってやがる。
ふ~ん、この変態紳士、頭はそんなに悪いわけじゃないのか。
俺はつい感動してしまう。
だが、俺たちにとってはしつこい付きまといをする、ただのストーカーでしかねえんだよ。
「まったく、お前がどんなに否定しようと、やってることはただのストーカーなんだよ。言われたくなきゃ、とっとと俺たちの目の前から消えろ!」
俺は両手をがっしりと合わせると、変態紳士を挑発する。
「はっ、もっと簡単な方法があるぞ?」
「ほう? なんだ、言ってみろよ」
にやけながら言うものだから、俺は笑いながら対応してやる。
「お前たちが死ねばいいんだよ。そうしたら追いかける必要がなくなるからな」
「そうか。なら、そうはいかないな。俺たちからしたら、お前が消えてくれればいいんだがな」
「ほざけっ! お前たちに俺を倒すことができぬ。自分たちの非力さを悔やみながら、死ねぃ!」
変態紳士が襲い掛かってきた。
翼を持っているせいか、空中をスムーズに移動してくる。
お前のいう通り、確かに倒すことはできないかもしれない。
だが、心を折るくらいならできるんだよ。
「ウィンドカッター・スパイラル!」
「はっ、小賢しい!」
俺は突っ込んでくる変態紳士に風の刃を水平な竜巻のようにして放つ。
だが、さすが変態紳士。ものともせず全部を受けて突っ込んでくる。
「美しいお前は、俺の隣に飾ってやってもいいが、他のやつは全員確実に殺す。あの方のために、俺は負けられぬのだっ!」
何者かの部下であるらしい変態紳士は、その身に風の刃を受けながら俺の目の前まで飛んで来やがった。
さすがにこれは予想外だよなぁ。
……なんてな。
ゼロ距離で食らえ。
腰を深く落として待ち構えていたことに気が付いてなかっただろう?
「セイクリッドフィスト・インパクト!」
事前にピエラにかけてもらった身体強化でパワーアップした俺の拳を食らって見な!
「おぶぅっ!」
馬鹿正直に俺めがけて真っすぐ飛んでくるのが悪い。
眉間に俺の拳を食らった変態紳士は吹き飛んでいく。
神聖属性を多分に含んだ拳だ。お前みたいな邪なやつにはよく効くだろうぜ。
もちろん、デイジーたちのいる方向を避けて、遠ざけるようにして吹き飛ばしてやった。
何度も地面でバウンドしながら、変態紳士は数十メートルも派手に吹き飛んでいった。
「くそがっ! この俺に血を流させるとはぁっ!」
おっ、ダメージが入ったか。
でも、ぴんぴんしてやがる。どんだけ耐久力高いんだよ、こいつ。
「だが、いい拳だった。ひとまず満足したから今日は帰らせてもらう。俺の機嫌がよかったことに感謝するんだな、ははははっ!」
変態紳士はそう言って飛び去って行ってしまった。
結局あいつは何なんだよ……。
俺はどっと疲れた気がしたぜ。
俺たちはついに西に進んだ場所にある東の大陸に上陸する。
ケオス大陸を出発してから八日目のことだった。
地図は間違いなく、ケオス大陸の真東にある陸地を示している。
「本当に地図の反対側に出てきちゃった……」
「だろ?」
ピエラが驚いているようだ。
そりゃ、今まであのケオス大陸中しか知らなかったんだからな。南の大陸は地図の下側に描かれていたからすんなり理解していたが、東西がつながっているということはまったく理解が追いついていないようだ。
一度、最初に到着した島でも見せてるんだがな……。
「それじゃ、私は早速レーヴェンの樹を育てますね」
「ああ、始めてくれ」
デイジーは上陸するなり、挨拶代わりとばかりにレーヴェンの樹を成長させる。
一瞬で種が大木に変わり、デイジーの魔力の量が増大していることを目の当たりにする。
最初は四回だったのが、三回、今では二回なんだから、本当に成長著しいな。これがいわゆる成長期ってやつなのかもな。
「ふぅ~……。さすがに休ませてもらいますね」
「ああ、ゆっくり休んでくれ。それにしても、眠らなくなったあたり、本当に魔力量が倍増はしてそうだな」
「ええ、私もそんな気がします」
デイジーははにかみながら俺の言葉に反応している。まったく、いつ見ても可愛い奴だな。
「みーたーぞーっ!」
俺たちがくつろごうとした時、聞いたことがある耳障りな声が聞こえてきた。
いわずもがな、あの変態紳士の声だ。
「誰が変態紳士だ!」
おやっ? こいつ心の声を読んでいるのか?
「セイ、全部声に出てるわよ」
「えっ?」
ピエラの指摘で判明した。
心の声かと思ったら、全部口から出ていたらしい。
まあいっか。変態紳士の悪口をいったところで何の問題もないしな。
「ぐぬぬぬ、いい加減にしろ。誰が変態紳士だ!」
「そういわれるのが嫌だったら、なんか名前を考えろよ。俺たちからしたらただの変態ストーカーでしかないんだからな」
「なんだ、そのストーカーとかいうやつは」
おや、この世界じゃストーカーの意味が通じないのか。さすが異世界だな。
「まぁいいや。お前みたいなやつのことを指すから、意味の説明は要らないな」
「はぁ? ちゃんとした意味を教えろ!」
うるさい奴だな。
だったら教えてやるよ。聞いて後悔しろ。
「付きまとい、しつこい追跡をするやつって意味だよ」
「誰がストーカーか!」
おっ、覚えたばかりの言葉を早速使ってやがる。
ふ~ん、この変態紳士、頭はそんなに悪いわけじゃないのか。
俺はつい感動してしまう。
だが、俺たちにとってはしつこい付きまといをする、ただのストーカーでしかねえんだよ。
「まったく、お前がどんなに否定しようと、やってることはただのストーカーなんだよ。言われたくなきゃ、とっとと俺たちの目の前から消えろ!」
俺は両手をがっしりと合わせると、変態紳士を挑発する。
「はっ、もっと簡単な方法があるぞ?」
「ほう? なんだ、言ってみろよ」
にやけながら言うものだから、俺は笑いながら対応してやる。
「お前たちが死ねばいいんだよ。そうしたら追いかける必要がなくなるからな」
「そうか。なら、そうはいかないな。俺たちからしたら、お前が消えてくれればいいんだがな」
「ほざけっ! お前たちに俺を倒すことができぬ。自分たちの非力さを悔やみながら、死ねぃ!」
変態紳士が襲い掛かってきた。
翼を持っているせいか、空中をスムーズに移動してくる。
お前のいう通り、確かに倒すことはできないかもしれない。
だが、心を折るくらいならできるんだよ。
「ウィンドカッター・スパイラル!」
「はっ、小賢しい!」
俺は突っ込んでくる変態紳士に風の刃を水平な竜巻のようにして放つ。
だが、さすが変態紳士。ものともせず全部を受けて突っ込んでくる。
「美しいお前は、俺の隣に飾ってやってもいいが、他のやつは全員確実に殺す。あの方のために、俺は負けられぬのだっ!」
何者かの部下であるらしい変態紳士は、その身に風の刃を受けながら俺の目の前まで飛んで来やがった。
さすがにこれは予想外だよなぁ。
……なんてな。
ゼロ距離で食らえ。
腰を深く落として待ち構えていたことに気が付いてなかっただろう?
「セイクリッドフィスト・インパクト!」
事前にピエラにかけてもらった身体強化でパワーアップした俺の拳を食らって見な!
「おぶぅっ!」
馬鹿正直に俺めがけて真っすぐ飛んでくるのが悪い。
眉間に俺の拳を食らった変態紳士は吹き飛んでいく。
神聖属性を多分に含んだ拳だ。お前みたいな邪なやつにはよく効くだろうぜ。
もちろん、デイジーたちのいる方向を避けて、遠ざけるようにして吹き飛ばしてやった。
何度も地面でバウンドしながら、変態紳士は数十メートルも派手に吹き飛んでいった。
「くそがっ! この俺に血を流させるとはぁっ!」
おっ、ダメージが入ったか。
でも、ぴんぴんしてやがる。どんだけ耐久力高いんだよ、こいつ。
「だが、いい拳だった。ひとまず満足したから今日は帰らせてもらう。俺の機嫌がよかったことに感謝するんだな、ははははっ!」
変態紳士はそう言って飛び去って行ってしまった。
結局あいつは何なんだよ……。
俺はどっと疲れた気がしたぜ。
0
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる