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第59話 話の中心はマンティコア
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調査団の報告を受けて、王国では金級の会議が持たれる。
「目撃されたマンティアですが、行方は分からずじまいです。ですが、気になる情報が得られました」
「ほほう、それは何かな」
報告を聞いた国王は、興味津々といった様子である。
「はい、マンティコアが目撃された直後、町の自警団でマンティコアの幼体を従魔登録した女性がいるとのことです」
「なんだと!?」
さすがに会議の場が一気に騒めく。
マンティコアは一体だけでもかなり危険な魔物なのだ。体が大きく、狂暴性がある。さらにしっぽには猛毒がある。襲撃には王国の精鋭の騎士団が派遣されるほどの危険度である。
そのマンティコアを、幼体とはいえ従魔にした女性。国として気にならないわけがなかった。
「名前と特徴は分かっておるのか?」
「はっ! 名前はアイラ、見た目は十代後半から二十歳ほどの女性だそうです」
「ふむぅ……」
情報を得た国王たちは腕を組んで考え込んでいる。
いろいろと情報が不可解だからだ。
目撃された成体のマンティコアが行方知れずなこともそうだし、旅の途中と思われる女性が幼体のマンティコアに懐かれており、従魔登録していったというわけが分からないというものだからだ。
「正式な調査隊を出すか」
「ですな。日数的には時間が経っておりますが、脅威であるならしっかり調べておく必要がありますからな」
「最悪、隣国も要請を出さねばならんしな。よし、すぐさま編成して調査を始めてくれ」
「はっ!」
報告に来た調査団の兵士と一緒に、会議に参加していた貴族も慌てて出ていく。
「大臣」
「はっ、なんでございましょうか、国王陛下」
「念のため、あの男にも声をかけておいてくれ」
「……まさか!」
驚く大臣の声に、国王は真剣な表情で首を縦に振る。
思わず息を飲んでしまう大臣は、椅子から立ち上がる。
「いやしかし、あの男はやめておいた方がいいと思うのですが……」
大臣は躊躇している。
「だが、二十年前の魔族の襲撃を鎮められたのはあやつの力によるところが大きい。もしその女性が魔族だった場合は、その二十年前の悲劇が再度起こる可能性が考えられるのだ」
「ぐぬぅ、承知致しました」
国王の命令ゆえに、大臣も仕方なく承知したようだった。
それにしても、王命ゆえ逆らえなかったものの、大臣がここまで渋る相手とは一体何者なのだろうか。
大臣は自ら馬を駆って城から出ていく。
馬を駆ること二日間、大臣はとあるさびれた村に到着していた。
護衛を二人程度つけてという状態でやってきた村に、一体誰がいるというのだろうか。
「すまない。アイザックという男はいるかね」
「アイザックですか。でしたら、あそこの屋根に石が置いてある家ですね」
大臣に声をかけられた村人が指を差す。
大臣がその方向に顔を向けると、確かに一軒だけ屋根に石が置かれていた。
「ありがとう。行くぞ」
「はっ」
村人に礼を言った大臣は、問題の家に近付く。
「すまないが、この家にアイザックという男はいるかね?」
大臣が入口から中へと呼び掛けると、とことこと少女が出てくる。
「おじさん、誰?」
「むっ、君はアイザックの娘かな?」
「うん、そうだよ。お父さーん、なんかごちゃごちゃした服のおじさんが来たー」
少女が奥に呼び掛けると、ぬっとむさくるしい状態の男性が出てきた。髪はぼさぼさ、ひげも伸び放題。おおよそ顔が認識できない状態になっていた。
「誰かと思えば、あの時の書記官か。どうしたんだ」
出てきた男は、どうやら大臣と知り合いのようだ。奥に一度戻ると、布切れを出してきて床に敷く。
「まあ、座れ。久しぶりに会ったのだから話くらいは聞いてやる」
「すまないな」
床に座り込んだ大臣は少し黙り込んでいた。
「で、なんだ、今頃」
「君の故郷の町の近くにマンティコアが出た」
「……なんだと?」
眉がぴくりと動く。
「それに、マンティコアを従魔にした女性が町を訪れたらしい」
大臣が言葉を続けると、アイザックは黙ったまま聞いている。
「それでな、その女性の名前を聞いて驚くなよ」
「気になるな。教えろ」
大臣がもったいぶると、アイザックは苛立ちを含んだ声で詰め寄ってくる。
護衛の兵士が間に入って止めようとするが、それを大臣が制止した。
「……アイラ」
「なん……だと……?」
名前を聞いた途端、アイザックの顔色と態度が一変する。
「あいつの名前が、なんであの町で……」
アイザックは額を押さえてふらふらとしている。
「そういうわけだ。すまないが協力をして欲しい」
アイザックはショックが大きかったのか、すぐに反応ができなかった。
しばらく黙り込んでいたアイザックだったが、顔を上げて大臣を見る。
「分かった。そのアイラとやらのことが気になるからな。だが、その間、妻と娘のことを頼みたい。あいつらに何かあっても困るからな」
「承知した。家族の身柄は、私どもの方で一時的に預かろう」
アイザックと大臣との間で約束が交わされる。
これにより、アイザック一家は一度城まで移動することになった。
(アイラ……、この名前をまた聞くことになるとはな。同じ名前の他人か、それとも……。まあいい、会えば分かることだ)
城に向かう最中、アイザックの中には様々な思いが駆け巡っていた。
一体このアイザックという男は、アイラとはどのような関係があるというのだろうか。
「目撃されたマンティアですが、行方は分からずじまいです。ですが、気になる情報が得られました」
「ほほう、それは何かな」
報告を聞いた国王は、興味津々といった様子である。
「はい、マンティコアが目撃された直後、町の自警団でマンティコアの幼体を従魔登録した女性がいるとのことです」
「なんだと!?」
さすがに会議の場が一気に騒めく。
マンティコアは一体だけでもかなり危険な魔物なのだ。体が大きく、狂暴性がある。さらにしっぽには猛毒がある。襲撃には王国の精鋭の騎士団が派遣されるほどの危険度である。
そのマンティコアを、幼体とはいえ従魔にした女性。国として気にならないわけがなかった。
「名前と特徴は分かっておるのか?」
「はっ! 名前はアイラ、見た目は十代後半から二十歳ほどの女性だそうです」
「ふむぅ……」
情報を得た国王たちは腕を組んで考え込んでいる。
いろいろと情報が不可解だからだ。
目撃された成体のマンティコアが行方知れずなこともそうだし、旅の途中と思われる女性が幼体のマンティコアに懐かれており、従魔登録していったというわけが分からないというものだからだ。
「正式な調査隊を出すか」
「ですな。日数的には時間が経っておりますが、脅威であるならしっかり調べておく必要がありますからな」
「最悪、隣国も要請を出さねばならんしな。よし、すぐさま編成して調査を始めてくれ」
「はっ!」
報告に来た調査団の兵士と一緒に、会議に参加していた貴族も慌てて出ていく。
「大臣」
「はっ、なんでございましょうか、国王陛下」
「念のため、あの男にも声をかけておいてくれ」
「……まさか!」
驚く大臣の声に、国王は真剣な表情で首を縦に振る。
思わず息を飲んでしまう大臣は、椅子から立ち上がる。
「いやしかし、あの男はやめておいた方がいいと思うのですが……」
大臣は躊躇している。
「だが、二十年前の魔族の襲撃を鎮められたのはあやつの力によるところが大きい。もしその女性が魔族だった場合は、その二十年前の悲劇が再度起こる可能性が考えられるのだ」
「ぐぬぅ、承知致しました」
国王の命令ゆえに、大臣も仕方なく承知したようだった。
それにしても、王命ゆえ逆らえなかったものの、大臣がここまで渋る相手とは一体何者なのだろうか。
大臣は自ら馬を駆って城から出ていく。
馬を駆ること二日間、大臣はとあるさびれた村に到着していた。
護衛を二人程度つけてという状態でやってきた村に、一体誰がいるというのだろうか。
「すまない。アイザックという男はいるかね」
「アイザックですか。でしたら、あそこの屋根に石が置いてある家ですね」
大臣に声をかけられた村人が指を差す。
大臣がその方向に顔を向けると、確かに一軒だけ屋根に石が置かれていた。
「ありがとう。行くぞ」
「はっ」
村人に礼を言った大臣は、問題の家に近付く。
「すまないが、この家にアイザックという男はいるかね?」
大臣が入口から中へと呼び掛けると、とことこと少女が出てくる。
「おじさん、誰?」
「むっ、君はアイザックの娘かな?」
「うん、そうだよ。お父さーん、なんかごちゃごちゃした服のおじさんが来たー」
少女が奥に呼び掛けると、ぬっとむさくるしい状態の男性が出てきた。髪はぼさぼさ、ひげも伸び放題。おおよそ顔が認識できない状態になっていた。
「誰かと思えば、あの時の書記官か。どうしたんだ」
出てきた男は、どうやら大臣と知り合いのようだ。奥に一度戻ると、布切れを出してきて床に敷く。
「まあ、座れ。久しぶりに会ったのだから話くらいは聞いてやる」
「すまないな」
床に座り込んだ大臣は少し黙り込んでいた。
「で、なんだ、今頃」
「君の故郷の町の近くにマンティコアが出た」
「……なんだと?」
眉がぴくりと動く。
「それに、マンティコアを従魔にした女性が町を訪れたらしい」
大臣が言葉を続けると、アイザックは黙ったまま聞いている。
「それでな、その女性の名前を聞いて驚くなよ」
「気になるな。教えろ」
大臣がもったいぶると、アイザックは苛立ちを含んだ声で詰め寄ってくる。
護衛の兵士が間に入って止めようとするが、それを大臣が制止した。
「……アイラ」
「なん……だと……?」
名前を聞いた途端、アイザックの顔色と態度が一変する。
「あいつの名前が、なんであの町で……」
アイザックは額を押さえてふらふらとしている。
「そういうわけだ。すまないが協力をして欲しい」
アイザックはショックが大きかったのか、すぐに反応ができなかった。
しばらく黙り込んでいたアイザックだったが、顔を上げて大臣を見る。
「分かった。そのアイラとやらのことが気になるからな。だが、その間、妻と娘のことを頼みたい。あいつらに何かあっても困るからな」
「承知した。家族の身柄は、私どもの方で一時的に預かろう」
アイザックと大臣との間で約束が交わされる。
これにより、アイザック一家は一度城まで移動することになった。
(アイラ……、この名前をまた聞くことになるとはな。同じ名前の他人か、それとも……。まあいい、会えば分かることだ)
城に向かう最中、アイザックの中には様々な思いが駆け巡っていた。
一体このアイザックという男は、アイラとはどのような関係があるというのだろうか。
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