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第25話 不意打ち
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「主を討ち取ったぞ!」
ピゲストロさんの大声が響き渡る。
その声を合図に、オークたちの形勢が一気に崩れていく。
オークの主頼りだった軍勢は勢いを失い、逃亡すら許されずに次々と討たれていく。逃げられないと見たオークたちは、必死に抵抗を試みている。
戦いの様子を気が抜けた様子で見守る私とマリエッタさん。
「これで、領主様たちや町の人たちに被害は出なくてすみそうですね」
「そうですわね。これでピゲストロさんたちが無事に勝てば、すべて解決ですわ」
ゆっくりと休んでいる私たちだったけれど、マリエッタさんが突然立ち上がる。
ガキーン!
大きな金属音が響き渡る。
私が振り返ると、そこには男性が剣を持って襲い掛かって来ていたのだ。
「くそっ、気付かれたか!」
「団長、一体何をなさっているのですか!」
マリエッタさんが攻撃を防いだ相手、それはなんとマシュローの町の自警団の団長だった。一体どうしてマリエッタさんを襲っているというのだろうか。
団長の一撃は重く、さすがに先程のオークとの戦いで消耗しているマリエッタさんには厳しすぎる。耐えてはいるものの、完全に押されてしまっていた。
私もどうにかできないかと、魔導書へと呼びかける。
「させるか!」
団長と呼ばれた男は、マリエッタさん相手は片手でも十分と見たのか、私の動きを察知して懐から何かを取り出して投げつけてきた。
「きゃっ!」
団長の投げた何かが私の右肩を大きくかすめる。
「アイラ?!」
私が傷を負ったのを見ると、マリエッタさんが叫んでいる。
「団長何をなさっているのですか。自分が何をしているのか分かっていらっしゃるのですか?!」
「ふん、あの町が手に入るのなら、お前らなんぞどうでもいいんだ。障害になりそうだからな、さっさと死んでくれ」
「団長……、あなたって人は!」
マリエッタさんが激しく怒っている。
ここまで怒るのも無理もない。しばらくの間行方不明になっていたというのに、姿を見せたと思ったら自分に襲い掛かっているのだから。到底許せるというものではない。
「ま、マリエッタさん……」
私は右肩を押さえながら、じっとマリエッタさんを見ている。
「力が、入らない……」
私をかすめた物は、どうやら短剣のようだった。でも、ただの短剣ではなかったらしく、私は体を起こそうとしているのにまったく体がいうことを聞かなかった。一体どうしたというのだろうか。
「ふん、高かったが念のために買っておいた聖銀製の短剣だ。魔族には有効というのは本当だったらしいな。こいつを殺した後、たっぷり可愛がってやるよ」
「団長、あなたはどこまで腐っているのですか!」
「手負いのくせによく吠える。そんなんじゃ貰い手がなくなるぜ」
「余計な、お世話ですわ!」
マリエッタさんが力を込めて団長の剣を弾く。予想外の行動に団長は驚いてよろめている。
しかし、団長はすぐに私が目に入ったらしく、私の首筋に剣を突きつけてきた。
「ひっ!」
「剣を捨てろ。さもなくばこいつを殺す」
「ひ、卑怯ですわよ」
「なんとでも言うがいい。さあ、こいつの命が惜しくないか!」
団長はさらに私の首に剣を近付ける。ぴたりと剣が触れて、私の顔は青ざめてしまう。
見かねたアリエッタさんが剣を捨ててしまう。
「よーし、いい子だ。とっとと死ねい!」
団長は私から剣を離すと、マリエッタさん目がけて襲い掛かっていく。
「マリエッタさん!」
私は地面に這いつくばったまま叫ぶ。力が入らないので、魔法すらも使えない。ああ、なんて私は無力なのか。
最悪の事態を覚悟した私だった。
次の瞬間、団長が持っていた剣が空中を舞っていた。一体何が起きたというのだろうか。
「ぐっ……、クルス。お前、死んでいなかったのか……」
手を押さえながら顔を向ける先には、クルスさんが剣を振り抜いた姿で立っていた。
「危ないところを、そこの女性に助けてもらったんでな。しかし、今の言い分からすると、あの件に関して何か知っているようだな」
クルスさんはちらりと私の方へと視線を向ける。
「くそっ、障害になりそうだと思って警邏の隙を狙ったというのに、悪運の強い奴め!」
団長はクルスさんへと体当たりを食らわそうとしている。しかし、クルスさんはすんなりと攻撃をかわして、背中に剣の柄を叩き込んでいた。
「ぐはっ!」
「領主様もおいでになられている。今の言い分だと、お前はいろいろと企んでいたようだな。領主様の下でしっかりと裁かれるのだな」
地面に倒れ込む団長へと、クルスさんは言い放った。
ほどなくして領主様の部下がやって来て、団長は拘束されて連れていかれた。
「アイラ、大丈夫かい」
「は、はい……。力は入りませんけれど、大丈夫です」
「肩をケガしているじゃないか。団長にやられたのか」
「かすり傷です。だいじょう、ぶっ!」
クルスさんに肩を触られて、思わず体が強張ってしまう。
「うん、大丈夫じゃないな。自分で作ったポーションを飲んで、しばらく町で休んでいてくれ。マリエッタ、お前も付き添ってやってくれ」
「分かりましたわ。アイラ、参りましょう」
戦況も、ピゲストロさんの率いる勢力が有利に進めている。この分ならもう決着はつくだろう。
ほっとして気が抜けたのか、私はマリエッタさんに支えられながら気を失ってしまったようだった。
ピゲストロさんの大声が響き渡る。
その声を合図に、オークたちの形勢が一気に崩れていく。
オークの主頼りだった軍勢は勢いを失い、逃亡すら許されずに次々と討たれていく。逃げられないと見たオークたちは、必死に抵抗を試みている。
戦いの様子を気が抜けた様子で見守る私とマリエッタさん。
「これで、領主様たちや町の人たちに被害は出なくてすみそうですね」
「そうですわね。これでピゲストロさんたちが無事に勝てば、すべて解決ですわ」
ゆっくりと休んでいる私たちだったけれど、マリエッタさんが突然立ち上がる。
ガキーン!
大きな金属音が響き渡る。
私が振り返ると、そこには男性が剣を持って襲い掛かって来ていたのだ。
「くそっ、気付かれたか!」
「団長、一体何をなさっているのですか!」
マリエッタさんが攻撃を防いだ相手、それはなんとマシュローの町の自警団の団長だった。一体どうしてマリエッタさんを襲っているというのだろうか。
団長の一撃は重く、さすがに先程のオークとの戦いで消耗しているマリエッタさんには厳しすぎる。耐えてはいるものの、完全に押されてしまっていた。
私もどうにかできないかと、魔導書へと呼びかける。
「させるか!」
団長と呼ばれた男は、マリエッタさん相手は片手でも十分と見たのか、私の動きを察知して懐から何かを取り出して投げつけてきた。
「きゃっ!」
団長の投げた何かが私の右肩を大きくかすめる。
「アイラ?!」
私が傷を負ったのを見ると、マリエッタさんが叫んでいる。
「団長何をなさっているのですか。自分が何をしているのか分かっていらっしゃるのですか?!」
「ふん、あの町が手に入るのなら、お前らなんぞどうでもいいんだ。障害になりそうだからな、さっさと死んでくれ」
「団長……、あなたって人は!」
マリエッタさんが激しく怒っている。
ここまで怒るのも無理もない。しばらくの間行方不明になっていたというのに、姿を見せたと思ったら自分に襲い掛かっているのだから。到底許せるというものではない。
「ま、マリエッタさん……」
私は右肩を押さえながら、じっとマリエッタさんを見ている。
「力が、入らない……」
私をかすめた物は、どうやら短剣のようだった。でも、ただの短剣ではなかったらしく、私は体を起こそうとしているのにまったく体がいうことを聞かなかった。一体どうしたというのだろうか。
「ふん、高かったが念のために買っておいた聖銀製の短剣だ。魔族には有効というのは本当だったらしいな。こいつを殺した後、たっぷり可愛がってやるよ」
「団長、あなたはどこまで腐っているのですか!」
「手負いのくせによく吠える。そんなんじゃ貰い手がなくなるぜ」
「余計な、お世話ですわ!」
マリエッタさんが力を込めて団長の剣を弾く。予想外の行動に団長は驚いてよろめている。
しかし、団長はすぐに私が目に入ったらしく、私の首筋に剣を突きつけてきた。
「ひっ!」
「剣を捨てろ。さもなくばこいつを殺す」
「ひ、卑怯ですわよ」
「なんとでも言うがいい。さあ、こいつの命が惜しくないか!」
団長はさらに私の首に剣を近付ける。ぴたりと剣が触れて、私の顔は青ざめてしまう。
見かねたアリエッタさんが剣を捨ててしまう。
「よーし、いい子だ。とっとと死ねい!」
団長は私から剣を離すと、マリエッタさん目がけて襲い掛かっていく。
「マリエッタさん!」
私は地面に這いつくばったまま叫ぶ。力が入らないので、魔法すらも使えない。ああ、なんて私は無力なのか。
最悪の事態を覚悟した私だった。
次の瞬間、団長が持っていた剣が空中を舞っていた。一体何が起きたというのだろうか。
「ぐっ……、クルス。お前、死んでいなかったのか……」
手を押さえながら顔を向ける先には、クルスさんが剣を振り抜いた姿で立っていた。
「危ないところを、そこの女性に助けてもらったんでな。しかし、今の言い分からすると、あの件に関して何か知っているようだな」
クルスさんはちらりと私の方へと視線を向ける。
「くそっ、障害になりそうだと思って警邏の隙を狙ったというのに、悪運の強い奴め!」
団長はクルスさんへと体当たりを食らわそうとしている。しかし、クルスさんはすんなりと攻撃をかわして、背中に剣の柄を叩き込んでいた。
「ぐはっ!」
「領主様もおいでになられている。今の言い分だと、お前はいろいろと企んでいたようだな。領主様の下でしっかりと裁かれるのだな」
地面に倒れ込む団長へと、クルスさんは言い放った。
ほどなくして領主様の部下がやって来て、団長は拘束されて連れていかれた。
「アイラ、大丈夫かい」
「は、はい……。力は入りませんけれど、大丈夫です」
「肩をケガしているじゃないか。団長にやられたのか」
「かすり傷です。だいじょう、ぶっ!」
クルスさんに肩を触られて、思わず体が強張ってしまう。
「うん、大丈夫じゃないな。自分で作ったポーションを飲んで、しばらく町で休んでいてくれ。マリエッタ、お前も付き添ってやってくれ」
「分かりましたわ。アイラ、参りましょう」
戦況も、ピゲストロさんの率いる勢力が有利に進めている。この分ならもう決着はつくだろう。
ほっとして気が抜けたのか、私はマリエッタさんに支えられながら気を失ってしまったようだった。
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