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第57話 スローライフを満喫
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無事にポーションと茶葉を納品して、私は家に戻ってくる。男爵様たちから特に何かを言われるということもなかったので、これからものんびりと過ごせそうで安心した。
「お昼にしましょうか、ティコ」
「にゃう~ん」
お腹が空いたので何かを食べようとすると、ティコは精一杯甘えてきていた。
大きさとして普通の猫より少し大きいくらいなので、十分可愛い。
「お昼を食べたら、ちょっと狩りに行きましょうか。少しは遊びたいでしょう?」
「みゃう」
この上ないにこやかな笑顔を見せるティコだった。やっぱり元々マンティコアだからか、狩りが好きなんでしょうね。
床でがつがつと肉を食べる姿に、私はついにこにこと笑顔をこぼしてしまっていた。
この日も先日の大雨が嘘のように晴れているので、薬草摘みにしても狩りを行うにしてもこの上ない状況だと思う。
ティコを連れて、今日は場所を変えて薬草を摘みに行く。
「うぅ~ん、今日はいいお散歩日和だわ。ね、ティコ」
「みゃう~」
私が話し掛けると、ティコは目を細めて返事をしていた。私の言っていることを理解しているってことかしらね。
本当に聞き分けのいい子なので、不思議と安心できちゃうわね。
薬草と茶葉用の葉っぱを摘み終えると、いよいよ狩りを行うことにする。
「さぁ、ティコ。狩りにいくわよ」
「にゃうん」
やる気のある声が返ってくる。よく見ると、ものすごく表情が引き締まっていた。
この表情にはくすっと笑ってしまう。わかりやすいったらありゃしないわね。
目的地に着くと、私はティコに声をかける。
「今のままで大丈夫そう? 無理なら元の姿に戻すわよ」
「みゃうにゃう」
何を言っているのか分からないけど、このままでいいっていうことかしらね。だって、首を縦に振ってから横に振ったんだもの。最初の質問に肯定して、その後を否定したっていうことよね。
……やだ、うちの子頭よすぎないかしら。
ついつい褒めちぎりたくなっちゃうわね。
まぁそれはそれとして、魔物を狩らないとご飯がすぐになくなっちゃう。
小さい状態のままのティコを足元に座らせると、一度深呼吸をする。そして、腰に手を当てて、人差し指を伸ばした右手を前に突き出す。
「さあ、ティコ。存分に狩ってきなさい!」
「うみゃあっ!」
私が号令をかけると、ティコは勢いよく走り始めた。
この辺りにいる魔物はあまり強くはないから、強力な魔物であるマンティコアのティコからしたらかなり弱いでしょうね。魔法で小さくなっているとはいっても、能力は高いみたいだもの。
「にゃああっ!」
襲い来るのは犬型の魔物。
以前夜の時間に出くわしたウルフよりは小さく弱い魔物だ。
犬型の魔物はティコに襲い掛かっている。小さいから自分より弱いと判断したんでしょうね。
でも、ウルフよりも弱い魔物なら、私のティコが負けるわけないわ。
結果、ティコは難なく襲い掛かってきた五匹の犬型の魔物を倒してしまった。
ちなみにだけど、今のティコはしっぽのカバーを外した状態。つまり、毒の効果のあるしっぽが使える状態なのだ。
だけど、毒を与えると肉が食べられなくなってしまうと考えたらしく、しっぽを使わず牙と爪で魔物を倒してしまったのだ。さすがは獅子といったところだろう。
複数体が相手でも難なく魔物を撃破したティコは、私のところへとやって来る。まるで褒めてといわんばかりの笑顔だ。
「よしよし、よくやったわ、ティコ」
私が頭を撫でてやると、すごく気持ちよさそうな顔をしている。
こうやって接していればいるほど、本当に普通の猫とほとんど変わらない。ちらちらと視線に入るサソリのしっぽのおかげで、マンティコアなんだなと認識できる。
十分にティコを褒めると、私は魔物の解体を行った。
この解体も慣れたものだ。
初めて解体した時には、その気持ち悪さに思わず吐いてしまった。でも、こうしないと食事にありつけないわけだし、気持ち悪さと戦いながらこなしたものだったわ。
すっかり手慣れた調子で解体を終える。肉と毛皮、それと魔石を確保すると、それ以外はすべて火魔法で焼き払う。
「これでよしっと。帰るわよ、ティコ」
「にゃあ」
元気よく返事をしたティコと一緒に、私は家へと戻っていく。
新しいポーションを作るために遠出して以降は、本当にのんびりとした平和な日々を送れている。
叶うのであるならば、こののんびりとした生活はずっと続いてほしいものだわね。
「ティコ、今日はカッコよかったわよ」
「みゃうん」
私が褒めると、ティコは目を細めて得意げに鳴いている。
「今度、元の姿でのびのびさせてあげたいから、少し遠出してみる?」
「にゃあん」
「そっかそっか。それじゃまた少し多めにポーションと茶葉を作っておかなきゃね」
私はにこにことした笑顔で、ティコの羽伸ばしのために次の計画を立てている。
だけど、この時の私はまったく気が付いていなかった。
私たちののんびりとしたスローライフを打ち壊そうとする存在が、ゆるりゆるりと近付いてきていることに……。
「お昼にしましょうか、ティコ」
「にゃう~ん」
お腹が空いたので何かを食べようとすると、ティコは精一杯甘えてきていた。
大きさとして普通の猫より少し大きいくらいなので、十分可愛い。
「お昼を食べたら、ちょっと狩りに行きましょうか。少しは遊びたいでしょう?」
「みゃう」
この上ないにこやかな笑顔を見せるティコだった。やっぱり元々マンティコアだからか、狩りが好きなんでしょうね。
床でがつがつと肉を食べる姿に、私はついにこにこと笑顔をこぼしてしまっていた。
この日も先日の大雨が嘘のように晴れているので、薬草摘みにしても狩りを行うにしてもこの上ない状況だと思う。
ティコを連れて、今日は場所を変えて薬草を摘みに行く。
「うぅ~ん、今日はいいお散歩日和だわ。ね、ティコ」
「みゃう~」
私が話し掛けると、ティコは目を細めて返事をしていた。私の言っていることを理解しているってことかしらね。
本当に聞き分けのいい子なので、不思議と安心できちゃうわね。
薬草と茶葉用の葉っぱを摘み終えると、いよいよ狩りを行うことにする。
「さぁ、ティコ。狩りにいくわよ」
「にゃうん」
やる気のある声が返ってくる。よく見ると、ものすごく表情が引き締まっていた。
この表情にはくすっと笑ってしまう。わかりやすいったらありゃしないわね。
目的地に着くと、私はティコに声をかける。
「今のままで大丈夫そう? 無理なら元の姿に戻すわよ」
「みゃうにゃう」
何を言っているのか分からないけど、このままでいいっていうことかしらね。だって、首を縦に振ってから横に振ったんだもの。最初の質問に肯定して、その後を否定したっていうことよね。
……やだ、うちの子頭よすぎないかしら。
ついつい褒めちぎりたくなっちゃうわね。
まぁそれはそれとして、魔物を狩らないとご飯がすぐになくなっちゃう。
小さい状態のままのティコを足元に座らせると、一度深呼吸をする。そして、腰に手を当てて、人差し指を伸ばした右手を前に突き出す。
「さあ、ティコ。存分に狩ってきなさい!」
「うみゃあっ!」
私が号令をかけると、ティコは勢いよく走り始めた。
この辺りにいる魔物はあまり強くはないから、強力な魔物であるマンティコアのティコからしたらかなり弱いでしょうね。魔法で小さくなっているとはいっても、能力は高いみたいだもの。
「にゃああっ!」
襲い来るのは犬型の魔物。
以前夜の時間に出くわしたウルフよりは小さく弱い魔物だ。
犬型の魔物はティコに襲い掛かっている。小さいから自分より弱いと判断したんでしょうね。
でも、ウルフよりも弱い魔物なら、私のティコが負けるわけないわ。
結果、ティコは難なく襲い掛かってきた五匹の犬型の魔物を倒してしまった。
ちなみにだけど、今のティコはしっぽのカバーを外した状態。つまり、毒の効果のあるしっぽが使える状態なのだ。
だけど、毒を与えると肉が食べられなくなってしまうと考えたらしく、しっぽを使わず牙と爪で魔物を倒してしまったのだ。さすがは獅子といったところだろう。
複数体が相手でも難なく魔物を撃破したティコは、私のところへとやって来る。まるで褒めてといわんばかりの笑顔だ。
「よしよし、よくやったわ、ティコ」
私が頭を撫でてやると、すごく気持ちよさそうな顔をしている。
こうやって接していればいるほど、本当に普通の猫とほとんど変わらない。ちらちらと視線に入るサソリのしっぽのおかげで、マンティコアなんだなと認識できる。
十分にティコを褒めると、私は魔物の解体を行った。
この解体も慣れたものだ。
初めて解体した時には、その気持ち悪さに思わず吐いてしまった。でも、こうしないと食事にありつけないわけだし、気持ち悪さと戦いながらこなしたものだったわ。
すっかり手慣れた調子で解体を終える。肉と毛皮、それと魔石を確保すると、それ以外はすべて火魔法で焼き払う。
「これでよしっと。帰るわよ、ティコ」
「にゃあ」
元気よく返事をしたティコと一緒に、私は家へと戻っていく。
新しいポーションを作るために遠出して以降は、本当にのんびりとした平和な日々を送れている。
叶うのであるならば、こののんびりとした生活はずっと続いてほしいものだわね。
「ティコ、今日はカッコよかったわよ」
「みゃうん」
私が褒めると、ティコは目を細めて得意げに鳴いている。
「今度、元の姿でのびのびさせてあげたいから、少し遠出してみる?」
「にゃあん」
「そっかそっか。それじゃまた少し多めにポーションと茶葉を作っておかなきゃね」
私はにこにことした笑顔で、ティコの羽伸ばしのために次の計画を立てている。
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