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第二章 外側の世界
第363話 転生者、新たな敵にも気に入られる
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新しいレーヴェンの樹を定着させた俺たちだったが、ここで一度引き返すことにした。
ピエラやデイジーは理由を尋ねてきたが、俺としては勘としか言いようがない。
だが、セイ太も同じように感じていたために、二人は納得して一度西のケオス大陸へと引き返すことにした。
まあ、西とは言っても実際には東に向かうんだがな。
途中でマーシャルたちに挨拶もしたいところだが、どうもそんな余裕はなさそうだった。
かなり危険な感じがするので、俺たちはとにかく帰りを急いだ。
セイ太は休まなくても大丈夫だと言っていたので、昼夜問わずにとにかく急いだ。
ケオス大陸の南側へと五日で戻ってきた。移動距離を考えると相当飛ばしたことが分かる。なにせ、行きは海を渡るだけで四日も要したのだからな。
だが、俺たちはそこで思いもよらぬものを見てしまった。
「な、なんだ、これは……」
「レーヴェン様の樹が……枯れています……」
そう、俺が最初に大陸の内部に戻った時に立ち寄ったレーヴェンの樹が枯れてしまっていたのだ。
もともと少し弱っていた感じはあったのだが、まさか枯れているなんて思いもよらなかった。
「くそっ、あの変態紳士の仕業か」
ようやくの思いで倒した全身が石の塊のような硬さを誇った禿げ頭。この大陸には近付けないとか言っていた気がしたが、まさか木を枯らしてしまっているとは思わなかった。
「どうするの。これじゃ中に戻れないわよ」
「むむむむ……、仕方がない。デイジー、頼めるか?」
「はい、お任せ下さい!」
俺はデイジーにレーヴェンの樹を成長させるように頼む。
だが、その時だった。
「なんだ、この気持ちの悪い気配は!」
全身の身の毛がよだつような寒気が感じられる。これはセイ太も同じだ。
俺の獣人への変化の原因がセイ太だからな。だから、ほとんど同じように俺たちは感じ取ってしまうというわけだ。
「デイジー、樹はとりあえず今はいい。神聖魔法でこの辺りを覆ってくれ」
「えっ? あ、はい!」
俺からの指示が急に変わったことで、成長促進魔法を使おうとしていたデイジーは一瞬混乱していた。
しかし、同じように寒気を感じ取ったようなので、すぐさま魔法を切り替えていた。
「ピエラ」
「なにかしら、セイ」
「あの岬の方向に向かって、全力でマジックアローを放ってくれ」
「あの方向ね。了解、不気味な魔力の塊なら、私も感じ取っているから大丈夫よ」
ピエラにも指示を出すと、杖を構えて魔力を充填し始める。
「よし、今だ!」
「マジックアロー!」
純粋な魔力の矢が、俺たちのいるところから西南西の方角に放たれる。
途中から気になっていたが、どうも俺たちをつけていた。
まったく、せっかくストーカーの変態紳士を撃退したというのに、また新たなストーカーが現れたのか。
そういえばリヒテルは、この世界を毒素で満たした奴には三体の部下がいると言っていたからな。おそらくこないだ倒した変態紳士とは別のやつが動き出したってことだよな。
「ぶるあぁぁぁぁぁっ!!」
なんかとんでもない叫び声が聞こえてくる。
どっかの英雄ストーカーみたいな声だ。
「はーっはっはっはっ、追いついたぞ!」
今回のやつは前回の変態紳士とは違って、かなり痛々しい髪型をしている。筋骨隆々の紫の体に、深緑のとげとげした髪。まるでどこかの戦闘民族じゃねえかよ。
「なかなかな挨拶だったぞ。だが、我の筋肉をもってすれば、あの程度の魔法、痛くもかゆくもないわ!」
背中に生えた髪の毛と同じ色の翼をはためかせながら、腕組みをして俺たちを見下ろしている。
「我は毒の使徒、ヘルプワゾン! 名前は先日呪いのやつが考えた。石のやつのように不名誉な名で呼ばれるわけにはいかぬからな!」
あっ、こいつらに情報渡ってたんだ。
変態紳士って呼びまくってたのが、相当ショックだったんだな、あいつ。
「それは挨拶をわざわざどうも」
俺は挨拶をされたからには返事をしておく。
「名乗られたからには名乗り返すのが礼儀ってもんだろう。俺はセイ。魔王をしている」
「はっ! ずいぶん貧弱な魔王だな。しょせんはこの世界の情けない神に保護されただけのことはある。能力を使わずとも、この指先ひとつで倒せそうではないか!」
完全に見下しているようだな。
「ひとつ聞いていいか?」
「いいだろう。死にゆくやつに一つくらいは土産を持たせてやろう」
意外な反応だったな。
「ここにあった木を枯らしたのはお前か?」
「我は知らぬぞ。我も呪いも、最近出てきたばかりだ。ならば、それは石のやつがやっていったのだろう。最弱とはいえ、仕事をしているとは驚いたな」
あの変態紳士……。変な置き土産をしていきやがって。
なるほど、レーヴェンの樹の力が弱まっているから、こいつらがケオス大陸に近付くことができたのか。納得がいったぜ。
「ふむ、石のやつが惚れ込んでいたと言っていたが、なるほど確かに不思議な魅力があるな」
うげっ、今度は筋肉にまで気に入られているのかよ。
「だが、それはどうでもいいな。どうせ死ぬのだからな」
がしっと、両手の拳をぶつけ合っている。これは攻撃を仕掛けてくるつもりだな。
「少々、虫の居所が悪い。会ったばかりで悪いが、早速死んでもらおう!」
ヘルプワゾンと名乗った毒筋肉は、全身から怪しい霧を発生させている。
これは早々に決着をつけなければやばそうだ。全身の毛が逆立っていく。
突如として現れた毒筋肉。俺たちは過去最大の危機を迎えたようだ。
ピエラやデイジーは理由を尋ねてきたが、俺としては勘としか言いようがない。
だが、セイ太も同じように感じていたために、二人は納得して一度西のケオス大陸へと引き返すことにした。
まあ、西とは言っても実際には東に向かうんだがな。
途中でマーシャルたちに挨拶もしたいところだが、どうもそんな余裕はなさそうだった。
かなり危険な感じがするので、俺たちはとにかく帰りを急いだ。
セイ太は休まなくても大丈夫だと言っていたので、昼夜問わずにとにかく急いだ。
ケオス大陸の南側へと五日で戻ってきた。移動距離を考えると相当飛ばしたことが分かる。なにせ、行きは海を渡るだけで四日も要したのだからな。
だが、俺たちはそこで思いもよらぬものを見てしまった。
「な、なんだ、これは……」
「レーヴェン様の樹が……枯れています……」
そう、俺が最初に大陸の内部に戻った時に立ち寄ったレーヴェンの樹が枯れてしまっていたのだ。
もともと少し弱っていた感じはあったのだが、まさか枯れているなんて思いもよらなかった。
「くそっ、あの変態紳士の仕業か」
ようやくの思いで倒した全身が石の塊のような硬さを誇った禿げ頭。この大陸には近付けないとか言っていた気がしたが、まさか木を枯らしてしまっているとは思わなかった。
「どうするの。これじゃ中に戻れないわよ」
「むむむむ……、仕方がない。デイジー、頼めるか?」
「はい、お任せ下さい!」
俺はデイジーにレーヴェンの樹を成長させるように頼む。
だが、その時だった。
「なんだ、この気持ちの悪い気配は!」
全身の身の毛がよだつような寒気が感じられる。これはセイ太も同じだ。
俺の獣人への変化の原因がセイ太だからな。だから、ほとんど同じように俺たちは感じ取ってしまうというわけだ。
「デイジー、樹はとりあえず今はいい。神聖魔法でこの辺りを覆ってくれ」
「えっ? あ、はい!」
俺からの指示が急に変わったことで、成長促進魔法を使おうとしていたデイジーは一瞬混乱していた。
しかし、同じように寒気を感じ取ったようなので、すぐさま魔法を切り替えていた。
「ピエラ」
「なにかしら、セイ」
「あの岬の方向に向かって、全力でマジックアローを放ってくれ」
「あの方向ね。了解、不気味な魔力の塊なら、私も感じ取っているから大丈夫よ」
ピエラにも指示を出すと、杖を構えて魔力を充填し始める。
「よし、今だ!」
「マジックアロー!」
純粋な魔力の矢が、俺たちのいるところから西南西の方角に放たれる。
途中から気になっていたが、どうも俺たちをつけていた。
まったく、せっかくストーカーの変態紳士を撃退したというのに、また新たなストーカーが現れたのか。
そういえばリヒテルは、この世界を毒素で満たした奴には三体の部下がいると言っていたからな。おそらくこないだ倒した変態紳士とは別のやつが動き出したってことだよな。
「ぶるあぁぁぁぁぁっ!!」
なんかとんでもない叫び声が聞こえてくる。
どっかの英雄ストーカーみたいな声だ。
「はーっはっはっはっ、追いついたぞ!」
今回のやつは前回の変態紳士とは違って、かなり痛々しい髪型をしている。筋骨隆々の紫の体に、深緑のとげとげした髪。まるでどこかの戦闘民族じゃねえかよ。
「なかなかな挨拶だったぞ。だが、我の筋肉をもってすれば、あの程度の魔法、痛くもかゆくもないわ!」
背中に生えた髪の毛と同じ色の翼をはためかせながら、腕組みをして俺たちを見下ろしている。
「我は毒の使徒、ヘルプワゾン! 名前は先日呪いのやつが考えた。石のやつのように不名誉な名で呼ばれるわけにはいかぬからな!」
あっ、こいつらに情報渡ってたんだ。
変態紳士って呼びまくってたのが、相当ショックだったんだな、あいつ。
「それは挨拶をわざわざどうも」
俺は挨拶をされたからには返事をしておく。
「名乗られたからには名乗り返すのが礼儀ってもんだろう。俺はセイ。魔王をしている」
「はっ! ずいぶん貧弱な魔王だな。しょせんはこの世界の情けない神に保護されただけのことはある。能力を使わずとも、この指先ひとつで倒せそうではないか!」
完全に見下しているようだな。
「ひとつ聞いていいか?」
「いいだろう。死にゆくやつに一つくらいは土産を持たせてやろう」
意外な反応だったな。
「ここにあった木を枯らしたのはお前か?」
「我は知らぬぞ。我も呪いも、最近出てきたばかりだ。ならば、それは石のやつがやっていったのだろう。最弱とはいえ、仕事をしているとは驚いたな」
あの変態紳士……。変な置き土産をしていきやがって。
なるほど、レーヴェンの樹の力が弱まっているから、こいつらがケオス大陸に近付くことができたのか。納得がいったぜ。
「ふむ、石のやつが惚れ込んでいたと言っていたが、なるほど確かに不思議な魅力があるな」
うげっ、今度は筋肉にまで気に入られているのかよ。
「だが、それはどうでもいいな。どうせ死ぬのだからな」
がしっと、両手の拳をぶつけ合っている。これは攻撃を仕掛けてくるつもりだな。
「少々、虫の居所が悪い。会ったばかりで悪いが、早速死んでもらおう!」
ヘルプワゾンと名乗った毒筋肉は、全身から怪しい霧を発生させている。
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