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新章 青色の智姫
第349話 アイヴォリーの陰
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城に入っていったパールとティールは、フードを外した状態で城の中を移動していく。
それにしても、なぜ一国の王妃と女王がこんなこそこそとした状態で移動しているのか。まったく理解に苦しむというものだ。
だが、二人がわざわざこうやってお忍びのようにやって来たのは、理由があるようだ。
「本当に、今日現れるのでしょうかね」
「さてな。だが、そちらの魔法研究所が出した結論だ。妾とて半信半疑ではあるが、疑いがあるなら賭けてみるのは当然のことであろう。妾も気に入っているのでな、シアンという小娘をな」
ティールは真面目な顔をして語っている。
「シアンに近しい者が集まる時に、最も姿を見せるだろうという研究結果ですよね。あの話を聞いた時には私は信じられなかったですよ」
「それを聞いたからこそ、妾はそなたの呼び掛けに応じたのだ。それにしても、あのように信用を勝ち得て入れるのはな。そなたの人徳あってこそなのだろうな、パールよ」
「ありがとうございます。ともかく今は急ぎましょう」
「うむ」
城の中を移動する二人は、パーティー会場とはまったく別の場所へと向かっている。
ほとんど人とすれ違うことなく、二人は城の中を突き進んでいく。
目的の場所が近付いてきたのか、ティールは羽織っていたローブを完全に脱いでいた。
それを受けてパールもローブを脱ぐ。
「さて、この先が目的地ですね。どうしましょうか、ティール」
「任せておけ」
ティールは見張りの兵士のところへ向かっていく。
「すまない、この奥へと入ることはできるだろうか」
「はっ、これはトパゼリアの女王陛下ではございませんか。申し訳ございませんが、ここは何人たりとも入れるなという風に申し付けられておりまして、お通しすることはできません」
ティールの質問に、兵士ははっきりと答えていた。
何人たりともというあたり、アイヴォリー王国にとっては秘密にしておきたい場所なのだろう。
それもそうだろう。
現在ティールとパールの二人はやって来ている場所は、かつて使われていたアイヴォリー王国の処刑場なのだ。城のかなり奥まった場所にあり、人がほとんどやって来ることはない。
秘密にしておきたいのならば、潰してしまえばいいところだろう。
だが、それをしないのは、シルヴァノとペシエラの強い意向があってのことだ。特に、ペシエラは残すことに強くこだわった。
理由は延べてはいないのだが、おそらくは逆行前のことがあってのことだろう。自分がしてしまった過ちを戒めるために、このように潰さずに残しているのだと思われる。
「まさかこのような場所が、長い時を経て再び悲劇の場所になろうとしているのでしょうか」
「そちらの研究結果ではそういうことだったようだな。とにかく妾たちにできることは、この処刑場を時が過ぎるまで封鎖することだ。そのためには何としてもここを突破せねばならんだ」
ティールたちは無理やりにでも突破しようとするが、兵士たちも任務がある。必死に突破を防ごうと激しく抵抗している。
「困ります。これ以上無理に進もうとされるのでしたら、あなた方であっても捕まえなければなりません。頼みますからおやめください」
「そうも言っておれんのだ。この場所の存在が、悲劇を繰り返そうとしているのだからな」
「分かるようにご説明下さい」
「説明したところで分かるとは思えません。お願いですから、おとなしく通して下さい」
通り抜けようとするパールとティール。必死に食い止めようとする兵士たち。その争いは決着しそうにない。
さすがに耐えかねた兵士が二人を拘束しようと動いた時だった。
バチンッ!
強い魔力が波動が走る。
「まずいですね。奴が現れたようです」
「魔法が発動する時には強いひずみが出るとは聞いていたが、よもやここまで強いものだとはな。奴も相当本気ということだろう」
パールとティールの二人には焦りの色がにじみ出ている。
「な、なんだ、今の音は」
わけの分からないといった兵士たちは混乱している。
あまりの慌てふためきように、二人は今だと動揺している兵士たちの封鎖を突破して処刑場へと走っていく。
「待て!」
我に返った兵士たちが追いかけようとするが、思うように体が動かない。
「くそっ、なんだ。体中に寒気が走る……」
「ふ、二人を追いかけねばならぬというのに、なんだこれは……」
処刑場に足を踏み入れようとする兵士たちは、中からあふれ出てくる魔力の圧力に中てられてしまい、その場にうずくまってしまう。
「ぐう……。お二人を、連れ戻さね……ば……」
あまりに強い魔力の圧力に、兵士たちは気を失って倒れてしまった。
年末パーティーの始まる初日。突如として封鎖された処刑場を満たした謎の魔力。
そこへと飛び込んでいったパールとティールははたして無事でいられるのだろうか。
かつての悲劇が起きた場所で、再び運命の悲劇を迎えることになってしまうのだろうか。
必死の抗いのための戦いが、今ここに幕を開けようとしていた。
それにしても、なぜ一国の王妃と女王がこんなこそこそとした状態で移動しているのか。まったく理解に苦しむというものだ。
だが、二人がわざわざこうやってお忍びのようにやって来たのは、理由があるようだ。
「本当に、今日現れるのでしょうかね」
「さてな。だが、そちらの魔法研究所が出した結論だ。妾とて半信半疑ではあるが、疑いがあるなら賭けてみるのは当然のことであろう。妾も気に入っているのでな、シアンという小娘をな」
ティールは真面目な顔をして語っている。
「シアンに近しい者が集まる時に、最も姿を見せるだろうという研究結果ですよね。あの話を聞いた時には私は信じられなかったですよ」
「それを聞いたからこそ、妾はそなたの呼び掛けに応じたのだ。それにしても、あのように信用を勝ち得て入れるのはな。そなたの人徳あってこそなのだろうな、パールよ」
「ありがとうございます。ともかく今は急ぎましょう」
「うむ」
城の中を移動する二人は、パーティー会場とはまったく別の場所へと向かっている。
ほとんど人とすれ違うことなく、二人は城の中を突き進んでいく。
目的の場所が近付いてきたのか、ティールは羽織っていたローブを完全に脱いでいた。
それを受けてパールもローブを脱ぐ。
「さて、この先が目的地ですね。どうしましょうか、ティール」
「任せておけ」
ティールは見張りの兵士のところへ向かっていく。
「すまない、この奥へと入ることはできるだろうか」
「はっ、これはトパゼリアの女王陛下ではございませんか。申し訳ございませんが、ここは何人たりとも入れるなという風に申し付けられておりまして、お通しすることはできません」
ティールの質問に、兵士ははっきりと答えていた。
何人たりともというあたり、アイヴォリー王国にとっては秘密にしておきたい場所なのだろう。
それもそうだろう。
現在ティールとパールの二人はやって来ている場所は、かつて使われていたアイヴォリー王国の処刑場なのだ。城のかなり奥まった場所にあり、人がほとんどやって来ることはない。
秘密にしておきたいのならば、潰してしまえばいいところだろう。
だが、それをしないのは、シルヴァノとペシエラの強い意向があってのことだ。特に、ペシエラは残すことに強くこだわった。
理由は延べてはいないのだが、おそらくは逆行前のことがあってのことだろう。自分がしてしまった過ちを戒めるために、このように潰さずに残しているのだと思われる。
「まさかこのような場所が、長い時を経て再び悲劇の場所になろうとしているのでしょうか」
「そちらの研究結果ではそういうことだったようだな。とにかく妾たちにできることは、この処刑場を時が過ぎるまで封鎖することだ。そのためには何としてもここを突破せねばならんだ」
ティールたちは無理やりにでも突破しようとするが、兵士たちも任務がある。必死に突破を防ごうと激しく抵抗している。
「困ります。これ以上無理に進もうとされるのでしたら、あなた方であっても捕まえなければなりません。頼みますからおやめください」
「そうも言っておれんのだ。この場所の存在が、悲劇を繰り返そうとしているのだからな」
「分かるようにご説明下さい」
「説明したところで分かるとは思えません。お願いですから、おとなしく通して下さい」
通り抜けようとするパールとティール。必死に食い止めようとする兵士たち。その争いは決着しそうにない。
さすがに耐えかねた兵士が二人を拘束しようと動いた時だった。
バチンッ!
強い魔力が波動が走る。
「まずいですね。奴が現れたようです」
「魔法が発動する時には強いひずみが出るとは聞いていたが、よもやここまで強いものだとはな。奴も相当本気ということだろう」
パールとティールの二人には焦りの色がにじみ出ている。
「な、なんだ、今の音は」
わけの分からないといった兵士たちは混乱している。
あまりの慌てふためきように、二人は今だと動揺している兵士たちの封鎖を突破して処刑場へと走っていく。
「待て!」
我に返った兵士たちが追いかけようとするが、思うように体が動かない。
「くそっ、なんだ。体中に寒気が走る……」
「ふ、二人を追いかけねばならぬというのに、なんだこれは……」
処刑場に足を踏み入れようとする兵士たちは、中からあふれ出てくる魔力の圧力に中てられてしまい、その場にうずくまってしまう。
「ぐう……。お二人を、連れ戻さね……ば……」
あまりに強い魔力の圧力に、兵士たちは気を失って倒れてしまった。
年末パーティーの始まる初日。突如として封鎖された処刑場を満たした謎の魔力。
そこへと飛び込んでいったパールとティールははたして無事でいられるのだろうか。
かつての悲劇が起きた場所で、再び運命の悲劇を迎えることになってしまうのだろうか。
必死の抗いのための戦いが、今ここに幕を開けようとしていた。
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