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第五章 学園編
第79話 試験 その1
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現実をゲームのように動かすには、まず情報を集めて現状を把握しなければならない。
ロゼリアは前回の経験とチェリシアからの情報で、そのような結論に至っていた。
そのために、シアンをはじめとした使用人たちに、様々な情報収集を行わせている。
チェリシアも現状把握の大切さは重々承知である。知っている異世界転生ものの物語を思い出しても、ヒロインに転生した事で慢心し、悪役令嬢の様に断罪されていったものが多いからだ。先人の失敗に学べるのは、後発の特典と言ってもいいだろう。本来の悪役令嬢とヒロインの二人の協力が得られるのも、きっと大きなアドバンテージだろう。
それだけではなく、当然ながら、ロゼリアたちは自身以外にも、両親や商会に係わる人間の周囲の情報にも注意を配る。どこから状況が変化するか分からない。その変化が良い事でも悪い事でも、逐一把握する事にした。
さて、翌日からは講義が始まった。
ちょっとした情報だが、学園に通う多くの学生が、マゼンダ商会で扱う万年筆を持っている。ペンとインクの二つを持ち歩かず、しかもインクの漏れを気にしなくてよいという事で、価格もある程度抑えた事で、庶民まで含めてかなり浸透しているようだった。
一時間の講義が終わると、座学の試験が始まる。
学園に入学して二日目は、新入生たちの能力を測る試験が大量に待っている。それも、学園のあらましを語る講義を行った上で、昼休憩を挟んで怒涛の進行で、である。
午前中は座学の試験。歴史と計算問題が中心で行われる。
午後は魔法と武術の試験が行われる。
これらは、新入生の実力を把握するためにいつも行われる事で、二年次以降の一応の指針とするためのものである。
午前中の座学の試験は、ロゼリアたちにとっては簡単すぎた。未来の女王候補であるがために、既に叩き込まれた知識ばかりだし、商会の仕事を手伝う上で、計算に関してもかなり場数を踏んでいる。手応えがありすぎたのだ。
座学の試験も終わり、昼休みになる。
昼食は、学園の食堂で食べる。普段は使用人に用意してもらっている食事も、自分たちで配膳して片付けも行わなければならない。多くの貴族学生たちは、不満にしている様子が見受けられた。
ロゼリアたちは、その様子を横目に見ながら、黙々と席まで食事を運んで食べ始める。侯爵令嬢と伯爵令嬢が文句も無く、自ら食事を運んでいる様子を見て、周りは小声で騒めき始めた。
ロゼリアたちは、その様子を完全に無視している。
「ご一緒よろしいかしら?」
ロゼリアたちに声を掛けてきたのは、ブラッサとグレイアだった。ドール商会の娘と取引先の娘という組み合わせである。
特に断る理由も無いので、ロゼリアたちはそれを了承する。すると、二人は礼を言って席に座った。
「午後の魔法と武術の試験は、どうなさるおつもりですか?」
ブラッサが尋ねてきた。
「私たちは両方とも受けるつもりですわ」
「あら、それは頼もしいわね」
ロゼリアの返答に、意外と言わんばかりの顔で反応するブラッサ。
「私は魔法が使えなかったので、武術だけを受けましたね。そちらもからっきしでしたので、今は文官科で勉強しています」
ブラッサの説明では、二年次以降は四つの科に分かれるらしい。
魔法が得意な魔法科、武芸に秀でた武術科、頭脳労働をこなす文官科、そして、選択肢豊富な一般科の四つである。それぞれ専門的な事を学ぶようになるのだが、貴族は一般科を忌避しているらしい。
「まあ、平民の雑用係のようなイメージが強いからでしょうね」
「ええ、その通りです。就職先が使用人だったり、荷物の運搬だったりだとかしますからね」
ブラッサは苦笑いを浮かべている。
ちなみにロゼリアとペシエラは、前回もゲームも魔法科であった。シナリオ通りに進めるのなら、魔法科一択である。だが、今回は三人とも少し悩んでいた。
(努力しすぎたせいで、できる事が増えてしまって、他にも興味が出てしまったのよね……)
そう、単純にハイスペック化した事による弊害である。ならば選択肢の多い一般科もいいが、器用貧乏になる可能性があるので悩ましいところだ。
「私は武術科にするわ。あそこは鍛冶に関しての知識も手に入るからね」
グレイアは澄んだ目で言い切る。さすがは鍛冶屋の娘である。
「お三方とも決めかねているようでしたら、試験を受けてからでも遅くないと思います。進路を決めるのは年次末試験の後ですから」
そう、十一ヶ月も先の話なのだから、今決める必要はないのである。
「仰る通りですわね。では、そうさせて頂きますわ」
ロゼリアが返答すれば、チェリシアとペシエラも頷いた。
「午後はまずは魔法試験ですので、いい結果を期待しています」
「ええ、是非とも楽しみにしていて下さいな」
ブラッサとロゼリアの間に、火花が散った気がした。
お昼を済ませた後は、年次の違うブラッサと別れ、魔法試験の会場へと向かうのだった。
ロゼリアは前回の経験とチェリシアからの情報で、そのような結論に至っていた。
そのために、シアンをはじめとした使用人たちに、様々な情報収集を行わせている。
チェリシアも現状把握の大切さは重々承知である。知っている異世界転生ものの物語を思い出しても、ヒロインに転生した事で慢心し、悪役令嬢の様に断罪されていったものが多いからだ。先人の失敗に学べるのは、後発の特典と言ってもいいだろう。本来の悪役令嬢とヒロインの二人の協力が得られるのも、きっと大きなアドバンテージだろう。
それだけではなく、当然ながら、ロゼリアたちは自身以外にも、両親や商会に係わる人間の周囲の情報にも注意を配る。どこから状況が変化するか分からない。その変化が良い事でも悪い事でも、逐一把握する事にした。
さて、翌日からは講義が始まった。
ちょっとした情報だが、学園に通う多くの学生が、マゼンダ商会で扱う万年筆を持っている。ペンとインクの二つを持ち歩かず、しかもインクの漏れを気にしなくてよいという事で、価格もある程度抑えた事で、庶民まで含めてかなり浸透しているようだった。
一時間の講義が終わると、座学の試験が始まる。
学園に入学して二日目は、新入生たちの能力を測る試験が大量に待っている。それも、学園のあらましを語る講義を行った上で、昼休憩を挟んで怒涛の進行で、である。
午前中は座学の試験。歴史と計算問題が中心で行われる。
午後は魔法と武術の試験が行われる。
これらは、新入生の実力を把握するためにいつも行われる事で、二年次以降の一応の指針とするためのものである。
午前中の座学の試験は、ロゼリアたちにとっては簡単すぎた。未来の女王候補であるがために、既に叩き込まれた知識ばかりだし、商会の仕事を手伝う上で、計算に関してもかなり場数を踏んでいる。手応えがありすぎたのだ。
座学の試験も終わり、昼休みになる。
昼食は、学園の食堂で食べる。普段は使用人に用意してもらっている食事も、自分たちで配膳して片付けも行わなければならない。多くの貴族学生たちは、不満にしている様子が見受けられた。
ロゼリアたちは、その様子を横目に見ながら、黙々と席まで食事を運んで食べ始める。侯爵令嬢と伯爵令嬢が文句も無く、自ら食事を運んでいる様子を見て、周りは小声で騒めき始めた。
ロゼリアたちは、その様子を完全に無視している。
「ご一緒よろしいかしら?」
ロゼリアたちに声を掛けてきたのは、ブラッサとグレイアだった。ドール商会の娘と取引先の娘という組み合わせである。
特に断る理由も無いので、ロゼリアたちはそれを了承する。すると、二人は礼を言って席に座った。
「午後の魔法と武術の試験は、どうなさるおつもりですか?」
ブラッサが尋ねてきた。
「私たちは両方とも受けるつもりですわ」
「あら、それは頼もしいわね」
ロゼリアの返答に、意外と言わんばかりの顔で反応するブラッサ。
「私は魔法が使えなかったので、武術だけを受けましたね。そちらもからっきしでしたので、今は文官科で勉強しています」
ブラッサの説明では、二年次以降は四つの科に分かれるらしい。
魔法が得意な魔法科、武芸に秀でた武術科、頭脳労働をこなす文官科、そして、選択肢豊富な一般科の四つである。それぞれ専門的な事を学ぶようになるのだが、貴族は一般科を忌避しているらしい。
「まあ、平民の雑用係のようなイメージが強いからでしょうね」
「ええ、その通りです。就職先が使用人だったり、荷物の運搬だったりだとかしますからね」
ブラッサは苦笑いを浮かべている。
ちなみにロゼリアとペシエラは、前回もゲームも魔法科であった。シナリオ通りに進めるのなら、魔法科一択である。だが、今回は三人とも少し悩んでいた。
(努力しすぎたせいで、できる事が増えてしまって、他にも興味が出てしまったのよね……)
そう、単純にハイスペック化した事による弊害である。ならば選択肢の多い一般科もいいが、器用貧乏になる可能性があるので悩ましいところだ。
「私は武術科にするわ。あそこは鍛冶に関しての知識も手に入るからね」
グレイアは澄んだ目で言い切る。さすがは鍛冶屋の娘である。
「お三方とも決めかねているようでしたら、試験を受けてからでも遅くないと思います。進路を決めるのは年次末試験の後ですから」
そう、十一ヶ月も先の話なのだから、今決める必要はないのである。
「仰る通りですわね。では、そうさせて頂きますわ」
ロゼリアが返答すれば、チェリシアとペシエラも頷いた。
「午後はまずは魔法試験ですので、いい結果を期待しています」
「ええ、是非とも楽しみにしていて下さいな」
ブラッサとロゼリアの間に、火花が散った気がした。
お昼を済ませた後は、年次の違うブラッサと別れ、魔法試験の会場へと向かうのだった。
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