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第58話 調査の手
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アイラがのんびりとスローライフを満喫している頃、かつて住んでいた町がある国では騒動が起きていた。
「それは本当か!?」
「はい! 町の近くまでマンティコアが接近する様子が目撃されています」
「で、その後はどうなったのだ」
「その場で消えてしまったとのことで、その後のことは分かっておりません」
どうやら、国のとある町の近くで凶悪な魔物であるマンティコアが目撃されたのだという。その兵士の報告で、貴族の男性が大慌てになっているのだ。
報告を受けた貴族は、腕を組んで唸りながらその場で右往左往している。
マンティコアは約二十年前にも目撃されており、その際に多くの兵士が犠牲になったという話が残っているのだ。一体とはいえども、その脅威は計り知れないのである。
貴族はくるりと後ろへと顔を向ける。
「陛下、いかが致しましょうか」
さすがに自分だけで判断できないと見たのか、国王に意見を求めていた。
話を振られたのであれば、国王も反応をせざるを得ない。あごひげを触りながら、考え込んだ。
「そうだな。ひとまず調査のための兵士を送ろうではないか。状況を確認せねば騎士を出すほどの状況か分からぬしな」
「承知致しました」
国王の意見を貴族は素直に受け入れる。
「というわけだ。その町への聞き込みと調査のための調査団を組むのだ。そして、すぐに向かわせろ」
「はっ! 承知致しました。直ちに行います!」
命令を受けた兵士は、慌てて部屋を出ていく。その際に、ちゃんと一礼をしてから出ていくことは忘れなかった。
「しかし、マンティコアか……。思い出すな、余の小さい頃のあの一件を……」
国王は頭を押さえて俯いてしまう。
「どうなさいましたか、陛下」
「いや、大丈夫だ。すまんな」
頭を上げた国王は、しっかりと寄りかかってため息をついている。
「見かけたマンティコアは一体で、その後行方知れずというのが気にかかるな」
「左様でございますな。ひとまず私どもにできることは、調査の結果を待つだけですな」
「うむ……」
国王は貴族の言葉に頷くと、窓の外へと視線を向けている。
「何もないといいのだがな」
その視線の先には、いつもと変わりのない青空が広がるばかりだった。
マンティコアの目撃証言があった場所から最も近い町に調査団が到着する。
今回は聞き込みがメインということで、十名ほどの小規模なものだった。
「これはこれは、わざわざ王都からご足労お疲れ様でございます」
やってきた調査団を門番がびしっと直立して出迎えている。
「出迎えご苦労。町長や自警団に話を聞きたいのだが、案内をお願いできるだろうか」
「はっ、お任せ下さい。では、町長のお屋敷に案内します」
門番はひとまず町長の屋敷へと調査団を案内する。
「町長、国の調査団がやって参りました」
「通してくれ」
「はっ!」
町長の許可が出たことで、案内してきた門番が調査団を町長の部屋へと通す。
「遠いところをわざわざ来て下さって、誠にご苦労なことだ」
「労い、ありがとうございます」
普通に挨拶を交わしているだけだが、その間に流れる空気がなんともとげとげしい。
「それで、調査の目的は何なのだね」
両肘を机について、単刀直入に聞く町長である。その視線に、調査団の兵士はちょっとびびっているようだ。
現在の町長は、魔族に襲撃された当時をよく知る町長だ。調査団の兵士たちとはそれこそ年季が違うというものなのである。
話を聞いた町長は、大きく息を吐く。
「ふむ、私も報告は聞いているが、自警団に聞いてくれ」
町長は自警団に丸投げをした。これには調査団も騒めいてしまう。
「私も話を聞いただけだからな。ならば、直接の対応を行った自警団に聞くのが一番というものだろう。そうではないか?」
町長が睨みを利かせる。
「た、確かに……」
調査団の団長は勢いに押されて納得するしかなかった。そのくらいに町長の眼力が強かったのだ。
「というわけだ。さっさと調査団を案内してやれ」
「はっ、畏まりました」
調査団は門番の案内で、すぐに町長の屋敷から自警団の詰所へと移動する。
自警団の詰所に到着してすぐに目にしたものは、調査団を見て嫌な顔をする自警団の面々だった。
「なんなんだ、その顔は」
「いや、見間違いじゃないですかね。わはははは」
調査団に聞かれた自警団員は、笑ってごまかしていた。
あまりにも不審な態度だったので、調査団は訝しんでいる。なので、すぐさま本題に入ることにした。
「この町の近くでマンティコアの目撃情報が出てるんだ。そのことで知っていることを話してくれ」
「ま、マンティコアでございますか?」
明らかな動揺を見せている。これに気が付かない調査団ではない。何か知っているとにらんで、問い詰めにかかる。
「知っていることは全部吐くんだ。隠し事をしようものなら、反逆の意思ありとでも報告させてもらうぞ」
「めめめ、滅相もございません」
(くそう、報告義務を遅らせていたっていうのに……。どこの誰だよ、王都に連絡を入れやがったのは!)
調査団の圧に抵抗しながら、心の中で思いきり叫んでしまう自警団だった。
さすがに反逆の意思ありとされるわけにはいかないので、自警団はやむなくアイラとティコのことを話さざるを得なかったのだった。
「それは本当か!?」
「はい! 町の近くまでマンティコアが接近する様子が目撃されています」
「で、その後はどうなったのだ」
「その場で消えてしまったとのことで、その後のことは分かっておりません」
どうやら、国のとある町の近くで凶悪な魔物であるマンティコアが目撃されたのだという。その兵士の報告で、貴族の男性が大慌てになっているのだ。
報告を受けた貴族は、腕を組んで唸りながらその場で右往左往している。
マンティコアは約二十年前にも目撃されており、その際に多くの兵士が犠牲になったという話が残っているのだ。一体とはいえども、その脅威は計り知れないのである。
貴族はくるりと後ろへと顔を向ける。
「陛下、いかが致しましょうか」
さすがに自分だけで判断できないと見たのか、国王に意見を求めていた。
話を振られたのであれば、国王も反応をせざるを得ない。あごひげを触りながら、考え込んだ。
「そうだな。ひとまず調査のための兵士を送ろうではないか。状況を確認せねば騎士を出すほどの状況か分からぬしな」
「承知致しました」
国王の意見を貴族は素直に受け入れる。
「というわけだ。その町への聞き込みと調査のための調査団を組むのだ。そして、すぐに向かわせろ」
「はっ! 承知致しました。直ちに行います!」
命令を受けた兵士は、慌てて部屋を出ていく。その際に、ちゃんと一礼をしてから出ていくことは忘れなかった。
「しかし、マンティコアか……。思い出すな、余の小さい頃のあの一件を……」
国王は頭を押さえて俯いてしまう。
「どうなさいましたか、陛下」
「いや、大丈夫だ。すまんな」
頭を上げた国王は、しっかりと寄りかかってため息をついている。
「見かけたマンティコアは一体で、その後行方知れずというのが気にかかるな」
「左様でございますな。ひとまず私どもにできることは、調査の結果を待つだけですな」
「うむ……」
国王は貴族の言葉に頷くと、窓の外へと視線を向けている。
「何もないといいのだがな」
その視線の先には、いつもと変わりのない青空が広がるばかりだった。
マンティコアの目撃証言があった場所から最も近い町に調査団が到着する。
今回は聞き込みがメインということで、十名ほどの小規模なものだった。
「これはこれは、わざわざ王都からご足労お疲れ様でございます」
やってきた調査団を門番がびしっと直立して出迎えている。
「出迎えご苦労。町長や自警団に話を聞きたいのだが、案内をお願いできるだろうか」
「はっ、お任せ下さい。では、町長のお屋敷に案内します」
門番はひとまず町長の屋敷へと調査団を案内する。
「町長、国の調査団がやって参りました」
「通してくれ」
「はっ!」
町長の許可が出たことで、案内してきた門番が調査団を町長の部屋へと通す。
「遠いところをわざわざ来て下さって、誠にご苦労なことだ」
「労い、ありがとうございます」
普通に挨拶を交わしているだけだが、その間に流れる空気がなんともとげとげしい。
「それで、調査の目的は何なのだね」
両肘を机について、単刀直入に聞く町長である。その視線に、調査団の兵士はちょっとびびっているようだ。
現在の町長は、魔族に襲撃された当時をよく知る町長だ。調査団の兵士たちとはそれこそ年季が違うというものなのである。
話を聞いた町長は、大きく息を吐く。
「ふむ、私も報告は聞いているが、自警団に聞いてくれ」
町長は自警団に丸投げをした。これには調査団も騒めいてしまう。
「私も話を聞いただけだからな。ならば、直接の対応を行った自警団に聞くのが一番というものだろう。そうではないか?」
町長が睨みを利かせる。
「た、確かに……」
調査団の団長は勢いに押されて納得するしかなかった。そのくらいに町長の眼力が強かったのだ。
「というわけだ。さっさと調査団を案内してやれ」
「はっ、畏まりました」
調査団は門番の案内で、すぐに町長の屋敷から自警団の詰所へと移動する。
自警団の詰所に到着してすぐに目にしたものは、調査団を見て嫌な顔をする自警団の面々だった。
「なんなんだ、その顔は」
「いや、見間違いじゃないですかね。わはははは」
調査団に聞かれた自警団員は、笑ってごまかしていた。
あまりにも不審な態度だったので、調査団は訝しんでいる。なので、すぐさま本題に入ることにした。
「この町の近くでマンティコアの目撃情報が出てるんだ。そのことで知っていることを話してくれ」
「ま、マンティコアでございますか?」
明らかな動揺を見せている。これに気が付かない調査団ではない。何か知っているとにらんで、問い詰めにかかる。
「知っていることは全部吐くんだ。隠し事をしようものなら、反逆の意思ありとでも報告させてもらうぞ」
「めめめ、滅相もございません」
(くそう、報告義務を遅らせていたっていうのに……。どこの誰だよ、王都に連絡を入れやがったのは!)
調査団の圧に抵抗しながら、心の中で思いきり叫んでしまう自警団だった。
さすがに反逆の意思ありとされるわけにはいかないので、自警団はやむなくアイラとティコのことを話さざるを得なかったのだった。
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