追放魔族のまったり生活

未羊

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第50話 お久しぶりです

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 翌日、私は久しぶりに町に出向く。十日以上も顔を出していないので、新しいポーションを作るのは我慢して、久しぶりに納品を行うことにした。

「ティコ、おとなしくしていてね」

「みゃーう」

 どういうわけか私の頭を定位置にしてしまった小さい状態のティコ。重いんだけど、可愛いからなかなか怒れない。
 仕方ないので、そのまま頭に乗せた状態で私は町へとやって来た。
 当然ながら、町の入口で止められてしまう。頭の上に見慣れないものがいたら、そりゃそうでしょうね。

「はい、他の町で作ったものだけど、従魔登録書です」

「むっ。……確かに」

 門番がものすごく訝しんでいるけれども、ちゃんとした手続きで登録したものだもの、文句は言わせない。
 じっとティコを見つめていたのだが、ティコが大あくびをしたものだから納得したようだった。

「まっ、これだけ落ち着いている従魔なら問題ないだろう。通っていいぞ」

「ありがとう。今日も納品だけしたらさっさと帰るので、お偉いさんには内緒でお願いしますよ」

「分かった」

 門番に見送られながら、私は町長の屋敷へと歩いていく。
 さすがに頭にティコを乗せていたらものすごく目立っちゃうな。

「ごめんね、ティコ、頭から降ろすわね」

「にゃう~ん」

 なんだか残念そうに鳴いているけど、理解はしてくれたみたいだ。
 体が小さくなっているせいか、本当に可愛いわ。
 町長の屋敷に到着した私は、いつものように裏口から入っていく。そうするように言われているもの、目立ちたくないって訴えたからね。

「男爵様、お久しぶりでございます」

「おお、アイラか。久しぶりだね」

 男爵様は普通に出迎えてくれる。しばらく顔を出さなかった理由を改めて聞き直してくることはなかった。
 しかし、私の胸元にいる生き物には興味が向いてしまったようだった。ものすごくじっと見てくる。

「猫? いや、違うな……」

 ティコは普通に見ればただの猫だろう。ただ、しっぽを見れば違うとすぐに分かってしまう。こんなしっぽの猫がいるわけないもの。
 ぎゅっとティコを抱きしめて、私は男爵様へと顔を向ける。

「まぁ何があったかはゆっくり聞かせてもらうとして、まずはポーションと茶葉だね。特に茶葉は切れてしまったから、すぐにでも欲しいかな」

「分かりました。すぐにお出ししますね」

 男爵様からの要望もあって、私はすぐに交渉に取り掛かる。
 テーブルの上には、数日分のポーションと茶葉が並ぶ。すぐに査定をする人がやって来てちゃっかりチェックをしていく。
 いつものように安定した品質だったので、いつもの金額が支払われることとなった。この町で貯金されることにはなるけど。
 そもそも、今の私に慣れた物品の品質にぶれが生じるなんてことはほぼありえないのよね。だからといっても手抜きな作り方はしないわ。錬金術って繊細だから、心の持ちようがすぐ品質に影響しちゃうもの。
 査定する人はすべてを確認し終えると、それらを箱に入れて、男爵様の部下の兵士と一緒に部屋を出ていく。
 それを見送った男爵様は、改めて私の顔をじっと眺めている。

「では、それについて説明をしてもらおうかな、アイラ」

 男爵様の視線は、どう見てもティコに向いている。やっぱり分かっちゃうわよね。
 私はきゅっとティコを抱きしめる。

「どう見ても魔物だよな、それは」

 男爵様の問い掛けに、私は視線をあちこちに向けながらも、最終的には男爵様を見て頷いた。やっぱり嘘はつけなかった。
 私の返事を聞いて、男爵様は驚きの表情を見せている。

「この子はマンティコアのティコと申します。ケガをしているのところを治してあげたら懐かれてしまいまして……」

 嘘は言っていない。ただ、そのケガの原因が自分とはちょっと言い出せなかった。それに、本当は大きな成獣であることも言えなかった。
 だって、絶対面倒なことになりそうなんだもの。
 ひとまず、安全であることを示すために、故郷の町で発行してもらった従魔登録書を見せる。
 男爵様はそれを見ながら、思わず重苦しそうな声を出していた。

「ふぅむ。これは確かに正式な書類だな。となると、こっちの国の事情として、少なくとも領主である伯爵様には報告しておかねばならん。困ったものだな……」

 こっちでもやっぱり向こうと同じようなことになるらしい。
 魔物を従えるテイマーというのは、どこの国でも要職にあるらしい。そうなると面倒ごとになるのは目に見えている。

「あの、私はのんびり暮らしたいので、大事にならないようにして頂けると、助かります……」

 ダメ元で男爵様にお願いしてみる。すると、男爵様は大きなため息をついた。

「できるだけやってみるよ。だけど、領主様の判断次第だな。要望は伝えるけれど、あまり期待はしないでおくれ」

「わ、分かりました……」

 男爵様のお話に、私はこの場ではおとなしく頷いておいた。
 その後、クルスさんやマリエッタさんに会っていくように言われたので、これも了承はしておく。
 私だってせっかくこっちに戻ってきたので、会っておかなければならないと思っていたもの。
 当然ながらティコのことで大騒ぎになったけれど、久しぶりに会って私はほっとひと安心したのだった。
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