異世界転生者のTSスローライフ

未羊

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第二章 外側の世界

第352話 転生者、敵の行動に困惑する

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 ゴゴゴゴゴゴ……ッ!

 突然の地鳴りが俺たちを襲う。

「なんだ、地震か?!」

「地震のように思えますけれど、どうやらこれは別の要因のようです」

 俺が慌てて反応する中、セイ太がとても落ち着いていた。
 ひょいとデイジーを抱えると、俺とピエラのところまで戻ってきた。

「どういうことだ、セイ太」

「魔力ですね、この揺れは。どうやら、この辺りには魔力の溜まっている場所があって、そこが不安定になって揺れを起こしているようです」

「なんだ魔力か。またあの変態紳士が来たのかと思ったぜ」

 セイ太の推測に、俺はなんとなくだがほっとしてしまった。
 もうここまであいつのことが心底嫌になっているようだ。

「おう、俺を思い出してくれるとは嬉しいな」

 なんだ、幻聴か?

「誰が幻聴だ! とうっ!」

 ツッコミが返ってくる。また声に出てたか。
 したっという見事なまでの着地音が聞こえ、俺たちの目の前に変態紳士が現れた。
 コマンド?
 逃げるに決まってるだろうが。

「おい、どこへ行こうというのだね」

 俺はピエラの手を引いて、セイ太はデイジーを抱えたまま逃走を図る。
 そしたら、変態紳士はどこかの悪役が言っていたセリフを吐きながら追いかけてきた。なんかサングラスをかけてそうだよな。
 俺たちは変態紳士から遠ざかろうとするが、地の利は向こうにあった。

「逃げても無駄だ。ここではお前らの力は無力に等しい。美しい女、おとなしく俺のものになれ!」

「やなこった。お前みたいな変態紳士、死んでもお断りだぜ!」

「ぐぬぬぬぬ、まだその呼び方をするか!」

 俺があっかんべーをしながら断ると、変態紳士は怒りをますます募らせていた。

「そんなことより、なんなんだ、あの建物は」

 俺はついでだから、変態紳士にこの場所について尋ねてみることにする。ダメ元なんだがな。

「はっはっはっ、教えてやろうではないか!」

 あっ、知ってるんだ。こいつはラッキーだな。

「ここはかつて魔族たちが住んでいた場所だ。サージェントといったかな。かつては魔王の尖兵たちが住んでいた場所だ」

「なんだ、魔王たちの部下の街だったのか」

 変態紳士の説明を聞いても、俺はあまりピンとこなかった。元人間だし、異世界からの転生者だろうかな。

「なっ、魔族のくせにこれになびかないだと?!」

「悪いな。俺は元人間で魔王の座に就いた身だ。魔族の先祖については興味はあるが、その程度でしかないな」

「ぐぬぬぬ、そのようなことがあるのか!」

 変態紳士は驚いて歯ぎしりをしている。
 おそらく魔族の話題だから、俺の油断を招けると思ったんだろうな。

「しかしまぁ、これだけ外の世界を見てきて初めて発見した生活の痕跡が魔族の居住地とはね。これは意外なものだな」

 俺がじろっと変態紳士を見つめると、なぜか余裕たっぷりに笑っている。

「それはそうだ。人間などという脆弱な連中は、真っ先に俺の主の毒によって死に絶えていったからな。最後は魔族に泣きついて生活していたのだ。それがこのサージェントというわけよ」

「なるほど、歴史を教えてくれてありがとう」

 高笑いをする変態紳士に、一応礼を言っておく。

「ならば、俺のものにな……おぶぅっ!」

 また何か言おうとしていたので、俺は先手を取って殴り飛ばしておいた。

「お、おい、最後まで言わせ……ぐはっ!」

 それでも吹き飛ばないものだから、今度は蹴りもお見舞いしておくぜ。お前の嫌いな神聖属性を乗せてな。
 さすがに蹴りの威力は高かったのか、変態紳士は派手に吹き飛んでいく。
 息つこうとした瞬間だった。

 ゴゴゴゴゴゴ……ッ!

 再び大きく地面が揺れる。
 蹴りの直後の一本足じゃ、さすがにバランスが悪い。
 俺は思わずこけそうになってしまう。

「セイ!」

 ピエラが駆け寄って、俺を支えてくれた。

「助かったぜ、ピエラ」

「このくらい当たり前でしょ」

 ピエラは真剣な表情で俺を見ている。

「ぷはっ! まったく無茶苦茶をするな。ここで下手な衝撃を与えれば、この辺り一帯が吹き飛ぶのだぞ」

「どういうことだ!」

 地面にめり込んでいた変態紳士が起き上がる。
 多少傷は負っているものの、やっぱりピンピンとしてやがる。マジでこいつ頑丈すぎねえか?

「ここには魔族どもが瞳力として溜め込んでいた魔力が眠っているんだ。いなくなってからでもその魔力は膨れ続けている。ちょっとした衝撃を与えれば、この辺り一帯は簡単に吹き飛ぶだろうぜ」

「なんだ、そりゃ?!」

「俺が知りたいわっ!」

 俺が聞き返すと、変態紳士は怒ったように返してきた。

「魔力絡みの衝撃はマジでやめておけ。そこの後ろの連中が消し飛ぶのは構わんが、美しい女だけは死なせたくないのでな」

「それはわざわざ忠告をどうも」

 俺は寒気に毛を逆立たせながら、舌を出して嫌悪感を示しておいた。

「そういうわけだ。ここで木を育てようと思うな。死にたくないのならな!」

 変態紳士はそう言いながら、なぜか戦うことをしないで去って行ってしまった。
 なんだったんだよ、一体。

「セイを死なせたくないから、わざわざ出てきたみたいね」

「なんなんだよ、あいつ。死ねと言ったり死ぬなと言ったり、まったく忙しい奴だな……」

 俺は呆れるだけだった。

 だが、面白い情報を得たので、俺たちはこのサージェントと呼ばれた場所を探ってみることにする。
 新しい発見はあるのか、ついわくわくしてしまう俺なのだった。
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