逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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第六章 一年次・夏

第102話 魔物包囲網

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 ペシエラとケルピーが対峙したその時、ロゼリアたちの方は少し離れた休憩ポイントに居た。こちらも数班が合同で行動しており、昼食はとても賑やかになっていた。
 ところが、こちらもその様相は一変する。
 湖の方から大きな音がすると同時に、ロゼリアとチェリシアの居る休憩ポイントの近くにも魔物が出現したのだ。
「なんで、こんなに魔物が? 感知魔法にも反応は無かったのに……」
 チェリシアが慌てる。
「どうやら、この場に召喚されたようね」
 ロゼリアは魔物の出現に慌てつつも、冷静に状況を分析していた。魔物が出現した辺りには、何やら黒いモヤが見えたのだ。この事から、ロゼリアはある推測を立てた。
「どうやら、人が集まる休憩ポイントに、魔物を召喚する術式を仕掛けていたようね。それが時間になって発動したという事だと思うわ」
 ロゼリアの言葉を聞いて、チェリシアは感知魔法を周囲に展開する。すると、確かに休憩ポイントの近くにだけ集中して魔物の反応があった。
「まったく……、明らかに殺意を持って確実に仕留めにきてる罠だわね」
 ロゼリアはきゅっと口を食いしばる。そして、チェリシアを見て言う。
「チェリシア、この辺りの学生を守るように防御魔法を展開できるかしら」
「……うん、やってみるわ」
 顔を歪めているロゼリアを見て、チェリシアはすぐに感知魔法から学生の位置を割り出し、個々に防御魔法を掛けていく。この時、近くに居る学生はなるべく自分たちの近くに居るように、ロゼリアは誘導する。
 一方で、現れた魔物が戸惑っているのか攻撃してこないため、チェリシアは無事に防御魔法の展開を完了させた。
「チェリシア、魔物の数は?」
「五十くらい。湖の近くに居る魔物が一番強いみたいよ」
「……シアンから聞いた事があるわ。多分それはケルピーよ」
「ケルピー?」
 ロゼリアから聞いた聞き慣れない単語に、チェリシアは首を傾げる。
「アクアマリン子爵領で噂されている、馬の姿をした魔物よ。……っと、ゆっくり話している時間は終わりのようね」
 周りに現れた魔物たちは、ようやく状況を理解したのか、目の前に居る学生たちを見て咆哮を上げる。
 学生たちは、初めて見る魔物に完全に怯えている。そのため、ロゼリアはすぐ行動に移る。
「チェリシア、討ち漏らしを出しちゃったらお願いね」
「分かったわ」
 ロゼリアはチェリシアに確認を取ると、
「錬成『土の刃』!」
 一つ魔法を使う。すると、ロゼリアの手に土魔法でできた剣が握られた。ちなみに、声に出さなくても地水風の三属性それぞれの、剣を生み出す事ができる。ここはあえて声に出したのだ。
 土の剣を握って、ロゼリアは次々と魔物を斬り倒していく。さすが、未開の森で戦闘経験を積んだだけの事はある。
 ロゼリアは扱える三属性の魔法で敵の攻撃をいなし、動きを牽制し、一体一体確実に仕留めていく。
 しかし、さすがに敵の数が多いので、どうしても捌き切れない。だが、討ち漏らした魔物はチェリシアはもちろん、シェイディアとプラティナも参加して撃退していた。
 ある程度数を減らしていったものの、さすがにこうも連戦では、ロゼリアの体力の消耗が激しい。十三歳のお嬢様には、一対多の戦闘は厳しすぎたようだ。
 その上、ここで予想外の事態がさらに待ち受けていた。
「なっ! 第二波ですって?!」
 そう、新たな召喚陣が出現し、魔物が補充されたのである。その数は第一波と変わらない五十体ほどである。
 しかもよく見れば、第一波よりも強力な魔物もちらほらと見受けられる。思ったより第一波で消耗してしまったロゼリアには、持ち堪えられるかどうか分からない状況である。表情に焦りの色が見える。
 チェリシアの感知では、休憩ポイント以外には魔物が出現していない。しかし、ここで魔物を討ち漏らしてしまえば、今は安全な学生たちにも危険が及びかねない。
 ここで自分が踏ん張るしかないと決意したロゼリアは、剣主体から魔法主体へと戦法を切り替える。動き回る事による体力の消耗を抑えるためだ。近付いてきた魔物のみ、剣で斬り倒す。
 しかし、動き回って撹乱する事ができなくなったので、集中攻撃を受ける危険性がある。ロゼリアがそうやって覚悟を決めた時、どこからともなく魔法が飛んできて魔物を蹴散らしたのだ。
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