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第二章 ロゼリアとチェリシア
第23話 拗れた糸を解きほぐす
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「ペシエラ・コーラルは、時を遡ってきたチェリシア・コーラル本人よ!」
ロゼリアはペシエラを指差しながら、とんでもない事を言いのけた。
「お姉様のご友人は、面白い事を言いますのね」
ペシエラは無表情で嘲笑う。
「ろ、ロゼリア。それはどういう事なの?」
対照的に、チェリシアはおそるおそる尋ねてみる。
「ペシエラさんが本来のチェリシアだと断ずる根拠はあります。なにせ、私の事を常に睨んでますからね」
ロゼリアは言うが、これは根拠として弱すぎる。
「次に、チェリシアを姉と慕っているように装ってますけど、私を見る時同様笑顔は無いわ」
姉と慕っているなら、笑顔であり、声も明るくなるはず。ペシエラにはそれが無いと断じる。
「それでいて、殿下にはしきりに視線を送ってましたしね。今日も私たちの邪魔をするつもりだったんでしょう」
ロゼリアは、目線の低いペシエラの視線に合わせるように屈む。それに対して、ペシエラは視線を逸らした。
「でも、ロゼリア以外にそんな事って起き得るの?」
チェリシアは冷静なろうとして、ロゼリアに尋ねる。
「あり得なくはないでしょう。チェリシアだって異世界から転生してきたのでしょう?」
チェリシアはハッとする。そして、ペシエラに視線を移す。
「おそらく、私が処刑された後に、アイヴォリー王国が没落または滅亡するなりして、その時のチェリシアも死んだのでしょう。そこで何らかの力が働いて、こうして遡ってきた」
ロゼリアがペシエラの頬に触れようとするが、ペシエラがそれを跳ね除ける。ロゼリアは少し悲しそうにしたが、話を続ける。
「遡ったのはいいけれど、本来の自分の体には別の魂、今のチェリシアが入ってしまっていた。そこでやむなく、妹として産まれ直す事になってしまった。そう考えれば、私たちの記憶にない妹が存在する理由も納得できるわ」
とんでもない話である。こんなもの、誰が信じられるというのだろうか。
しかし、目の前のペシエラは大きくため息をついて、初めてロゼリアをまともに見た。
「……よく分かったわね。そうよ。私があなたを陥れたチェリシアよ」
認めた。すると、いきなりロゼリアはペシエラを思い切り抱きしめた。
「な、何するのよ!」
「よかった。逆行してから、ずっとあなたと仲良くしたいと思っていたから」
予想外の言葉に、ペシエラは困惑している。
「はぁ? 恨んでるんじゃないの? 私はあんたを処刑されるように仕向けたのよ?」
「恨む? そうね、恨んでいるかも知れないけど、そんな事はどうでもいいわ。恨み以上に再会できた事が嬉しいのだもの」
ロゼリアが泣きながら言うものだから、ペシエラは混乱してしまって、どうしたらいいのか分からなくなっている。
「ペシエラ、ロゼリアの言った事は本当よ。前回より早く会って、仲良くなる事で未来を変えようとしてるのよ」
「お姉様……」
「それと、ごめんなさい。あなた本来の立場を奪っちゃって」
「……いいえ、お姉様。正直言うと、私は一人っ子だったから、お姉様が居て嬉しいです。……でも、殿下は渡しませんよ」
「ふふっ、そうね。一緒に頑張りましょう」
チェリシアもペシエラに近付いて、ロゼリアと一緒になって抱きしめる。
「チェリシアって本来は素直な性格だったのね。私があまりに小言を言うものだから、反発してあんなに捻くれちゃったのね」
「あんたみたいにうるさい人は初めてでしたからね!」
ロゼリアがしみじみ言えば、ペシエラは頬を膨らませて棘のある言葉を放つ。
「やめなさい、ペシエラ」
チェリシアがペシエラを叱る。
「で、でも、お姉様……」
ペシエラが困ったような顔をするが、チェリシアの顔は真顔だ。
しかし、この空気を壊したのは意外にもロゼリアだった。
「うふふ、可愛いわね。私だって上はお兄様だけで、下は居ないもの。妹ができたみたいで嬉しいわ」
「ちょっ、離れなさいよ!」
ロゼリアが後頭部に頬を当ててくるものだから、ペシエラは本気で嫌がった。
「それとペシエラちゃん。私は殿下には興味が無いから、安心して頂戴」
「はえ?」
「いくらあなたに唆されたからと言っても、確認も何もしない上に、私たち一家をまとめて処刑したのよ? そのせいで殿下の事は好きになれないのよ」
振り返ってロゼリアを見上げるペシエラ。その視線の先で、頬に手を当ててすましたように語るロゼリア。その顔に、ペシエラの目は点になっていた。
「せっかくのやり直しなのよ。不幸は繰り返すべきじゃないわ。みんなで幸せをつかみ取らなきゃね」
ロゼリアはペシエラを見ながら、力強く言うのだった。
ロゼリアはペシエラを指差しながら、とんでもない事を言いのけた。
「お姉様のご友人は、面白い事を言いますのね」
ペシエラは無表情で嘲笑う。
「ろ、ロゼリア。それはどういう事なの?」
対照的に、チェリシアはおそるおそる尋ねてみる。
「ペシエラさんが本来のチェリシアだと断ずる根拠はあります。なにせ、私の事を常に睨んでますからね」
ロゼリアは言うが、これは根拠として弱すぎる。
「次に、チェリシアを姉と慕っているように装ってますけど、私を見る時同様笑顔は無いわ」
姉と慕っているなら、笑顔であり、声も明るくなるはず。ペシエラにはそれが無いと断じる。
「それでいて、殿下にはしきりに視線を送ってましたしね。今日も私たちの邪魔をするつもりだったんでしょう」
ロゼリアは、目線の低いペシエラの視線に合わせるように屈む。それに対して、ペシエラは視線を逸らした。
「でも、ロゼリア以外にそんな事って起き得るの?」
チェリシアは冷静なろうとして、ロゼリアに尋ねる。
「あり得なくはないでしょう。チェリシアだって異世界から転生してきたのでしょう?」
チェリシアはハッとする。そして、ペシエラに視線を移す。
「おそらく、私が処刑された後に、アイヴォリー王国が没落または滅亡するなりして、その時のチェリシアも死んだのでしょう。そこで何らかの力が働いて、こうして遡ってきた」
ロゼリアがペシエラの頬に触れようとするが、ペシエラがそれを跳ね除ける。ロゼリアは少し悲しそうにしたが、話を続ける。
「遡ったのはいいけれど、本来の自分の体には別の魂、今のチェリシアが入ってしまっていた。そこでやむなく、妹として産まれ直す事になってしまった。そう考えれば、私たちの記憶にない妹が存在する理由も納得できるわ」
とんでもない話である。こんなもの、誰が信じられるというのだろうか。
しかし、目の前のペシエラは大きくため息をついて、初めてロゼリアをまともに見た。
「……よく分かったわね。そうよ。私があなたを陥れたチェリシアよ」
認めた。すると、いきなりロゼリアはペシエラを思い切り抱きしめた。
「な、何するのよ!」
「よかった。逆行してから、ずっとあなたと仲良くしたいと思っていたから」
予想外の言葉に、ペシエラは困惑している。
「はぁ? 恨んでるんじゃないの? 私はあんたを処刑されるように仕向けたのよ?」
「恨む? そうね、恨んでいるかも知れないけど、そんな事はどうでもいいわ。恨み以上に再会できた事が嬉しいのだもの」
ロゼリアが泣きながら言うものだから、ペシエラは混乱してしまって、どうしたらいいのか分からなくなっている。
「ペシエラ、ロゼリアの言った事は本当よ。前回より早く会って、仲良くなる事で未来を変えようとしてるのよ」
「お姉様……」
「それと、ごめんなさい。あなた本来の立場を奪っちゃって」
「……いいえ、お姉様。正直言うと、私は一人っ子だったから、お姉様が居て嬉しいです。……でも、殿下は渡しませんよ」
「ふふっ、そうね。一緒に頑張りましょう」
チェリシアもペシエラに近付いて、ロゼリアと一緒になって抱きしめる。
「チェリシアって本来は素直な性格だったのね。私があまりに小言を言うものだから、反発してあんなに捻くれちゃったのね」
「あんたみたいにうるさい人は初めてでしたからね!」
ロゼリアがしみじみ言えば、ペシエラは頬を膨らませて棘のある言葉を放つ。
「やめなさい、ペシエラ」
チェリシアがペシエラを叱る。
「で、でも、お姉様……」
ペシエラが困ったような顔をするが、チェリシアの顔は真顔だ。
しかし、この空気を壊したのは意外にもロゼリアだった。
「うふふ、可愛いわね。私だって上はお兄様だけで、下は居ないもの。妹ができたみたいで嬉しいわ」
「ちょっ、離れなさいよ!」
ロゼリアが後頭部に頬を当ててくるものだから、ペシエラは本気で嫌がった。
「それとペシエラちゃん。私は殿下には興味が無いから、安心して頂戴」
「はえ?」
「いくらあなたに唆されたからと言っても、確認も何もしない上に、私たち一家をまとめて処刑したのよ? そのせいで殿下の事は好きになれないのよ」
振り返ってロゼリアを見上げるペシエラ。その視線の先で、頬に手を当ててすましたように語るロゼリア。その顔に、ペシエラの目は点になっていた。
「せっかくのやり直しなのよ。不幸は繰り返すべきじゃないわ。みんなで幸せをつかみ取らなきゃね」
ロゼリアはペシエラを見ながら、力強く言うのだった。
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