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第四章 ロゼリア10歳
第45話 照明実験
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魔石にインクの魔法を施し終わったロゼリアは、チェリシアとペシエラ姉妹と合流するために装飾工房へと移動していた。万年筆の加工も行っているので、どのみち向かう予定ではあった。
ところが、装飾工房に着いたロゼリアは、予想もしていなかった光景を目の当たりにする。
「ほほう、こいつは凄い。これだけ離れても明かりを点けられるぞ」
職人ゴルドがやたらとはしゃいでいた。その横ではチェリシアが一緒になって喜んでいるではないか。
「……チェリシア? ゴルドさん? 何をしているのかしら」
声ならぬ声で、ロゼリアが問い掛ける。
「ああ、ロゼリア……様。ゴルドさんと魔石の新しい可能性について話をしていたの」
「魔石の可能性?」
チェリシアの言い分に、ロゼリアが思いっきり首を傾げた。
「はい。魔力を込めて複数の魔石の間に魔力道……、魔力の繋がりを持たせるんです。そうする事で、離れた位置にある魔石に魔力を伝えられるのです。見ていて下さい」
そう言って、チェリシアは並んだテーブルの最も離れた位置に魔石を置いた。そして、それぞれに同じ魔法を掛ける。
「今掛けたのは、片方に魔力を通す事でもう一方に光を灯す魔法です。……いきますよ」
ごくりと息を飲む。
片方の魔石にチェリシアが魔力を通す。すると、少し時間差があったが、隣のテーブルの一番遠い位置にある魔石が淡く光り始めた。明るさは不十分ではあるが、離れた位置の魔石に魔力が届いたのである。
「なんとか成功しましたね。ロゼリア様も試されますか?」
灯した時と同じ要領で魔石の明かりを消したチェリシアは、ロゼリアへと話を振る。照明設備としてはある程度の距離を伝播させられる事はもちろん、誰が使っても大丈夫という条件が求められた。それゆえの、ロゼリアへの指名である。
「ええ、こっちの魔石に魔力を流せばいいのね」
「はい。あちらの魔石が光るように思い浮かべながらお願いします」
チェリシアに促されて、一つ向こうのテーブルの対角に置かれた魔石が光るように思いながら、ロゼリアは手前のテーブルの魔石に魔力を流す。すると、対角に置かれた魔石が光り出した。
「おお……っ!」
「さすがロゼリア様」
チェリシアの時と比べて、魔力を流してからのタイムラグは短く、光る明るさも桁違いに明るかった。
次の瞬間、ロゼリアは同様に消えるように思いながら魔力を流し、魔石の光を消した。
「素晴らしい。さすがロゼリア様だ」
ゴルドも満足げだった。そして、
「どれ、ワシもひとつ……」
魔石に光を灯そうと魔石に手を置いた。
チェリシア、ロゼリアの時と同様に、ゴルドがやっても対角の魔石は光を放った。
「いやはや、素晴らしいですぞ。これがあれば曇りや夜のような暗い時でも、晴れ並みの明るさを確保できますぞ」
魔石が光っぱなしだったので、試しにチェリシアが消えるように思いながら魔力を流す。すると、魔石の光が消えた。他にも光らせていた方の魔石から逆の事をしたり、手を置いた魔石を光らせたり、いろいろ試してみた。
結果はすべて成功。誰が点けても消しても、どちらを点けても消しても、ちゃんと動作していた。
「いや、これは驚きましたな。万年筆のインクもそうでしたが、明かりとして使うにもこのような事ができるとは。職人として努力と発想が足りなかったと、痛恨の極みでございますぞ」
ゴルドがとても悔しがっていた。
「いえいえ。ゴルドさんが入れ物を作って下さらなかったら、この発想には至らなかったと思います。お手柄です」
チェリシアが慌ててフォローを入れる。
「私が万年筆の魔石に魔法込めてる間に、こんな事になってるなんてね。でも、これはこれでなかなか面白いわね」
見た目十歳のロゼリアは、遠隔操作の照明に興味津々だった。
「でも、私とチェリシア以外の人に、この魔法が使えるかどうかが問題ね。万年筆の方もまだ代わりにできる人が見つからないから、量産体制にはできていないし、この件は試験的に商会で使ってみるくらいかしら」
ロゼリアは照明用魔石を入れた容器をまじまじと見ている。
「ペシエラが万年筆に施した装飾、この照明の容器にも使えるんじゃないかしら。チェリシア、ペシエラはどこに居るのかしら」
「多分、あっちの装飾工さんたちの所じゃないかと。さっき連れて行かれるのを見ましたので」
ロゼリアの質問に、チェリシアは答える。
「ありがとう。ちょっと相談に行ってくるわ」
「はい」
「その照明の件は、また後でじっくり詰めましょう」
「はい、ゴルドさんとしばらく相談しています」
チェリシアは言葉を交わしたロゼリアは、チェリシアの居る装飾工たちの所へと足早に向かった。
ところが、装飾工房に着いたロゼリアは、予想もしていなかった光景を目の当たりにする。
「ほほう、こいつは凄い。これだけ離れても明かりを点けられるぞ」
職人ゴルドがやたらとはしゃいでいた。その横ではチェリシアが一緒になって喜んでいるではないか。
「……チェリシア? ゴルドさん? 何をしているのかしら」
声ならぬ声で、ロゼリアが問い掛ける。
「ああ、ロゼリア……様。ゴルドさんと魔石の新しい可能性について話をしていたの」
「魔石の可能性?」
チェリシアの言い分に、ロゼリアが思いっきり首を傾げた。
「はい。魔力を込めて複数の魔石の間に魔力道……、魔力の繋がりを持たせるんです。そうする事で、離れた位置にある魔石に魔力を伝えられるのです。見ていて下さい」
そう言って、チェリシアは並んだテーブルの最も離れた位置に魔石を置いた。そして、それぞれに同じ魔法を掛ける。
「今掛けたのは、片方に魔力を通す事でもう一方に光を灯す魔法です。……いきますよ」
ごくりと息を飲む。
片方の魔石にチェリシアが魔力を通す。すると、少し時間差があったが、隣のテーブルの一番遠い位置にある魔石が淡く光り始めた。明るさは不十分ではあるが、離れた位置の魔石に魔力が届いたのである。
「なんとか成功しましたね。ロゼリア様も試されますか?」
灯した時と同じ要領で魔石の明かりを消したチェリシアは、ロゼリアへと話を振る。照明設備としてはある程度の距離を伝播させられる事はもちろん、誰が使っても大丈夫という条件が求められた。それゆえの、ロゼリアへの指名である。
「ええ、こっちの魔石に魔力を流せばいいのね」
「はい。あちらの魔石が光るように思い浮かべながらお願いします」
チェリシアに促されて、一つ向こうのテーブルの対角に置かれた魔石が光るように思いながら、ロゼリアは手前のテーブルの魔石に魔力を流す。すると、対角に置かれた魔石が光り出した。
「おお……っ!」
「さすがロゼリア様」
チェリシアの時と比べて、魔力を流してからのタイムラグは短く、光る明るさも桁違いに明るかった。
次の瞬間、ロゼリアは同様に消えるように思いながら魔力を流し、魔石の光を消した。
「素晴らしい。さすがロゼリア様だ」
ゴルドも満足げだった。そして、
「どれ、ワシもひとつ……」
魔石に光を灯そうと魔石に手を置いた。
チェリシア、ロゼリアの時と同様に、ゴルドがやっても対角の魔石は光を放った。
「いやはや、素晴らしいですぞ。これがあれば曇りや夜のような暗い時でも、晴れ並みの明るさを確保できますぞ」
魔石が光っぱなしだったので、試しにチェリシアが消えるように思いながら魔力を流す。すると、魔石の光が消えた。他にも光らせていた方の魔石から逆の事をしたり、手を置いた魔石を光らせたり、いろいろ試してみた。
結果はすべて成功。誰が点けても消しても、どちらを点けても消しても、ちゃんと動作していた。
「いや、これは驚きましたな。万年筆のインクもそうでしたが、明かりとして使うにもこのような事ができるとは。職人として努力と発想が足りなかったと、痛恨の極みでございますぞ」
ゴルドがとても悔しがっていた。
「いえいえ。ゴルドさんが入れ物を作って下さらなかったら、この発想には至らなかったと思います。お手柄です」
チェリシアが慌ててフォローを入れる。
「私が万年筆の魔石に魔法込めてる間に、こんな事になってるなんてね。でも、これはこれでなかなか面白いわね」
見た目十歳のロゼリアは、遠隔操作の照明に興味津々だった。
「でも、私とチェリシア以外の人に、この魔法が使えるかどうかが問題ね。万年筆の方もまだ代わりにできる人が見つからないから、量産体制にはできていないし、この件は試験的に商会で使ってみるくらいかしら」
ロゼリアは照明用魔石を入れた容器をまじまじと見ている。
「ペシエラが万年筆に施した装飾、この照明の容器にも使えるんじゃないかしら。チェリシア、ペシエラはどこに居るのかしら」
「多分、あっちの装飾工さんたちの所じゃないかと。さっき連れて行かれるのを見ましたので」
ロゼリアの質問に、チェリシアは答える。
「ありがとう。ちょっと相談に行ってくるわ」
「はい」
「その照明の件は、また後でじっくり詰めましょう」
「はい、ゴルドさんとしばらく相談しています」
チェリシアは言葉を交わしたロゼリアは、チェリシアの居る装飾工たちの所へと足早に向かった。
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